Lahat ng Kabanata ng 王子様じゃなくてもいいですか?: Kabanata 31 - Kabanata 40

40 Kabanata

第31話 顔

第31話  慌ただしく去っていった彼らに目もくれず、先輩は私だけを見ていた。 「……驚いた、よね? ボクの本性が、あんなだって……」  眉を垂れる姿は、いつもの先輩だ。唇を噛みしめる表情は、沈み始めた夕日に照らされ悲壮感を増している。とてもさっきまで乱暴な言葉を吐いていた人と同一人物だとは思えない。  私が知っているのは、可愛くて、優しくて、でもどことなく陰を感じる、そんな先輩だ。まだ出会って2日、その正体が、なんとなく分かった気がする。  だけど、それを知ってもなお、私は先輩を疑っていない。本性だなんて言っているけど、それだって先輩の一部だ。人は相手によって態度を変える。それは悪いことではなくて、使い分けているだけ。  友人に対する顔。  先生に対する顔。  家族に対する顔。  全部ひっくるめて、ひとりの人間なんだ。  私は、先輩を通してそれを知った。  今まで当たり前だと思っていた『王子様』という役割は、私の心ひとつでどうにでもなるんだって。  求められる『王子様』を演じなければ、いつもお母さんは私を怒鳴りつけた。ヒステリックに泣き叫んで、物に当たり散らす。その様子は、幼心にトラウマを植え付けるには十分だった。  だけど、それよりも、上手くできた時のお母さんの笑顔が好きだったんだ。ぎゅって抱きしめて、『私の王子様』って、すごく嬉しそうに笑う、その顔が。  他の子もそう。  私を『凜くん』と呼ぶ眞鍋さんは、すごく可愛かった。だから、私が我慢すればそれでいいと思ってたんだ。
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第32話 逢瀬

 商店街を行く人々の視線が、チラホラと私達に向けられているのが分かる。こんなに人が多い所で話し込んでいたら気になるのも当然だ。 ただでさえ夕方の商店街は人が多く、年齢層も幅広い。買い物に来ているのだろう主婦や、学校帰りの学生は、これから塾があるのかもしれない。少しずつ、会社帰りと思われるスーツ姿の人も増えてきた。 でも、私の意識は目の前の先輩に注がれている。何か言いたげな先輩は、私の手を取るとポツリと呟いた。「凜ちゃん、かっこよくなったよね。昔は泣いてばかりだったのに」 そう言って笑う。 (え? 昔って……)  まさか、と目を見開く私に、先輩はずいっと顔を近づけてきた。「ゆうちゃん」 その一言に、私は呼吸が止まる。(そんな……都合がいいこと、ある訳が……) 私は心のどこかで、ゆうちゃんが先輩ならいいのにと思っていた。だって、私はゆうちゃんが好きだったから。 だから、先輩がゆうちゃんであってほしいと思ったんだ。「保健室で凜ちゃんが寝てるとき、ずっと呼んでたんだよ。覚えてる?」 確かにあの時、ゆうちゃんのことを思い出していた。でもまさか寝言を言っていたなんて……しかも聞かれてしまったのは恥ずかしすぎる。 羞恥心で顔が熱くなるのが分かり、私は俯いてしまう。「顔真っ赤」 からかうように覗き込んでくる先輩だけど、その瞳は柔らかく細められていた。その視線から逃げるようにして、顔を背けると、しつこく追いかけてくる。「な、なんなんですか!? 先輩には関係ないでしょう!?」 むきになって、つい思ってもいないことを口走ってしまった。その言葉を待っていたと言わんばかりに先輩は胸を張る。「関係あるよ! だって、ボクがゆうちゃんだもん」 ついに、先輩が確信を突いた。それは望んでいた答え。 でも――。「先輩が……ゆうちゃん……? それなら、何故言ってくれなかったんですか? 私もさっき思い出したばかりだから、文句は言えませんけど……教えてくれてもいいじゃないですか」 そう問いかけると、先輩は眉を垂れて申し訳なさそうに応える。「うん、ボクもさっき思い出したんだ。凜ちゃんが教室に帰った後、ボクも倒れちゃって。凜ちゃんが言ってた『ゆうちゃん』がきっかけだよ」 先輩も、思い出した――?「ボクさ、幼稚園でのこと、丸っと忘れてたんだ。だから凜ちゃんにも
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第33話 捕獲

