Semua Bab 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした: Bab 621 - Bab 630

641 Bab

2-27 琢磨の帰国と嵐の予感 2

15時――「ふう……やっと日本に帰ってこれた」羽田空港に降り立ったのは琢磨だった。そしてロビーを見渡して真っ先に思ったのは朱莉のことだった。(そう言えば…4年前、一度日本に帰国した時、朱莉さんが蓮を連れて出迎えてくれたんだっけ…)あの時はせっかく数年ぶりの再会だったのに、二次会で酔いつぶれた琢磨は見覚えのない内に見知らぬ女性にお持ち帰りされてしまい、目が覚めたらベッドの中だったと言う思いがけないアクシデント? に見舞われ、早々に帰国することになってしまった。あの後……琢磨は1年間禁酒するほど、激しく後悔したのは言うまでも無い。(もうあんなへまは二度としない。それに……ついに今年で翔との契約婚は終了するんだ。だから……今度こそ自分の思いを朱莉さんに告げる……!)琢磨はグッと荷物を持つ手に力を込めると、出口へ向かって歩き出した――**** 同時刻―― 1人で昼食を終えた朱莉はミシンで蓮の新しい手提げバックを作っていた。最近の朱莉はすっかりミシンでのモノづくりにはまってしまい、気付けばかなりの量の手作り品が増えていた。「フフフ……。我ながらなかなか上手に出来た」朱莉は満足気に呟いた時、スマホに着信を知らせるメロディが鳴った。「あ……各務さん」朱莉の顔に笑みが浮かんだ。朱莉は各務の優しい話し方が好きだった。聞いていると心が穏やかになってくる。ここ2週間一度も連絡を取り合っていなかったので、朱莉はウキウキした気持ちで電話に応対した。「はい、もしもし」『こんにちは。朱莉さん』電話越しから穏やかな修也の声が聞こえてくる。「こんにちは、お久しぶりです」『うん、久しぶりだね。蓮君は元気にしてる?』「はい、元気にしています。ただ……今日も出かけていないんですけど。明日の夜、帰ってきます」『ええ? 出かけてるって……一体どこへ?』「明日香さんと茨木の大きな水族館へ行ったんです。『え……? 茨木の水族館って……まさかアクアワールドのこと?』「ご存じだったのですか?」『うん、知ってるよ。あそこの水族館はとても大きいからね。そうか……蓮君出かけていないのか……』寂し気にポツリと言う声が聞こえてきた。「各務さんも……寂しいんですね」『え……?』「私……私も……蓮君がいなくてすごく……寂しいです……」朱莉はいつの間にか修也に本音を漏らして
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2-28 人生最大の受難の日 1

「おい……静香。その話、もう少し詳しく話してくれないか?」 二階堂はチラリと琢磨を見ると、青ざめた顔で椅子に寄り掛かり、まるで魂が抜けしまったかのように固まっている。そしてそんな様子の琢磨を修也は心配そうに見守っていた。「ええ、いいわよ。その同級生は看護師をしていて今大学病院で働いているわ。4年前の私たちの結婚式の時にその友人含めて3人を2次会に誘ったのよ。そして男性が2人でお酒を飲んでいて、1人酔いつぶれてしまったそうなの。そしてその男性を残して……そうそう、貴方がテーブルに顔を出したそうよ」静香は二階堂を見る。「あ~そう言えばそうだったな……。九条は酔いつぶれていて俺が鳴海をテーブルに誘ったんだよな……。九条、お前を残して……って……」徐々に4人の顔に暗い表情が宿ってくる。「ま、まさか……」静香は声を震わせて琢磨を見た。「おいおい……マジかよ……」二階堂は額を押さえてため息をつく。「九条さん……」修也は心配そうな顔で琢磨を見た。一方の琢磨は――「ハハハハ……う、嘘だろう……?」乾いた笑い声でワイングラスを持ったまま小刻みに震ている。その時、日本に帰国する時に翔が言った言葉が頭をよぎった。『相手が結婚を申し出てきたら受け入れ……認知を希望した場合も……受け入れるしか無いだろう?』「嘘だ~っ!!」琢磨は頭を抱えて天井を見上げて叫んだ。「キャアッ! お、落ち着いて! 九条さん!」静香が悲鳴をあげる。「おい! 九条! しっかりしろ!」二階堂は琢磨の肩を揺さぶる。「そ、そうだ! 九条さん! 水、お水を飲んで落ち着きましょう!」修也が水差しから水をコップに入れると差し出す。4人がいた個室はこうして一時パニック状態へと陥った――5分後――荒い息を吐きながら琢磨は椅子に座って、俯いていた。「大丈夫ですか? 九条さん」静香が心配そうに琢磨に声をかける。「おい……どうだ、少しは落ち着いたか?」二階堂が琢磨の肩に手を置いた。「……」そして琢磨の様子を静かに見守る修也。「そ、それで……静香さん。その女性は……?」琢磨は顔をあげて、うつろな目で静香を見つめる。「え、ええ。彼女の名前は斉藤美和といって……六本木の大学病院の病棟で勤務している看護師なの。子供は女の子って言ってたわ。それで……」静香は言いにくそうに琢磨を見
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2-29 人生最大の受難の日 2

