真夕と佳子は一つの布団にくるまった。この二人も寝ておらず、話し続けている。「真夕、あんな男の子、見たことある?」と、佳子が尋ねた。「どんな?」佳子の脳裏に角刈りの整った顔が浮かんだ。「すごく冷たくてクールで……ケンカがめちゃくちゃ強くて、ちょっと怖い感じの……」真夕はハンガーにかかった黒いボンバージャケットを見た。最初は佳子が着ていたが、彼女が脱いで丁寧に掛けたものだ。それは明らかに、彼女を助けたあの青年のものだ。真夕が唇を曲げた。「古川くんのこと?あのミスターキャンパスの?」佳子がうなずいた。「うん」真夕がからかうように目を細めた。「命の恩人に身を捧げるつもり?」佳子の頬が赤くなった。「真夕!この話題はもうおしまいだ」真夕はくすくす笑った。佳子は慌てて彼女の口を押さえた。「笑わないでよ」ベッドに横たわる司の耳に、窓の外の激しい雨音と共に、二人の少女のひそひそ声が届いた。くすくす笑い合う様子は、狭い部屋に温もりをもたらした。司は薄い唇をわずかに上げた。佳子が照れくさそうに言った。「真夕、からかわないで。こんな話、誰にもできなくて……兄嫁のあなたにしか言えないんだもん」佳子は真夕のことを兄嫁として認め、また親友だとも思っている。だが、真夕はぎょっとした。「え?兄嫁?」佳子は内心どきりとした。真夕がまだ自分の身分を知らないことを忘れていた。真夕は佳子の従兄について記憶があった。「佳子、そのクズ男の従兄のことなの?」「クズ男」の司が振り返り、鋭い視線を佳子に向けた。また陰で自分の悪口か?佳子が一瞬黙り込んだ。彼女は恐る恐る口を開いた。「従兄はモテモテで、たくさんの女性が私の兄嫁になりたがってるけど、私が認める兄嫁は一人だけよ!」これは司へのメッセージだった。司は無表情だった。実は彼はすでに彩から告げ口されていた。佳子は彩と友達になるつもりなど毛頭なく、あの日林家に呼んだのは真夕のためだった。佳子は行動で、自分が認める兄嫁は真夕ただ一人であることを証明したのだ。従兄が誰と結婚しようが、自分の兄嫁は自分で選ぶのだ。司は何も言えなかった。自分に関係がないことのため、真夕は「従兄」の話題を深掘りしなかった。彼女は代わりに迅のことを考えた。彼には会ったことがあり、印象的だったから
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