Semua Bab 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした: Bab 611 - Bab 620

641 Bab

2-17 帰宅の日 2

「あら? 別にいいじゃない。航。私は貴方みたいな人好きよ。自分の心に素直な人間は好感が持てるわ。私は朱莉さんと貴方のこと応援するわよ? 2人はお似合いだと思うわ」明日香の言葉に航の顔は思わず綻んだ。「え……? その言葉……本当か? 本当に俺と朱莉はお似合いだと思うか?」「ええ、そうね。朱莉さんは何所かフワフワしているというか……のんびりしている雰囲気があるから、むしろ貴方みたいなタイプが彼女に合ってると思うわ。私も朱莉さんの今後のことを考えた場合、誰かパートナーになってくれる人がいれば安心して蓮を連れて行けるもの」明日香はそれだけ言い残すと洗面台を出て行った。「あ……」1人残された航は今の明日香の言葉で、何故昨夜朱莉が泣いているのかを悟った。(朱莉……ひょっとして明日香から蓮を連れて行くようなことを言われたのか? それで泣いていたのか?)あんなに可愛がっている蓮をもうすぐ手放さなくてはならない……朱莉の気持ちを考えると、航は胸が潰れそうな気持になるのだった――****「おおー! こ、これが朝食なのか!? すっげーな!」朱莉、明日香、航、蓮の4人は昨夜みんなでバーベキューを行なったウッドデッキでレストランから運ばれてきた朝食を見て航は歓喜の声をあげた。上質な木の箱に入って届けられた朝食は色とりどりのサンドイッチやサラダ。そして瓶に入ったヨーグルトや牛乳、オレンジジュース等が綺麗に並べられている。蓮もそれを見て大喜びしている。「お母さん、僕にこの苺のフルーツサンド頂戴」「いいわよ、でも蓮ちゃん。野菜サンドも食べるのよ?」朱莉は笑顔で答える。「うん、勿論だよ」一方明日香と航の方は……。「ねえ、航。そのゆで卵、とってもらえる?」「ああ、いいぜ。あ、そうだ。明日香、お前の目の前にあるボイルウィンナー2本くれよ」航は皿を明日香に差し出した。「ええ、いいわよ。ついでにハッシュドポテトもいるかしら?」「ああ、そうだな。くれ」何故か意気投合している。そんな様子を見て朱莉は不思議そうに首を傾げた。(一体、どうしたのかな……? 昨夜はそれ程仲が良さそうに見えなかったけど、何だか今の2人はすごく気が合ってるみたい)そして朱莉は思った。意外と明日香と航はお似合いなのではないだろうかと――午前10時――「よし、皆忘れ物は無いか?」航
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2-18 航の葛藤と美由紀の後悔 1

 朱莉達をマンションまで送って来た航は上機嫌で上野の雑居ビルへと戻って来た。カンカンと階段を登ると、事務所から音が聞こえたのでガチャリと開けて中を見る。するとそこには父の姿があった。机の上には何かの資料が散らばっている。「父さん? 何してるんだよ? 今日も仕事は休みのはずじゃ……?」  「ああ……。そうなんだが……な」何故か言いよどむ父に航は尋ねた。「なあ。どうしたんだよ。何かあったのか?」すると弘樹はいつも以上に真剣な顔になる。「航、話がある。ちょっと座れ」「え? あ、ああ……」航は弘樹に長椅子を指さされ、おとなしくそこに座ると弘樹も向かい側の椅子に座った。「航、昨夜帰って来なかったな? 車を持って一体今まで何所へ行っていたんだ?」「な、何だよ? 俺はもう27だぞ? いちいち親に何所へ行ってたか報告しなくちゃならないのか?」航はむきになって返事をした。「美由紀さんと一緒だった……わけじゃないようだな?」「ああ、美由紀のはずはないだろう? 第一あいつと俺は別れたんだから」「そうか。なら……朱莉さんと一緒だったのか?」「!」一瞬航の肩がピクリと動くのを弘樹は見過ごさなかった。そしてため息をついた。「そうか……やはり朱莉さんとか……」「べ、別にやましいことは何もしていないぞ? ほら、明日香って知ってるだろう? 明日香が自分の子供の蓮を連れて千葉県の『グランピング』施設へ遊びに行ったんだよ。そしたら蓮がアスレチックで左腕を怪我したって言うから、朱莉を車に乗せて千葉まで行ったんだよ。それで明日香が俺と朱莉にも宿泊して行けって言うからみんなでコテージに泊まって、今朝朱莉たちをマンションまで送って帰って……」 航の言葉は最後の方はしりすぼみになってしまった。何故なら弘樹が非難めいた目で航を見つめていたからだ。「な、何だよ? 言いたいことがあるなら言えよ」すると弘樹は再び溜息をつく。「昨日...…お前が出かけた後、美由紀さんがここにやって来たんだよ」「え……?」「遠目からでもいいから……一目お前に会いたくて来てしまったって言ってた」「……」航は黙って聞いている。「美由紀さんはずっと自分と付き合っていた時も、お前が朱莉さんのことを忘れられずにいたと話していた。しかもお前……映画館で偶然再会したときに、人目もはばからず朱莉さん
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2-19 航の葛藤と美由紀の後悔 2