「それで……その美和って友人の話の続きなんだけど、翌朝目が覚めたら男性の姿は消えていたそうよ。……テーブルに2万円残して」静香は眉を顰めた。「はあ? 2万円? おいおい……もしかしてその男、2万円支払って女を買ったつもりだったのか? しかし……どこの誰だか知らないが最低な男だな。逃げるなんて……どうした? 九条。さっきよりも顔色が悪いぞ?」二階堂は琢磨の顔を覗き込んだ。「本当だ。大丈夫ですか? 九条さん」修也も心配になって声をかける。「……」しかし、琢磨は凍り付いたまま動くことが出来ない。「九条さん、本当に大丈夫ですか? え? ……ま、まさか……」そこで静香は何かに気付いたかのようにハッとなった。そして二階堂も気づいた。「お、おい……まさか……だよな……?」                                                 二階堂は声を震わせながら琢磨を見る。「は……はい……」琢磨は今にも消え入りそうな声で俯きながら返事をした。「九条さん……。その女性にお金を……?」修也は静かに尋ねると、琢磨は無言で頷く。「おいおい……勘弁してくれよ!」ついにたまらず二階堂は頭を押さえて、宙を仰いだ。「お金……渡してきちゃたんですか!? 九条さん! 一体どういうつもりなんですか!?」静香は琢磨に興奮気味に尋ねた。「か、勘違いしないで下さい!!」とうとう琢磨は声を荒げた。「い、いいですか? 俺が目を覚ました時……全く見知らぬ女性が隣に寝ていたんですよ!? こっちは少しも記憶が無いのに……。だ、大体2次会の会場の途中で記憶が途絶えていたんですから! そ、それで……気づいたらベッドの上で……もうこっちはパニックですよ! だから逃げてきたんです! でも……それだとあまりにも……相手の女性に失礼かと思って、とりあえずホテル代と言うことで2万円置いてきたんです!」最後は自棄になって叫ぶ琢磨。「「「……」」」3人の視線が一斉に琢磨に集中する。「これは……もう、アレだな……」二階堂は腕組みをした。「ええ、そうね……。間違いないわね……」静香は膝を組む。「九条さん……」修也の眼には同情が宿っている。「静香……その友達とは連絡取れるのか?」二階堂は尋ねた。「ええ、取れるわ。とりあえずメールを……」「
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2-30 斉藤美和  1

