Semua Bab 君が目覚めるまではそばにいさせて: Bab 101 - Bab 110

131 Bab

ヤマトの章 10 終わりの始まり 1

 その日の真夜中、何故か僕は見知らぬベッドで寝ていた。一体ここはどこだろう? 僕はパニックになった。それに身体が思うように動かない。何とかふらつく身体を起こし、周囲を見渡した。「あれ……もしかしてここは病院……?」僕はどうやら個室のベッドに寝ていたらしい。ベッドに取り付けられた名札は無記名になっている。辺りを見渡し、そっと病室を出て部屋番号を確認する。「502号室……」ひょっとするとここは本物の間宮渚が入院している病院なのかもしれない。そこで、この病院の名前が分かる物が何かないか病室に戻り探してみることにした。テレビ台の引き出しを開けてみると病院のパンフレットがある。「国立総合病院」とあった。住所は、僕らが住んでいる場所から電車で数駅と割と近い病院だ。場所は分かったけど、どうしたらまた千尋の元に戻れるのだろう? いっそこのまま病院を抜け出してしまおうか? そもそも僕と間宮渚の身体は一つになってしまったのだろうか?悪い考えだけがグルグル頭を巡る。その時。巡回の看護師だろうか、こちらに近づいてくる。慌ててベッドに入ると眠ったフリをした。やがて看護師は部屋のドアを開ける。どうかこの部屋に入って来ませんように……。僕は必死で祈った。すると祈りが通じたのか、看護師はライトでグルリと部屋を照らしただけで、すぐに部屋から出て行った。良かった……。何とかバレずにすんだみたいだ。それにしてもこんな状況だと言うのに異常な眠気が僕を襲ってきた。もう意識を保っているのも難しい。そのまま僕は結局眠ってしまった……。 朝、目覚めるとそこは僕がいつも寝起きしている幸男さんの部屋だった。もしかしてあれは夢だったのだろうか? やけにリアルな夢だったなあ……。恐らく、この生活は長くは続かないんじゃないだろうか? 僕の本能がそう言ってる。本物の間宮渚はひょっとすると生きようと思っているのかもしれない。もし彼が目を覚ました時……それは恐らく僕がこの世から消滅してしまう日となるのだろう。そんな予感がする。だって元々この身体は彼の物。僕の身体はとっくに死んで無くなってしまっているのだから。だとしたら千尋と過ごすこの時間、一分一秒でも長く側にいたい。だから僕は朝ご飯を食べている時千尋に訊ねた。「今日、二人で一緒に何処かに出掛けてみたいかな……なんて」「そうだね、特
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-02
Baca selengkapnya

ヤマトの章 11 終わりの始まり 2

 何処へ出掛ける? って千尋に聞かれたとき、僕には色々行ってみたい場所があったけど、最初のお出かけはもう決めていた。千尋が休みの時、普段どんな過ごし方をしているのかがどうしても知りたかった。「こんな単純なお出かけでいいの?」 千尋は驚いたように訊ねてきたけど、僕は十分満足だった。 二人での初めての外出は本当に素晴らしい日となった。まず千尋。普段の服装とは全く違った女の子らしい服装ですごく似合っていた。他のどの女の子達よりもずっと可愛かったなあ。なんせ他の男の人達からも注目を浴びていたしね。でも正直、千尋を僕以外の男の目に晒したくない。だから千尋に言ったんだ。「僕が側についていないと、悪い男に声をかけられてしまうかもよ。だから……さ。手、繋がない?」嘘だ、本当はこんなの詭弁だ。ただ僕が千尋と手を繋いで街を歩きたかっただけ。でも千尋は嫌がらずに手を差し出してきた。僕はその手をそっと握る。うわあ……小さくて柔らかい手だなあ……。千尋を見ると少し耳が赤くなっているのが分かった。そんな千尋を見ていると僕まで照れてしまう。「何だか……ちょと照れちゃうね」照れ隠しに言ってみた。千尋はそれじゃやめる? って聞いてきたけど、僕にはやめる気なんか全くない。だから、より一層千尋の手を握りしめた。 僕が選んだお店のランチ、千尋すごく喜んでくれた。本屋さんでじっくり選んだ甲斐があったなあ。だからもっと僕を頼ってね。だって僕がここにいる存在理由は千尋なんだから。 楽しいデートが終わって帰り道のスーパー。僕は後どれ位千尋とこうしていられるのだろう。そう思うと何だか切なくなってきた。そんな僕に気が付いたのか、千尋が声をかけてきた。「どうしたの? 渚君。何だか元気が無いように見えるけど」ああ、やっぱり君は優しいね。僕の落ち込んでる姿に気が付いてくれるなんて。「うん……。楽しい時間てあっという間に過ぎて行ってしまうんだなと思うと少し寂しい気持ちになってね」「いつも一緒にいるのに?」「だけど、いつまでも一緒にいられるとは限らないかもしれないし」しまった。つい自分の本音を千尋に語ってしまった。「え……? それは一体どういう意味……?」途端に千尋の表情が曇る。もしかして僕にいなくならないで欲しいって思ってる? 少しは期待を持ってもいいのかな?「千尋、またこんな風に僕と出
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-03
Baca selengkapnya

