Lahat ng Kabanata ng 王子様じゃなくてもいいですか?: Kabanata 11 - Kabanata 20

22 Kabanata

第11話 役目

 促されるままベンチに座ると、先輩はプリプリしながら身振り手振りを交えて話し始めた「なんか2人組の変な人達が原付で走ってきてさ、いきなり水ぶっかけられたの! 追いかけようとしたけど、さすがに無理でしょ? それで泣く泣くここに来たって訳。もー、ほんっと信じらんない!」 先輩は心底怒っているみたいだけど、可愛くてつい笑みが零れてしまう。それに気を悪くしたのか、口を尖らせてそっぽを向いてしまった。「凜ちゃん、笑うなんてひどい! そいつらご丁寧に氷まで入れてたんだよ!? 原付のスピードでぶつかってきたから痛いのなんのって!」 その言葉で、私の笑顔は一気に引いた。慌てて先輩の両頬を包み、こちらを向かせる。濡れているのは、頭を中心とした上半身だ。氷が当たったなら、顔を怪我している可能性が高い。「え、ちょっと!? 凜ちゃん!?」 あまりに勢いよく頭を振ったせいで、先輩は面食らっている。それにも構わず、私はぺたぺたと顔面を隅々まで調べた。「氷って意外と鋭いんですよ!? 推理モノでもよく使われてるじゃないですか! どこか切っているかも……あ、ほらやっぱり!」 濡れて張り付いた髪を退けると、額に小さな裂傷ができている。「よりにもよって、この間擦りむいた所じゃないですか! せっかく治りかけていたのに、傷が開いてる……絆創膏貼りますから、じっとしててください」 そう言ってブレザーのポケットに手を突っ込むと、不意に先輩が吹き出した。私はきょとんとしてしまって、動きが止まる。それも面白かったのか、先輩はとうとう盛大に声を上げて笑いだした。「凜ちゃんって、ホント面白いね! さっきはカイロって言ってたし、まるで救急箱みたい。いつもそうなの?」 思いがけない問いに、私は考え込んでしまう。そういえば、いつからこんなに持ち物が増えたんだろうか。記憶を遡るけど、はっきりしない。中学の頃には既にこうだった。何かあれば、みんな私に聞いてくる。『怪我しちゃった、凜くん絆創膏持ってない?』『シャーペンの芯が無くなっちゃったの、分けてもらえないかな?』『急に雨降ってきた! 新堂、タオル貸して!』『ボタン取れた~、新堂おねがい~』 だから、私はそれに応えようと……。「凜ちゃん? どうしたの? ボク、変な事言っちゃった?」 眉を垂れる先輩に、ハッと我に返り、慌てて否定した。「ち、
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第12話 鼓動

 泣いてる……私が?  先輩の言葉が理解できなくて、軽いパニックを起こす。どうにか思考を戻そうとしても、上手くまとまらない。 「んー……なんていうのかな、無理してるって感じがするんだよね。本当の凜ちゃんは他にいて、心の隅っこで泣いてるの。昨日今日の仲で何言ってるんだって思うかもだけど、今の凜ちゃんってお人形みたい」  確かに、私は母の影響もあって、王子様を演じている部分はある。だけど、そんな風に言われたのは初めてだった。 「人形……」  その例えが重くのしかかる。  周囲の期待に応えるのは、辛いと思う事もある。でも、誰にも嫌われない『王子様』は楽でもあった。だって演じていれば、みんなが私を構ってくれるんだから。  一度だけ、母にスカートが穿きたいと言った事がある。その時の反応は想像以上で、ヒステリックに喚き、物に当たり続ける母の姿は忘れられない。 『あなたは王子様なの! 王子様じゃなきゃいけないの! そうじゃなきゃ、あんたに価値なんてないんだよ!』  なぜそんなに『王子様』にこだわるのか、私には分からない。教えてもくれないし、ただ『王子様』を求めてくるのだ。  だから。 「や、やだな先輩。そんな事ないですよ。私は私です。無理なんてしていません」  そう言ってみても、先輩は大きな瞳で私を見透かすように見つめてくる。ぎこちなさを隠して笑って見せると、うなりながらも一応理解してくれた。 「そっか……凜ちゃんがそういうなら、そうなのかな。ごめんね、変な事言って。気にしないで」  その後はもう、いつも通りの先輩だった。ガシガシと髪を拭きながら、あれこれとにこやかに笑っている。私はほっと胸を撫でおろし、相
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第13話 裏の顔

