Semua Bab 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした: Bab 631 - Bab 640

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3-4 喜びと落胆 2

 その頃、朱莉は修也と一緒に家具屋に来ていた。ここに来た目的は、蓮の本棚を買う為でった。明日香が隣の翔の部屋に借り暮らしをするようになってからは連日のように新しい絵本を蓮の為に持ってくるようになり、本棚がいっぱいになってしまったからである。「各務さん、申し訳ございません。折角のお休みの日なのに買い物に付き合っていただいて」朱莉は申し訳なさそうに謝った。「いいんですよ。そんなこと気にしないで下さい。僕の車は大きいので蓮君の本棚を買って持ち帰れますからね」修也が昨日朱莉に電話を入れた時に蓮の本棚の話になり、大きい本棚を買いたいと言う話を聞かされた。そこで買いに来る約束を交わしていたのだ。この家具屋は外国製の家具を扱っており、それぞれテーマ別ごとに売っている。朱莉と修也は今子供部屋コーナを見に来ていた。「あ、朱莉さん。この本棚どうですか?」修也がある一つの本棚の前で足を止めた。朱莉もその本棚を見て笑顔になった。「まあ……すごく素敵な本棚ですね。まるで図書館の絵本コーナーの展示用の本棚みたいです」修也が指示した本棚は木製の本棚ラックで、上段と下段に分かれている。上段はディスプレイとして見せられるように表紙を上にして収納でき、下段は縦置きですっきり収納できるデザインとなっている。本棚も低く作られているので小さな子供でも無理なく収納できる可愛らしいデザインだった。「へえ~この家具、北欧製ですよ。どうりでデザインが素敵なはずだ」修也は商品説明プラカードを見て納得している。「各務さん、私、この本棚が気に入りました。これにしたいと思います」「いいですね。どうやらこの本棚は組み立て式になっていますよ。それじゃ早速買いましょう。組み立てなら僕がやるので任せて下さい」修也は笑顔で言うと、商品番号を調べて梱包された商品を大型カートに詰め込み、2人でレジへと向かった。並んで歩きながら朱莉は尋ねる。「でもよろしいんですか? 本棚の組み立てなんて。そこまでお願いしても……」「ええ、いいんですよ。どうせ僕は暇な人間なので。それに朱莉さんは午後からお母さんの面会ですよね?」「はい、先週は母の面会に行くことが出来なかったので」「そう言えば、蓮君アスレチックから落ちて左腕を怪我したんですよね? もう治ったんですか?」「ええ、思った以上に怪我の具合が軽かったんです。
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3-5 久しぶりの再会 1

「各務さん、すみません。お待たせいたしました」朱莉がレジに向かうと、修也は大きなカートを持ってレジの近くに待機していた。「電話終わったの?」「はい、九条さんからだったんです。でも今各務さんと幕張の家具屋さんに来ていると言ったらすぐに切れてしまったんですよ」それを聞いた修也が驚いた。「え!? 電話の相手って……九条さん?」「はい。そうですけど?」すると修也が考え込み、ポツリと呟く。「そうか……まずかったな……」「え? 何がまずかったんですか?」「あ、いや。何でもないよ。こっちのことだから朱莉さんは何も気にしないで。それじゃ会計しましょうか?」「はい、そうですね」朱莉は頷いた――**** その頃、琢磨は二階堂が探してくれた新しいマンションに帰ってきていた。気を利かせたつもりかどうかは分からないが、場所は六本木だった。初めて二階堂から新居のマンションの場所が六本木と聞かされた時、朱莉の自宅が近いので琢磨は浮かれていた。二階堂から「頑張れよ」と言われたこともあり、これからは頻繁に朱莉に会えるだろうと思っていた矢先に、帰国してみれば朱莉の傍に各務がいたのだ。「折角翔がカルフォルニアに行って不在だからチャンスだと思っていたのに……。全く……俺は一体何やってるんだ?」1LDKのまだ家具が何も揃っていない広々とした部屋にごろりと寝転がり、琢磨は天井を見上げた。「家具なら…俺だって買いに行く用事があったのに……。いや、むしろ俺の方が家具屋についていくのに適任だったはずだ。それにしても……各務さんもひょっとして朱莉さんのことを……?」そう思うといてもたってもいられなかった。琢磨の中ではもう確信に近いものがあった。恐らく朱莉の初恋の相手は修也なのだろうと。(朱莉さんが各務さんの正体を知れば、ますます俺が不利になるのは確実だ。折角隠し子疑惑から解放されたのに、よりにもよって今度は朱莉さんの初恋相手が現れるとは……)「はあ~」深いため息をついて、ゴロリと一回寝返りを打って琢磨は起き上がった。「そうだ……航に連絡を入れてみるか。多分アドレス変わっていないだろう」そして琢磨はスマホをタップした――**** 朱莉と修也は家具を買って朱莉の住むマンションへと戻ってきた。修也は本棚を組み立てており、朱莉は2人のお昼を作っていた。「各務さん。お食
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3-6 久しぶりの再会 2

