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転生吸血姫 のすべてのチャプター: チャプター 61 - チャプター 70

103 チャプター

ep60 ナマイキ美人令嬢

昼になり、リザレリスたちは食堂に移動した。さすがは世界屈指のデアルトス国立学院というだけあり、食堂も実に立派なものだった。まるで貴族学食とでも言うべき環境は、城生活に慣れていたリザレリスも唸らせるものだった。だがリザレリスには、立派な食堂を味わっている暇はない。「リザさまは今、デアルトスの屋敷に住んでいらっしゃるのね?」食事をしながら、クラスメイトたちからの質問タイムが始まった。リザレリスはいったん食事の手を止めて頷く。「そうだよ。馬車で来てるけど、近くて楽で助かってる」「お国ではやっぱりお城に住んでいらっしゃるの?」「うん。古いけど、大きくて立派な城だよ」「大きなお城だって。すごーい!」彼女の着いたテーブルには先ほどのクラスメイトたちも集まり、皆で賑やかな食卓を囲っていた。「ねえねえ、リザさま」不意にクラスメイトの女子が、やけに興味深々な目を向けてきた。それまでとは違う、女の目だ。「なに?」とリザレリス。「フェリックス様とは、どういうご関係なの?」この質問には、このテーブルに着いた女子全員が色めきだった。「えっ、ただの友達だよ友達」質問の意図を理解したリザレリスは、笑いながら殊更に「友達」を強調した。実際、それ以上の事実もまったくない。「でも、今朝はフェリックス様に送られてきたんでしょう?」「あれはただのあいつの親切だよ」「あいつ??」女子全員がわっと驚く。「リザさまは、そんなにフェリックス様と仲がよろしいの?」「いやいや、まだ数回会っただけだよ?」「数回お会いしただけなのに!?」リザレリスはことごとく墓穴を掘った。女子たちは互いに顔を見合わせると、今度は目つきを変えてリザレリスに迫ってくる。「リザさま。もっと自覚した方がよろしいですよ」「フェリックス様は才色兼備の本物の王子様です。女にとっては憧れの的であり、男にとっては尊敬の対象です」「そんな方と、そこまで親しげだということは、どういうことなのか」矢継ぎ早に言及され、リザレリスはあたふたとしてしまう。「み、みんな、ちょっと落ち着いて。エミル助けて」エミルは隣にいながらも、リザレリスのフォローができなかった。女子生徒たちの言っていることは、もっともだからだ。むしろ、これを機に王女殿下にももっと自覚を持ってほしいとさえ思ってしまっていた。「だから、
last update最終更新日 : 2025-05-25
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ep61 おっとり系美少女

「ぼ、ぼつらくおうじょ?」思わずリザレリスはオウム返ししてしまう。それだけインパクトのあるフレーズだった。「ちょっとシャミナードさん。リザさまは気さくな王女なのよ」リザレリス側の女子が擁護の発言をするも、シルヴィアンナと取り巻きふたりが睨みつけて黙らせる。「あなたたちみたいに中途半端な貴族の娘の言葉なんてどうでもいいの。わたくしが言いたいのは、所詮その女は没落した王女ってことよ。ほら、すでにクラスにひとりいるじゃない。没落した名家の娘が」シルヴィアンナは食堂の隅の席を指さした。そこには小さいテーブルで寂しそうに食事をしている女子がいた。「あのコは......」リザレリスにはそれが誰だかわからなかった。クラスメイトだったとしても、まったく記憶に残っていない。地味すぎて存在そのものに気づかなかったようだ。シルヴィアンナは鼻で笑ってから吐き棄てる。「つまりね、ブラッドヘルムさん。あなたもあのコと同じってこと」「ええと、あれは?」リザレリスが訊くと、シルヴィアンナは見下した目つきで説明する。「あのコはクララ・テレジア・バッヘルベル。昔は名門貴族だったらしいけれど、ただの田舎貴族の娘よ
last update最終更新日 : 2025-05-26
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ep63 結果

