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Todos los capítulos de 私が去った後のクズ男の末路: Capítulo 1431 - Capítulo 1440

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第1431話

女性3人、男性5人。その中に、駿もいた。学生時代、「立都第一高校」きっての美男子として知られた彼は、今では大手銀行の役員を務め、若くして立都市内に160平方メートルのマンションを購入している。誰もが認める成功者だった。駿と付き合いたい女性は少なくない。この場にいる3人も、その一人だった。しかし、駿が想い続けている相手は、結安だけだった。女性たちは穏やかな笑顔を浮かべながら、結安の話題を口にする。「結安は来ないでしょうね?」「うん。その日は耀石グループの年末パーティーだし、葉山さんにエスコートされるんじゃない?」「そんなことある?」「十分あり得るよ。子どもがいるから一緒にいるだけでしょ。当時だって、結安が妊娠して立場を固めたから今があるだけ。葉山さんみたいな遊び人、本来なら遊んで終わるタイプじゃない?」「そうなの?」「この前のニュース見なかった?飛び降りた女性がいたでしょ。葉山さんが援助していた女性らしいけど、実際は囲っていた愛人だったって噂。つまり結安の代わりなんて、いくらでもいるってことじゃない?」「へえ……私はてっきり特別な存在なのかと思ってた」「葉山さんに『運命の相手』なんていると思う?」「それはないでしょ」「もし本当に大切に思ってたなら、18歳になった途端に関係を持ったりしないわよ。あんな扱いをするのは、遊び相手だからでしょう」……駿は終始、グラスを静かに握っていた。何も言わない。全員が話し終えるのを待つと、静かにグラスを置き、立ち上がる。「……先に失礼します」3人の女性は意外そうに顔を見合わせた。そして、どこか納得がいかない表情を浮かべる。自分たちは本当のことを言っただけではないか。結安は章真の愛人のような存在。そう思われても仕方がない。なぜ駿は受け入れられないのだろう。――受け入れられないのではない。駿は真実を知っていた。同じように章真の子を宿した女性がいた。結安が産んだ子は、何よりも大切に守られ、章真は1日も早く自分の娘として迎え入れた。一方で、哲乃のお腹の子は見捨てられ、条件を突きつけられた末に諦めるしかなかった。その違いだけで十分だった。章真の心の中で、結安だけが特別な存在なのだと。彼は章真の倫理観を責める
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第1432話

土曜日は、あっという間にやって来た。毎年、星耀エンターテインメントの年末パーティーは立光ホテルで開催される。岸本夕梨が経営するホテルだ。結安と想乃が会社のパーティーへ出席するのは、これが初めてだった。それはつまり、二人の存在が正式に認められたということでもある。例年なら、翔雅と澄佳はほとんど姿を見せない。芽衣も陽白も同じだ。所詮は社内の忘年会。食事を楽しみ、酒を酌み交わし、人気タレントを何人か招いて会場を盛り上げる程度の催しに過ぎなかった。しかし今年は違う。周防本邸の家族が、ほぼ全員顔を揃えていた。欠席したのは京介と舞だけ。孫がやらかした騒ぎなど見たくもない。見なければ腹も立たないと、二人は静かに身を引いていた。本来なら栄光グループの年末パーティーも同じ日だった。だが思慕はわざわざ1日延期した。従兄である章真の「晴れ舞台」を見届けるためだ。グループ社長に就任したばかりの思慕は、一人の秘書を伴っていた。黒縁眼鏡に濃色のニット。落ち着いたロングスカート。派手さとは無縁の、実に控えめな装いだった。だが、その名前だけは印象的だった。――氷室黛衣(ひむろ まい)。オックスフォード大学出身の秀才である。誰もが、結安と想乃の登場を待っていた。控室では、結安が最後の身支度を整えていた。淡いピンクがかったアイボリーホワイトのシルクドレス。ダイヤモンドのネックレスとイヤリング、ブレスレットを揃えたジュエリー。上品なクラシカルアップ。生まれながらの令嬢を思わせる気品が、その全身から自然と漂っていた。想乃はふんわりとしたドレスを着て、父の腕にちょこんと腰掛けている。章真は部屋の入口に立ち、静かに結安を見つめていた。彼女が美しいことは、昔から知っている。だが、ここまで華やかに着飾った姿を見るのは初めてだった。細い手首には、あのダイヤモンドの腕時計。18歳のあの日、自分だけが刻んだ証。今夜の結安は、誰が見ても彼の妻と変わらぬ存在だった。ヘアメイク担当は空気を察し、静かに部屋を後にする。章真は想乃を床へ降ろすと、ゆっくり結安の後ろへ歩み寄った。両手をそっと肩へ置く。切れ長の瞳には、滅多に見せない優しい光が宿っていた。この胸を打つ美しさ
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第1433話