「な、ななななんで、そんな」  先輩の真剣な瞳に射抜かれ、私は動揺を隠せずにテンパっていた。だって、いきなり『惹かれていた』なんて言われたこともないし、こんなシチュエーションも初めてなのに。  及び腰になる私に対し、先輩はしっかりと手を繋いで、あどけなさの中に異様な色気を滲ませて迫ってきた。 「逃げちゃダメだよ、ちゃんと聞いて」  手を振りほどこうにも、小柄な体からは想像の付かない力で優しく拘束される。私の方が10cmは身長が高いにも関わらず、逃げ出すことができない。 「ボクね、幼稚園の頃から凜ちゃんが好きだった。でも、ちょっとした行き違いがあって、忘れてたのが悔しいよ。覚えていたら『オウジサマ』なんて呼ばせない、凜ちゃんはボクのお姫様だもの」  その声は低く響き、私を捕えていく。 「今もね、思い出したらいてもたってもいられなくて、凜ちゃんを探してたんだ。アイツらにも協力してもらおうとしてたところに凜ちゃんが現れるんだから驚いちゃった」  言葉遣いこそ可愛らしいけど、なぜか少し怖い。 「あ、あの、先輩……どうしたんですか? らしくないって言うか。手も、こういうのは慣れていなくて、ですね」  冷や汗をかきながら、なんとかこの危うい雰囲気を壊そうと試みる。でも、それとは逆に、先輩は更に指を絡めてきた。 (これは……何と言うか、くすぐったいし、恥ずかしい……)  周囲に視線もどこか変わってきたように感じる。  私は今まで好意を寄せられることはあっても、男女の仲に発展したことがなかった。告白もされたことがない。だから、こういう時どうすればいいのか、全く分からず、挙動不審になってしまう。 「凜
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第34話 離脱

 『俺』と『ボク』 どっちかなんて、選べるはずない。 だって、どちらも先輩なんだもの。「ねぇ、凜ちゃん。昔した約束、覚えてる? お嫁さんになってくれるって、約束したよね?」 ずいっと顔を近づけてくる先輩は、私の心を見透かすように瞳を覗く。「あの、それは……」 覚えている、というか、さっき思い出したんだけど。 幼稚園の頃、私は同じクラスの男の子に『男女』と呼ばれ、からかわれていて、よく泣きながら校庭の隅に座り込んでいた。それを見たゆうちゃんが傍で慰めながら『お嫁さんになって』と笑いかけてくれていたんだ。 私は『うん』と応えていたけど、意味が分かっていなかったのが実情で……。 冷や汗を流しながら視線を逸らす私に、先輩は目を細め、ずいっと顔を近づける。「本気にしてなかったみたいだな……」 その額には、うっすらと血管が浮き上がっているような……。 でも先輩は、ふぅっと肩の力を抜き少しの距離を取る。「ま、いいや。これから挽回すればいいだけだし」 そう言いながら指を絡め、薬指をなぞった。「指輪、買わないとな……あーでも生活指導に取り上げられるか。ネックレスに通せばイケるか……?」 ぶつぶつと呟く先輩に、この機を逃せば逃げられないと悟った私は、勢いよく万歳をして先輩の手を振りほどくと脱兎のごとく駆けだした。 先輩がどんな顔をしているかなんて気にする余裕もない。 必死に商店街を走り抜ける。 道行く人々が何事かと振り返り、中には部活の後輩もいて、私を指さし『何やってんすか!?』と声が投げられた。 それにも構わず、私はひた走る。 だけど――。「なんで逃げるんだよ!?」 まさかのまさか。 先輩は猛烈な速さで迫ってくるではないか!「いやぁぁぁっ! なんで追いかけてくるんですか!?」 剣道部は足が基本。走り込みで鍛えたその足に、先輩は易々と追いついてきた。「ふざ
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第35話 友人