 14時――朱莉は修也を玄関先まで見送りに出ていた。「各務さん。今日はお休みのところ色々ありがとうございました」「いいんですよ、どうせ暇だったんで。それより蓮君のあの本棚を見た時の反応が今から楽しみだな」修也は笑顔で朱莉を見る。「はい、そうだ、蓮ちゃんの素敵な表情カメラで撮ったら送りますね」「本当? それは嬉しいな。それじゃ、僕は帰りますね。お母さんによろしく伝えてください」「はい、伝えておきますね」修也は玄関を開けた。「それでは失礼します」「はいお気をつけて」そして玄関は閉じられた。修也が帰ると、たちまち部屋の中は静かになる。「ふう…」…朱莉は溜息をつくと、後片付けを始めた――**** 17時――「ほんと、いきなりの呼び出しだったから驚いたぜ」上野にある焼き鳥居酒屋でお座敷席に向かい合って座るのは航と琢磨である。「まあ、いいじゃないか。こっちは帰国早々トラブルに見舞われて大変だったから、少しくらいは愚痴を言わせてくれよ。ほら、おごってやるから好きなもの頼め」Tシャツにジーンズ姿の琢磨は航にメニューを差し出した。「それにしても……琢磨は変わったよな?」メニュー表を受け取りながら航は琢磨を見た。「変わった? どこがだ?」「服装だよ。以前ならTシャツにジーンズなんて姿見せたことなかったからな」かくいう航もTシャツにジーンズ姿である。「それはな……何年もアメリカに住んでると周りに感化されるんだよ」「へえ~やっぱりアメリカじゃ大体そんなスタイルなのか?」航はメニュー表を眺めながら適当に相槌を打つ。「ああ、そうだ。大体年老いた男性だってだなあ……」琢磨の話の途中で航は手をあげて店員を呼んだ。「すみませーん。注文いいですか?」「お待たせいたしました、ご注文は何でしょうか?」すぐに大学生くらいの若い男性店員がハンディターミナルを持って現れた。「えっと……生ビールジョッキ2つと、枝豆、焼き鳥盛り合わせ2皿と、手羽につくね……軟骨唐揚げに山芋焼きとお新香お願いします」「はい、かしこまりました!」店員が去ると琢磨は顔をしかめた。「おいおい……。お前、そんなにたくさん頼んで食べれるのかよ?」「ああ、別に問題ないね。大体俺の仕事はある意味肉体労働に近いからな。最低でもこれくらい食っておかないと体力が持たないんだ」
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3-7 航と琢磨の恋ばな 1

