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4-15 誓いの夜

 真っ暗になった視界がふいに元の薄暗い部屋へと戻って来ると同時に、灰色がかった青い瞳が重なる。状態をよく見れば無明は床に仰向けに倒れており、白笶の右手が頭に敷かれている。 両の膝と左手を付き、跨るような格好で見下ろしてくる白笶の表情は歪んでいた。 一瞬でよく憶えていないが、胸元を掴んでいた指を解かれたかと思ったら、そのまま身体を翻した白笶に押し倒されていた。暗転した視界がぐらりと揺れ気付けば床の上だった。 頭に手を添えてくれている優しさとは逆に、その顔はどこか苦しげで。あのいつもの無表情からは想像できないほど、悲しそうだった。「······すまない。私は君に、かつての神子に抱いていた想いと同じ想いを抱いている。それは君が同じ顔で、同じ魂だからじゃなくて······君が君だから、」「······神子と白笶はどういう関係だったの?」 とても大切にしていたのだろうということは解る。けれども明確な答えは聞いてはいなかった。「一生共にいようと誓った、伴侶だった」 神子と華守であり、親友であり、恋人であり、家族であった。大切で、なくてはならない存在。片翼のようなもの。 そ、と無明は白笶の頬に右手を伸ばす。先程の言葉が頭を過る。代わりにしたいわけではなくて、そうではなくて。「俺は······神子の代わりじゃないん、だよね?」 何度も聞いてしまう自分の弱さが、白笶を傷つけている気がして、心臓が痛い。 玄冥山の時と同じだ。 この感情は、痛みは、きっと····。 神子の魂が自分に訴えているのかもしれない。目の前にいるひとはとても大切なひとで、離れがたいひとなのだと。「私は君と、共にいたい」 言って、白笶は柔らかい笑みを浮かべた。その笑みに無明は言葉を失う。そんな風に笑う姿を初めて見たというのに、なんだか懐かしささえ覚えたからだ。「俺も、······俺も、白笶とずっと一緒がいい」 これからなにが起こるのかもわからない。もしかしたら、かつての神子と同じような結末が待っているかもしれない。また悲しませてしまうかも。それでも傍にいたら、きっとなにかが見えてくる気がした。 記憶は少しもないけれど、この気持ちは間違いなく自分のものだ。両腕を伸ばして、白笶の首にしがみ付く。心臓の痛みはいつの間にか消えていた。 あたたかくて、心地好い。(こうしてると、なんだ
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4-16 届け物

 明け方、無明は白笶と共に玄冥山の玄武洞へと足を運んでいた。 昨夜から降り続いていた雨は止んでいたが、足元がぬかるんで歩きにくい。朝露に濡れた道端の葉が、太陽の光を浴びてキラキラと輝いて見えた。澄んだ空気の中、白笶は無明の歩幅に合わせてゆっくりと並んで歩いていた。 無明は白笶の左側を歩くのが癖になっていた。会話はいつもの通り、無明がほとんどひとりでしゃべっているような状態だが、それを見つめる眼差しはどこか優しく穏やかに見えた。 途中からは白笶に抱き上げられ、玄武洞のある場所まで飛んでいく。碧水の地が端まで見渡せるかのような絶景に、無明は思わず声を上げていた。晴れ渡った空もそうだが、壮麗な湖水の都は、運河も含めてひとつの景色として素晴らしい眺めだった。「おはよ、無明、白笶」 玄武洞の入口に立って、ひらひらと優雅に手を振っている逢魔は、ふたりの名を呼んでにこやかに挨拶をした。隣には彼より背の低い太陰が、腕を囲って揖し、礼儀正しく迎えてくれた。「おはよう! ごめんね、急に押しかけて。頼みたいことがあって、白笶に連れて来てもらったんだ。でもよく来るのがわかったね?」 逢魔を見上げて首を傾げて、そんなの簡単だよ、と笑う。腰を屈めて、無明の顔を覗き込み、人懐っこい雰囲気を纏ったまま、その金眼の瞳でじっと見つめてくる。「神子の匂いがしたから、太陰兄さんと一緒に待ってたんだ」「え? 匂い? 俺ってそんな変なにおいがするの?」「変な、じゃなくて、とてもいい匂いだよ、」 無明はますます首を傾げ、それ以上聞いても納得する答えは返ってこないと察する。 