 先輩との時間は何故か心地よくて、このままずっとこの時間が続けばと思ってしまう。 それも徐々に生徒が増えてきて、あっけなく終わってしまうのだけど。「凛くーん! おはよ……って、何してるの!?」 眞鍋さんが私を見つけるやいなや、血相を変えて腕を引く。細い体のどこにそんな力があるのか、連れ去られるようにして背後を振り返り、先輩に手を振る。「せ、先輩! また後で!」 先輩は笑顔で見送ってくれて、ほっと胸を撫で下ろした。校舎に入ると、眞鍋さんは怒ったように私を見上げる。「もう! 凛くん、あの人は危ないって言ったでしょ!? 気を許しちゃダメ!」 先輩を悪く言う眞鍋さんに、妙に心がザワついてしまう。(何、言ってるの? あなたが、先輩の何を知っているの? 先輩との時間を邪魔しないで) 私の変化に気付いていないのか、眞鍋さんは弾丸のように先輩の悪口を捲し立てる。 先生に手を上げた。 生徒を恐喝していた。 いじめて、不登校に追いやった。 止まらない蔑みに言い難い怒りと、焦燥感が渦巻き唇が震えてしまう。そして最後の言葉に、私は我慢の限界を迎えた。「それにあの人、女子を妊娠させたのに中絶させたって……」「先輩はそんなんじゃない!」 つい張り上げてしまった自分の声にハッとして我に返ると、周囲の視線が集まっている事に気付く。驚きに目を見開く眞鍋さんは、次第に目を潤ませていった。「なんで……? 私、私は凛くんのためを思って……」 それすらもイラついてしまい、自分を抑えきれない。「私のため? 他の子を牽制するのも、私のためだって言うの? 眞鍋さん、私が一年の頃から仲が良かった子に、嫌がらせしてたんでしょう? 知らないとでも思ってた?」 どの口で先輩の悪口を言うんだ。それは自分がやっていた事じゃないか。 そもそもこの高校は、同じ中学から受験する人がいないと聞いて受けたんだ。家からは少し遠いけど、静かに学生生活を送りたかったから。 それでも、わざわざやってくる子達は、私の想像を超えていた。校門で度々待ち伏せられる事も少なくなくて、女子に人気のある女子として噂が広まってしまった。 そんな中でも、できるだけ目立たないように過ごしていたのに、あの体育の日に事件が起きる。 ぼーっとしながらバスケの試合を見学していた眞鍋さんに、ボールが飛んで行ってしまって、私は
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第14話 わがまま

 私の問いに、眞鍋さんは可愛らしく首を傾げた。巻いた髪をいじりながら、小動物感をアピールするのも忘れない。きっと、自分の中では当たり前の事であって、私が尋ねる意味さえ分からないのだろう。 そんな眞鍋さんを見て、私はつい吹き出してしまった。「眞鍋さん、自分が周りになんて言われているか知ってる?」 眞鍋さんは恥ずかしそうにして、身を捩りながら答える。「え~、やっぱり凜くんのお嫁さんとか、お姫様とかかなぁ」 どうすればそんな自信が湧いてくるのか、本当に分からない。だから苦笑しながら口を開いた。「ビッチ、だよ」 言うや否や、眞鍋さんがさっと青ざめる。私の口からそんな言葉が出てくるなんて、思ってもいない顔だ。眞鍋さん自身が、その噂を聞かせまいとしていた事も、私に注意を促してくれた子に逆恨みしていた事も、全部知っているのに。「誰彼構わず、他人の彼氏に手を出しているんだってね。その度に中絶して、もう子供は絶望的だって聞いたよ? しかもそれを口実に、相手を脅してるって。その中には先生もいるとか……あれ? さっきのって、眞鍋さんの事だったのかな?」  意地悪だと自分でも思う。だけど、先輩を悪く言われるのが絶えられない。私は周囲に聞こえるような声で、眞鍋さんの真実をさらけ出す。 あちこちで頷く姿が見えるから、被害者も、この場に相当数いるはず。私が知っているだけでも、眞鍋さんが略奪したのは5人。みんな体で釣られたと言っているらしい。 自分が優位に立つためならなんだってやる。それが眞鍋さんの本性。私が今まで何も言わなかったのは、周囲の期待を裏切れなかったから。『凜くんが押さえてくれるなら、私達も安心だよ~』 眞鍋さんが付きまとい出してから言われた、クラスメイトの言葉が脳裏をよぎる。その時はまだクラスが別で、休み時間くらいしか接点のなかった私に、全てを背負わせた言葉だ。 今更文句を言う気はない。だって、抗えなかったのは自分自身だもの。 それが私の存在意義だと思っていたから、ただ流されただけ。 先輩を見ていたら、そんな自分がはずかしくなった。 もし眞鍋さんが言っている事が本当だとしても、何か理由があるはずだと、妙な確信がある。何故かは私にも分からない。もしかしたら、同じ匂いを感じたのかも。 怒りは徐々に静まっていき、ただ目の前の眞鍋さんを観察していた。「凜
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第15話 落雷