その言葉が放たれた瞬間――会場はどよめきに包まれた。驚き、羨望、困惑、呆れ。誰もがそれぞれの思いを胸に、その光景を見つめていた。翔雅は澄佳と顔を見合わせ、小さくため息をつく。――来るんじゃなかった。来なければ、息子がこんなにも人目を憚らず愛をさらけ出す姿を見ずに済んだ。本当に自分を恋愛ドラマの主人公か何かだと思っているのか。今日は会社の年末パーティーであって、彼一人の舞台ではない。夫婦は苦笑しながらも、結安へ同情せずにはいられなかった。こんなにも一直線な男と向き合うのは、きっと大変だろう。結安は戸惑っていた。片膝をつく章真を見下ろす。彼女は誰よりも、この男を知っている。章真は何をするにも必ず目的がある。ここまで自分を低く見せるのも、深い愛を貫く男という印象を世間へ刻みつけるため。彼の女性ファンはすでに結安を上回るほど多い。それでも――結安の心が何も動かなかったわけではない。彼女も、ごく普通の一人の女性なのだ。いつも誰よりも強く、揺るがない男が。これほど大勢の前で片膝をつき、自分だけを見つめている。たとえ罪深い関係だったとしても。彼は、かつて少女だった自分が恋をした相手だった。18歳で初めて触れ合い、苦しみと幸せが入り混じる思い出を与えた人。それは結安だけが胸の奥へしまい込んできた、誰にも言えない少女の夢だった。瞳に、静かに涙が滲む。章真は彼女の指先を優しく包み込み、その力に導かれるように、ゆっくりと立ち上がった。そして顔を寄せる。唇が触れたのは、彼女の口角だけ。決して踏み込みすぎることなく、ただ何度も何度も、その場所へ優しく口づけを重ねる。結安の肩がかすかに震える。ようやく唇を離すと、彼は彼女を静かに抱き寄せた。結安。――章真だけの結安。18歳のあの日から。彼の世界は、ずっと彼女だけを中心に回っていた。そして今日、その想いを世界へ告げた。この場面は瞬く間にSNSで拡散され、再びトレンドの最上位を席巻することになる。……同じ頃。立都第一高校の創立記念祝賀会が開かれていた。会場はホテルではなく、一筋向こうにある格式ある料亭。規模も星耀エンターテインメントのパーティーより控えめで、10卓ほどが並んでいる。
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第1434話

校長たちは皆、百戦錬磨だった。この場で最も立場が高いのは、言うまでもなく章真である。だが、人を持ち上げるにも技術がいる。今この場で章真を直接褒めるより、結安を褒めたほうが、彼はずっと機嫌を良くする。その読みは見事に当たった。結安への賛辞を耳にした章真は、柔らかな笑みを浮かべて言う。「結安は、好きで芝居をしているだけなんです。皆様にそう言っていただけるなんて、本人にはもったいないほどです」少し間を置き、続けた。「ところで、結安の席はどちらでしょう。私は家族として同行していますので、隣に座らせていただければ」……物腰はどこまでも穏やか。品のある微笑みを絶やさず、誰に対しても丁寧で親しみやすい。思わず警戒心を解いてしまうような空気を纏っていた。だが、校長たちが彼を末席へ案内するはずもない。慌てて校長の隣の席を二つ空ける。「立花さんはこちらへ。葉山さんもご家族ですから、お隣へどうぞ」場には和やかな笑いが広がる。結安は居心地の悪さを覚え、本来の席へ戻ろうとした。その瞬間――章真の手が、そっと彼女の手首を包む。柔らかな仕草だった。だが逃れられないほど、しっかりと力が込められている。章真は結安を引き留めたまま、校長たちへ穏やかに微笑む。「そこまで言っていただけるなら、お言葉に甘えます。結安もこちらへ。社会に出てから恩師のお話を伺える機会なんて、そうありませんからね。勉強は好きだったでしょう?」結安は言葉を失った。……校長たちはすっかり恐縮してしまう。今夜だけでも、自分の知識を余すことなく伝えたい。そんな勢いだった。そして誰の目にも明らかだった。章真が結安をどれほど大切にしているか。結婚しないのではない。結安が芸能活動を続けるため、今は籍を入れることを望んでいないだけなのだろう。最近は「子どもだけを望む」という生き方も珍しくない。もっとも、その相手が章真というのは、あまりにも規格外ではあるが。結安は結局、その席へ腰を下ろした。静かに章真の隣へ座る。彼は校長たちと談笑を重ね、杯を交わしていた。普段なら、こういう席で酒を飲みすぎることはない。先ほどの年末パーティーでも口をつけたのはほんの数杯だけだった。それな
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第1435話