そんな逢魔の襟首を掴み、太陰は後ろに引きずると、話が進まないからお前は大人しくしていろ、と吐き捨てる。「神子、それで、頼みとは?」「うん、あのね、逢魔に頼みたいことがあって、」 言って、無明は白い衣裳の懐から綺麗に畳まれた文と、小さな花柄模様が描かれた布で作られた、鶯色の小袋を手の平に乗せた。「これを、母上に届けて欲しくて」「藍歌殿に? いいよ。あなたの頼みを断る理由はないし」 逢魔はそれを受け取ると、自分の懐にしまう。なぜ名前を知っているのか、という質問さえ抱かせないくらい自然な会話だった。「なにか伝えることはある?」「ううん、邸に置いて来てもらうだけでいい。母上ならそれでちゃんと解かってくれるから
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4-17 鬼神

 ああ、そうだ、と逢魔が付け加えるように肩を竦める。「俺があなたの声に応えらえないとしたら、それは俺より強い者の領域結界の中にいるか、もしくは消滅した時かな?」「逢魔、」 白笶が目を細めて無言で咎めてくる。軽く言ったつもりだったが、無明がその言葉を耳にした途端、表情が固まっていた。 本当の事なんだけどな、と心の中で呟いて、逢魔はうーんと首を傾げる。「大丈夫。俺はこう見えて強いから」 よしよしと無明の頭を撫でて、にこやかに逢魔は言った。 無明は少し何かを考える素振りを見せ、それから自身の髪の毛を括っていた赤い髪紐を解いた。長い黒髪が背中にばさりと落ちる。癖の付いた髪を気にするほど几帳面でもないため、そのまま二回ほど首を横に振って背中に垂れた髪を揺らす。 邸に戻れば、もう一本予備の髪紐がある。無明は握りしめた赤い髪紐を見つめ、頷く。白笶から聞いたのだ。逢魔が神子からもらった髪紐を、ずっと大切に身に付けていたことを。 そして逢魔が言っていた。その髪紐は今は飾り紐として、無明の宝具である横笛に付けられていると。「逢魔、これを、」 そっと逢魔のひんやりと冷たい右手を取ってその手の平に髪紐を乗せると、そのまま手を重ねた。「俺にくれるの?」「俺のじゃあんまりご利益とかないかもだけど、約束の証だよ」 約束の証? と逢魔は首を傾げる。自分がどれだけマヌケな顔をしているのか、知る由もない。「うん、必ず俺の許に戻ること。そのことを忘れそうになったら、これを見て思い出して?」「必ずあなたの許に戻るよ」 逢魔は握られている右手の上に置かれた、無明の手の上に左手を重ねる。約束だよ、と無明は確認するように言って、笑みを浮かべた。「気を付けてね。用が済んで戻ったら、一度顔を見せて欲しい」「うん、わかった。あなたもどうかひとりで無茶をしないで、」 肩に手を置きぽんぽんと軽く叩いて、安心させるようにゆっくりと優しい声音で逢魔は言った。太陰は逢魔が神子の気を引くために、わざとあんなことを言ったのだろうと悟る。(鬼神がそうそう消滅なんてするか) 鬼神とは、天地万物が生んだ存在。始まりの神子が天ならば、闇を司る神は地。陰と陽が交わり生まれた最強の精霊なのだ。妖鬼などと一括りにしては恐れ多い存在。聖獣と同等の存在と言えよう。 人の世には間違った伝えられ方をしてい
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4-18 お世話になりました

 黒い広袖の羽織に腕を通し、金の糸の刺繍が入った黒い帯の上に飾られた、臙脂色の長綬と左右に垂れている短綬を整える。羽織の中の上衣は赤く、黒い羽織によく映える。左右の袖の下に銀の糸の刺繍で描かれた二匹の胡蝶と、山吹の花枝の模様も美しい。 清婉はその上等な衣裳を纏った無明に、感動していた。「無明様、良く似合ってますよ!」「ありがとう、俺もすごく気に入ったよ」 いつもの赤い髪紐をしっかり結って、背中に垂れた黒髪を梳きながら、清婉はうんうんと頷いた。本当にお世辞など抜きで良く似合っていて、寸法もぴったりだった。「麗寧夫人は、お前を相当気に入ったみたいだな」「俺もお礼をしたかったんだけど、たくさんもらったからいいって言われた。俺、一緒に遊んでただけで、なんにもあげてないんだけどなぁ」 ふふっと清婉は本当に解っていない無明に、そういう意味じゃないと思いますよ、と遠回しに教えてやる。一足先に準備を終えていた竜虎は、やれやれと肩を竦める。 