由香里ちゃんと笑い合っていると、遠くから先輩の声が聞こえた。 思わず両手で口を覆い、ふたりで息を殺す。「凜ちゃん! どこ!?」 その声はバタバタとした足音と共に近付き、そして遠ざかっていった。 ほっと息を吐くと、由香里ちゃんが肩を竦める。「ほんと、独占欲の塊だね……あの人」 その言葉に苦笑いしながら頷いた。「昔はあんなじゃなかったんだけどな……いや……そういえば……」 不意に、記憶が蘇る。 いつだったか、遠足の時に花畑を見つけたと言って、手を引かれていったことがあった。林の中にある開けた場所で、ふたりだけで花冠を作ってたんだ。 そしたら先生達が大騒ぎで探しにきて、ふたりで怒られたんだっけ。「あの時も、今思えば独占欲だったのかもしれない……他の子達も行きたいって言ったのに、頑なにうんって言わなくて。結局ふたりだけで遊んでた」 懐かしくもあるけど、今同じ状況に置かれると少し怖い。それが嫌ではなくて……余計に怖くなる。もし捕まってしまったら、私はどうなるんだろうか。 膝に顔を埋めて、想像してみると顔が熱くなる。 由香里ちゃんはそんな私の頬をつつく。顔を上げると、ニヤニヤと笑っていた。「凜くんってばやらし~」 その言葉にさらに熱くなってしまった。「そ、そういうんじゃなくて……!」 だけど私達はもう高校生で、ありえなくもない。それにさっきの先輩を思い出せば、嫌でも考えてしまうのは、仕方がないことなのかも。「……先輩……そういうの、したいのかな……」 頬を染めながら呟くと、由香里ちゃんはさも当然といった顔で頷いた。「当たり前じゃん。思春期真っ盛りの健全な高校生男子だよ? しかも初恋の女の子見つけて、すぐそばにいるんだもん。それにあの瀬戸先輩だし? さっきの騒ぎがいい証拠でしょ」 私はその言葉に力なく笑う。「そう……なんだ……由香里ちゃんは好きな人とかいないの?」 私の話ばかりで気恥ずかしくなり
Last Updated : 2025-11-18 Read more