 アイツを笑顔のセンパイで見送って、なんかどっと疲れた。  俺に水をぶっかけたのは、三久工業の奴らだ。ウチの後輩をカツアゲしてたから、追い返した事がある。俺の見てくれで見下してきたから、思いっきり殴ってやったけど、逆恨みもいいとこだろ。 「はぁ、教室行くしかねぇか……」  暖かくなってきたとはいえ、濡れたままじゃ風邪をひくのは目に見えてる。学校に来るのは面倒くさいが、布団にこもるのも面倒だ。  それに……多分アイツは自分のせいだと思い込むんだろうし、そうなったら更に面倒くさい事になる。自称ファンが押し寄せてきて、ギャーギャー騒がれるのはごめんだ。  溜息を吐きながらどっこいせ、と立ち上がると、校舎の方が騒々しい事に気付いた。野次馬根性で覗いてみると、なにやら人だかりができている。その中心に、アイツの後頭部がちらりと見えた。  なんとか爪先立ちで覗き込もうとするが、前の男がデカすぎる。その背中に阻まれて、俺は飛び跳ねる羽目になった。  なんだ?  なにやって……。 「先輩はそんなんじゃない!」  いきなり叫んだアイツは、誰かに嫌味たっぷりな言葉を投げつけ始める。今まで聞いた噂にはひとつもなかった、攻撃的な口調で。 「誰彼構わず、他人の彼氏に手を出しているんだってね。その度に堕胎して、もう子供は絶望的だって聞いたよ? しかもそれを口実に、相手を脅してるって。その中には先生もいるとか……あれ? さっきのって、眞鍋さんの事だったのかな?」  なんだ、なんの話をしている?  くそっ、前の奴でけぇんだよ!  とうとう我慢できなくなって、膝裏に蹴りを入れると呆気なく沈んだ男の背中に乗り、顔を出した
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第16話 おもかげ

 座り込んだまま動かない眞鍋さんを放置して、私はその横を素通りした。周囲が騒がしいけど、たいして気にならない。(私、何を怖がってたんだろう) 初めて、言いたい事が言えた。今は清々しい思いだ。いつもの景色がきらめいて見えて、ふわふわと雲の上を歩いているような、そんな高揚感に満たされている。周りの雑音も遠のいていき、まるで夢を見ているような……。「……ちゃん! 凜ちゃん!」 あれ、先輩の声がする。名前を呼ばれるのと同時に掴まれた手は、火傷するかと思うくらいに熱を持っていて、私はそれをぼんやりと感じていた。 振り返ると先輩が息を切らせて、私を見上げている。その表情はどこか焦っていて、何かを叫んでいるけど上手く聞き取れない。徐々に視界がかすんでいき、体が冷えていく。 「せん……ぱ……い……」  その言葉を残して、私は意識を手放した。 沈んでいく意識の中で、お母さんの声が響く。『スカートなんか履いちゃダメ!』『リボンなんて似合わないよ』『あなたは王子様なの』 そこに真鍋さんの声が重なった。『凜くんていうの? 今日は助けてくれてありがとう! まるで王子様みたいだったよ?』『凜くんは私の王子様だわ』 声は増え続ける。 それは女子も男子も、先輩も後輩も、近所のおじさん、おばさんでさえ例外ではなかった。 凜くん、凜くん……何度も繰り返される言葉に、私の感覚は麻痺していく。 暗い淵へと落ちていく感覚に包まれ、もう眠りたいと思った――その時。『りんちゃん』 ふと、懐かしい声がした。 幼く小さな手が、私に差し伸べられている。記憶をたどれば、その姿が浮かんできた。水色のスモックを着ているから男の子だと思うけど、女の私よりよっぽど可愛らしい。 幼稚園時代、一緒に遊んでいた子だ。急にいなくなって、しばらく泣いていたっけ。お母さんはそれも気に入らなくて『王子様は泣かないの!』って、ヒステリックに騒いでた。小さい子供には逆効果なのに、気づきもしなかったのかな。  あの子は、どんな子だったっけ。ふわふわとした柔らかい髪の手触りが好きで、よく触らせてもらってたっけ。意地悪な男子にも立ち向かって、私より小さいのにって思ってたな。  あの子の、名前は――。「ゆう……ちゃん……」 なんで、忘れていたんだろう。 それは、私の淡い初恋だったのに。
last updateHuling Na-update : 2025-06-24
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第17話 決意