竜虎は金虎の一族が纏う、袖と裾に朱と金の糸で描かれた何かの陣のような複雑な紋様が入った白い衣を羽織っている。上衣も下裳も白。帯は上下の縁が金色で、長綬と短綬は黒だった。長い前髪は真ん中で分けられており、他の髪の毛は頭の上でしっかり結って、銀の髪留めで纏めていた。「はい、これでふたりとも準備は完了ですね。忘れ物はありませんか?」 綺麗に片付けられた部屋の中を見回して、ここで過ごした日々を思い起こす。このひと月半、長いようで短い時間だった。 ここにやって来た日のことを思い出す。厳しかったが、充実していた修練も、白冰との研究も、雪鈴や雪陽との共闘も。これからも共に旅を続ける白笶との関係も。 すべてが、大切な時間だった。(お世話になりました) 竜虎は別邸の入口で腕を囲い、頭を下げて儀式的な挨拶をする。それを見たふたりも、同じように最後の挨拶をする。「よし、行こう」 うん、と無明は大きく頷く。清婉も荷物を背負い、後に続く。渡り廊下を歩き、本邸の方へと向かう。 白群の人たちには夕餉の時に一度挨拶をしたが、最後に宗主や白冰たちと広間で会うことになっていた。 広間の前に最小限の荷物を持った白笶が立っていた。一緒に中に入れば、白漣や白冰、麗寧夫人、雪鈴と雪陽、そして内弟子たちまでも揃っていた。 全員が宗主を真ん中にして綺麗に
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4-19 白冰の奇策

 盛り上がっている中、白冰は少し離れた所で白笶とふたり、声を潜めて話をしていた。「······そういうことであれば、兄上の考えを尊重します」「うん、ありがとう。上手くいけば黒幕に辿り着けるかもしれない。まああれにその価値があれば、の話だけどね?」 はい、と白笶は頷く。「まあ、それはいいとして。ねえ、私の助言で君たちの仲は少しは進展した?」 白笶の表情はまったくと言っていいほど無で、白冰はあははと肩を揺らして笑った。開いた大扇で口元を隠し、どうやら役に立ったようだと確信する。「私はね、君が少しでも笑っていられる場所を作ってあげたかったんだけど。どうやら、それはもう必要なさそうだね、」 寂しいような、嬉しいような、複雑な気持ちだ。それを与えたのは、他でもない無明で、だからこそ不安にもなる。「君たちふたりが幸せになる未来を、私は願ってやまないよ」 白冰は視線を無明の方へ向け、慈しむような眼でその光景を眺めていた。 別れがたい気持ちを呑み込み、四人は白群の邸を出、碧水の西へと歩を向けた。次の地は竹林に囲まれた古都、玉兎。西の渓谷の先にある山間地帯を越えた先へ。**** その夜、白群の一族が管理する牢の扉が破壊された。最初はびくともしなかった結界牢だったが、何度も叩いていたらその努力の甲斐あってヒビが入り、そして一気に砕けたのだ。(よし、運がいいぞ!) たった数日でこの結界牢から逃げ出せた。あの白冰という公子も大したことないな、と心の中で嘲る。 黒装束を纏った大男は、久々の外の空気をしっかり肺に取り込む。崇拝する邪神の命令で四天のふたりについてきたというのに、とんだ災難だった。 暗闇に身を隠しながら、大男は見つからないようにこそこそと崖に沿って進んで行く。その背に小さな紙人形が貼りついていることにも気付かずに、必死に駆け抜ける。「本当に良いのですか?」 雪鈴は怪訝そうに白冰の背に訴える。「いいんだよ、あんな雑魚。貴重な結界牢がもったいないだろう?」「わざと弱めてましたよね、結界」「なにか問題でも?」 肩を竦めて白冰は嘲笑を浮かべる。あんな木偶の坊、飼っていてもなんの得にもならない。主人の許へお返しするのが一番良いだろう。もちろんタダでというわけはないが。「まあ、紙人形がバレるのは時間の問題だが、そうなった時の仕掛けも二重にしてあ
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4-20 謀主

