その言い伝えだけなら眉唾ものだが、ヨミの剣がわざわざ言っていたのだ。実在はかなり現実味を帯びる。 ただ、山脈の頂上はたどりつくだけで一苦労だろう。魔物を相手にするのとはまた違った難易度だ。 冬の土地に慣れた雪の民でさえ、帰ってきた者はいないという。実際に塔を見た人の話すらないのだから、冬の登山そのもので命を落とした可能性が高い。 少なくとも、足場が固まっていない今すぐに挑むものではない。 情報を集めながら来年以降、挑戦してみようと思った。「ユウ様、見てください! 僕、一人でウサギを仕留めましたよ!」 エミルが顔を赤くしてウサギを掲げている。「おお、すごいな。お前もすっかり雪の民の一員だ」 俺が言うと、横でイーヴァルもうなずいていた。「あの子は筋がいい。パルティアで苦労した分、周囲に優しくできる性格でもある。わしが死んだ後も、あの子がいれば安心だ」「イーヴァルさんにはまだまだ元気でいてもらわないと。一緒に開拓村を発展させるんだろ?」 俺の言葉に彼は笑った。「そうだったな。とりあえず、この冬を乗り切らねば」 村に戻ると、ちょうどパルティアからの物資が届いたところだった。 斧を肩に担いだルクレツィアが、俺を見つけて手を振っている。「よっ、ユウ様! イザクお手製の冬野菜、たっぷり届けにきたぜ。大根が特にうまくて、ちょっとかじってしまったが、まあ許せよ!」 ルクレツィアは相変わらずだな。 イザクは家に残って、他の奴隷たちに農業の指導をしている。 春になったら北へ来て、農業の腕を存分に振るってもらうつもりだ。 雪に閉ざされる北の土地では、生野菜に含まれるビタミンはとても貴重なもの。 雪の民から毛皮や肉や魚をもらい、俺たちは野菜や麦、布や服を渡す。 今のところは物々交換で、お金は使っていない。雪の民はお金を使う習慣がないせいもある。 ただ今後、村の規模が大きくなったらお金を使ったほうが便利になる。 お金の便利さと怖さをきちんと教えながら、雪の
Terakhir Diperbarui : 2025-05-27 Baca selengkapnya