章真は結安の手を握ったまま、もう片方の手で清酒の杯を掲げ、穏やかに笑った。「藤堂さん、それじゃ駄目だ。赤ワインで清酒に乾杯するなんて、礼を欠くだろう。ほら、こちらを。俺が注いであげよう」……誰かが慌てて新しい杯を運んでくる。大ぶりの盃だった。章真は自らその杯へ清酒をなみなみと注いだ。駿の顔色がわずかに青ざめる。彼は肝細胞癌のステージⅢ。酒など口にしてはいけない身体だった。まして、この1杯はあまりにも重い。それでも彼は、隣にいる結安を一度だけ見つめると、かすかに微笑み、その杯を静かに持ち上げた。視線は結安から離さないまま、言葉だけを章真へ向ける。「この1杯は、葉山さんに。どうか、この先も結安を大切にしてください。慈しみ、誠実であり、そして――彼女を畏れる心を忘れずに」……言い終えた頃には、駿の目には静かに熱が滲んでいた。残された時間は、もう長くない。結安を見守れる時間も、あとわずかだ。本来、この世に未練などなかった。それなのに、結安だけが唯一の心残りになってしまった。――返しきれなかった想いは、来世で。そう胸の内だけで呟き、駿は3合の清酒を一息に飲み干した。校長たちは思わず顔を見合わせる。結安は何も言わなかった。ただ静かに駿を見つめる。胸の奥が熱く締めつけられる。自分の心に駿という存在が根を下ろしていることは、誰よりも自分が知っていた。それでも、その想いを表に出すことだけはできない。彼を巻き込みたくなかった。章真は終始、落ち着き払っていた。駿が飲み終えるのを見届けると、静かに拍手を送る。穏やかな笑みを浮かべたまま、口を開いた。「実に頼もしい若者だ。もし俺が、もう少し遅く結安と出会っていたら――きっと結安は、お前を好きになっていただろう」……「章真」結安が低く彼の名を呼ぶ。会場は水を打ったように静まり返った。章真を呼び捨てにし、しかも咎めるような口調で声を掛けられる人間など、この場には結安しかいない。誰もが思った。今度こそ章真は機嫌を損ねるだろう、と。とりわけ先ほど陰口を叩いていた女性たちは期待していた。この場で結安を突き放し、恥をかかせてほしい。愛人なのだから、自分の立場を思い知るべ
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第1436話

車内には静かな空気が流れていた。結安は章真の隣に座ったまま、ずっと口を開かなかった。章真は横目で彼女を見つめ、声を落として尋ねる。「どうした。まだ藤堂のことを考えているのか?」「違う。私と藤堂さんは、何もない。……あなたは最初から知っていたでしょう?」「だが、彼はお前を想っている」――その一言だけだった。それ以上、章真は何も言わない。自分でも分かっていた。いつまでも年下の青年相手に張り合っていては、あまりにも子どもじみている。彼は目を閉じた。休んでいるように見えたが、実際は酒がかなり回っていた。清酒をかなり飲んでいた。酔いがじわじわと全身を巡り始めていた。無意識に、結安の手をそっと握る。最初は控えめだった。だが、その温もりに触れているうちに抑えが利かなくなる。大きな手が彼女のうなじへ回り、ゆっくりと引き寄せた。章真は顔を寄せ、静かに口づけを重ねる。何度も、何度も。そして唇を離すと、そのまま額を寄せ、頬を寄せる。酒に熱を帯びた彼の肌は驚くほど熱く、結安の少し冷えた肌へじわりと伝わってくる。高揚しているのが分かった。彼女の手を包む力も、少しずつ強くなっていく。こんな強引な章真は珍しい。結安は少しだけ身じろぎした。力が強すぎることもあったし、何より前には運転手がいる。口づけだけとはいえ、どうしても落ち着かなかった。しかし章真は、それだけでは足りなかった。スイッチを押すと、前席との間にあるパーティションが静かに上がり始める。後部座席は外界から切り離された空間になった。わざと羞恥を誘うような水音を立てながら口づけを重ねると、そのまま結安を腕の中へ抱き寄せた。淡い蓮色のワンピースの裾にそっと指先を添え、額を軽く寄せ合う。「そのワンピース、よく似合ってる。脚がすごく綺麗に見える」36歳になった章真は、なお端正な容姿を保っていた。だが結安は12歳年下。腕の中へ抱けば、その若さが嫌というほど伝わってくる。だからこそ、先ほど駿へあんな言葉を口にした。年齢差を、彼自身がどこかで気にしていたのだ。そのもどかしさを振り払うように、結安を抱き締める腕へ少しだけ力がこもる。結安は静かに彼の肩へ額を預けた。何も言わない。酒の
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第1437話

