促されるままベンチに座ると、先輩はプリプリしながら身振り手振りを交えて話し始めた「なんか2人組の変な人達が原付で走ってきてさ、いきなり水ぶっかけられたの! 追いかけようとしたけど、さすがに無理でしょ? それで泣く泣くここに来たって訳。もー、ほんっと信じらんない!」 先輩は心底怒っているみたいだけど、可愛くてつい笑みが零れてしまう。それに気を悪くしたのか、口を尖らせてそっぽを向いてしまった。「凜ちゃん、笑うなんてひどい! そいつらご丁寧に氷まで入れてたんだよ!? 原付のスピードでぶつかってきたから痛いのなんのって!」 その言葉で、私の笑顔は一気に引いた。慌てて先輩の両頬を包み、こちらを向かせる。濡れているのは、頭を中心とした上半身だ。氷が当たったなら、顔を怪我している可能性が高い。「え、ちょっと!? 凜ちゃん!?」 あまりに勢いよく頭を振ったせいで、先輩は面食らっている。それにも構わず、私はぺたぺたと顔面を隅々まで調べた。「氷って意外と鋭いんですよ!? 推理モノでもよく使われてるじゃないですか! どこか切っているかも……あ、ほらやっぱり!」 濡れて張り付いた髪を退けると、額に小さな裂傷ができている。「よりにもよって、この間擦りむいた所じゃないですか! せっかく治りかけていたのに、傷が開いてる……絆創膏貼りますから、じっとしててください」 そう言ってブレザーのポケットに手を突っ込むと、不意に先輩が吹き出した。私はきょとんとしてしまって、動きが止まる。それも面白かったのか、先輩はとうとう盛大に声を上げて笑いだした。「凜ちゃんって、ホント面白いね! さっきはカイロって言ってたし、まるで救急箱みたい。いつもそうなの?」 思いがけない問いに、私は考え込んでしまう。そういえば、いつからこんなに持ち物が増えたんだろうか。記憶を遡るけど、はっきりしない。中学の頃には既にこうだった。何かあれば、みんな私に聞いてくる。『怪我しちゃった、凜くん絆創膏持ってない?』『シャーペンの芯が無くなっちゃったの、分けてもらえないかな?』『急に雨降ってきた! 新堂、タオル貸して!』『ボタン取れた~、新堂おねがい~』 だから、私はそれに応えようと……。「凜ちゃん? どうしたの? ボク、変な事言っちゃった?」 眉を垂れる先輩に、ハッと我に返り、慌てて否定した。「ち、
Huling Na-update : 2025-05-27 Magbasa pa