元夫、ナニが終わった日 のすべてのチャプター: チャプター 311 - チャプター 320

注目を集めたフォーラムがついにこの日に開催された。朝早くに起きた真夕は佳子の手を引いた。「佳子、遊びに連れてってあげる」「どこに行くの？今日はみんながフォーラムに行くって。堀田社長とあの天才少女が一緒に登場するって噂よ」と、佳子は興味津々で言った。真夕は赤い唇を弓のように吊り上げた。「私たちもあそこに遊びに行くのよ」佳子は驚愕した。「えっ？」三十分後、真夕と佳子は会場に到着した。今日のフォーラムには各学界のエリートが集まり、現場は大賑わいだ。真夕は遠くから多くの知り合いを見つけた。舞も来ていた。彼女はC大の学生たちと一緒だった。数日前、逸人に告白された現場で笑いものになった彼女は、その後すぐに父親のコネを使ってこのフォーラムの招待状を手に入れた。彼女に連れられてきた学生たちはすぐに媚びへつらい、彼女の評判は再び上向いた。舞は得意げな表情でずっと笑っている。真夕は池本家の老婦人、次男家の彩と藍、そして三男家の華と直子も見かけた。この大家族が全員揃っており、彼らの言っていた通り、皆であの天才少女の姿を一目見に来たようだった。彩はすぐに真夕を見つけた。「あなたがなんでここにいるの？」華は傲慢な目つきで真夕を見下し、軽蔑の色をあらわにした。「ここはフォーラムよ。十六歳で学校をやめたやつが来るなんて、池本家の恥を晒すつもり？」池本家の老婦人は冷たい口調で叱りつけた。「すぐにここを出なさい。ここは招待状がないと入れないのよ。あなた、持ってるの？」真夕は澄んだ目で一同を見つめ、そして首を横に振った。「招待状は持ってないわ」真夕はやはり招待状を持っていなかったんだ！池本家の面々は誰一人として驚かなかった。彼女が招待状を持っていた方が不思議だったのだ。藍「じゃあ早く帰りなさい。さもないと、警備員に追い出されるわよ！」その時、舞がC大の学生たちを連れてやってきた。舞は嘲笑うように言った。「あら、これはこれは、C大の睡魔じゃない？」周囲の学生たちも笑った。「睡魔が今日は寝ないで、フォーラムに来たなんてマジでウケる」舞は一方の腕に彩、もう一方の腕に華を抱えた。「紹介するわ。こっちは睡魔の実の姉妹たちよ。でも、同じ池本家の娘でも、華姉さんは名門大学の博士後期課程修了者、彩姉さんも有名大学卒で、どちらも超優秀だわ。けど池本

辰巳は一瞬驚いた。「彼女が赤いバラに興味がないって、君がどうして知ってるんだ？」池本家の老婦人が口を挟んだ。「小山さん、彼女の戯言に耳を貸してはいけないわ。あの天才少女が小山さんに気に入られているのが羨ましくて、邪魔しようとしてるだけなんだから」辰巳は脅すように真夕に言った。「俺の邪魔をしない方がいいよ。俺は本気で彼女を口説くつもりだからな！」真夕はおかしくてたまらなかった。彼女は笑いながら辰巳を見つめた。「それなら小山さんの幸運を祈ってるわ」辰巳は鼻を鳴らしてそっぽを向いた。彩は、皆の関心があの天才少女に集まるのをよしとせず、話題を変えようと真夕をからかい始めた。「司、真夕もフォーラムに来てるんだけど、招待状を持ってないのよ」司は真夕を見つめ、低い声で尋ねた。「招待状、持ってないのか？」真夕は首を振った。「持ってないよ」司は薄い唇を少し上げて笑った。「どうやら、君のあのすごい彼氏ってのも大したことないな。招待状すら取れないとは」真夕「……」彼は自分の「彼氏」のことが気になっているに違いない。どこ行っても彼氏、彼氏って、誰よりも詳しいじゃない。佳子が司に向かって言った。「堀田社長、私も真夕も招待状がないんだけど、中に連れて行ってくれない？」司の視線は真夕の掌ほどの小さく美しい顔に落ち、短く聞いた。「どう？」連れて行ってほしいか？真夕は首を振った。「結構」佳子は焦って真夕に目配せし、小声で言った。「真夕、招待状がないじゃん。入りたいんでしょ？大丈夫だから、堀田社長がきっと連れてってくれるよ」真夕は微笑んだ。「佳子、堀田社長の助けは必要ないわ」彩と華は真夕を見た。「もう強がらないでよ。堀田社長が連れて行ってくれなきゃ、どうやって入るつもり？」「そうよ、できるなら今すぐ入ってみなさいよ」周囲の人々は皆、真夕を笑いものにしている。真夕はしなやかな背筋を伸ばし、佳子の手を取った。「じゃあ行こう」そう言って真夕は佳子と共に前へ歩き出した。舞は笑いながら言った。「入口はこっちよ」池本家の老婦人は苛立ちを隠せなかった。まったく、池本家の恥さらしだわ。入口すらわからないなんて。しかし真夕は振り返らなかった。入口は左側にあるが、彼女が向かったのは……VIP通路だった。スッ。誰かが息を