ヤマトの章 12 終わりの始まり 3

—来週はクリスマスイブだ。最近身体の調子がおかしくなってきた。初めてその現象が起こったのは数日前。突然右手に激しい痛みが走り、手首から指先までかけて半透明に透き通り始めた。「!」それはほんの一瞬で、すぐに元に戻った。けれど僕は恐怖に震えた。ああ…とうとう始まったのだ。こうやって徐々に身体が消え、いずれ間宮渚と身体が一体化して僕の魂は消えていくのだろう。嫌だ、消えたくない。だって僕はまだ千尋に肝心なことを聞いていないのに。**** この日の夜。僕と千尋は里中さんと、先輩にあたる近藤という人と皆でラーメンを食べに行くことになった。近藤さんはとても気さくなタイプの人で、どうも千尋と里中さんの仲を取り持ってあげようと画策していたみたいだった。でも僕は反対出来ない。だってもうすぐ消えてしまう僕に、千尋を縛り付けることは出来ない。その後どういう話の流れか、里中さんも僕たちのクリスマスパーティーに参加することが決定していた。****——クリスマスイブランチを食べに来ていた近藤さんが突然僕に声をかけてきた。「間宮君、ちょっといいかな?」「はい、どうかしましたか?」「実は里中が高熱を出して寝込んでしまったんだ。悪いけど今日のパーティーは欠席させて欲しいと伝えてくれって言われたよ」「え? 里中さん、大丈夫なんですか?」「う~ん。あいつ一人暮らしだし、料理もしないから大変かもな。でもあいつには悪いけど余裕が無くて。今日はこっち、人手が足りないんだよ」近藤さんは随分困っているようだ。そこで僕は閃いた。「近藤さん、ちょっとだけ待っててもらえますか?」厨房に戻ると責任者の人に午後から半休を貰えないか聞いてみた。すぐに休みの許可を出してもらうことが出来たので僕は近藤さんの元へと戻った「近藤さん、僕が代わりに行ってきます。だから里中さんの住所教えてください」 **** それにしても里中さんの部屋のマンションを開けた時は本当に驚いた。まさか部屋の真ん中で倒れているなんて思いもしなかった。が看病しに来たことを話すと照れ臭そうにお礼を言ってきた。…多分彼となら千尋は幸せになれるだろうな。でもそう考えると胸の奥がチリリと痛む。 結局この日のクリスマスパーティーは中止になった。やっぱり里中さんに悪いからね。……大丈夫だよ。僕はいないけど来年もまたやれるんだか
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-04
Baca selengkapnya

