椅子に座っている星羅は、母親を大人しく待っている。その小さな手にはキャンディを握っている。その時、突然二人の男が近づき、星羅の口を素早く塞いだ。男二人はそのまま星羅を抱きかかえて連れ去った。星羅は恐怖に目を見開いた。大声で助けを求めたい星羅は、「ママ」と叫びたかった。しかし、その口を塞がれており、一言も声が出せない。パッ。星羅の手からキャンディが床に落ちた。二人の男はそのまま星羅を連れ去っていった。真夕はまだ電話中だった。「先輩、どうしたの?」「真夕、さっき空港に向かう途中で車をぶつけられて、ちょっとした事故が起きたんだ。少し遅れそうだ」と、逸夫が説明した。真夕の緊張した気持ちは一気に緩んだ。追突された程度かと安心した。逸夫に何か大きな事故が起きたのではと、真夕は心配していたのだ。「先輩、無事ならそれでいい。飛行機を遅らせるように言っておくよ。処理が終わったら来てね」「わかった、真夕」電話を切った真夕は振り返った。「星羅、逸夫パパがね……」真夕の言葉は途中で止まった。星羅が座っていたはずの席が空っぽだったのだ。真夕の瞳が縮まった。「星羅?星羅!」真夕は大声で呼びかけた。ロビー中を見渡しても、星羅の小さな姿はどこにも見当たらない。星羅はどこに行ったの?その時、真夕は床に落ちているキャンディを見つけ、それをすぐに拾い上げた。それは星羅のものだ。まずい、星羅に何かあったに違いない!……星羅は黒服の男二人に無理やり連れ出されていた。外にはある黒い車があり、二人は星羅をその車に無理矢理押し込もうとした。だが、星羅はとても賢かった。彼女は素早く男の手に噛みついた。ぐっ!男が痛みに顔を歪めたその隙に、星羅は地面に飛び出し、そのまま一気に走り出した。「くそっ、このガキは頭いいぞ!早く追え!」男二人は星羅を取り戻そうと追いかけ始めた。星羅は走りながら、大声で叫んだ。「助けて!ママ、助けて!」その時、一台の高級車が止まり、環は車椅子に座ったまま、使用人と降りてきた。環は星羅のか細い叫び声を耳にし、顔を上げた。「星羅!」星羅も環を見つけ、まっすぐに駆け寄った。「おばあさん、この人たち悪い人なの!私を連れて行こうとしてるの!助けて!」星羅はそのまま環の腕の中に飛び込んだ。環は
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