フォーラムが正式に始まり、会場には波のような拍手が鳴り響いた。司会者は笑顔で言った。「本日のフォーラムで最も注目されているのは、堀田社長とあの天才少女の初コンビです。皆様も、この天才少女の登場を心待ちにしていたことでしょう」人々の視線が一斉に司と、その隣の空席に注がれた。誰かが待ちきれずに叫んだ。「もう我慢できないよ。早く天才少女を登場させて！」司会者は笑顔で応じた。「では、次はいよいよ天才少女の登場です。彼女にこのフォーラムの開幕スピーチを務めていただきます！」天才少女が、ついに登場する！さっきまでざわついていた大ホールが、一瞬にして静まり返った。皆が息を飲んでその瞬間を待ち構えている。舞とその隣の学生たちは興奮した。「来た来た、ついに来たよ！」池本家の老婦人、華、そして藍は会場に入ってからずっと真夕を探していたが、見つからなかった。彼女を探すのはやめ、壇上に集中することにした。彼女たちにとってこの天才少女の正体こそが、今回の最大の関心事だったのだ。彩は顔を歪め、嫉妬の色を隠せなかった。どんな子か見てみようじゃない。きっとブサイクに決まってるわ！辰巳は赤いバラを握りしめながら、気づけば手に汗をかいていた。浜島市の暴れん坊と言われている彼だが、天才少女が出場する際にはこんなふうに緊張している。「兄貴、俺の女神、ほんとにもうすぐ来るんだね！」司は視線を上げ、壇上を見つめた。そこに、清らかでほこり一つないような佇まいの少女が、静かに現れた。彼女は今日、白いシャツに黒のタイトスカートというシンプルな制服姿で、飾りの一切なく、髪を清楚なポニーテールをしている。余計な装飾は何一つないのに、暗がりからスポットライトの下へ歩み出るその姿は、凛としていて目を奪われるような美しさだった。彼女は壇上へと進み、澄んだ瞳で会場全体を見渡し、にこやかに自己紹介した。「皆様、こんにちは。池本真夕と申します」皆様、こんにちは。池本真夕と申します！その清らかな声がマイクを通して会場の隅々にまで届いた瞬間、司はそれまでゆったりと腰かけていた体を勢いよく起こし、視線を真夕に固定した。驚愕のあまり、彼は息を呑んだ。彼女？まさか、彼女だったのか！あの後輩が、真夕だったなんて！池本家の老婦人と華も、壇上の真夕を見て瞳を大きく