ヤマトの章 13 前世の記憶に翻弄される 1

 3つの記憶を同時に持つと言う事は中々困難なことだと思う。 間宮渚の記憶は普段は記憶の奥底に閉じ込めておくことが出来る。大分この身体にも慣れてきたお陰か、必要な時だけ記憶を取り出せるようになっていた。でも僕を苦しめるのは前世の記憶。これは実際僕が過去において経験したことだから押し込めておくことなんて出来ない。咲と過ごした楽しい記憶もあるけれど、やはり生々しい戦の記憶は封じ込めておけない。夢の中で度々僕は過去の記憶の悪夢にさいなまされる。最近特に悪夢が増えてきたのは、やはりもうすぐ自分が消えてしまう恐怖からなのかもしれない……。 **** クリスマスも終わり、年が明けた。僕と千尋は穏やかな時を過ごしている。千尋と過ごせる時間も残りわずかなのはもう分かっている。だって、自分の身体が消える時間がどんどん増えて来てるんだから。今は消えるのは両手のみだけど、やがて徐々に他の部分も消えるのだろうと思うと頭がおかしくなりそうだった。だからなるべく考えないようにしている。千尋ともっと色々な思い出を作りたい、その思いを胸に僕は最後は潔くこの世から消える。そう、心に決めた。「ねえ、千尋。明日二人で一緒に出掛けない?」今日が休みの最終日。僕は思い切って千尋を誘ってみた。千尋は快く快諾してくれた。そこで僕は千尋を連れて以前から行ってみたいと思っていた水族館へ誘ってみた。そこは海のすぐそばにある水族館。きっと千尋も気に入ってくれるはずだ。 着いてみるとちょっとだけ驚いた。館内は若い男女のペアばかり。皆手を繋ぎあったり腕を組んで歩いてる。ここで僕たちが手を繋がないのは不自然かな?「手……繋ごうか?」僕が尋ねると千尋は黙って頷いた。手を差し出すと、千尋もおずおずと手を伸ばす。そこを指をからめとってしっかりと繋いだ。千尋は驚いたように僕を見たけど、恥ずかしいのでわざと横を向く。でも顔が赤くなってるのがばれてしまったみたいだ。そんな僕を見て千尋はクスリと笑うと、僕のつないだ手をギュッと握りしめた。驚いて千尋を見ると彼女は笑顔を向けてきた。「行こうか? 渚君」とーー 水族館は間宮渚の記憶にも無かった。彼は一度も水族館には来ていないのだろう。お陰で新鮮な気持ちで観る事が出来た。 水族館を出ると二人で海沿いのカフェでランチを取ることにした。会話の中で高校生の時、
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-05
Baca selengkapnya

ヤマトの章 13 前世の記憶に翻弄される 3

「ねえ、渚君。無理しないで、少しここで休んでいこうよ?」渚の声で僕は現実に引き戻された。顔を上げると、千尋が心配そうに見つめている。ここにいる? それは無理だ。ここにいるのはもう限界だった。「嫌だ……。この場所から離れたい……」 こんな場所にいつまでもいたら、頭がおかしくなりそうだ。波の音と潮風があの時の記憶を呼び覚まし、酷い頭痛と眩暈がする。千尋は海から離れるまで僕を支えてくれた。ごめん……千尋。迷惑かけて。 たまたま近くにあったファストフード店に二人で入ることにした。大分具合は良くなってきたけど、まだ酷い眩暈がする。「ごめん……ね……千尋。折角二人で楽しもうと思ってたのに」無理して笑顔で言ったけど千尋は心配そうに僕を見ている。千尋が何か言いかけたけど、途中でやめてしまった。何を言いたかったのかな? 情けない男だと思われたかもしれない。具合が悪い僕を気遣ってか、千尋は帰ろうと言い出した。確かに今日の僕は体調が悪くて限界かもしれない。明日から僕も千尋も仕事だから帰ることに決めた。 ****  夜は二人で海鮮鍋を作った。並んで台所に立つと何だか新婚夫婦みたいだ。自然と気持ちが弾んで鼻歌が出てしまった。千尋もニコニコしている。良かった、今日僕のせいで千尋に気まずい思いをさせてしまったからね。鍋をストーブにかけると、二人で交代でお風呂に入った。たまにはこういうのもありかもね。お風呂から上がると二人で日本酒を飲みながら鍋料理を食べた。 千尋の用意した日本酒はすごく美味しくて、いつになく饒舌に日本酒について語っている。「ははは……。千尋は本当にお酒が好きなんだね。でも明日から仕事なんだからあまりお酒飲み過ぎない方がいいよ?」すると、千尋はこの先いつでも飲めるからと言ってくれた。その言葉はとても嬉しかったけど、僕の心に暗い影を落とす。「この先いつでも……か」小声で言ったつもりが千尋の耳にも届いていたらしい。千尋は僕の言葉を聞いて不安そうにしている。ごめん、こんなこと本当は言うつもりじゃ無かったのに……。僕が後片付けをしようとしたけど、何故か今夜の千尋は頑として譲らなかった。「今日海で具合が悪くなったでしょう? 私がやるから大丈夫だってば」そう言われてしまえば、僕は返す言葉も無い。だから厚意に甘えて僕は先に休ませてもらうこ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-06
Baca selengkapnya