 黒衣を纏った大男は、無事に碧水の地を離れ紅鏡の地へと辿り着く。三日三晩その巨体で走り抜け、あと少しと力を振り絞り、晦冥の地の一歩手前にある結界壁の前までやってきた。 結界壁の先に見える枯れ果てたその大地は、ぼこぼこと無数の隆起を起こしており、月明かりの下ではさらなる不気味さを感じさせた。人の気配はなかった。なかったはず、だった。 男が振り向いた瞬間、"それ"は、男の首を貫通し、そのまま綺麗に引き抜かれる。言葉を発することは赦されず、ひゅうひゅうと隙間風のような音だけが鳴った。大きな身体は地面にそのまま崩れ落ち、前のめりに沈む。『今世の烏はこうも質が悪いとは、他の烏共に知らしめないと埒が明かない』「白群の公子殿の仕業でしょう。背にこんなものが、」 繊細な蔦の模様の漆黒の飾り縁が付いた、長方形の灯篭を手に持つ青い鬼面を付け黒衣を纏った青年が、頭に直接響いてくる声に応える。『紙人形か。追跡用の符だな。古い手を使う』 灯篭の中の灯りは紫色の光を湛えており、暗闇の中にあるせいか異様な雰囲気を放っていた。鬼面の青年は細い指先でその白い紙人形に触れる。その途端、紙人形は青い光を湛えて燃え炭と化した。「······なんだ?」『どうした? 間抜けな声を出して。常に用意周到な貴様らしくない』 一瞬のことでその違和感の原因は解らなかった。燃やした後になにか感じたのだが、気のせいだろうか? いや、用心するに越したことはない。鬼面の青年はふいと大男に視線を落とす。『殭屍の餌にでもしてやれ。奴らは骨も残さずに喰らうだろうさ』「ええ。後で適当に処理します。さて、神子たちは予想通り玉兎へ向かったようです。先に色々と仕込んでおいたので、今回以上に楽しんでもらえることでしょう」『神子には残り少ない時間を楽しんでいただかないとな。四神との契約はより絶望を味わわせるための、大事な布石だ。ぬかりなくやれよ』 鬼面の青年は、ええと頷く。 もうすでにそれは始まっている。彼らが玄武との契約を結ぶ少し前から、計画はすでに進行していたのだから。「——―—っ誰だ、」 鬼面の青年が闇に向かって、先ほど大男を仕留めた琴糸を放つ。それは一本から五本に分かれ、網のように広がり獲物を捕らえようと襲い掛かるが、するりといとも簡単に躱され、姿を捉えることはできなかった。 すでに気配はなく、まる
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-27
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4-21 あの日の真実

 逢魔は藍歌の邸に向かう前に、用事を済ませておこうと晦冥の地へと足を向ける。途中、黒衣を纏った怪しげな男を見つけ、その後をつけて行ったところ、思いもよらない場面に出くわした。 結界壁の前で男が襲われて倒れ、息絶える。青い鬼面は闇夜に悪目立ちしており、逢魔はじっと目を凝らしていた。その手に握られた灯篭の中の紫色の光は禍々しい気を放っており、それは忘れもしない存在を逢魔に思い出させた。(あれは······まさか、) その瞬間、透明な糸が逢魔を捕えようと目の前で分かれて広がった。するりと身を翻し、後方へ飛んでそれを軽く躱す。(結界壁の様子を見に来てみれば、それ以上の収穫だったようだ) 闇に身を隠して姿を晦ませる。鬼面の青年はその先へ何の影響も受けずに進んで行った。その様子を見て、やっぱりね、と逢魔は肩を竦める。 あの結界は、とっくに効果を失っている。それでも殭屍が越えて来ないのは、来れないのではなく、行かないように命じられているだけなのだ。 新しく施した者の仕業か、もしくは施した後に細工をしたか。見た目は完璧に結界壁。並みの術士が見てもわからないだろう。そもそもこの地を訪れる者などいない。 あの夜、無明たちは導かれるようにこの地にやってきた。あの二枚の文を送った主は民ではなく、あそこにいた鬼面の青年だろう。より興味を持つだろうこの晦冥の地での依頼を、無明が選ばないわけがない。 そして用意されていた陣が発動した。ここで霊力を失うほどの力を使わせ、竜虎と共にそのまま保護して、邸に連れ帰るつもりだったはず。白笶が現れたのは予想外だったろうし、仮に白笶が現れなければ傍で見ていた逢魔が出て行った。会話を聞く限り、逢魔の存在は話していなかったようだ。(そこでまた計画は変わったってことだね、) それさえも計算済みだったのかもしれない。もしもの時のために、藍歌に毒を盛らせるように言葉巧みに操り、結果、無明の仮面の封印は解かれた。 謀主の読み通り、五大一族の前に素顔とその能力を晒すことに成功する。特別に無明に期待を寄せていた宗主は、よりその才能を伸ばしてやりたいという気持ちになったはずだ。 そして、宗主に決断させる。無明を紅鏡の地から旅立たせることを。(そして諮らずとも、本来神子が巡礼を始める十五歳の年に、各地を巡る旅に出すことに成功したってことか) 逢魔に