「航、今の話は何だ? あ……そう言えば、お前確か彼女が出来たんだよな? まだ続いているのか?」琢磨はお新香に手を伸ばしながら尋ねた。「いや……別れたよ」ビールを飲む航。「ふ~ん。だいぶ前に別れたのか?」「いや、本当につい最近なんだ……。美由紀と別れたのは」「美由紀って名前だったのか。でもつい最近ってそれまではずっと同じ女性と付き合っていたってことだろう。まあ長く付き合っていればいろいろあるよな」「俺が悪かったんだ……」航はグラスを握りしめた。「航? どうした?」「朱莉に……再会してしまったから……」航の言葉に琢磨は眼を見開いた。「な、何? 朱莉さんか!? お前もまだ朱莉さんのことが好きだったのか!?」「何だよ! お前までって……まさか琢磨も朱莉のこと忘れていなかったのかよ!?」「ああ、そうだ。俺はなあ……オハイオにいた間も朱莉さんを忘れたことはなかったぞ?」何故か勝ち誇ったかのような言い方をする琢磨。「う……うるさい! 俺だって朱莉と再会するまで気づかなったんだ! こんなにも朱莉のことが好きだったなんて!」ダンッ!航は乱暴にグラスを置いた。「「……」」2人は暫く無言でにらみ合っていたが、やがて琢磨は肩をすくめた。「……やめよう。酒がまずくなる。折角久しぶりに再会したっていうのに」「そうだな」航は溜息をついた。「それで? どこで朱莉さんと再会したんだ?」「美由紀と……2人で映画館へ行った帰りに……偶然……」「映画館で朱莉さんと会ったのか?」「ああ……。それで思わず強く抱きしめてしまって……」「はあ?」航の言葉に琢磨は間の抜けた声を出した。「お、おい……お前まさか彼女と映画に一緒に行ったのに……その彼女の前で朱莉さんを抱きしめたのかっ!?」「仕方ないだろう!? 気が付いてみたら身体が勝手に動いてたんだから……」最後の方はしりすぼみの声になってしまう。「はあ~……それは彼女、傷つくな……」琢磨は頭を押さえながらため息をつき、航は俯いたまま返事をしない。「それで? 結局別れたのか?」「あ、ああ……俺が別れを言う前に美由紀が気づいて、自分は捨てられるんだろうって聞かれて……俺は何も言えなかった。……そして合い鍵を返したんだ」「その彼女はお前に合い鍵まで渡していたのか? そこまでするのはよほど相手がお前
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3-8 航と琢磨の恋ばな 2

「そう言えば、朱莉さんと映画館で会ったって言ってたが……朱莉さんは1人で映画館に来ていたのか?」「いや、男と来ていたんだよ。そうだ……そのことをすっかり忘れていた!」「何? 男と来ていただって? だ、誰だ! その男は!」琢磨は興奮気味に航に問い詰める。「名前は各務修也って言ってたな。鳴海翔によく似ていた。いとこだって言ってたな……」「各務……修也……。やっぱり……」琢磨は茫然とその名を呟いた。「え? 琢磨、お前……ひょっとして各務修也って知ってるのか?」「ああ、知ってるも何も……今の鳴海グループの副社長を務めているんだよ。翔の代理でな。それに……今日朱莉さんに電話を入れたら、各務修也と一緒に家具を買いに幕張まで行ってたんだ……」その話を聞き、航の顔は青ざめるのだった――**** 20時―― 朱莉はソワソワしながらダイニングテーブルの椅子に座り、蓮が帰宅するのを今か今かと待っていた。明日香からの連絡では19時半には帰ると言われていのに、すでに時刻は20時になろとしている。「蓮ちゃんに明日香さん……大丈夫かな? ひょっとして何かあったんじゃ……?」朱莉は落ち着かず、時計ばかりを気にしていた。その時――――ピンポーンインターホンが部屋に流れた。「蓮ちゃん!?ガタンと音を立てて椅子から立ち上ると、朱莉は急いで玄関へと向かい、ガチャリとドアを開けた。「お母さん、ただいま!」すると足元には元気な蓮の姿がそこにあった。「お帰りさない、蓮ちゃん!」朱莉は思わず蓮を強く抱きしめると、明日香から声がかけられた。「ごめんなさいね。朱莉さん。遅くなっちゃって」明日香が謝ると蓮が小さな紙のバックを朱莉に差し出してきた。「お母さん、はい、お土産」「まあ……私に? 何かしら?」朱莉は紙バックを受け取ると蓮を見た。「あのね、チョコレートなの!」蓮が嬉しそうに言う。「え? チョコレート?」朱莉は紙バックを広げてみると、そこには可愛らしい魚の絵が描かれた丸い缶が入っていた。「お母さん。チョコ好きでしょ? だからお土産を買ってきたの。食べて?」蓮はにこにこしながら朱莉を見た。そんな蓮を見て朱莉の胸が熱くなる。「ありがとう、蓮ちゃん」朱莉は笑顔で蓮の頭を撫で、明日香に尋ねた。「明日香さん、お食事は済んだのですか?」「ええ、大丈夫。
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3-9 それぞれに迫りくる泥沼 1