ヤマトの章 14 前世の記憶に翻弄される 3

「渚君!」気が付けば眼前に千尋の顔があった。心配そうに僕を覗き込んでいる。咲……!僕は彼女をきつく抱きしめた。「嫌だ……海の中は……息が出来なくて寒くて怖い……。助けて……」身体の震えが止まらない。まるで夢と現実の境目にいるみたいだ。「大丈夫、渚君……私が側にいるから、もう怖い思いさせないから……」千尋のぬくもりが徐々に僕を現実へと引き戻す。「本当に……? 本当にもう大丈夫なの?」それでもまだ僕の恐怖は拭えない。「うん、大丈夫。私が渚君が眠るまで側にいるから」千尋の声は僕を安心させてくれる。どうか、今夜だけは僕が眠りに着くまでは側に……。 翌朝、目が覚めた時僕には昨夜の記憶が全て残っていた。あんな子供みたいな振る舞いを千尋の前でしてしまうなんて、穴があったら入りたい。だから千尋に昨夜の事を覚えてるか聞かれたけど、何も覚えていないって思わず嘘をついてしまった。ごめんね、千尋。やっぱりもっともっと千尋と楽しい思い出を残しておきたい。だから千尋にお願いをしてしまった。二人で色々な場所へ遊びに行きたいって。千尋も頷いてくれた。断られなくて本当に良かったな。**** その後、僕と千尋は約束通り二人が休みの日は色々な場所へと出掛けた。動物園、映画、遊園地、ドライブ……僕が行きたかった全ての場所へ一緒に行った。ねえ、千尋。僕のこと、どう思ってくれている? 好意を持ってくれてるのかな?でもまだ拒絶されるのが怖くて僕には千尋の気持ちを尋ねる勇気が持てなかった―― この頃の僕は油断すると頻繁に身体が消えかける現象に悩まされていた。病院に入院している間宮渚の身体は今、どうなっているのだろう? かなり危険な行為かもしれないけど一度病院に行ってみようと心に決めた。 千尋には家電を買いに行くと嘘を言って僕は間宮渚が入院している病院に向かった。病院の案内図を見る。どこに入院しているかはすぐに把握出来た。顔を見られるとまずいので、僕は持ってきたサングラスをかけ、マフラーで口元を隠した。人目に付かないように彼が入院している病棟に入ることが出来た。廊下に誰もいないのを確認すると素早く502号室に入る。そしてゆっくりとベッドに近づいた。もし彼に近づいた瞬間目を覚ましたらどうしよう。恐怖で足が震える。けれど……彼はまるで死んだように眠っている。その姿を
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-07
Baca selengkapnya

ヤマトの章 15 僕が今、願うこと 1

 頭の中で間宮渚の記憶を引っ張り出し、彼が何者か分かった。名前は「橘祐樹。渚の幼馴染で、子供の頃からの付き合いだ。祐樹によって、半ば強引にファミレスに連れて来られた。こんな所で渚の知り合いに会うなんて全く僕はついてない。渚の知り合いたちに会うことによって目覚めの時は早まってしまうのでは無いかという恐れがあったからだ。何とか適当な言い訳をして見逃してもらうことは出来ないかな……。橘祐樹は僕を睨み付けてきた。「おい、渚。さっきから黙ってばかりいないで何とか言えよ。お前……もしかして俺のこと忘れちまったのか? いや、そんなはずないよな? 俺を見て逃げ出そうとしたんだから」僕は何と答えたら良いか分からなかった。だって本当のことなんて言えるはず無いし、何より信じて貰えるとも思えない。「う~ん。どうもさっきから変な感じがするんだよな……? 俺の知ってる以前のお前と今のお前、全く雰囲気が違って見えるんだが……。お前、渚に変装した偽物か?」確証を付いてくる質問にドキリとした。そうだった、彼は昔から妙に頭が切れて勘も鋭かった。「偽物じゃ……ないよ……」それだけ言うのがやっとだった。だけど完全に怪しまれている。祐樹は僕のキャラが変わったと疑わない。確かにこんな口調、本物の渚なら使う訳無いけど、中身は僕。今更話し方を変えるなんて出来っこない。  延々と質問攻めにあった。ようやく解放されるかと思ったら祐樹は僕のスマホを取り上げ、勝手に自分の連絡先を登録して返してきた。本当に勘弁してほしいと思う。だって祐樹に会う事によって何らかの刺激で渚の目が覚めてしまう危険性が大いにあるのだから。自分の我がままで勝手な言い分だってことは良く理解してる。けど後少し、後少しだけ千尋と一緒にいたい。だって何百年もかけてようやく再会できたのだから。……恐れていた通り、早速その日の夜に祐樹から電話が鳴った。千尋は出なくていいのかと尋ねてきたけど、僕は迷惑電話かもと言ってごまかした。けれど結局何度も何度もしつこく祐樹が連絡を入れて来るので、やむを得ず電話に出た。途端に祐樹の怒鳴り声が聞こえ、その会話は千尋の耳にも届いてしまったみたい。電話の相手が酷く怒っているようだと千尋は心配していたけど、気にしないように千尋に言った。でもすごく不安そうな顔をしている。ごめん、千尋……。その後
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-08
Baca selengkapnya

