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彩雲華胥의 모든 챕터: 챕터 91 - 챕터 100

118 챕터

4-5 これからのこと

 事態が落ち着いた後、三人は今後のことを話し合った。神子であることをまだ認められない無明だが、神子である事実は変えられない。「逢魔は、俺を神子って呼ぶの禁止」「あなたの願いなら、従うよ」 とにかく神子ではあるかもしれないが、まっさらな状態ではどうにもならない。できることならあまり大勢には知られなくないし、崇められるなどまっぴらごめんだった。これまで痴れ者として自由気ままに生きてきたのに、急に態度を変えられてもこちらが困る。「辛いかもしれないけど、ふたりとも少しずつでいいから昔のことを教えてくれる?」「承知した」「うん、わかった。あ、でもいいのかな~。言えないこともあるかも?」 白笶を揶揄う目的のみで、逢魔は余計なことを口にする。「別にやましいことはひとつもないが?」 まったく動じることなく白笶が応えるので、逢魔は首を振って、相変わらず面白くないな、とぼやきながら肩を竦めた。「俺は、自分自身が神子として認められるようになるまで、そうであることをあまり知られなくない。できることなら、各一族の宗主以外には知られないようにしたいんだ」「白群では誤魔化すのが難しいかもね」「兄上は味方にしておいた方がいいだろう、」 余裕がなかった白笶は、ここに来る前に白冰に対して本音を口にしてしまっていた。あの玄武の陣を見て気付かないはずがない。隠したところで意味がないだろう。「うん、白冰様と竜虎には伝えるつもり。きっとふたりなら、今のままでいてくれる気がするんだ」 竜虎は真面目だが、きっと自分の願いを叶えてくれるだろうと無明は思っている。いつも喧嘩ばかりだが、いつだって最後は自分に譲ってくれたり、ひとつしかない菓子なら、半分に分けた時に必ず大きい方を自分にくれるような義兄なのだ。「どうでもいいが、そろそろ戻った方がいいのでは? それこそ色々詮索されてしまうだろう。話し合いならどこでもできるのだから、いつまでもこんな所にいないで、早く顔を見せてやった方がいいと思うんだが、」 ひと区切りついたところで、太陰は三人の間に割って入って来る。いい加減、ここから出て行って欲しいというのが本音だった。もちろん、神子だけはいつまでもいてくれてかまわないが。「太陰兄さんは根暗だから、ワイワイ賑やかにしてるのが苦手なんだもんね。ごめんね、気付かなくて」 こいつ······
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4-6 悔恨と憂慮

 紅鏡。金虎の別邸。 明け方近くに遠く北の空に咲いた薄青に光る陣を見上げ、藍歌はひとり愕然としていた。この国の五大一族や術士たちにしてみれば、朗報でしかないあの希望の光は、藍歌にしてみれば絶望でしかなかったのだ。 光架の一族は誰もが知っている。神子の証である、特殊な痣。無明が生まれた時に、それは小さな身体に花でも咲いているかのように浮かんでいた。五枚の花びらが集まったかのような、そんな模様の痣だ。 それを見た藍歌はすぐにその痣を布で隠した。赤子を蝕む強い霊力は、宗主に頼んで特別な宝具で抑えることができた。そして何者にもなれないように、無明という名を付けた。もうひとつの名は、本人にだけ伝えてある。「結局、守れなかったのね、私は」 神子になどなって欲しくなかった。それは苦の始まりでしかないからだ。この十五年間、晦冥は何事もなく、かつての闇はもう消滅したのかもしれないと期待もしたが、結局、ただ神子が本当の意味で目覚めるのを待っていただけだったのだ。「あのまま、ここに閉じ込めておけば良かったの? いえ、最初からこうなる運命だったのね、」 ただ平穏に、無事に、生きていてくれれば良かったのに。「こうなったのは、私が愚かにも罠を見抜けなかったせい」 すべては点と点で結ばれており、物事には意味がある。(敵はすでに金虎の中に入り込んでいる、ということ) あの日からずっと、この時を待っていたのだろう。無明が力を解放し、他の一族たちの前でその姿を晒した時から。いや、もっと前からかもしれない。生まれたその瞬間から、こうなることは決まっていたのだ。「けれどもきっと、あの子なら、」 何者にもなれないということは、何者にもなれる可能性があるということ。そしてもうひとつの名が、無明に光を齎すだろう。 藍歌はゆっくりと瞼を閉じる。 祈るように。(どうか、あの子をお守りください) 眩しい光の欠片が東の空に顔を出す。 あの光は希望か、それとも。 動き出した歯車を止めることなど、誰にもできないと知りながら。****  碧水。白群の白家。別邸。 清婉はあの騒動の間、負傷した術士たちの手当てを手伝ったり、薬を調合したり。とにかく休む間もなく内弟子たちに混ざって働いていた。内弟子たちはまだ実践に参加することは許されておらず、皆、もどかしい想いを抱えてるようだった。
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4-7 麗寧の贈り物