 翌朝7時――明日香が朱莉のマンションの部屋の前に立っていた。「それじゃあ、私長野へ帰るわね」「明日香ちゃん……本当に長野へ帰っちゃうの……?」蓮が寂し気に明日香を見上げながら尋ねる。「大丈夫、またすぐにこっちへ戻ってくるから。長野のお家を片付けたら今度はずっとお隣さんよ」明日香はニコニコしながら蓮の頭を撫でる。仲良さげな2人の様子を朱莉は寂し気に見つめていたが、顔をあげて明日香を見つめた。「明日香さん。お気をつけて行ってらして下さい」「ええ、それじゃ2人とも、またね。来週にはまたこっちへ戻ってくるから」明日香は手を振ると部屋から出て行った。――バタンマンションのドアが閉じられても、蓮はじっとドアを見つめていた。「蓮ちゃん? どうしたの? 朝ごはん食べないの?」朱莉は蓮に声をかけ、ハッとなった。蓮の目に薄っすら涙が浮かんでいたからだ。「蓮ちゃん……」すると蓮は両目をゴシゴシこすり、朱莉を見上げて笑った。「お母さん、ごはん食べる!」それはまるで泣いてる顔を見た朱莉を心配させまいとしているようだった。「お母さん、今日の朝ごはん何かな?」「え、えっと……三角おにぎりとタコさんウィンナーに卵焼きと具沢山のお味噌汁よ」「うわーい、おいしそう。早く食べよっと!」蓮は駆け足でダイニングキッチンへ向かう姿を朱莉は寂し気に見つめる。(蓮ちゃん……あんなに明日香さんを慕っているんだ……私はそろそろ用済みってことなのかな……)朱莉は暗い考えに囚われるのだった――**** 蓮を幼稚園に送り出た後、朱莉は家事を済ませると明日香から返してもらったマンションの部屋の鍵を持って翔の部屋へと行った。換気の為に部屋の窓を開け、明日香が今まで使っていたシーツカバーと布団カバーを洗濯機に入れて、バルコニーに布団を干した。その後部屋の掃除を行い、洗濯を干し終えた頃にはすでにお昼近くになっていた。「ふう……さっぱりした。明日香さんは来週からずっとここで暮らすわけだから綺麗に片付けておかなくちゃね」そして朱莉は戸締りをするとマンションへ戻り、昼食の準備を始めた――****14時――二階堂と琢磨は社員食堂の窓際席で2人で向かい合って遅めの昼食を取っていた。食堂の中は昼休みの時間を過ぎているので、社員の姿は誰もいない。二人きりである。「どうだ、九条。
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3-10 それぞれに迫りくる泥沼 2

「二階堂社長、その話……本当ですか?」「ああ。あくまで噂だが、何でも会長は体調不良気味で休養を望んでいるらしい。次期会長には現社長がなるが、次の社長をそろそろ決めるらしい。今までは鳴海翔が社長になると誰もが思っていたが……もう、そうも言ってられなくなってきたようだな」二階堂は食事を終え、口元をナフキンで拭いた。「今の新しい社長候補は鳴海翔と……」二階堂の言葉の後に琢磨は続けた。「各務……修也……ですか?」「そうだ。今頃は鳴海グループは大変な騒ぎになっているかもしれないな?」二階堂はにやりと笑った。「と言うことは……ひょっとすると翔が帰国してくるのも……そろそろなのかもしれない……」琢磨は得体のしれない胸騒ぎを覚えるのだった――**** 同じ頃、航は父に事務所に呼び出されていた。弘樹は神妙な面持ちでデスクの前に座っている。長椅子に座った航は尋ねた。「何だよ、俺に話って。もしかして依頼人が何か文句でも言ってきたのか? だけど俺は金曜日の張り込みは問題なくやってるからな?」「いや……その話じゃない。別件だ」「別件……何だよ?」「実は…昨日、美由紀さんから連絡が入ってきたんだよ」「え……? 一体どんな要件だったんだよ!?」「DV相談だ」「は?」「美由紀さんは……今DV被害で苦しんでいる」弘樹の言葉に航は耳を疑った。「……何だよ! そのDV被害って言うのは? 誰からだ?」航は興奮気味に尋ねた。「いや……相手は美由紀さんの恋人だ」「え?」耳を疑う航。「DV相手は……美由紀さんの新しい恋人だ」淡々と語る弘樹を前に航は信じられない気持ちだった。「う、嘘だろう? 美由紀に新しい恋人が出来ていて……その男からDVを受けているっていうのか?」「ああ。俺もその相談を聞かされた時は正直驚いた。しかもよくよく話を聞いてみると……この事務所を訪れたすぐ後に付き合うことにしたらしい」「は? 何だよ、その話は……」「おそらく美由紀さんは新しい恋人ができたから朱莉さんの調査依頼を取り下げてきたのだろうな……。ところが今度は新たにその男からのDVで苦しんで連絡を入れてきたんだよ」「……っ」琢磨は唇をギュッと嚙み締めた。「最初は警察に相談したらしいんだが……相手は暴力ではなく精神的暴力で美由紀さんを追い詰めているようで、あまり相手にし
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3-11 怯える美由紀 1