ヤマトの章 16 僕が今、願う事

「よお、渚。悪い、待ったか?」「いや、僕もついさっき来た所だから大丈夫だよ」自分の顔が引きつっているのが分かる。「それより僕に話って何? わざわざこんな場所まで呼び出して……そんなに大事な話なの?」一応僕は祐樹に質問してみた。「いやあ……ただ俺はもう一度、どうしてもお前とじっくり話をしたかったから呼び出しただけさ」のんびりした言い方に流石に呆れてしまった。「そんな話の為に僕を呼び出したの? だったら帰るよ」たったそれだけの理由で僕をここまで来させるなんて、もうこれ以上は付き合い切れない。そう思って立ち上がろうとしたが祐樹に引き留められた。そして祐樹は何故か、渚が以前付き合っていた女性に通帳とカード全て奪われたと言う話を始めた。確かに僕の記憶の中にある。でもそれが一体何だと言うのだろう? 黙っていると祐樹が続けた。「あれ? もしかしてお前、この件……ひょっとして覚えていないのか? もしかして記憶が欠けたのはそれが原因だったのか?」まさか、そんな訳無いじゃないか。だけど、何といえばいいのだろう。その時僕の目に散歩中の犬が目に入り、思わず可愛い犬だと呟いてしまった。途端に顔色を変える祐樹。「お前、やっぱり渚じゃないな!? 誰なんだ!」しまった! 渚は犬が大嫌いだったんだ。これだから複数の記憶を持つっていうことは厄介だと改めて思う。疑惑の目を向けられ、僕は祐樹に胸倉を掴まれ、拳を振り上げられた。殴られる! そう思った瞬間、意外な掛け声を聞いた。「待てよ!!」そこにいたのは里中さんだった――**** ……どうしてこうなってしまったんだろう。僕ら3人は国立公園にあるカフェに向かい合って座っている。お互い無言だ。このまま黙っているのも不自然なので僕から話すことにした。「ところで、里中さん。どうして今日はここにいたんですか?」急に話を振られた里中さんは明らかに動揺している。……ひょっとして僕の後をつけて来ていたのかな?「お、俺はサボテンを買いに来たんだ! ほら、あそこにもポスターが貼ってあるだろう?」必死で言い訳してるのが傍目からも良く分かった。でも僕の為に自分の立場を考えずに飛び出してくれた里中さんに心の中で感謝した。だから僕も白々しい嘘に乗る。「へえ~里中さん、サボテンが好きだったんだ。ちっとも知らなかったよ」けれど祐樹は疑いの
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-09
Baca selengkapnya