「なにあの没落王女。ただ元気が良いだけのバカじゃない。これに懲りて大人しくすればいいんだわ」シルヴィアンナの痛烈な一言が突き刺さる。魔法授業が終わっても机に塞ぎ込んだまま立ち上がれないリザレリスには、言葉を返す力も湧かなかった。「いっそ国に帰ってしまえばいいんだわ」シルヴィアンナはリザレリスに向かって捨て台詞を吐き、取り巻きと共に教室を出ていった。教室は一気に静かになる。他のクラスメイトたちは、リザレリスにかける言葉が見つからなかった。文字通り、リザレリスは何もできなかったのだ。例えるなら、水泳の授業で水に潜ることすらできないようなものだった。「リザさま」ややあってからエミルが声をかけた。「でも、座学はきちんと理解されていたようなので、きっと大丈夫です」無反応かと思われたリザレリスが、おもむろにむくりと顔を起こした。ズーンとした表情を浮かべて。「葉っぱ一枚を僅かに動かすことも燃やすこともできず、コップの水をちょっとでも冷やすことすらできない」ここから急にリザレリスは、くわっとなる。「てゆーか、なんでみんなフツーに魔法使えるんだよ!フツーにスゲーんだけど!」リザレリスの叫びに、クラスメイトたちは互いに顔を見合わせてから「そういうことか」と苦笑を浮かべた。何かが腑に落ちたようだ。「リザさまは、究極の箱入り王女様なんですね」
last update最終更新日 : 2025-05-28
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ep65 先輩

三人揃って教室から出ようとした時だった。リザレリスたちの行く手を阻むように、一人の女子が入口に立っていた。「ちょっといいかしら」「えっ」先頭を歩いていたリザレリスは、ピタッと立ち止まる。その女の視線は明らかに自分へ向けられていた。知らない女。リザレリスは一瞬だけ考えたが、クララへ視線を投げた。クララはかぶりを振った。彼女も知らないようだ。「あの」とエミルが一歩前に出る。「失礼ですが、どなたさまでしょうか?」女はこちらを試すように薄笑いを浮かべて片手を腰に当てた。「私はマデリーン・ラッチェン。あなたたちの、ひとつ上の先輩よ」女はリザレリスをじっと見据えてきた。リザレリスもじっと見返した。対抗したわけではない。マデリーンが、モデル体型をした美人だったからだ。紫がかった黒髪は彼女の高い腰まで伸びている。前髪はお洒落に揃っていて、黒い瞳を湛えた艶やかな目と口元をより印象的なものにしている。なんというか、シルヴィアンナがシャム猫なら、マデリーンは黒猫だとリザレリスは思った。「大人っぽい美人さんだなぁ」マデリーンをまじまじと見つめながらリザレリスは唸る。それは前世の遊び人男の人格からくる
last update最終更新日 : 2025-06-01
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ep66 放課後

初日から波乱を予感させることがあったものの、放課後のリザレリスは躍動していた。クララとともに街に出かけていたのだ。「クララって、男子に人気だろ?」カフェで向かい合わせに座ると、リザレリスは両肘を机に置き、真正面からクララの顔をまじまじと覗き込んだ。クララは恥ずかしそうに顔を背ける。「そ、そんなことないです。私のことなんて、誰も気にしていないし......」「こんなにカワイイ娘を!?」「も、もう、やめてください」リザレリスの褒め殺しに合い、クララはあわあわすることしかできなかった。リザレリスは背もたれに寄りかかり腕を組む。「見る目がないんだな、クラスの連中は。俺...わたしの中では、次の朝ドラヒロインはクララに決定なんだが」リザレリスの評価は揺るがない。それだけクララを本気で可愛いと思っていた。「私なんか、そんな......」当のクララは当惑しっぱなしで、終始リザレリスに振り回されていた。こんなふうに放課後、友人と遊びに行くことも異例だった。人見知りで内向的なクララには、目の前の王女が、地味な自分に興味を持つことが理解できなかった。貴族とは名ばかりの、没落した一族の娘である自分
last update最終更新日 : 2025-06-02
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ep69 魔法授業(1)

休憩時間が終わり魔法授業が始まる。この日の魔法授業ではエミルが躍動した。授業内容が、エミルの得意分野だったのだ。「グレーアムさんは、本当にスゴいですね」と教師も感嘆の息を洩らしたほどだ。内容は、紙飛行機を魔力で飛ばせてどこまで浮遊させていられるか、というもの。単純な内容だが、教室内で行うのがポイントだ。多くの場合、いずれ壁や天井にぶつかってコントロールを失い落ちてしまう。互いの飛行機がぶつかり合って落ちてしまうこともある。しかも外でやるのと違い自然の風に乗ることがない。魔力だけでの浮遊とコントロールが要求されるのだ。「グレーアムくん、すごい」クラスメイトたちからも溜息が洩れた。しかし風使いのエミルにはたやすいことだった。彼の紙飛行機は、広い教室内を優雅に旋回していた。そんな中、一機だけ異様な飛行を見せる紙飛行機が存在した。「ブラッドヘルムさんのは、なんというか......」教師も悩ませる、リザレリスの飛ばした紙飛行機。それは何かに耐えるように椅子の下をかろうじて浮遊していた。どうしてそうなったのか、リザレリス自身もよくわかっていない。ただ、浮遊し続けてはいたので、教師も評価に困っていた。
last update最終更新日 : 2025-06-05
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