「いいか……? そもそもこんなことになったのは全てお前のせいだ。誠意をもって交際できないなら始めから付き合うな! 自分の交際している相手が……大勢の人の前で別の女性を抱きしめている姿を目撃してしまった時の、その時の美由紀さんの気持ちがお前には分からないのか!?」弘樹の叱責する言葉に航は何一つ言い返すことが出来なかった。「だ、だけど……朱莉のことを調べろなんて……一体美由紀の奴何考えてるんだよ……」(朱莉のことを調べられたらまずい。契約婚のこととか、蓮は実は朱莉の本当の子供じゃないって知られたら……美由紀、朱莉のことを脅迫するつもりなんじゃ……?)「……」激しく葛藤する航の様子を弘樹は腕組みをして無言で見つめていたが……やがて口を開いた。「航、お前……さっき何故美由紀さんの依頼を引き受けたのか尋ねてきたよな?」「あ、ああ……」「それはな、俺が断っても別の興信所を尋ねるつもりじゃないかと思ったからだ。俺なら朱莉さんのことを知っているから加減して調査するのは可能だが、他の興信所なら? 徹底的に何でも洗いざらい全て朱莉さんについて調べ上げてしまうかもしれないだろう? それこそ、契約婚から朱莉さんが育てている子供の件まで……。だから引き受けたんだ。朱莉さんの名誉を守るためにな」「!」「だが……こちらも手を抜いて依頼を引き受けるんだ。ひょっとすると……そのことが外部に漏れたらそれこそ信用問題に係わるかもしれん」「あ…」確かに弘樹の言う事は最もである。手抜き調査……それはある意味依頼人の信用を裏切ると言うことだ。人の信頼で成り立っている興信所。もし同業者にこのことが知られたら、それこそもう終わりである。「お、俺が……美由紀に直接会って、朱莉のことを調べるのはやめてもらう様に何とか頼んでみる……」「お前……本当に何とか出来るのか? それにいくつか確認しておきたいことがあって、昨夜から美由紀さんに電話を入れているんだ。だが一度も連絡が取れない。何かあったのか心配でな……」「な、何だって!?」航は思わず立ち上がった――**** その頃……。美由紀は自分のマンションに引きこもっていた。ベッドの中へ入り、布団を被って震えていた。(馬鹿だった……私……!)美由紀は目に涙を浮かべ、猫の様に身を縮めて震えている。あの日―上野公園で見知らぬ若い男に声
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2-20 新しい恋 1

