僕が、血文字から再生した記憶のすべてを語り終えると、エルドリスは深く息を吐いた。 「なるほどな。ラシュトという存在は、実際にはラシュトとエンリオの双子の兄弟が融合したモノだったわけか」 エルドリスの表情にはわずかな驚きとともに、ある種の納得が浮かんでいた。 「つまりあれこそが"元人間の魔物"。まるで人間と変わりなかった。ああいうモノがこの世に存在すると確かめられたことは、ひとつの大きな成果だな」「でも、まさか転生の魔法なんてものがあるなんて……」 僕の呟きに、エルドリスの目が鋭くなる。 「それは黒魔法の類だ。深く知らない方がいい」 僕はその反応に興味を惹かれ、身を乗り出す。 「黒魔法って、そんなに危険なんですか?」「いいから、もう聞くな。お前が知っても得することはない」「ですけど、転生の魔法がメジャーな黒魔法なんだとしたら、他にもそれを使って魔物になった人間が大勢いるのかも」「メジャーなわけがないだろう、黒魔法だぞ。その意味を知っているか? 禁忌だ。それについて知ろうとするだけで刑罰ものだ」 エルドリスは話を強引に終わらせるように、背伸びをして大きな欠伸をひとつした。 「私はこれから仮眠を取る。お前も仕事に戻ったらどうだ」 このままでは追い出されると思った僕は、とっさに話題を探して口にした。 「あ、あのっ! 実は僕、今日から三日間、非番なんです。何か欲しいものがあれば街で買ってきますよ!」 必死さが伝わったのか、エルドリスは僕の申し出を無下にはせず、しばらく考える仕草をしたあと、ふっと目を細めた。 「それなら、『蜜月の琥
Terakhir Diperbarui : 2025-05-11 Baca selengkapnya