土曜日の10時――「今日は気合を入れていかないと……」斉藤美和、33歳。六本木にある総合病院の看護師。わけありで只今2歳の娘と2人暮らし中――「絶対になめられないようにしなくちゃ」美和は念入りに化粧をし、ブラウスに紺色のワイドパンツ、そして水色のジャケットといういで立ちで姿見の前に立った。その様子を3歳の娘が見ている。「ママーすてき」それを聞いた美和はにっこり笑うと娘の頭を撫でる。「どうもありがとう、ひまりちゃん。それじゃ保育園に行きましょうか?」美和はひまりを抱き上げると、荷物を持ち、靴を履いて2LDKのマンションを後にした――****「よし……! 負けないんだからね!」ひまりを保育園に預けた美和は一つ星ホテルの前に立っていた。今日はここのカフェで久しぶりに友人達と会うことになっている。「皆、一流の女達ばかりだけど……私だって……!」肩から下げたショルダーバックをギュッと握りしめると、美和はカツカツとヒールを鳴らしてホテルの中へ入って行った――「こっちこっち! 遅いわよ~美和!」広々とした店内には『カノン』の音楽が静かに流れている。カフェの窓際の近くに置かれた大きな丸テーブルに3人の友人達は座っていた。彼女たちは高校時代からの友人で全員セレブである。そして美和を呼んだのは新宿のタワマンに夫と2人で暮らしている結衣だった。「ごめんごめん。遅くなっちゃってさ~」美和は髪を撫でつけながら3人の友人たちの元へと歩み寄って行く。「久しぶりね、結婚式では二次会に来てくれてありがとう」笑みを浮かべて美和に話しかけてきたのは二階堂静香。(静香……。あの超大手『ラージウェアハウス』の二階堂社長の妻……そして1歳の娘を持つ母であり、有能な秘書……住まいは南青山の高級マンション……)ざっと頭の中で静香の個人データを思い返し、グッと降ろした両手を握りしめる。静香は今日集まった友人たちの中で、一番美和がライバル視(一方的に)している友人である。「いいのよ、でもあの時は本当に素晴らしい式だったわ~。二次会の会場も素敵なお店だったしね」美和は椅子を引いて腰かけた。「あら、美和……その時計って、ひょっとしてショパール?」友人の1人、小百合が物珍しそうに尋ねてきた。彼女は自由が丘に住み、弁護士の夫を持っている。「そうよ、よくわかったわね。
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2-31 斉藤美和 2

「……美和、行ったわね」小百合が笑みを浮かべる。「疲れがたまっていたんじゃないの? 何せ看護師で夜勤も務めているからね」結衣はコーヒーを口にした。「え? 看護師……? 美和って看護師の仕事まだ続けていたの? 確か自営業の男性と結婚して仕事は辞めたって聞いたけど?」静香は首を傾げた。「あ~。あんなのは嘘。でたらめよ。美和ったら……昔から静香には異常なライバル心を持っていたからね。」小百合はケーキを食べながら、静香に視線を向ける。「そうよ~だって、3歳の娘を育てているんですものね~。未婚の母として。看護師の仕事をしながら娘と暮らしてるらしいから」含み笑いをする結衣。「え……ええ!? み……未婚の母!? そうだったの? そ、それで……相手は誰なの?」静香は驚いて2人に尋ねた。「そうそう、それがね。どうも話によると……静香、貴女の結婚式の2次会でナンパした男らしいわよ?」小百合は小声になる。「え……ええ? ナンパ?」「そうよ、何でも2人で飲んでいた男性がいたけど、1人酔いつぶれてテーブルで眠ってしまっていた男性がいたんですって。そのうちに……静香、貴女の夫がやってきて飲んでいた相手の男性を連れて席を立ったらしいの。それで酔いつぶれて残された男性を美和が介抱してあげようと近づいたんですって。相手の男性は完全に泥酔していたから、仕方なく自分の宿泊しているホテルに連れて行ってあげて、ベッドに寝かせてあげたら……」ますます小百合は小声になる。「あ……あげたら……?」静香は真剣な顔で聞く。「突然、相手の男性が目を覚まして……それでことを成したってわけ」「え……?」小百合の話に静香は絶句した。そして小百合の話はまだ続く。「どうもその男性は美和のことを別の女性と勘違いしていたみたいで、行為の間はずっとその女性の名を呼んでいたらしいのよ。それで翌朝目が覚めたら男性は消えていたんですって!」興奮気味に言う小百合の話に、静香はもはや完全に引いてしまっていた。すると結衣が口を挟んできた。「ねえねえ。それじゃ……朝起きたらテーブルの上に2万円置いてあったって話は聞いてる?」「「2万円?」」小百合と静香が声を揃える。「これは別の友達に聞いた話なんだけど……美和、すっごく怒りながらその話をしていたんですって。『私は商売女でもないし、2万円なんて
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2-32 斉藤美和 3