 翌日、美由紀は憂鬱な気持ちで会社へ出勤した。しかし、航のことや見知らぬ男性と関係を持ってしまったことなどが尾を引きずり、少しも仕事に身が入らずミスばかりしてしまった。そして本日も美由紀は上司に呼び出され、みっちり油を搾られてしまったのである。「ああ……もう嫌だ……。こんなの……」会社を出た美由紀はトボトボと駅へ向かって歩いていた。そして何気なく立ち止まり、ショルダーバックからスマホを取り出してタップする。そこには数えきれないくらいに弘樹からメールと電話の着信が入っていたが、美由紀は一度も連絡どころか、メールを開いてもいなかった。(もう……どうでもいい……)美由紀は首を振ると、スマホをショルダーバックにしまった。 見知らぬホテルで、知らない男性の隣で目覚めた時、美由紀は激しく後悔した。今まで行きずりの関係を持ったことのない美由紀には衝撃的な出来事だったのだ。(お付き合いしてもいない人とあんなことしてしまうなんて……しかも全く記憶が無いなんて……! 私って最低だ! もう朱莉って人のこと調べてもらう資格もない……)思わずギュッと持っていたショルダーバックを抱き締めた時、突如バックの中から着信を知らせる音楽が鳴り始めた。(まさか、航君!?)一瞬喜んだ美由紀だったが次の瞬間、顔が曇った。(ううん。そんなことあるはずない……。だって私自分で航君からの連絡、全て着信拒否したじゃない)そう、美由紀は航への未練を断ち切るために電話もメールも全て一切着信拒否をしていたのである。(それじゃ、一体誰が……?)美由紀はバックからスマホを取り出すと、そこには見たことも無い名前が表示されている。『遠藤達也』 「え……? 誰?」全く身に覚えの無い相手だ。しかし、着信相手が表示されるということは美由紀が登録したに違いない。(誰よ、この人……今まで合コンした相手でもないし……!)無視してやろうかと思ったが、10コール鳴ってもいまだに電話が切れない。「もう……! このままじゃ駅についても又電話がかかってきちゃうかもしれないし……」美由紀はしぶしぶ電話に出ることにした。「もしもし……」『ああ、美由紀ちゃん? 良かった~やっと出てくれたよ』受話器越しから明るい男性の声が聞こえてくる。(え……誰? 美由紀ちゃん? どうしてこんな馴れ馴れしく話しかけてくるの
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2-21 新しい恋 2

 それから約1時間後――「それで? どうしてカラオケボックスなんですか?」美由紀はシートに座り、遠藤を見た。「まあ別にどこだっていいじゃん。俺、カラオケ好きだしさ。それにお得だよ~3時間歌い放題にコースメニューまである。しかもフリードリンクだ」言いながら遠藤はカラオケ用のコントロールパネルをピッピッと操作している。「はあ~……」美由紀は溜息をついて、シートの背もたれに身体を預け、遠藤を見た。 『遠藤達也。ドラッグストアの店員』それが遠藤の肩書だった。待ち合わせ場所に現れた遠藤はスポーツ刈りに近い髪形の細マッチョタイプの男で、趣味でボクシングを習っているらしい。「よし! この歌に決めた!」遠藤は1人盛り上がり、選曲するとモニターに送信した。するとすぐに鳴り響く音楽。「あ……これは……」それは10年程前に流行した音楽だった。当時高校生だった美由紀はこの歌が好きで、よくヘッドホンで聞いていた。(まさか、この人がおんなじ歌好きだったなんて……。でも、この歌……特にサビの部分が難しいんだよね。どうせうまく歌えるはず……)しかし、意外なことに遠藤は歌がとても上手だった。歌声もなかなかのもので、難しいサビの部分も難なく歌い、気付けば美由紀は一生懸命遠藤を見つめていた。(うわああ……上手……。なんか、ちょっといいかも……)やがて遠藤が歌い終わったとき、美由紀は喜んで手を叩いていた――「だから~親しくなるにはカラオケが一番なんだって!」遠藤は梅酒サワーを飲みながら美由紀に明るい声で話しかけていた。「でもさ……相手も歌好きなら、もうカラオケ大会になって、肝心な話なんて出来ないよね?」美由紀はポテトを口に入れた。「何言ってんだ。歌なんか別にすぐやめられるさ。大体、カラオケのお陰で俺達こんなに普通に話が出来ているだろう?」遠藤はグイッとサワーを飲み干す。「そ、それはそうなんだけど……」美由紀はチラリと遠藤を見た。(だけど……私、本当にこの人と……か関係を?)美由紀はまだその話を切り出せなかった。そこでグイッと手元にあった柚子サワーを飲むと尋ねた。「ね、ねえ。遠藤さん……」「達也でいいよ」「達也さん」「いやいや、達也でいいって」遠藤は手をブンブン振る。「だ、だって達也って呼べるはずないじゃない。私達別に付き合っているわけでもな
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2-22 近い将来に思うこと 1