 碧水を訪れてから気付けばひと月半が過ぎていた。竜虎と相談したが、次の地は玉兎に決めた。出立は三日後。あくまでも元々の目的である修練のためという名目で、各地を巡ることになっている。「できた!」「ふふ。完成ね」 麗寧は完成した手作りの地図を掲げた無明を微笑ましく見つめながら、三日後にはここからいなくなってしまうことを残念に思う。毎日のように一緒に楽しくお茶をしたり、笛と琵琶を奏でたり、地図を書き足していくのは新鮮で、なにより無明が可愛くて仕方がなかった。「こうやってお茶を楽しむのも、一緒にお話をするのも、できなくなってしまうのね? そう思うと、とても寂しいわ」「俺も、麗寧夫人と遊べなくなるなんて寂しい。でも、また絶対に碧水に遊びに行くよ。そしたら今度こそ、みんなで一緒に市井で美味しいものをいっぱい食べようね!」 ええ、もちろん! と麗寧夫人は無明の手を包み、大きく頷いた。ああ、そうだわ!と大事な事を思い出す。「無明ちゃんに、私から贈り物があるの! これから夏になるでしょう? お父様にお願いして、特注で仕立ててもらったんだけど、」 急に立ち上がり、部屋の奥の方へ行ったかと思うと、麗寧夫人は腕に黒い衣裳を掛けて戻って来た。そして無明の前に立つと、ばっとその衣裳を広げてみせた。 広袖の薄い夏物の羽織は黒だが、左右の袖の下の部分にだけ、銀色の糸で描かれた小さな胡蝶が二匹と、山吹の花枝の模様が描かれていた。その中に纏う上衣は赤で、下裳は黒。帯は金の糸の刺繍が入った黒で、その上に飾る長綬と左右に垂らす短綬は臙脂色だった。「こんな高価そうなもの、俺が貰ってもいいの?」「もちろん! あと、夏用とお揃いの冬用の羽織もね! 無明ちゃんは白もとても似合うけど、黒の方が好きそうだったから。これは私に付き合ってくれたことと、白笶のお友達になってくれた感謝の気持ちなの」 衣裳を手渡して、満足そうに麗寧夫人は笑った。無明はそれを大事そうに胸の辺りで抱え、ありがとう、と頭を下げた。感謝をしたいのはこちらの方なのに。「白笶は私の本当の子ではないけれど、とても大切なひとたちの忘れ形見なの。だから、あの子をどうかお願いね」 麗寧夫人には真実は告げていない。白笶がなぜ無明たちと同行するのか、本当の理由は知らないままだ。「あと残り三日だけど、もう少しだけ私と一緒に遊んでくれる?
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4-8 蔵書閣