16時―― 病院の勤務時間が終わり、ロッカーで着がえを終えた時に美和のスマホに突然着信が入ってきた。「誰かしら?」美和はスマホをタップして、手を止めた。「え……? 静香? 一体何かしら?」半月ほど前、4年ぶりに再会したが自分が不在の時に友人たちから話のネタにされていた事実を知り、バツが悪くなった美和はそのまま逃げるようにホテルを後にしてしまった。その為気まずい思いをしていたので、静香からのメールに美和は嫌な予感を覚えた。(とりあえず病院を出てからメールを確認しよう)美和はロッカーを閉めると急ぎ足で更衣室を後にした――「……はい、今職場を出た処なので17時には迎えに行けると思います。はい。どうぞよろしくお願いします」保育園へ迎えの連絡を入れた美和は電話を切るとため息をついた。「ふう……今日は疲れたわ……。とても食事の支度をする気力が出ないし……。今夜はスーパーでお惣菜を買って帰ろう」美和は再度スマホをタップして静香からのメッセージを表示させると読み始めた。すると徐々に美和の顔色が変わっていく。青ざめた表情……そして小刻みに震える身体。メールを最後まで読み終えた頃には心臓は早鐘を打っていた。「ど、どうしよう……」静香は頭を押さえ、4年前の出来事を思い出した――**** 今から4年前の6月――美和は静香の結婚式の2次会に参加していた。静香の結婚相手は『ラージウェアハウス』の社長で、ハイスペックの上、モデル顔負けの男性だったので、セレブ妻を狙っている美和はそんな静香が羨ましくて仕方が無かった。(あ~あ……静香が羨ましいわ……)美和は度数の強いカクテルを口にしながら不機嫌な気持ちで一緒に二次会に参加した友人たちとお酒を飲んでいた。(誰かいい男いないかしらね……)店内をぐるりと見渡して男を物色していると、美和の目に2人組の男性が目に留まった。(あの2人……ちょっといいわね…)何やら神妙な面持ちで話し合っている2人の男性。2人とも人目を惹く容貌をしている。深刻な話をしているのだろうか? その雰囲気が何となく険悪そうに見える為、周囲には彼ら以外は皆離れたテーブル席で飲んでいる。美和は適当に女友達と会話をしながら彼らに近づけないか、じっとチャンスをうかがっていた。2人共顔が整っていて美和の好みのタイプだったので、何としても手に入れたい
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2-33 斉藤美和 4

 あの当時の美和は、男と同棲していた。しかし、この男はどうしようもない人間で、美和の紐同然だった。働きもせずパチンコに明け暮れ、金銭を要求してくるような男だった。そこでついに我慢の限界に達し、男を自分のマンションから追い払ったのである。美和はいい加減その男にはうんざりしていたし、別れるには潮時だった。(そうよ……もうじき静香の結婚式の披露宴後の二次会に参加する……。きっとこの男なんかよりもずっとハイスペックの男が見つかるに決まってるんだから……!) こうして琢磨はセレブ妻を狙っていた美和に、まんまとお持ち帰りされてしまったのだが――****『全く……一体何よ……』美和はベッドの中でぼやいた。そして隣に眠る琢磨を恨めしそうに見つめる。やっとの思いでこのホテルまで連れてきたのに、ベッドに運んだ途端琢磨は完全に眠ってしまったのだ。いくら揺すぶっても、試しに頬を叩いてみても目を覚まさない。『もう……! どんだけ酔ってるのよ! 折角好みのタイプの男を見つけたっていうのに、ちっとも目が覚めないし、時折他の女の名前をつぶやいているのも気に入らないわ!」美和はいら立ちながら、琢磨を睨みつけた。そして一つの悪だくみを思いついたのだ。(そうよ……服を脱がしてしまえばいいんだわ。そして私も服を脱いで何食わぬ顔で2人で同じベッドで寝ていれば……きっと目が覚めた時、この男は驚くはず。私と寝たと勘違いするはずよ……!)そこで、美和は正体をなくして眠っている琢磨の服を脱がし、ついでに自分の服も脱ぐと裸でベッドの中へ入ったのだった――(フフフ……明日の朝が楽しみ。きっとうまくいくはずよ……)美和はうっとりした目つきで眠りについている琢磨の髪を撫でた。すると眠りながら琢磨は呟いた。『朱莉……さん……』それを聞いて美和は苛立ちを覚えた。『もう……! また、同じ名前を呟いて……! 一体誰なのよ……。もしかし恋人……?」でも構うものかと美和は思った。明日になれば目を覚ました男はさぞかし驚くだろう。そこで嘘の話をでっちあげるのだ。『大丈夫……きっとうまくいくわ……』美和は呟き、眠りについた――なのに、目が覚めた琢磨はあまりの状況にパニックを起こし、テーブルに2万円を置くと逃げ出したのだった。美和が悔しがったのは言うまでもない。『もう……何よ!』美和は持っていた
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3-1 美和の目論見 1