翌朝―― 航はアパートの階下の事務所の扉の前に立つと、鍵を開けて中へ入ろうとして人の気配を感じた。――ガチャリドアをあけると、すでに大きなデスクには父の弘樹がPCを前に仕事を始めていた。「おはよう、父さん。随分今朝は早いんだな」「ああ。ちょっとな」航が事務所の奥の給湯室へ行こうとすると弘樹が声をかけてきた。「航。コーヒーを淹れるのか?」「ああ、そうだよ」「そうか、なら俺の分も頼む。インスタントじゃなく、ちゃんと豆から挽けよ?」そしてニヤリと笑う。「チェッ、何だよ。面倒くさい……。なら自分で淹れればいいだろう」航がブツブツ小声で言うのを弘樹はばっちり聞いていた。「いいか、航。こういう客商売はな……美味いコーヒーを淹れて出すだけで顧客が定着するんだよ。お前も覚えておけ」「え? それ、本当かよ?」「いや、俺の持論だ」「何だよ、それ……。あてにも何にもなりゃしないだろ……」しかし、航は思った。コーヒーの香りは人をどこか安心させる効果があると――15分後―― 「ほらよ」航は弘樹の大きなマグカップになみなみ注いだマグカップをデスクの上にドンと置いた。それを見た弘樹が眉をしかめる。「おいおい航……。こんな淹れ方は無いだろう? どうせならもう少し小さめの受け皿付きのコーヒーカップで出してくれ。風情も何もあったもんじゃない。これじゃ飲むだけでお腹いっぱいになる量じゃないか……」「何だよ、うるせえな……。ちゃんと言われた通り、豆から挽いて淹れたんだ。文句言うなよ」航は自分のマグカップを持って、長椅子に座るとテーブルの上の資料をめくった。「うえ、何だよ。この依頼……自分の娘の素行調査って……この父親、頭がおかしいんじゃないか? しかも娘って……38歳じゃないかよ……」航はコーヒーを飲みながら苦虫をつぶしたような顔になる。「うるさい、文句言うな。この依頼はこれから引き受けるかどうか精査するが……多分受ける。その時はちゃんとやれよ?」弘樹はPCから目を離さずに言うと、航が淹れたコーヒーに手を伸ばした。 「……うん、淹れ方は良くないが……味はいいな。カフェでもやれそうなレベルじゃないのか?」「別にやらねーよ。俺みたいな対応の人間に客商売出来ると思ってるのか?」「フム……確かに考えてみればそうだな」そして、少しの間弘樹は無言だったが
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2-23 近い将来に思うこと 2

 幼稚園に蓮を送りだした後、朱莉は母に電話をしていた。それは昨日母の面会に行くことが出来なかったからである。「ごめんなさい。お母さん。連絡もしないで面会に行かなくて……」『いいのよ、朱莉。貴女だって色々忙しいでしょう? 別に毎週来なくても大丈夫よ? 今の所は特に大きな変化も無いんだから』「でも……」『あ、朱莉。そろそろ巡回の時間だから、部屋へ戻るわ。それじゃまたね』「う、うん。またね、お母さん」そして電話が切られると朱莉は溜息をついた。(ごめんね、お母さん。1日中、病室で1人にさせて、寂しい思いをさせて……)土日は朱莉は蓮たちとグランピングで楽しい時間を過ごした。母への面会も行かずに…。そのことが朱莉は申し訳ない気持ちで一杯だったのだ。だから朱莉は心に決めていた。この契約婚が終わった後は、広めのマンションを購入して病院から母を引き取り、在宅医療に切り替えさせてもらおうと。(お母さん、ごめんね。もう少しだけ待っていて……)朱莉はスマホをギュッと握りしめた――**** その頃――大きな窓ガラスのある広々としたオフィス。窓に背を向けるように置かれた大きなデスクの前に座り、二階堂はPCの前で琢磨と話をしていた。「どうだ。九条。帰国の準備は進んでいるのか?」『ええ。当然ですよ。もうほとんど荷物は梱包積みでベッドも処分してしまいました』「何だって? それはまた随分気が早いな? それじゃ床の上で寝てるのか?」二階堂は目を丸くした。『何言ってるんですか? ここはアメリカですよ? 日本みたいに畳があるわけでもないのに床で寝れるはずがないでしょう? ソファベッドで寝てるんですよ』「ああ、そうか。しかし帰国するまであと1週間はあるのに随分気がせいてるんだな?」『当然じゃないですか? どれだけ日本に戻れる日を待ちわびていたと思ってるんですか? 全く……』「おい。何かその物言い……なんだか引っかかるんだが……」『別に、そんなことは無いですよ?』「それでどうだ? 青い目の彼女でも連れて帰るのか?」からかうような二階堂の口ぶりに面白くなさげな琢磨の声が聞こえる。『どうして俺が現地の女性を連れて帰って来ないとならないんですか? 大体今年は6年目になるって言うのに』「何だ? 6年目って一体何のことだ?」『別に。何でもありません。ところで翔は
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2-24 琢磨からの電話 1