ヤマトの章 17 僕が今、願う事 4

 結局最後まで祐樹は僕を偽物だと信じて疑わず、話は平行線で終わってしまった。最後に祐樹は僕と里中さんに名刺を渡して、今度店に飲みに来いと誘ってきた。でも悪いけど行く気は全く無い。お酒なんか飲んだりしたらどこでボロが出るか分かったものじゃないし、何より千尋を夜一人きりになんかしておけるわけないじゃないか。でも里中さんは行く気満々だ。お酒好きそうだものね。店を出る祐樹を見送ると僕は里中さんと二人きりになった。これからどうする? と尋ねられたけど、行先は決まっている。里中さんには何処かで時間をつぶして帰ると言って店を出た。祐樹と会ったことで病院で眠っている渚に何か変化が無いか? それだけが気がかりだった。**** 電車とバスを乗り継ぎ、国立病院へ向かうバスの中。不安でたまらなかった。今、ここで僕が消えてしまうことがおきませんように……。病棟に向かう前に帽子とマフラーで顔を隠した。辺りに人がいないことを確認すると5階の階のボタンを押す。そしてドアが開くと素早く中に乗り込む……気が付いた。あそこにいたのは里中さんでは無いだろうか?もしかすると後を付けられていたのかもしれない。彼には感謝しているけど、僕の秘密を知られる訳にはいかなかった。5階で止まるエレベーター。降りると病室には行かずに非常階段を使って病院の外へと逃げた。どうか里中さんに気が付かれませんように……。それだけを祈りながら僕は彼が病院から出てくるまで駐車場の陰に身を隠して見守っていた。それから約30分も経った頃、ようやく里中さんが病院の正面玄関に姿を現した。心なしか足元がおぼつかない気がする。まさか渚が入院している部屋を見つけてしまったのだろうか?すごく気にはなったけど、僕が今すべき事ことは病室に行って渚の様子を見てくることだ。僕は再び病室へと向かった――**** 結局渚はいつもと変わらず眠り続けていたので安心して部屋を出ようとした時。右手首がギリギリと痛み出して、スーッっと消えかけていく。まただ、いつもの発作が起こった。必死で痛みに耐えながら渚の方を振り向いたとき。「!」僕の右腕が消えるのと比例するように渚の右腕がピクリと動いている。そうか……やっぱり。僕は納得した。僕の体の一部が損なわれると、その部分機能が渚に戻る。もう本当に時間が無い……。僕は本能で感じた。最近
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-10
Baca selengkapnya

ヤマトの章 18 覚悟を決めた日 1

 この身体になって僕は初めて熱を出してしまった。昨夜中々寝付けなかったのが原因だったのかもしれない。「……まいったな……」ベッドの中でポツリと呟く。早く起きて朝ご飯とお弁当の準備をしないといけないのに……でも身体が全くいうことを聞いてくれない。その時、部屋の外で遠慮がちに僕の名前を呼ぶ千尋の声が聞こえてきた。「おはよう、渚君。起きてる?」返事をしたいけどうまく声に出せない。すると部屋の戸が開いて千尋が僕に近づいてくる気配がする。駄目だよ、千尋。部屋に入ったりしたら僕の風邪がうつってしまう……。そこで僕の意識は完全に途絶えた―― ****「ここはどこだろう…?」僕は見知らぬ花畑の中に立っていた。空は青く、優しい風が吹いている。ああ……ここは毎年春になると咲と花を摘みに来ていた野原だ……。咲は名前の通り、花がとても大好きだった。そして色々な薬草についても詳しかったので村の人達からは「薬師様」なんて呼ばれることもあった。遠くで長い黒髪の女性の後姿が花畑の中から見え隠れしている。あ、あの後ろ姿はーーそこでふと目が覚めた。気が付いてみると、咲が僕の額に手を当てている。「さ……咲……。夢みたいだ……。もう一度君に会えるなんて……」「…?」僕の言葉に戸惑う君。そして僕の意識は再び途切れた……。 次に目が覚めた時、僕の意識は大分はっきりしていた。千尋が僕の為にお粥と薬を運んできてくれた。一人で食べられるか聞かれたけど大丈夫と答える。だってあんまり長く僕の側にいると千尋に風邪を移してしまうかもしれないからね。千尋は着替えも置いて行ってくれたのでお粥を食べて、薬を飲んだ後別のパジャマに着替えた。さっきまで着ていたパジャマは汗で湿っていたので気持ちがいい。僕は再び眠る事にした。 廊下で12時を告げる時計の音が聞こえ、僕は目を覚ました。そこへ丁度良いタイミングで、うどんを作って千尋が持って来てくれた。この頃には大分体調も回復してきている。千尋のお陰だね。千尋が部屋を出ると僕は呟いた。「ありがとう、千尋……。大好きだよ……。千尋も僕と同じ気持ちでいてくれたなら、もう思い残す事は何も無いのに……」ねえ千尋。ここまで僕を親身になって看病してくれるってことは、僕に好意を持ってくれているって思ってもいいよね? 夕方になると僕はすっかり熱が下が
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-11
Baca selengkapnya
Sebelumnya
1
...
91011121314
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status