 翌日、日曜日10時半――六本木にあるホテルの1Fの広々としたカフェラウンジの窓際のテーブルには、神妙な面持ちの二階堂夫婦と琢磨が座っている。「「「……」」」もうかれこれ30分は美和に待たされている。「遅いな……」二階堂はオメガの腕時計をチラリと見てため息をつく。「静香、ちゃんと相手の女性に連絡は入れたんだろうな?」「ええ、もちろんよ。昨夜も入れたし、今朝も連絡をしたわ。来るって言ってたのに美和ったら一体……どうしたのかしら……」「…」一方の琢磨は青ざめた顔で椅子に座っている。先ほどからほとんど言葉を発することもない。琢磨の胸中は複雑だった。このまま現れないで欲しいという気持ちと、現れてDNA検査を受けて、美和の子供が本当に自分の子供なのか確かめておきたいという相反する気持ちで激しく揺れ動いていた。「九条、大丈夫か? さっきよりますます顔色が悪くなっているようだが……?」二階堂は心配になって琢磨に声をかけた。「は、はい」「九条さん。とにかく美和の話をしっかり聞いて話し合いましょう」「はい……」「おいおい、本当にそんなんで大丈夫かよ。落ち着くためにもう1杯コーヒーを注文しようか? どの銘柄がいい?」二階堂はメニューを広げ、本日4回目のコーヒーを注文しようとする。「いいえ……」はっきり言えば、琢磨は先ほどからコーヒーばかり飲んでお腹が一杯になっていたのだ。これ以上飲めそうに無い。「九条……お前さあ……さっきから『はい』か『いいえ』しか言ってないぞ?」溜息をつきながら二階堂はメニューをパサリとテーブルの上に落とした。そして、そんな彼らの様子を遠目からじっと見つめる美和の姿があった。「ああ……どうしよう。全員もう来ているわ……」美和は正面を向いて座っている琢磨の姿を見つめた。「うん、あの男の人……間違いない。3年前、私がホテルへ連れ帰った相手だわ。でも……ほんと、見れば見るほどいい男ね……」美和はうっとりしながら琢磨を見つめている。「それにしても……医学の進歩って本当に嫌ね」美和は看護師にあるまじき発言をする。「DNA検査なんてもの存在しなければ、子供は貴方の子ですって言いきれるのに……これじゃごまかすことも出来ないわ」プライドの高い美和は、静香に琢磨の子供ではない嘘がばれるのが嫌だった。ただでさえ実は結婚していな
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-20
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3-2 美和の目論見 2