 週末金曜日の18時―明日香はこの日、朱莉の家に来ていた。今、蓮と明日香はリビングで話をしている。「はい、蓮。これは今度新しく発売される絵本よ~。まだどこにも売っていない新刊だから他の人達には絶対内緒だからね?」明日香は絵本を蓮に手渡した。「え? 本当?ま だどこにも売ってないの? それじゃ僕が一番乗りってこと?」蓮は目を見開く。「ええ。そうよ? どう? 嬉しい?」「もちろん! 嬉しい! ありがとう、明日香ちゃん!」蓮は大喜びで明日香に礼を言う。蓮の腕の捻挫は思った以上に軽く、本日包帯が取れたのだ。「蓮ちゃん。明日香さん。食事の準備が出来たのでどうぞ」そこへ朱莉がダイニングルームから顔をのぞかせると2人に声をかけてきた。「うん!」蓮が元気よくダイニングテーブルへ来ると目を丸くした。「うわあ~おいしそう!」テーブルの上には大きなプレートに乗ったハンバーグステーキが置いてある。ハンバークの上にはとろけるチーズが乗せてあり、デミグラスソースがたっぷりかかっている。付け合わせには皮付きの揚げたジャガイモ、ニンジン。ブロッコリー、コーンが添えられており、彩も美しい。極めつけは蓮のハンバーグの上にはアメリカ国旗が立てられている。「まあ……おいしそう。朱莉さん、すごいわね」明日香も朱莉が作ったハンバーグステーキを見ると目を丸くした。「い、いえ……そんな。お口に合うといいのですけど」朱莉は頬を染めた。「あのね。明日香ちゃん。お母さんはね……とっても料理が上手なんだよ!」蓮が自慢げに言う。「そう? 楽しみだわ。それじゃ早速いただきましょう」明日香の言葉に3人で手を合わせた。「「「いただきまーす」」」蓮はさっそくハンバーグをたどたどしくフォークとナイフで切ろうとする。「蓮。手伝ってあげようか?」明日香が尋ねると蓮は首を振った。「ううん! 大丈夫! これくらい……やれるよ」すると朱莉が手本を見せた。「ほら、蓮ちゃん。フォークとナイフはこうやって持つのよ?」「うん、こうやって持つんだね?」蓮は朱莉の持ち方を見て、一生懸命真似しながらハンバークステーキをカットしていく。(朱莉さん……ちゃんと蓮の教育をしているのね。そういえば蓮は絵本も読めるし……まだ4歳なのにすごいわ)明日香は知らない。蓮が何故一人でも絵本を読めるかを。それ
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2-25 琢磨からの電話 2

