All Chapters of 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル: Chapter 91 - Chapter 93

93 Chapters

第91話 まるごと奴隷

 魔法都市マナフォースには、到着から二週間ほど滞在した。 議会承認と手続きが終わるのを待っている間、俺とバルトは約束を果たすべく動いていた。 マナフォース内の難民をまとめて奴隷にする計画だ。……なんか、まるで悪人みたいな言い方になってしまったな。 それはともかく。 元首であるディアドラとマナフォース議会の許可のもと、衛兵たちの力を借りて難民を町の外に追い立てる。 逃げようとする者は強制的に捕まえた。老若男女、子供でも容赦なしだ。 ちょいと心が痛むが、難民たちはマナフォース住民に迷惑をかけ続ける存在でもある。それに何より、このままここに居座ったっていいことは何もない。手心は加えるべきじゃないだろう。 町の外に追い出した難民は、奴隷商人が片っ端から捕まえて手かせをつけていった。 数は百人以上はいるな。あちこちから悲鳴が上がっている。 胸くそ悪いがここで止めるわけにはいかない。「お前たちは許可なくパルティアから逃げ出し、マナフォースに不法入国をした。マナフォースにとっても、パルティアにとっても、お前たちは犯罪者だ。犯罪者が奴隷になったとて、文句はないよな?」 バルトが冷たい声で言う。 抗議の声は完全に黙殺されてしまった。 次は俺の番だ。「俺はユウ。今回、奴隷商人を手配してお前たちを買い付けた。俺は事情があって、人手をたくさん必要としている。だからお前たちを使う予定だ。ただし行き先が北の土地で、成功の保証はまだない。だからお前たちが選ぶといい。俺といっしょに北で開拓をするか、パルティア王国に残って奴隷として過ごすか」「北で開拓するだって? 無茶な!」 難民たちの間から声が上がる。「南の土地だって開拓村は潰れてばかりなんだ。北で開拓なんかしてみろ、全員寒さの中で飢え死にだろうが!」「そうだ、そうだ」「そんな自殺まがいのことに付き合っていられるか」 だいぶ評判が悪いな。ここで人手を確保できないと困る。 そこで俺はさらに言った。「勝算はある
last updateLast Updated : 2025-05-18
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第92話 まるごと奴隷

「そうだよ! あたしは昔、生きるために娘を売った。でも奴隷商人は約束の半分のお金しかくれなかった。おかげで家族はばらばらになって、こんな場所で難民をしている」 年配の女性も叫んだ。「だけど、ここにいたって暮らしていけないわ!」 若い女性が言い返す。「それならこの人についていきたい。本当に土地がもらえるなら、また農業で暮らしたい」 難民たちの意見が割れた。将来の希望を夢見る人と、絶望してしまっている人がいる。 彼らはそれぞれ迷っているようで、意見はまとまらない。 しばらく様子を見た後、俺は大声を張り上げる。「心は決まったか? まあ、今すぐ決めろとは言わない。数日後に改めて聞きに来る。そのときまでに決めておいてくれ」「と、いうことだ」 バルトが俺の話を引き継いだ。「よく考えるんだね。ただ、お前たちは選択肢を与えられた。それを忘れるな。今までの人生で自分の意志で選ぶなど、どれだけあったか思い出すといい。奴隷ごときに選択の機会を与える彼が、どういう人物なのかと、ね」「バルト、そんなもったいぶった言い方するなよ」 背中がかゆくなる。 小声で言ってやると、彼はニヤリと笑った。「このくらい言っておかないと、あいつらには通じないよ。貧すれば鈍する。毎日食うのでカツカツだと、ろくに物事が考えられなくなるから」「それは分かる……」 十五歳で冒険者を始めたばかりの頃、俺もそうだった。 毎日生きるのに必死で先のことなど考えられなかった。 俺の場合はそれでも冒険者という職業があって、町の人の依頼と親切に支えられながら前に進めたが。 もう少し運が悪ければ野垂れ死んでいた。あるいは、奴隷商人に捕まって強制労働でもさせられていたかもな。「じゃあ、後は任せた」「はい」 盗賊ギルドお抱えの奴隷商人に後を頼んで、俺たちはマナフォースの町に戻った。  
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第93話 打ち合わせ

 家では賓客であるディアドラをもてなすため、全員がワタワタした。「なに、一般家庭であることは承知の上じゃ。楽にせよ」 と彼女は言うが、小国とはいえ国家元首である。楽にはできんだろ。 ディアドラはそんな俺たちはそっちのけで、倉庫にあったレア魔法書に目を輝かせていた。「あれも、これも、おお、それも欲しい!」 というわけで、倉庫の肥やしになっていたレア魔法書をほとんどお買い上げだ。 私費の他、魔法ギルドで研究するために公費も使っているらしい。 秘書官が一生懸命目録と請求書を作っていた。 まあ、開拓村の資金はあればあるほど助かるからな。ありがたく売りつけてみた。 ディアドラの魔法書お買い上げで数日時間を取られたが、その後はすぐに北へ出発した。 俺の他にクマ吾郎を連れてきた。 戦力という意味では俺とマナフォースの護衛で十分だが、万が一のことがあっては困る。 世界最強の熊がいれば、滅多なことは起こらない。 旅は順調に進む。 森を抜けて北の平原に出たときは、ディアドラが感嘆の声を上げていた。「広いのう! それに想像よりもずっと豊かな土をしている」「そうでしょう。今は夏とはいえ、気温もそれなりに高い。農業は十分可能ですよ」 俺が答えれば彼女はうなずいた。 雪の民と再会を約束した時期はもう少しだけ先だったが、現地まで行ってみると彼らは待っていてくれた。「ユウ様! クマ吾郎も!」 俺たちに気づいたエミルが走り寄ってくる。 ほんの二ヶ月にも満たない期間なのに、背が少し伸びて表情も大人っぽくなった気がするな。 俺は抱きとめようと手を広げた。 だがエミルは俺の横を走りすぎて、クマ吾郎に抱きついた。……いいけどさあ……。「ユウよ、よく来た。……そちらの方は?」 イーヴァルの視線を受けてディアドラが進み出た。「私はディアドラ。ここから南東にある魔
last updateLast Updated : 2025-05-20
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