「……初めまして。今ご紹介にあずかりました九条琢磨です」琢磨は頭を下げた。(くそ……っ! 一体これは何の罰ゲームなんだ!? 何が悲しくてこんな見合いのような真似をさせられているんだ!?)「私は二階堂明で静香の夫です。初めまして」二階堂は笑みを浮かべながら美和に挨拶をするが、それすら琢磨を苛立たせた。(先輩め……高みの見物でもするつもりでわざわざやって来たに違いない……!)「それで、早速なんだけど美和の子供のDNA検査を……」静香が言いかけると、突如美和が頭を下げてきた。「ごめんなさい!」「え……? どうしたの? 美和」静香だけでなく、琢磨も二階堂も首を傾げる。「私の産んだ子供……父親は九条さんではありません。当時交際していた……元カレとの……子供……なんです……」美和の言葉は最後の方はしりすぼみになってしまった。「え……? そ、その話は本当なのか!?」琢磨は思わず、大きな声を上げてしまった。「はい。そうです……。すみませんでした」美和は素直に謝る。「ねえ、美和。なぜ九条さんが父親みたいな言い方をしたの?」静香は美和に尋ねた。「そ、それは……当時付き合っていた男は……そ、その……無職で私の紐みたいな男だったから……。周囲にそんな男を相手にしていたと思われたくなくて……」「それで、たまたま2次会で泥酔した九条をホテルに連れ込んで、既成事実を作ろうとしたのか?」二階堂が尋ねると、美和は頷いた。「はい、そうです。だけど、ホテルへ連れて行っても貴方は一度も目を覚まさなくて……。でも裸でベッドに入っていたら、目が覚めた時に勘違いしてくれるんじゃないかと思って……」「そ、それで……眠っている俺の服を……勝手に脱がした……のか?」琢磨の質問に少しだけ美和は頬を染めて頷く。それを聞いた琢磨は開いた口が塞がらなかった。(な、なんて女だ……! これだから肉食系女は嫌なんだ!)そんな琢磨の怒りに美和は全く気付かない。「あの、九条さん。ここへ来てくれたってことは……私と子供の面倒を見てくれる覚悟があったってことですよね?」「「「え……?」」」3人は美和を見つめた。「娘は私と九条さんとの間にできた子供では無いけれど、ここで知り合ったのも何かのご縁だと思うんですよ。なので私と正式にお付き合いしていただけませんか? これも何かの運命だと
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-20
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3-3 喜びと落胆 1

 二階堂夫妻と一緒にホテルのカフェを出る琢磨の顔には笑みが浮かんでいた。3人でホテルの出口を目指して歩きながら二階堂は琢磨に声をかけた。「九条、随分と嬉しそうじゃないか」「当り前じゃないですか! だって俺は一夜の過ちを犯してなかったわけですからね。あの女性の娘の父親じゃなかったんですから……こんなに嬉しいことはないですよ」琢磨はすっかり舞い上がっていた。「しかし……あの斉藤美和とかいう女は、随分大胆な女だったなぁ。何せ酔い潰れて眠ってしまった男の服を全部脱がすなんて……普通に考えたらありえないだろう? 良かったな~九条。襲われなくて」二階堂は琢磨の背中をバンバン叩き、笑いを堪えている。「はぁ!? 何言ってるんですか! 眠って意識がない間に服を全部脱がされたんですよ!? いいですか? 俺は……あの女に裸にされてしまったんですよ!? 普通に考えればとんでもない話じゃないですか! こんなの犯罪ですよ、犯罪! 警察に訴えたっておかしくないレベルですからね!?」琢磨は顔を真っ赤に染めて興奮気味にまくしたてる。「本当にごめんなさい、九条さん。もう、これきり美和とは縁を切りますからどうか許していただけませんか?」今まで二人の会話を黙って聞いていた静香は頭を下げてきた。「い、いえ……別に静香さんは何も悪くないので、別に謝ることではありませんよ。でも……彼女とは縁を切った方が良いかもしれませんね」琢磨の言葉に静香と二階堂は頷いた――****「それじゃ、九条。俺たちはこれから子供の迎えに行くから。今日はここでお別れだな」ホテルの入り口に来たところで、二階堂は言った。「ええ、そうですね。では月曜からまたよろしくお願いします」「ああ、こき使ってやるから覚悟しておけ。それで九条。お前、今日はこれからどうするんだ?」「九条さんは朱莉さんに連絡を入れるんですよね?」静香が尋ねる。「ええ、もちろんそうです。当然じゃないですか」琢磨は隠すこともなく堂々と返事をした。「お前……随分はっきり言いきったな?」苦笑する二階堂。「いいじゃないですか! 4年ぶりの再会なんですから!」琢磨の言葉に静香が止めた。「ほら、九条さんをからかったら、駄目じゃない。明。それでは九条さん、私たちはこれで失礼しますね」「またな。九条」「はい、失礼します」琢磨も返事をす
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