 その後―― 明日香と蓮が一緒にお風呂に入っている間、朱莉は食器の片づけをしていた所に突如スマホに着信が入ってきた。「誰かな?」朱莉はスマホを手に取り驚いた。「え? く、九条さん!?」慌てて朱莉はスマホをタップすると応対した。「もしもし?」『やあ、朱莉さん。久しぶりだね。今、日本だと……こんばんはになるのかな?』電話からは琢磨の声が聞こえてくる。「お久しぶりです。九条さん。あの……もしかして今、日本だと……ということは、オハイオから電話をかけているのですか?」   『そうだよ、こっちは今午前7時なんだ。実は今日電話を掛けたのは明日、ようやく日本へ帰ることになったからだよ』「え? 明日帰国されるんですか?」『ああ、そうなんだ。それで真っ先に朱莉さんに伝えておきたくてね』「そうだったんですね」その時――「ああ、いいお湯だった。朱莉さん、お風呂ありがとう。あら? 電話中だったの?」蓮を抱いた明日香が朱莉のいるダイニングルームへやってきた。蓮は明日香の腕の中で眠そうに目をこすっている。「あ、明日香さん。はい、九条さんから電話なんです」「え? ひょっとして琢磨からなの? ちょっと代わってちょうだい!」明日香は蓮を抱き上げ、朱莉の胸に押し付けると朱莉の手からスマホを取り上げた。「もしもし、琢磨?」『うわあ! な、なんで明日香ちゃんが電話に出るんだよ!』「あら、随分なご挨拶ね。何年ぶりだと思ってるのよ」『う~ん……4、5年ぶり……くらいか? それより何故朱莉さんの家にいるんだ?』尋ねられた明日香はチラリと蓮を見ると、既に蓮は朱莉の腕の中で眠っていた。「蓮に会いに来たに決まってるでしょう?」『え……ええ!? 蓮に……?』「ええ、そうよ。私はあの子の母親なんだから当然でしょう?」それを聞いた朱莉は一瞬俯き……蓮を抱いたまま寝室へと移動した。その先の話の続きを聞くのが怖かったからだ。 朱莉は寝室のベッドに蓮を寝かせると、そっと蓮の髪を撫でながら思った。(明日香さん……わざわざ長野から東京に来るなんて。やっぱり蓮ちゃんを引き取るために? 翔先輩もいないのに……だけど……)朱莉は布団をギュッと握りしめながら思った。(私には蓮ちゃんを連れて行かないでって言える資格は……何も無い……)そして暫くの間、蓮の寝顔を見つめていると
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2-26 琢磨の帰国と嵐の予感 1

 翌朝7時――「おかあさん。それじゃ行ってきます」リュックサックを背負い、明日香に手を繋がれた蓮は満面の笑みを浮かべている。「はい、行ってらっしゃい。蓮ちゃん」帽子を被った蓮の頭を愛おし気に撫でる朱莉。「朱莉さん。それじゃ明日の夜帰って来るわ。食事も済ませてくるから気にしないでね」明日香の言葉に蓮は顔を上げた。「ねえねえ。明日はどこでご飯食べるの?」「そうねえ……電車の中で調べましょう?」明日香は蓮の手をギュッと握りしめた。「うん!」蓮と明日香は笑顔で笑いあっている。それを見ている朱莉の胸はズキリと痛んだ。まるで2人と自分の間には目に見えない仕切りがあるように感じられた。そう、それは決して他人である朱莉が踏み入ることが出来ない仕切りが……。「それじゃ、電車の時間に間に合わなくなるといけないから、私たちはもう行くわね」「行ってきます。お母さん」「はい、行ってらっしゃい。 蓮ちゃん、明日香さん」蓮は明日香に手を繋がれ笑顔で朱莉に手を振ると、2人は玄関から出て行った。ドアがバタンと閉じられると、途端にシンとした静けさに部屋が包まれる。「ふう……」朱莉は寂し気に溜息をつくと、蓮が脱ぎ捨てて行ったパジャマを拾うとギュッと抱きしめた。「蓮ちゃん……」朱莉は小さく呟いた――**** その頃――朝食後、コーヒーを飲みながら経済新聞を読んでいた修也のスマホが鳴った。「え……? 誰からだろう?」修也はスマホを見て驚いた。それは二階堂からだった。慌てて修也は電話に出た。「はい、もしもし」『ああ、おはよう。各務君』「おはようございます。二階堂社長。いったいどうしたんですか? 土曜の朝に……」『アハハハ……すまん。こんな朝早くに電話して悪かったな。いや、実は今日九条が帰国してくるんだよ』「え? 九条さんが?」『ああ、それで今夜帰国祝いを兼ねて六本木の店を予約したんだ。各務君、今夜都合が良ければ、出てこないかい? 九条のことは披露宴で会ってるから知ってるんだろう?』「ええ、知ってますよ」(披露宴どころか……中学時代から知ってるんだけどね……)修也は会話をしながら心の中で思った。『食事会には静香も顔出すからよろしくな』「え……? お子さんは大丈夫なんですか?」『ああ、大丈夫だ。今夜は姫宮家のお母さんが子供を預かってくれるこ
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