 私はなんとか家に辿り着き、力なく『ただいま』と室内に声をかけた。すると、奥からお母さんがパタパタとやってくる、いつもの風景だ。「凜くん、おかえり~」 その声を聞いて、私はほっと胸を撫でおろす。安心したからじゃない、お母さんの機嫌がよかったから。「聞いてよ凜くん、お隣の佐藤さんがね、凜くんを褒めてくれたの!」 ぱあっと花が咲くように笑うお母さん。私は曖昧に頷き、宿題があるからと部屋へ向かった。「もうすぐ夕ご飯だからね~」 そんなお母さんに、なんだか罪悪感が募る。(別に、私が悪い訳じゃないし……!) だけど、先輩のあの目を思い出すと、ぞくりとした何かが這い上がってくるようで、私は怖くなってきてしまう。ドキドキと、心臓がうるさいくらいに鳴って、私は呼吸さえままならない。(走ってきたから……そう、そうに決まってる……) 鞄を雑に投げ出してベッドに倒れ込むと、言い訳ばかりが浮かんできた。そんなものじゃないことくらい、分かってるのに。 ベッドで丸くなって呼吸を整えていると、不意にスマホが鳴った。立ち上がるのも億劫だったけど、もしかしたら部活の連絡かもしれないし、私は溜息を吐きながら、鞄に手を突っ込む。(あれ……眞鍋さん……?) どうしたのかと出てみると、いきなり眞鍋さんの声が耳を劈く。「ちょっと! 凜くん無事!?」 思わずスマホを耳から離すと、私の名前を連呼する、でも心配そうな声が聞こえた。「眞鍋さん、落ち着いて。どうしたの? 無事って……私のこと?」 尋ねる私に、眞鍋さんは勢いよく『当たり前!』と叫んだ。「だから落ち着いて! 耳が痛いよ……」 苦情を告げると、仕方がないなぁとスマホの向こうで溜息が聞こえた。『あのね! 今日、なんかすごい走って帰ってたよね? それ見て不安になっちゃったんだ……私、瀬戸先輩に凜くんはどこだって聞かれたの』 思いがけない言葉に私はギョッとした。今まさに先輩のことで胸が大騒ぎなのだから。
last updateHuling Na-update : 2025-09-16
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第36話 ファーストキス

 おそるおそる、私は校門から顔を出した。不審な動きをする私に、いつもなら声をかけてくれる人達も遠巻きに見ている。(先輩は……いない、よし!) ささっと校門から飛び出し、昇降口まで走る。 できるなら、今は先輩に会いたくはない。いや、会いたいけど、まだ心の準備ができていなかった。 思い浮かぶのは昨日の先輩の、瞳。『それとも、『俺』がいい?』 そう呟く先輩は、男を感じさせた。 カッと赤く染まる頬に、私は頭を振って熱を追い出した。 そして、昨日のことを思い出す。 昨日は眞鍋さんからの電話の最中に、みっともなく泣いてしまった。それでも眞鍋さんは、何度も相槌を打ちながらちゃんと話を聞いてくれる。その声音が優しくて、私は初めて友達ができたように感じたんだ。 今までは、親しくしてくれてもどこか壁を感じていた。でも、昨日の眞鍋さんにはそれがなくて、恥をかかせたといってもいい私に真摯に向き合ってくれる。 嫌いになったのではないか。 そう尋ねる私に、眞鍋さんは『逆にサッパリした』と笑う。 あの後、数人の生徒が直接謝りに来たらしい。『ごめん』と頭を下げる生徒に、眞鍋さんは笑顔で『一昨日きやがれ』と追い返した、そう自慢げに言う。 知らない眞鍋さんの一面に、私も自然と頬が緩んで声を上げて笑ってしまった。 眞鍋さんも一緒に笑って、本当に楽しい時間だった。 そして今日、先輩に会う勇気が出なかった私は逃げの一手に出る。もう昇降口は目前だ。(いける……!) そのままの勢いで靴箱に向かうと、そこには仁王立ちした先輩の姿が。 私は寸でのところで急ブレーキをかけ、呆然とその姿を見つめる。「凜ちゃん、おはよう!」 笑顔のはずなのに、何故か冷や汗が止まらない。 言い淀む私に、先輩がずいっと顔を近づけた。「昨日はいきなり帰っちゃうんだもん。ボク、心配してたんだよ?」 その表情はいつもの可愛い先輩だ。でも、目が笑っていなかった。
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第37話 執着