 出立まであと二日。 白笶と無明は白群が管理する蔵書閣へと足を運んでいた。蔵書閣は霊山の麓にずっと昔からあり、崖の岩肌の中に埋められるかのように建てられている。 湿気で貴重な文献にカビが生えるのではないかと心配になるが、意外にも中はそんなことはなく快適な空間になっており、構造は上手く説明できそうにないが、とにかく書物たちの保存状態は間違いなく良好だった。 地面は平面に整えられており、邸より高い天井のギリギリまで埋め尽くされた、頑丈そうな造りの無数の本棚の所々に、一番高い所まで届くだろういくつもの長い梯子が立て掛けられていた。 ひと月半ほどいたはずなのに、ここに無明を連れて来るのは初めてだった。紅鏡の食事処で蔵書閣の話をした時に、無明が楽しそうにしていたのを思い出す。今もひとり先に前を行き、くるくるとあちらへこちらへと蝶のようにふらふらと迷い歩きしている。「俺、もうここに住みたい!」「······それは困る」 冗談なのに、白笶は真面目に困った顔で返す。ふふっと笑って、住みたいくらいここが気に入ったって意味だよ、と言い直す。「白冰様が言っていた書物はどこにあるかな?」 ひとり言のように呟いて、早くも断念しそうになる。本当に一生住んでも読み終わるかわからないほどの本の山に、無明は圧倒される。 白冰が話してくれた、かつての大戦のことを綴った日誌というものがあるらしいが、どの棚で見つけたかは憶えていないらしい。他の書物や文献などは棚の番号ですべて管理されているのだが、そのどこかに紛れているだろう日誌のことは、管理帳には載っていなかった。「兄上が言っていた書物とは?」 白笶は首を傾げて眉を顰める。無明にいったいなにを吹き込んだのだろうと疑う。白冰と無明は今もふたりで符術の研究をしていて、実験的に実戦で使用したあの通霊符の実用性について、最後の最後まで詰めているようだった。「うん、晦冥で起こった大戦のことを綴った日誌だよ。作者もわからないって言ってた。自分も一度だけしか目にしてないから、疎覚えなんだって」「········うん、」 背を向け背伸びをして書物を物色している無明に、微妙な返事で白笶は眼を細める。(······日誌?) 白笶はひとつ思い当たることがあった。ずっと昔。最初に転生した時に、あの時の事を忘れないようにと書き綴った日誌。碧水のこ
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4-9 触れたい

 白群の内弟子たちが纏う、無明には少し大きな白い衣裳の袖から覗く指先が、なんだか愛おしい。探すふりをしながら、本棚を右往左往している無明に視線を向ける。 歩く度に揺れる一本に括った長い髪の毛が目に入る。結ばれた赤い髪紐。ふと、腰に差している横笛に視線を落とす。その先に飾られた赤い紐飾り。あの時、鬼蜘蛛の繭の中で思わず掴んでしまった手首のこと。(逢魔は、約束をちゃんと果たしたんだな、) 終わりの日に、始まりの神子に託された横笛、天響。そして、必ず神子を見つけて返すと誓ったあの赤い髪紐も。 目印はすぐそこにあったのに、晦冥の地で無明を助けた時は気付けなかった。それにあの時、無明は白笶に対して初対面の反応だった。その少し前に逢っていたことも忘れられていたのだ。  三年前。初めて無明と言葉を交わした時、ずっと捜していた神子かもしれないという、曖昧な感覚を覚えた。確証もないまま、その後再び逢う機会はなかった。 あの日。晦冥で無明の姿を目にした時、心がざわついた。それも感覚でしかなかったが、確信に近いものがあった。それは仮面が外れ舞を舞った瞬間、現実のものとなった。 触れたい。 愛おしい。 触れてはいけない。 触れたい。 それからは自分の感情を抑えるのが難しくなった。無明はそんな自分の気など知らず、無防備に笑みを零し、触れ、ずっと欲しかった言葉を紡いでくる。どうして君というひとは、そうなのか。「白笶?」 背後に気配を感じて無明は振り向こうとしたが、そのまま本棚と白笶の間に挟まれて身動きが取れなくなる。 今の状況は正直、冷静さを保てそうにない。白笶の薄青の衣の袖が顔の右側に、もう片方はその少し左斜め下に、無明を囲うように本棚に身体を預けて置かれていた。 その距離はとても近く、無明は背中から感じる温度に少なからず動揺の色を見せる。白笶はなにも言わず、その両腕に逃げ道を阻まれているため、無明はただ立ち尽くすしかなかった。「えっと、こっちの本棚にはないみたい、だから」「うん、」「あっちの方に、行きたい、んだけど?」「うん、」 うん、と低い声で応えているのに、白笶はまったく動く気配はなさそうだった。振り向かなくても、白笶の眉目秀麗な顔が自分の首筋辺り、すぐ後ろにあるのが解る。 いったいどうしたのだろうと問いたいが、心臓の音が外に聞こえそうなくらい
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4-10 どうしょう!

