15時――「ふう……やっと日本に帰ってこれた」羽田空港に降り立ったのは琢磨だった。そしてロビーを見渡して真っ先に思ったのは朱莉のことだった。(そう言えば…4年前、一度日本に帰国した時、朱莉さんが蓮を連れて出迎えてくれたんだっけ…)あの時はせっかく数年ぶりの再会だったのに、二次会で酔いつぶれた琢磨は見覚えのない内に見知らぬ女性にお持ち帰りされてしまい、目が覚めたらベッドの中だったと言う思いがけないアクシデント? に見舞われ、早々に帰国することになってしまった。あの後……琢磨は1年間禁酒するほど、激しく後悔したのは言うまでも無い。(もうあんなへまは二度としない。それに……ついに今年で翔との契約婚は終了するんだ。だから……今度こそ自分の思いを朱莉さんに告げる……!)琢磨はグッと荷物を持つ手に力を込めると、出口へ向かって歩き出した――**** 同時刻―― 1人で昼食を終えた朱莉はミシンで蓮の新しい手提げバックを作っていた。最近の朱莉はすっかりミシンでのモノづくりにはまってしまい、気付けばかなりの量の手作り品が増えていた。「フフフ……。我ながらなかなか上手に出来た」朱莉は満足気に呟いた時、スマホに着信を知らせるメロディが鳴った。「あ……各務さん」朱莉の顔に笑みが浮かんだ。朱莉は各務の優しい話し方が好きだった。聞いていると心が穏やかになってくる。ここ2週間一度も連絡を取り合っていなかったので、朱莉はウキウキした気持ちで電話に応対した。「はい、もしもし」『こんにちは。朱莉さん』電話越しから穏やかな修也の声が聞こえてくる。「こんにちは、お久しぶりです」『うん、久しぶりだね。蓮君は元気にしてる?』「はい、元気にしています。ただ……今日も出かけていないんですけど。明日の夜、帰ってきます」『ええ? 出かけてるって……一体どこへ?』「明日香さんと茨木の大きな水族館へ行ったんです。『え……? 茨木の水族館って……まさかアクアワールドのこと?』「ご存じだったのですか?」『うん、知ってるよ。あそこの水族館はとても大きいからね。そうか……蓮君出かけていないのか……』寂し気にポツリと言う声が聞こえてきた。「各務さんも……寂しいんですね」『え……?』「私……私も……蓮君がいなくてすごく……寂しいです……」朱莉はいつの間にか修也に本音を漏らして
Terakhir Diperbarui : 2025-06-19 Baca selengkapnya