「なあ、朱莉。それじゃあ展望台へ行かないか?」航は青銅の鳥居を指さした。「え? ここから展望台へ行けるの?」鳥居の先には長い坂が続き、坂道の左右には食堂や土産物屋の店がびっしりと立ち並んでいる。多くの観光客たちが上を目指している姿が朱莉の目に留まった。「すごいね。お店もたくさんあるし。ここを上って行くだけでも十分観光出来るね」「ああ、そうなんだ。色々な店があるぞ~。江の島と言えばシラス丼が有名なんだ。だからシラス丼を提供している食堂もたくさんあるし、江の島名物のたこせんべいも売ってるぞ?」「たこせんべい……そう言えば見かけたことある。よく物産展とかで売られてるもの。帰りにお土産に買って帰ろうかな。蓮ちゃん、おせんべい好きだし」「お? 蓮に土産を買うのか? なら俺が買ってやるよ」航の言葉に朱莉は首を振った。「だ、駄目だよ。航君。そんなことさせられないってば。私の方が年上なんだし、買ってもらうなんてとんでもないよ。自分で買うから大丈夫だよ。それより航君こそ欲しいもの無いの? 私が買ってあげるから」すると朱莉の言葉に突然航の顔が曇る。「……するなよ」しかし、航の声が小さすぎて朱莉は初めの言葉は何を言っているのか理解できなかった。「え? 航君……何て言ったの? 初めの言葉……」「だからいつまでも俺を弟扱いするなよって言ってるんだよ!」航は気づけば大きな声を上げていた。「あ……ご、ごめんなさい。航君。私……」俯く朱莉を見て航は慌てた。「す、すまない! 朱莉。俺……思わず大声をあげてしまって……。本当にごめん。俺のこと……嫌になったか?」まるで捨てられた犬のような目で朱莉を見つめてくる航。それを見て何故か一瞬朱莉は京極に預けたマロンのことを思い出してしまった。(そっか……航君てどこかマロンに似てるんだ。初めて会った時、航君マロンと同じ色の髪だったし。だから余計に親近感を持てたのかも)そこで朱莉は笑みを浮かべてた。「私が航君のこと嫌になるはずないでしょう? ねえ、早く展望台に行ってみよう?」「あ、朱莉……」(良かった……俺、きっと朱莉に嫌われていないんだ。いや、少しは俺に好意を抱いてくれているのかも)航はすっかり有頂天になっていた。まさか朱莉が自分のことをかつての飼い犬のマロンに似ていると思われているとも知らず―― その後、
Terakhir Diperbarui : 2025-06-15 Baca selengkapnya