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-27
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4-22 文に託した想い

 動揺した逢魔の前で、藍歌は冷静にその場に跪き、深く拝礼をし始めた。「ちょ、ちょっと待って。そういうのは慣れてないのでやめて欲しいんだけど!」 拝礼を終え顔を上げた藍歌は、首を傾げて見上げてくる。逢魔は珍しく焦っていた。無明からの"おつかい"は、届け物を置いて来るだけ、というものだったのに、まさか本人に出くわすとは思いもしなかった。「鬼神、逢魔様。私の話を聞いてくださいますか?」 そんな逢魔のことなど露知らず、藍歌は小さく笑う。そして縁側に置かれた文と小袋に視線を落とすと、それらを手に取り、文を広げて少し悲し気な表情を浮かべた。「無明からね。聡明なあの子は気付いたのでしょう。私が、あの子が神子の魂を持つ赤子だと知っていて、隠していたことに」「光架の民の役目は"記録"すること。神子の証であるあの印に気付かない方が不自然だった。当然、俺の事も知っていて、知らないふりをしていたんだよね、あなたは」 無明が生まれたばかりの頃、逢魔は黒い狼の姿でこの邸に入り浸っていたのだ。もちろん、邪悪なものから無明を守るために。 生まれたその瞬間から、強い霊力を持ち、それを狙った妖者が押し寄せてきた。それは宗主によって祓われたが、その後は逢魔が領域結界を張って守っていた。 藍歌はその黒い狼が赤子の傍にいても、追い払うことはなかった。それが何者かを知っていたからだ。「私は、あの子が普通の子として、平穏に生きてさえくれればいいと、愚かにも思ってしまったのです。ここでずっと一緒に笑っていられたら、それだけで良かったのに」「ごめんさない。俺は、逆だったよ。俺は神子を取り戻したいと思ってた。記憶がないのは、なにかの手違いで、きっかけさえあれば戻ると」 けれども間違っていた。 最初から、そんなものは消え失せてしまっていた。あの日、晦冥の地で邪神を封じた日に、消滅したのだ。それでも。「それでもあなたの子は、神子だった」 同じ言葉をくれた。 同じ魂を持つ、違う存在。 藍歌は逢魔の髪に飾られた赤い髪紐を見つけて、目を細めた。 今の逢魔は細くて長い髪を後ろで三つ編みにしており、その先に蝶々結びで赤い髪紐を結んでいた。ずっと昔、神子と一緒にいた時にしていた髪形だった。「逢魔様。どうかあの子を、無明をお守りください」「もちろん。それにね、神子の傍には華守もついてる。ついで
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-10-27
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4-23 玉兎

 碧水と玉兎の間には山があり、それを越えると立派な竹林が一帯に広がる平地になる。 玉兎の都の前にひとつ村がある。昔から温泉が有名で、それを目当てに術士や商人たちが立ち寄るため、都ほどではないが賑わいのある村であった。 山は険しかったが、なんとか二日ほどで抜けることができた。特に厄介な妖者もおらず、その分体力も霊力も温存することができた。四人は竹林の中を進む。 無明たち紅鏡の者は、こんなに広い竹林の中を歩くのは初めてだった。足元がふかふかとしており、なんだか歩きにくい。体幹の弱い無明と清婉はふらふらと歩いていてかなり危なっかしい。「おい、気を付けろよ。お前たちはただでさえ足腰弱いんだから」「ちょっと、人を老人みたいに言わないでっ······よ?」 言っている傍からよろけた無明の右腕を、白笶が無言で掴んで支える。へへ······と恥ずかしそうに笑って、無明は頬を掻いた。これでは本当に老人のようだ。