 足元にうずくまる凜ちゃんに、俺は何とも言えない多幸感に包まれていた。「凜ちゃん、大丈夫?」 自分がそうさせているくせに、心配して見せると、凜ちゃんの肩が跳ねる。 それはどこか煽情的で、俺は喉を鳴らす。 だけど、そんな幸せな時間はすぐに終わった。「せとっち! なにやってんだよ!」 機嫌がよかった俺に、人垣をかき分けて伊吹が駆け寄る。その後ろにはこの間、凜ちゃんとやり合っていた女がついてきていた。「凜くん!」 そう言って俺の凜ちゃんに触れようとする。「触んじゃねぇよ」 俺は相手が女だろうと容赦はしない。女の長い髪を引っ張ると、伊吹が止めに入った。「おい! やりすぎだって!」 凜ちゃんを庇うような女も、伊吹も、どちらも気に入らない。「やんのか、伊吹」 俺を見下ろす伊吹の胸倉を掴んで恫喝すると、その隙をついて女が凜ちゃんを連れ去った。「あ、凜ちゃん!」 追いかけようとする俺を、また伊吹が引き留める。「だから、落ち着けって。あの子の気持ちも考えてやれよ。こんな場所で、いきなりなんて、泣いてるかもしれないぞ?」 伊吹は眉を垂れて俺に言い聞かせる。「泣いてる……凜ちゃんが……?」 そんなこと、想像もしなかった。 俺のものだって宣言すれば、きっと喜んでくれる。そう思っていたのに。「はぁ……まさかせとっちがこんな行動に出るなんて……想定していなかった俺にも責任はある。一旦落ち着いて、それから謝りに行こう。ついていってやるから」 保護者気取りの伊吹を見上げ、俺は唇を噛みしめた。 高い身長、恵まれた体格、低くて男らしい声。 どれも俺には無いものばかりだ。今では凜ちゃんにも身長を追い越されている。 もしあのまま、幼稚園の頃のまま、一緒に成長していたら、凜ちゃんは俺から離れていたかもしれない。俺の腕を掴んだままの伊吹を見上げる。首を傾げる伊吹は、余裕があって、男気もある。
last updateHuling Na-update : 2025-10-03
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第38話 親友

私は呆然としたまま眞鍋さんに手を引かれ、資材置き場になっている階段下の陰に押し込められ、へにゃりと座り込んだ。 隣に眞鍋さんが寄り添い、震える手を握って撫でてくれる。 「凛くん……大丈夫? いくら瀬戸先輩でも、まさかあんな行動に出るとは思わなくて……一緒に登校するべきだった。気が回らなくてごめん」 そう言って背中を摩ってくれた。その暖かさに、ゆっくりと落ち着きを取り戻していく。深呼吸をして、手の震えもどうにか止まった。「眞鍋さん……ありがとう。私、あんなこと言ったのに……」 それでも眞鍋さんは笑う。「何言ってるのよ! あれは私にも非があった。凜くんの気持ち無視してたし……でも、できるなら、友達として傍にいたいの。守ってくれたとか、王子様とかじゃなくて、ひとりの女の子として。凜くんが私に言ってくれたこと、嬉しかったよ」 眞鍋さんもまた、周囲の勝手な決めつけで役割を与えられていた。浮気性で、友人の彼氏にも手を出す、ビッチ。私が聞いたのも、そんな噂だ。 だけど、どこにもそんな事実はない。昨日、眞鍋さんと電話で話ていた時に打ち明けてくれたこと。それは酷いものだった。最初は、ほんの些細な事から始まったと言う。「中一の時、ある男子がね、告白を断るのに私の名前を出したんだって。そしたらその子、私が彼氏を取ったって言いふらしたの。それからだよ、私がビッチって言われ出したのは……」 それを聞いた時には、本当に怒りで震えた。なんて身勝手で、なんて無責任なんだろう。その後、眞鍋さんがどうなるかなんて考えもしていない。「でもね、私はそれでよかったと思うよ。だって、本当の友達が分かったんだもん」 そう言う眞鍋さんの声は力強かった。 こうして寄り添ってくれて、心配してくれる眞鍋さんに、私は心強く勇気づけられている。「……先輩は、本気……なのかな……」 ぽつりと呟くと、小さな溜息がきこえた。「凜くんはどうなの? 先輩のこと、好き?」 私、私は――。
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第39話 先輩のこと