 無明はなんとか言葉を紡ごうと口を開く。「きょ、今日はありがとう! 日誌は見つからなかったけど、ここに連れて来てくれて嬉しかったよ」 外はもう陽が沈みかけていた。ほぼ一日中食事もせずにいたことになる。本当なら昼過ぎには帰るはずだったのに、白笶があんなことをしたので、お互いに気まずく、帰る機会を完全に見失ってしまったのだった。 それでも無明は意を尽くそうと、自分の右側を歩く白笶の手を取った。それには白笶も驚いたようで、灰色がかった青い瞳を見開く。「白笶の手、俺、好きだよ」 夕陽に照らされた頬は、きっとどれだけ赤くてもわからないだろう。このままの状態で邸に帰るのは嫌だった。だって、別にあんな風にされて嫌だったわけじゃない。少し驚いただけ。 よく考えたら、普段は竜虎に抱きついたりしているのだから、今更なにを恥ずかしがることがあろうか。そもそも今までだって、それ以上のことをしてきた。だから、今になってどうしてこんなにも胸がざわざわするのか不思議でならなかった。 白笶との距離の近さは今に始まったことではない。なんなら最初からずっと近い。こんなに心臓がおかしいのは、あの時、繭の中で手の甲に口付けをされた時以来だった。そんな気持ちを誤魔化すように、無明はいつもの調子をなんとか演じる。自分の心を偽るのは昔から得意だった。「今日の夕餉はなにかな~。楽しみだね、」 繋いだ手の温度はまったく覚えていない。何を話したかも、忘れてしまった。とにかくいつも通り、何でもない話を無明はぺらぺらとひとりで話し続けていた。 そして、邸に着いて白笶と別れた後、大きく息を吐き出すのだった。****(俺、どうしちゃったんだ!? 心臓痛い! 頭ぐるぐるする! もしかして神子になったせいで霊力が制御できていないんじゃっ!?) 自分で考えていても支離滅裂な心の声に、いよいよどうにかなってしまいそうだった。こんなことは今までなかったのに、本当に病気なのでは? と心配になる。 別邸の扉の前で百面相をしている無明を見つけ、清婉が首を傾げている。夕餉の準備が整ったので呼びに来たのだが、なぜか主が扉の前でひとり奇怪な動きをしていた。それを見た清婉の顔が歪む。(うわぁ······久々に無明様が変なことしてる) 声をかけるのを躊躇う。清婉もまた、久々にものすごい顔をして無明を遠目で見ていた。紅鏡
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4-11 出立まで、あと一日

  よし、と清婉は筆を置く。このひと月半ほど、時間がある時に少しずつ書きためていたものがなんとか完成した。 白群の人たちのために、なにかできないかと思い、自分ができることを考えた末、用意できる食材ごとにいくつかの調理法と、作れる料理を書き綴ってみたのだ。(食事は毎日の修練でボロボロになっているみなさんの、英気を養う大事な時間。時間を短縮できる簡単で、栄養もある食事を、と思ったけど、) 思い付くだけ書き綴ってみたら、だいぶ書物がぶ厚くなってしまった。「ん? なにしてるの?」 厨房でひとりもくもくと何かを書いている姿を目にした雪陽が、後ろから覗き込むように声をかけてきた。びくっと肩を揺らして、清婉は思わず書物をぶん投げそうになるのをなんとか思い留まる。「び、びっくりしました! 雪陽殿、でしたか。まだ昼餉の準備には少し早いですよ!?」「うん、知ってる。今日は白冰様が無明殿と一日中符術の研究をするって言うから、やることなくて」「そうなんです? では他の方々も修練はお休みなんですね、」 そうだよ、と雪陽は言いながら、清婉の横に座った。筆と硯と書物が並べられており、なにか書いていたのだろうということは分かる。 雪陽は凛々しい眼をしているのに、いつもぼんやりとしていて、話し方ものんびりしている。けれどもちゃんと気遣いができ、周りにも尊敬されていた。「なに書いてるの?」「あ、はい、みなさんに、僭越ながら私からの贈り物です」「あ、これ、料理の調理法?」 ぱらぱらと捲って目を瞠る。うちの台所事情を考慮した上で、少ない食材でいくつもの料理が考案されていた。「みなさんにはとても良くしてもらったし、無明様たちもお世話になったので、どうしてもお礼がしたくて。でも、私は大したことはできないし、お金もありませんから、こんなことくらいしかできなくて」 あはは、と卑下しながら清婉は言う。「なに言ってんの? 清婉殿はすごいひとだよ。俺も雪鈴もすごく助かってる。ずっとここにいてくれたらいいのにって、思ってるし」 それは従者として、ではなくて。友として、兄として、家族として。しかしそれは叶わない。だって、それは、ただの我が儘だから。「俺、清婉殿のこと、好きだもん」「あ、ありがとうございます」 一瞬、その眼差しに囚われそうになったが、清婉はにっこりと笑って礼を告げ
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4-12 弟子にしてください!