 うっすらと意識が浮上すると、消毒薬の匂いが鼻をついた。あの後、何故か気が遠くなって、それからどうなったんだろう。  真っ白いカーテンに仕切られた空間で、保健室にいることは分かった。誰かが運んでくれたのだろうか。 (そういえば、最後に先輩の声を聞いたような……)  額に冷たいものを感じて腕を持ち上げると、すぐ横から声が上がった。 「凛ちゃん! よかった……気がついた? 気分はどう?」  そちらに視線を移すと、心配そうに私を見下ろす先輩がいた。 「先輩……私、どうして……」  確か、眞鍋さんが先輩を悪く言うから、カッとなって色々言ったんだ。それを思い出すと、今更になって手が震えてきた。  誰かに口答えするなんてしたことなくて、よくあれだけ舌が回ったな、と他人事のように感じる。何故、あんなに腹が立ったのか、自分でも分からない。  ただ、先輩を守りたいという思いが先走って……。 「榊先生が言うにはね、知恵熱みたいなものだって」  先輩は軽く説明して、額のタオルを取り替える。その手つきは、なんだか慣れているように見えた。 「榊先生……確か養護の先生ですね」  普段保健室を利用しない私は、先生の名前が咄嗟に出てこなかった。そんな私に『そーそー、その榊先生ね』と笑いながら答えてくれる先輩は、やっぱり優しい人だ。 「凛ちゃん、急に怒り出すんだもん、ボクびっくりしたよ。しかも、ボクを庇ってくれた。ごめんね、それから、ありがとう」  そう言って頭を下げる先輩に、私は慌てて起き上がった。 「そんな、先輩が謝る必要なんてあ
last updateHuling Na-update : 2025-07-01
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第18話 戸惑い

 先輩は膝の上で組んだ両手に力を込め、顔を上げる。その表情は、今までとどこか違っていた。 「凜ちゃん……!」  そう言いかけた時、扉の開く音が響く。引きずるようなスリッパの音で、生徒ではないと分かった。その音は徐々に近付いてきて、サッとカーテンが開かれる。 「ああ、起きたんだね新堂さん。ちょっと野次馬から事情を聴いてきたけど、頑張ったんだね。眞鍋さんの事は、教師の間でも問題視されてて……ん? 瀬戸くん、なんだか大人しいね。いつもの口汚さは……」 「わーっ! ちょっと待て! あ、いや待って! 先生、ちょっとこっち!」  先輩は何故か慌てて先生の手を引いて、カーテンの向こうに消えていった。その様子に親しみを感じ、胸がチクリと痛む。 (なんだろう……まただ)  この感じは、先輩に出会って何度か経験している。でも、それはどれも違う場面で起きていた。  最初は先輩に初めて会った時。どこか他の人と違うものを感じて、心がざわついた。  昨日、昼休みに会った時も、可愛いと言ってくれたことが嬉しかったのを覚えている。  そして今日の早朝。ずぶ濡れの先輩の言葉が忘れられない。 『誰もいない学校が好き』  その気持ちは、私にも分かった。今日のように日直で朝早く来た時の静けさは、いろんなしがらみから解放されるようで、すごく落ち着く。多分、先輩の言葉に共感したんだろう。  でも今は。  自分でも説明できないような、暗い気持ちが渦巻いている。眞鍋さんに感じたものとも違う、先生が羨ましいような、妬ましいような、そんな感覚だ。  先輩が握った手は華奢で、女性の柔らかさがあっ
last updateHuling Na-update : 2025-07-04
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第19話 獲物