司の胸にかすかな動きが走った。彼はさらに何か言おうとしているその時、彼の掌がふっと空になった。真夕がすでに手を引いていたのだ。真夕の周りには多くの若き俊才たちが集まってきた。その中に洲崎錦治（すざききんじ）という男がいる。彼もH大の卒業生で、現在はインターネット業界の新星で、企業の若き社長だ。錦治は真夕の清らかで絶世の美貌を見つめ、笑いながら尋ねた。「池本さん、恋愛の状況を聞いてもいいかね？」司は真夕を見た。すると真夕は眉を軽く上げて答えた。「独身、彼氏募集中よ」独身、彼氏募集中。錦治の目がぱっと輝き、彼はスマホを取り出した。「池本さん、同じ門下として、ラインを交換しよう」真夕は頷いた。「いいよ、洲崎先輩」真夕と錦治はラインを交換した。それを横で見ていた司は、ふと以前のことを思い出した。真夕は自分の友達追加申請を拒否していた。あれはただ、自分と繋がりたくなかっただけなのだ。だが彼女は、他の人とは繋がる。彼女は錦治のことを「洲崎先輩」と親しげに呼ぶ。しかし自分のことは「堀田社長」としか呼ばない。「先輩」ではない。司の心にぽっかりとした空虚が広がった。まるで大切な何かを失ったような気がした。「真夕！」そのとき、池本家の老婦人、彩、華、そして藍が現れた。だが彼女たちは近づけなかった。ここはVIPエリアで、彼女たちにはその資格がないからだ。スタッフが彼女たちを遮った。「申し訳ありませんが、これ以上はお入りいただけません」池本家の老婦人は顔を上げ、興奮気味に叫んだ。「池本真夕を呼んでくれ、私は彼女のおばあさんなの！」池本家の老婦人は思ってもいなかった。これまで池本家の汚点として扱ってきた真夕が、まさか天才少女だったとは。今や彼女の元へ駆けつける始末だった。真夕は騒ぎに気づき、振り向いた。スタッフがすぐさま真夕のそばに寄り、丁寧に伝えた。「池本さん、あちらの方々がお呼びです。このご婦人はご自身をあなたのおばあさんだと申しておりますが」池本家の老婦人は気まずそうに笑った。「真夕ちゃん、私はおばあさんよ」真夕ちゃん？池本家の老婦人がこう呼んだのは初めてだった。真夕は笑みを浮かべた。「おばあさんだと？記憶が正しければ、私たちは一時間ほど前に関係を断ったはずだよね？」池本家の老婦人は呆然とした。

司は、まさか錦治が現れるとは思っていなかった。同じ男として、彼はすでに錦治が真夕に好意を持っていることを察していた。錦治は真夕のことがとても気になっているようだ。真夕は司を一瞥すると、その後すぐに錦治を見て言った。「洲崎先輩、じゃあよろしく」真夕は迷いなく錦治を選んだ。司の整った眉目が瞬間的に陰った。錦治はとても嬉しそうに、紳士的に後部座席のドアを開けた。「池本さん、どうぞ」真夕と佳子は車に乗り込んだ。佳子は司に、同情とざまあみろが入り混じった視線を投げかけた。これは真夕をいじめた報いだよ。今や彼女はあなたなんか必要としていないんだから。司は一歩踏み出そうとした。その時、彼の腕が誰かに絡め取られた。彩だった。彼女は司の腕にしっかりと絡みつき、甘く笑みを浮かべた。「司、私を待っててくれたのね」司は顔を上げ、真夕の姿を追った。錦治の高級車はすでに発進しており、真夕を乗せて走り去っていった。真夕はすでに行ってしまった。司は視線を戻すと、彩の腕からそっと自分の手を引き抜いた。「会社に行くから、君は先に帰ってくれ」そう言って彼は背を向け、司は車に乗り込もうとした。彩の顔から血の気が引いた。彼女は慌てて司の前に立ちはだかった。「司、私を家まで送って」司の整った顔立ちは冷ややかだった。元々、佳子をいじめた件もあり、彼と彩の関係は修復されていない。淡々とした口調で言った。「会社に行かないと」「嘘よ！さっき聞いたわ、あなた、あの人と真夕を送るって競ってたじゃない！なんで私には会社に行くなんて言うのよ？」司の表情は冷たくなった。「池本彩！」彼は彼女の名前を低く呼んだ。その声には威圧感があった。彼は外で騒ぐ気はない。彩は凍りついた。司はためらうことなく進め、車に乗り込んだ。その場に取り残された彩は、彼の背中を見つめながら叫んだ。「司、真夕に惹かれてるの？そうよね、真夕は天才少女だもの。そんな生まれついての才女が、あえてへりくだって植物状態のあなたと結婚して、三年間も家庭にこもって尽くしてきたのよね。私でも心を奪われるわ！」彼女の嫌味混じりの言葉に、司の足が止まった。彼はゆっくりと振り返り、冷たい視線で彩の華やかな顔を見つめた。「君の言う通りだから、俺はなんとも言えないね。彼女は天才