 竜虎は後悔していた。 自分で誘っておいてあれだが、共通の会話が無明以外ない。そもそもついひと月半前までは、彼は口が利けたのかと驚いていたくらいだ。 白群の中でも、修練の時以外はひと言でもしゃべれば珍しがられるほど、普段から無口なようで、これでも社交性のある方である竜虎でさえも、そろそろ限界に達しそうだった。「あー······えっと、白笶公子は、なにか趣味でも?」 馬鹿か! 俺は馬鹿なのか! 訊いておいてすぐに後悔する。もちろんこんな唐突でわけのわからない質問にも白笶は無表情で、だが誠実な性格が返答しないのを許さなかった。「··········特にない」 すみません、俺の質問が悪かったんです、許してください。 どうしてこんな苦痛をわざわざ味わっているのかと言えば、答えは一つ。これからどうやってこのひとと向き合えばいいのか、を模索するためだった。 市井の茶屋は何軒もあり、それぞれに売りにしている菓子や茶があり、この茶屋は無明にすすめられて選んだつもりだ。目の前には茉莉花の花茶の良い香りが漂っていて、茶請けに蜜棗が添えられていた。 それから沈黙が続く。 竜虎は完全に気まずさが顔に出ているが、白笶にとって沈黙はいつものことなので特に気にしておらず、花茶を口にしては店内を眺めていた。この茶屋はそれぞれ個室になっていて、大きな花窓が入り口から見て左側にある。右側には木製の赤い衝立があり、個室と通路を仕切っている。 竜虎は入口側、白笶は奥側に座っており、花窓は竜虎から見ると左側にあった。周りの声はそれなり聞こえるので、茶屋自体は賑わっているのが分かる。ここの空間以外は、だが。「······君は、なぜ強くなりたいんだ?」 まさかの白笶からの問いに、竜虎はもう少しで口に入れたばかりの蜜棗を呑み込んでしまうところだった。「き、急に、なんですか? なんで、そんなこと、」 自分の質問も大概だったが、白笶のその問いも急すぎる。しかし、せっかくの会話のきっかけだ。竜虎はこほんと咳をひとつして、ひと呼吸おいて口を開く。「俺は、ずっと昔からあいつを見てきました。あいつを傷付ける奴は赦さないし、絶対に負けたくない。無明を守る。これは約束であり、決意であり、俺が剣を揮う理由。もちろん、紅鏡の民も守る。だけど、そのためには強くならないといけない。口だけならなんとでも
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4-13 教えて欲しい?