私は顔を上げ、眞鍋さんを見つめる。「女の子の……顔……?」 そんなこと、初めて言われた。いつもカッコいいとか、ハンサムとか、そんな嬉しいけど微妙な言葉ばかりで、気恥ずかしくなってしまう。きっと、今の私は真っ赤に染まっている。体が熱くて、眞鍋さんの顔まともに目れない。「……凜くん、可愛い……! ちょ、こっち見なさいよ!」 ぐいぐいと私の頬を掴んで引っ張る眞鍋さんは、口調もどこか砕けてより気安い感じになっていた。「眞鍋さんっ! 痛い! や、見ないで!」 そう言いながらも、私の顔は緩んでいる。 なんだか、すごく楽しい。「よいではないか~初心な奴め~」 眞鍋さんはぐりぐりと私の頬を突きながら、目を細める。「ん、凜くんにとっては、瀬戸先輩はいい方に作用してるのかもね。ムカつくけど」 壁に背中を付けて伸びをしながらそう言った。そして神妙な声で、続けた。「瀬戸先輩の噂、前に言ったでしょ? あれもさ、ホント噂だけなの」 薄暗い資材置き場でふたり、肩を寄せ合ってその声に耳を傾ける。「瀬戸先輩、去年の冬休み前に停学になったんだけど、その原因が曖昧なんだよね……そういうことって普通朝礼とかで言ったりするでしょ?」 真似べさんに言われて、私はうなずいた。「うん……眞鍋さんが私から噂を遠ざけてたって言ってたけど、さすがに朝礼で報告されたら私でも気付くよ。でも……言われてみたら朝礼で先輩の話、聞いたことないかも……」 いくら眞鍋さんが噂から守ってくれていたとしても、朝礼で先生から報告されれば嫌でも知ることになる。私は一年からこの学校に通っていて、朝礼は定期的に行われているんだから。 眞鍋さんもうなずく。「だよね? だけど、瀬戸先輩の悪い噂は生徒の中では有名なんだよ。前言ったように、いじめとか、女の子を……みたいなやつね」 少し声を落として、私を見つめる。「でも、誰がその当事
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第40話 名前

 眞鍋さんは心配そうに眉を垂れ、私を覗き込む。「凜くん、嫌なら嫌って、言っていいんだからね? 凜くん優しいから、少し心配だよ」 その言葉に、私は頬が熱くなるのを感じた。「ビックリしたけど……嫌、じゃ……ないかな……」 膝に抱いて、私は顔を埋めた。「……あのね、先輩……私の初恋の人だったの……」 この話は初めて口にした。ゆうちゃんが卒園してから全く接点がなくなって、今まで忘れていた気持ちがじんわりと蘇ってくる。眞鍋さんはそんな私の話をじっと聞いてくれた。「幼稚園でずっと一緒にいて、お嫁さんになるんだと思ってた……でも、卒園してから会えなくて、お母さんに聞いても怒られるから言えなくて……忘れてたくせに今更好きだなんて、卑怯かな……?」 当時、お母さんにゆうちゃんのことを聞くと、顔を真っ赤にして怒っていた。だから聞いちゃいけないことなんだと思って、誰にも言えなかったんだ。それほど仲が良い友人もおらず、ひとりで抱え込んで、いつの間にか忘れてしまっていた。 その方が楽だったから。 でも先輩と、ゆうちゃんと再会してから気持ちが溢れだして、どうしていいのかも分からない。「卑怯なんかじゃないよ」 そう言って眞鍋さんは私の手を取ると、身体を預けてきた。柔らかな髪に、シャンプーの香りが鼻をくすぐる。やっぱり、こんな女の子の柔らかさは私にはなくて、少し切なくなってしまう。「凜くんはさ、ずっと瀬戸先輩を想ってたってことでしょ? 忘れてしまっても、ずっと……それってすごくない?」 眞鍋さんはニッと笑い、背中に腕を回す。「ちょっと悔しいくらいだよ。私もそんな恋がしたいな~。寄ってくるのは噂を真に受けた馬鹿ばっかだし! も~最悪だよ~」 そんな声に、私は小さく笑う。私を和ませようと、わざと軽口を叩いているのが分かった。「眞鍋さん、雰囲気変わったね。今の方が、私は好きだな」 言ってから失言だったと気付き、慌てて頭を下げる。「あ、ごめん……前が嫌いってことじゃなくて……なんて言うか、友達になれた
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