やれやれと竜虎は肩を竦める。「でも、本当に見事な竹林ですね。竹林と言えば筍。あとひと月早かったらぎりぎり旬物でしたね······筍料理を作って差し上げたかったなぁ」 清婉は白群の白家の人たちのことを思い浮かべているようだ。特に雪鈴と雪陽のふたりには思い入れがあったようで、たまに大きなため息を吐き出す姿を目にした。「碧水に残っても良かったんだよ? これからますます危険になるかもしれないし、清婉になにかったら大変だもん」「いえいえ! 私が無明様のお世話をしないで、いったい誰が······ああ、そうですね、いましたね······でもいいんです。私はおふたりのお供をすると決めたんですから!」 なかば意地になっているようで、拳を握り締めて清婉は開き直る。そう、無明の横にいる立派な白群の公子様は、碧水を出立してからというもの、以前にも増して常に傍らにいるのだ。 なにをするにしても片時も離れず、見守っているという感じだ。もちろん、今みたいになにかあればすぐに手を貸す始末。これでは主が怠惰な駄目人間になってしまいそうで、清婉は本気で心配になる。「へへ。清婉好き~」「ちょっ!? やめてください! ホント、怖いんですって! 隣の人がっ!!」 腕を絡めてじゃれてくる無明の表情とは真逆の、恐怖に慄く清婉の視線の先には、無表情でじっとこちらを見てくる白笶がいた。 あのひ
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-11-03
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4-24 病鬼の噂

 皓月村。 村に唯一ある宿は賑わっていたが、皆どこか疲れた様子で、無明たちの姿を見るなり一斉に縋り付いて来た。「その衣、金虎の公子様と白群の公子様だろう!? もしかして都の怪異を鎮めに来てくれたのかっ」「そうだ! そうに違いないっ」 商人のような身なりの者たちは、拝むように手を合わせて、お願いします! どうか! と口々に同じようなことを叫んで来る。竜虎はやっとのことでその包囲網を抜け、宿屋の主人に声をかける。「一体どうしたというんだ? 玉兎には姮娥の一族がいるだろう? なんでこんなことになってるんだ?」 宿屋の主人も、突然騒ぎ出した客たちをなんとか宥めようと努力していたが、勢いに押されて今は隅で縮こまっていた。 無明と清婉は白笶の後ろに隠れてなんとか難を逃れているが、客たちはお構いなしだった。ぱっと見ただけでも二十人くらいはいる。「実は、今、都が大変なことになっているようで······ここにいる客たちは都から無事に逃げてきた人たちなんです」「は? いつからそんなことになっている?」「それは······ああ、確か、碧水の方で光る陣が空に見えた日の二日ほど前だったと思います!」 詳しく教えてくれ、と竜虎は騒がしい店内を無視して、店主に訊ねる。客たちは任せたぞ、と無明に目線で合図を送る。 微動だにしない壁のように立っている白笶は、すべての客の声を聞いているようだが、ひと言も返事はしていない。代わりに、無明がその背中から顔を出して答えているようだった。「病鬼が出て、宗主や他の術士たちが疫病にかかったらしいです。しかも普通の治療ではどうにもできないらしく、それは徐々に都中に広がって、今では誰も外に出られなくなっているとかなんとか」「言っても数日だろう? そんな短い期間で、都中にだって?」「ここだけの話ですが、どうやらその病鬼は特級の妖鬼だとか!」 竜虎はそれを聞いて眉を顰める。以前白冰に訊いたのだが、特級の鬼は術士たちがその居場所を把握している。 人の世に害を齎すことがほとんど、というかまずないのだと。現に、渓谷の妖鬼はこちらを傷付けることはなかったわけで。それがどうして急に事を起こす必要があるのか。(まさか、烏哭の仕業なんじゃ) しばらくして、自分たちが訴えたいだけ訴えたからか、言いたいことをすべて言い尽くしたからか、客たちはなんとか
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2025-11-03
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