 7時――出勤準備をしていた美由紀のスマホに電話の着信音が流れてきた。「!」その音に美由紀の肩がびくりと跳ね上がった。震えながら恐る恐るベッド前に置かれたローテーブルの上に乗っているスマホに手を伸ばし、着信相手を見た途端、絶望の色が顔にうかぶ。(ど、どうしよう……。また電話かかってきちゃった……。で、でも出ないと後が怖いし……)相手は美由紀の新しい恋人になった遠藤達也からだった。美由紀は震える手でスマホをタップすると電話に出た。「も、もしもし……」すると――『遅い!!』電話越しからいきなり遠藤の怒鳴り声が響き渡る。「キャア! ご、ごめんなさい!!」大きな声で叫ばれたので、美由紀の耳がジンジンした。『何でもっと早く電話に出ないんだ!? 3コール以内にいつも電話に出ろって言ってあるよな!?』「ご、ごめんなさい……。あ、朝は忙しくて。そ、そんなにすぐに電話に出ることが出来なくて……」美由紀は恐怖を押さえながらも何とか話す。『言い訳なんかするんじゃねえ!! お前にはそんな資格は無いんだよ! 黙って俺の言う事だけ聞いてろや!! この馬鹿女!!』「は、はい……ご、ごめんなさい……」美由紀は受話器を離しながら、半分涙声で謝罪する。『チッ!!』遠藤の大きな舌打が聞こえてくる。『美由紀、今日俺は早番だからな。18時にお前が勤務してる会社の前で待ってるからよ、1分1秒でも遅れたら承知しないからな!!』「そ、そんな無理言わないで……。18時に終われる保証なんて……」『うるせえな! 仕事が終わらなさそうなら仮病でも何でも使え! お前は俺に言われた通り、18時前に仕事を終わらせて会社を出てくればいいんだよ!!』「は、はい……。わ、分かりました……」美由紀は震えながらも返事をすると、電話はブツリと切れてしまった。「う、ううう……」美由紀は両肩を抱えて震えながら嗚咽した。(もういやだ……! こんな怖い思いをするくらいなら……彼氏なんていらない! ずっと1人でいた方がましだよ……!)そして美由紀はベッドに顔を埋めると、身体を震わせながら泣いた――**** 17時半――美由紀は自分のデスクのPCを前に視線をキョロキョロさせていた。一応勤務時間は17時半までと規定されているが、今日は『ラージウェアハウス』のセールの最終日で、トラブル対応の
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3-12 怯える美由紀 2