 榊の腕を引っ張ってアイツから離れると、小声でまくし立てた。 「てめぇ、俺のことアイツに言ってみろ、ただじゃおかねぇからな!」  恫喝する俺にも榊は動じず、意味ありげに笑う。嫌な予感と、むかつきが同時に襲ってくる。  こいつは俺がサボるたびに、なんやかんやと口を出してきた。担任もとうに見放しているのに、新任の正義感なのかちょっかいをかけてきやがる。 「ん~? 俺のことって何? 実は、学校一の問題児ってやつ?」  この……分かってるくせに、アイツの方をチラチラ見ながらニヤけやがって。俺が女を殴れないって知ってるから余計に質が悪い。あまり騒ぐとアイツに聞こえるし、こいつホントどうしてやろうか。  唸りながら動けない俺に、榊は意外そうな顔をする。 「……あれ、なんかいつもと違うね。そんなにあの子には知られたくないの? 問題児って言ったって、あなたの場合はタイミングが悪いだけでしょう。停学の理由だって、カツアゲしてたのは他の生徒で、あなたは被害に遭った子を庇っただけ。そこをあなたに敵意を持つ担任が見つけたから、これ幸いと停学にしたんだし。新堂さんは、ちゃんとわかってくれると思うわよ?」  懇切丁寧に説明する榊に、俺はイラ立ってくる。  そんなことは分かっているんだ。別に褒められたい訳でも、感謝されたい訳でもない。俺が誰かを助けるたびに事実は歪められ、ありもしない罪を着せられる。  そして話はデカくなり、俺は意味もなく嫌がらせを受ける羽目になるんだ。  もうそれにも慣れた。  仲が良かった奴も離れて行って、今じゃ良からぬ輩の仲間入り。教室でも、いないものとして扱われる。休もうが出席しようが、成績は変わらず最下位だ。  親にも泣かれた。
last updateHuling Na-update : 2025-07-08
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第20話 真実

 先輩にお礼と別れを告げて、教室へと急ぐ。時計を見ればもう13時目前だ。走れば午後の授業に間に合う。  そう思って息せき切って戻ってみれば、教室の前は妙な静けさに包まれていた。通り過ぎる人達も声を潜め、チラチラと室内を覗いている。  その意味はドアを開いて分かった。  いつもは騒がしい昼休み、その隅に俯いた眞鍋さんが座っている。クラスメイト達は遠巻きにして、こそこそと呟き合っていた。  私は自分の行動の迂闊さと、影響力の大きさを思い知る。ただ学内で『王子様』と呼ばれているだけで、自分の発言が誰かを傷つけるなんて思ってもみなかった。  顔を上げ、意を決すると、ゆっくり眞鍋さんの元に足を向ける。周囲からは小さなざわめきが起き、視線が集中するのを感じた。それを無視して眞鍋さんの元に辿り着いても、彼女は俯いたままだ。  教室はしんと静まり返り、廊下から好奇の視線を感じた。  私はじっと眞鍋さんを見下ろし、口を開く。 「みんなにも聞いてほしい」  真鍋さんの肩がびくりと跳ねる。  その声は、自分でも驚くほど教室に響いた。  みんなの意識が集中しているのを感じて、大きく深呼吸をする。今までだって、注目を浴びることは多かったけど、この空気感はそれとは全く別のものだ。  興味、嫌悪、ひがみ、哀れみ。  いろんな感情の渦の中で、眞鍋さんは午前中を過ごしたのかと思うといたたまれない。その原因はほかでもない、私だ。  後悔はしていない。先輩を悪く言われて、腹が立ったのは紛れもない事実だもの。それでも、眞鍋さんに対して取っていい行動ではなかったと、今なら分かる。 「
last updateHuling Na-update : 2025-07-11
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