 白冰は人差し指と中指を親指を起点にしてぴんと弾いた。それは目の前で文机に頬杖を付き、上の空になっている無明の額に見事に当たり、途端、ひゃっという声が自室に響く。「せっかく一日時間を空けて、君と最後の研究に没頭しようと思ったのに、君ときたら······これで何回目かな?」「うぅ······白冰様、手加減しているとはいえ、痛すぎるよ」 赤く腫れあがった額を両手で抑え、涙目で無明は訴える。「ふふ。これでも十倍以上減で、優しく優しくしてあげているんだよ?」 もちろん、本気でやったら頭が吹き飛ぶ可能性は高いだろう。 竜虎に聞いたのだが、彼の腕力はその細腕からは想像できないほど強いらしい。無明は頬杖を解き、そのまま机に上半身を預け、はあと大きく嘆息する。「どうしたの? なにか悩みごとかい? 私でよければ相談にのるよ?」 よしよしと猫でも撫でるように無明の頭を撫でて、白冰は笑みを浮かべる。 さっさと通霊符の完成を目指したいのに、当の本人がこの状態では難しいだろう。なので、とりあえずその原因を取り除くのが先と考えた。「白冰様······俺、病気かもしれない」「病気? どこか痛むのかい? 診てあげようか?」 普段のあの無明からは考えられないほどの元気のない答えに、本気で心配した白冰が訊ねる。 仮にも神子である無明に、何かあってはならないと思っての事でもあった。「いつから調子が悪いの? 玄武との契約の後?」 無明は首を振って「違うよ」と答える。伏していた身体を起こし、白冰を見上げ、また大きく嘆息する。「なんか胸の辺りが痛くて······あと、頭がぼーっとする」「本当に? ちょっといいかな?」 白冰は頬に触れて熱を測るが、少し自分よりも熱いくらいで風邪などではなさそうだ。 心臓のある辺りに触れてみても、特に変わった心音はしない。けれども無明が嘘を言っているようにも思えず、首を傾げる。「ちなみにだけど、なにか思い当たることはある? そうなる前に起きたこととか、」 訊ねた途端、無明の顔がみるみる赤くなっていくのがわかった。「蔵書閣で、白笶に······本棚にどんってされた」「どん?」 無明は蔵書閣で起こった事を、簡単にだが的確に話した。それを聞いた白冰は少し考えて、それから急に声を上げて笑い出した。「あははっ······くくっ······
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4-14 紫陽花

 夕餉の後、無明は部屋には戻らず、白笶の後ろをこっそりついて行っていた。白冰に教えてもらったことを実行するためだった。(······なんかだか、悪いことをしているみたい) 邸の角を利用して物陰に隠れ、ある程度の距離を取って後ろを歩く。人気はなく、渡り廊下には雨の音だけが響いていた。 夕刻くらいから降り出した雨は、止むことなく降り続けている。打ちつける雨音は蓮の花や葉に当たると、水面に落ちる音とはまた違った低い音が鳴る。 渡り廊下には屋根が付いているので濡れることはないが、そこから少しでも出てしまえば、肩口が濡れてしまう。現に、無明が纏う白い衣裳と前髪がしっとりと濡れてしまっていた。(やっぱり、また今度にしよう、) 少しくらい胸が痛くても、我慢すればいいのだ。死ぬほどではないと白冰も言っていたし。 考えた末、白笶の背中をもう一度見つめ、ひとりで納得して頷いた。踵を返し、無明が一歩足を踏み出したその時、ふいに腕を掴まれて後ろに引き寄せられる。 へ? と間抜けな顔で振り返ってみれば、離れた場所にいたはずの白笶の姿があった。呆然と、腕を引かれたまま立ち尽くす。 もしかしなくてもバレバレだったのだろうか。 白笶は眼を細めて怪訝そうに見下ろしてくる。 広間を出てからなにも言わずに後ろを付いて来る無明を不思議に思いながらも、好きにさせていたのだが、急にこの場から離れようとしたので、思わず引き留めてしまったのだ。 よく見れば髪の毛から水が滴り、衣裳も肩や裾の辺りが濡れていた。無言で前髪に滴る雫を指で拭ってやるが、無明はその大きな瞳でただ見上げてくるばかりで、なにも言わない。「こちらへ、」 腕を引いたまま、白笶は自室のある方向へ向かう。雨音が激しくなっていた。白笶の部屋は邸の北側の一番端の方にある。 そこは他の部屋と違い、湖水が途切れている場所のため、部屋の外に庭があり、よく手入れの行き届いた池もあった。庭には三つほど背の高い精巧な石造りの灯籠もあり、暗い庭を仄かに照らしてた。 その明かりは雨の雫に反射して、庭全体を幻想的な空間に仕立てており、部屋の中よりもずっと明るく見える。 元々は客間だったが、白笶がここが良いと珍しく我が儘を言って自室にしてもらったのだ。灯篭がひとつだけ灯っているだけの薄暗い部屋の中に入れば、必要最低限の物しかない殺風景な部屋
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