 だが実際に美由紀の顔色は非常に悪く、女性社員はすぐに頷いた。「そうした方が良さそうだわ。今日はもうあがっていいわよ。主任はら……あら、いないわね? いいわ。後で私から話をしておくから」「すみません……ありがとうございます」美由紀は頭を下げると、てきぱきと帰り支度をはじめ……一瞬先ほどの女性先輩と目があってしまった。(い、いけない! 具合が悪い人間がこんなに素早く動いていたら……怪しまれる!)そこで今度はわざとゆっくり帰り支度を始めた。PCの電源を落とす頃には17時50分を指していた。(どうしよう……大変! 後10分で達也さんが……!!)美由紀はガタガタ震えながら、隣の女性社員に声をかけた。「あ、あの……それではお先に失礼します……」「え、ええ。お大事にね」女性は心配そうな表情で挨拶を返してくれた。美由紀はお辞儀をし、バックを抱えるように持ち、そろりそろりと部屋を出た途端……勢いよく廊下を走り出した。(早く……早く急がなくちゃ!! 達也さんに怒鳴られる!!)美由紀の部署のフロアは7Fにある。エレベーターホールに行ってみると、運の悪いことに3基あるうちの2台が点検中だった。稼働しているのは1基のみで8階に上って行っている。(そんな……! このエレベーターを待っていたら……間違いなく18時過ぎちゃうよ!!)美由紀は再び泣きたくなってきた。でもここで泣いても何も始まらない。美由紀は身を翻すと、階段へと向かった。「ハアッハアッ!」息を切らせながら階段を駆け下り、残りあと1階分迄下りてきた時。「キャアアッ!!」あまりにも気が急いて焦っていた為に美由紀は残り3段目の階段部分で足を踏み外してしまったのだ。ドサッ!!数段上の高さから落ちてしまった美由紀は一瞬何が自分の身に起きたのか理解出来なかった。ただ、気づけば自分が床の上に倒れていたのだ。慌てて起き上がろうと右手を床に着いた途端に痛みが走り、立ち上がった瞬間に左足首に酷い激痛に襲われた。「う……。いった……」美由紀は階段から落ちた衝撃で右手首と左足首を痛めてしまったのだ。「どうしよう……これじゃ……もう歩けないよ……」涙目になったその時。「誰だ? こんなところで何をしているんだ?」階段の上から声が聞こえてきた。慌てて振り向くと、そこにはスーツ姿の琢磨が立っていたのだ。「あ…
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3-13 美由紀の救世主? 1

「キャアアアッ!!」背後でものすごい悲鳴が起こり、琢磨は驚いて振り向くと、先ほどの女性が男に強く手首を握りしめられていた。(え……? あの男は誰だ?)「美由紀! 遅いじゃねえか! 人を10分も待たせやがって!!」遠藤は美由紀の腕を強く握りしめ、会社の前で怒鳴りつけている。その様子を通行人たちがじろじろと見ながら通り過ぎていく。「ごめんなさい! ごめんなさい!」それはあまりにもすごい剣幕で、見ている者たちは恐ろしくて、止めに入ることも出来ずにいた。(あれはDVだ! しかもうちの女子社員に……!)琢磨はすぐに引き返すと美由紀と遠藤のもとへと向かった。「おい! 美由紀! てめえ……この俺を10分も待たせたんだからな! 覚悟はできているんだろうなっ!? ……ん? 誰だ? てめえは?」遠藤は突然近づいてきた琢磨に気が付き不機嫌そうに睨みつけた。「何をしているんだ? 手荒な真似はよせ」怒気を含んだ声で琢磨は遠藤に言った。琢磨は女性に暴力をふるう男を一番この世の中で軽蔑していたのだった。「ああ~ん……この女は俺の彼女なんだよ。自分の所有物をどうしようが貴様には関係ないだろう?」そしてより強く美由紀の腕をねじり上げた。「い、痛いよ! 離して達也さん!」美由紀は涙交じりに訴える。「やめろ!」琢磨は遠藤に怒鳴りつけた。その時騒ぎを聞きつけてか、2名の自社ビルの警備員が足早にこちらへ向かってやってきた。「チッ!」遠藤は舌打をすると美由紀の腕を離し、足早に繁華街の方へ向かって去って行った。「大丈夫でしたか?」「お怪我はありませんでしたか?」2名の男性警備員は琢磨と美由紀に声をかけてきた。「いや……俺は大丈夫だったかが、この女性社員、階段から落ちて怪我をしてしまったようなんだ」「え……怪我を?」「どこを怪我したんですか?」2名の警備員に聞かれた美由紀は俯きながら答えた。「あ、あの……右手首と左足首を……」それを聞いた琢磨は警備員たちに声をかけた。「すまないが、こちらの女性を医務室まで連れて行ってあげてくれないか?」「ええ、分かりました」「どうぞ、つかまって下さい」警備員たちは美由紀を両脇から支えた。「……ありがとうございます……」美由紀は涙目になって2人の警備員に礼を述べ、琢磨を見た。「……社長。ご迷惑をおかけしてしま
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