章真は少し理性を失っていた。酒が入ると、とりわけその傾向が強くなる。スイートルームのドアを開けた途端、彼は結安を扉へ押し当て、そのまま深く口づける。だが彼が焦っていたのは、身体を重ねることではない。欲しかったのは、結安の承諾だった。息子が欲しい。娘でも構わない。それでも足りなければ、もう2人、3人と家族を増やせばいい。結安はまだ若い。結婚したくないのなら、それでもいい。その代わり、子どもを増やしたい。二人を繋ぎ止める絆を、もっと増やしたかった。しかし、章真がどれほど言葉を尽くそうと、結安は首を縦には振らない。これ以上、この人との子どもは産めない。想乃だけで十分だった。もうこれ以上、彼と切り離せない存在を増やしたくはなかった。章真はなおも執拗に迫り、結安をベッドの端へ押し倒した。彼女の答えを引き出そうと、逃がさぬよう身体を重ねる。だが、結安は首を縦には振らなかった。どれほど迫られても、決して折れようとはしない。酒が入っていたせいもあるのだろう。普段の章真なら、ここまで強引になることはなかった。少なくとも、結安の意思にはもう少し耳を傾けていたはずだった。やがて章真は焦りを募らせる。酒の勢いもあった。そして何より、藤堂という存在が彼の理性を揺さぶっていた。結安は呆然と彼を見つめる。やがて肩を叩き、必死に抵抗した。それでも思いは届かず、最後には静かに涙を流すしかなかった。彼は避妊をすることもなく、彼女の意思を顧みることもなく、ただ自分の子を宿してほしい――その一心で結安を求め続けた。そのことが、結安の胸を深く傷つけていた。寝室には重い静寂だけが残る。酒の残り香。結安の甘い香り。男の熱を帯びた体温。すべてが入り混じり、息苦しい空気だけが漂っていた。長い沈黙のあと。結安は天井を見つめたまま、小さく笑う。乾ききった笑みだった。「章真。私、大人になれば変われると思ってた。強くなれば、全部変わると思ってた。でも何も変わってない。18歳の頃と、何が違うの?」彼女はゆっくりと言葉を紡ぐ。「あなたは私を好きだと言う。でも、それは好きなんかじゃない。支配したいだけ。藤堂さんが気に入らないから、私を連れて行っ
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第1438話

30分後――結安はベッドに倒れ込み、虚ろな目で天井を見つめていた。章真はベッドの傍らに立ち、そんな彼女を見下ろしている。痛々しいほど無理をして、自分に媚び、機嫌を取ろうとした彼女の姿を見ても、少しも満たされなかった。胸に込み上げるのは、喜びではなく、苛立ちと怒りだけだった。藤堂のためなら、普段なら決してしないことまで受け入れる。結安を折れさせられるのは、あの男だけなのか。彼女の心の中で、藤堂はそこまで特別な存在なのか。結安は込み上げる吐き気に耐え切れず、バスルームへ駆け込んだ。洗面台に身を預けるようにして何度も吐き続け、胃の中が空になり、ついには胆汁まで込み上げそうになって、ようやく両手でカウンターを支えながら浅く息を整える。いつの間にか、背後に人の気配があった。章真は静かに立ち尽くし、冷え切った声で告げる。「結安。まだ分からないのか。お前がそこまで藤堂駿を気にかけるほど、俺はあいつを見逃せなくなる。俺は十分満足した。だが、それとこれとは別だ。あいつだけをのうのうと生かしておくつもりはない。立都市に居座って、俺の目障りになることは許さない」そう言い残し、章真は立ち去ろうとした。「待って」結安は洗面台に手をついたまま、ゆっくりと身体を起こす。鏡越しに章真を見つめ、静かな声で言った。「どうして最初から言ってくれなかったの?もし先にそう言っていたら、私は絶対に応じなかった。いいわ。章真、彼を潰したいなら好きにすれば。でも、そのついでに私も潰せばいい。あなたは昔からそうだったでしょう。私を愛してくれた両親は、あなたが原因で二人とも命を絶った。藤堂駿だって、ただ私を好きになって、1通のラブレターを書いただけ。それなのに、あなたは彼を転校に追い込んだ。あなたは他人の未来も人生もどうでもいいのよ。私に優しくしてくれる人が現れるたび、行き場を失うまで追い詰める。それで、自分がこの世界の支配者だと証明したいだけ。昔からそう。三浦先生も、哲乃も、あなたのせいで死んだ。ええ、あなたは『欲をかいたのは彼女たちだ』『偉大な葉山社長に恋なんてするからだ』って言うでしょう。でも、最初に近づいたのはあなたじゃない。哲乃を囲い込んだのも、三浦先生に期待を抱かせるような態度を取ったのも、全部あなた。そん
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第1439話

対峙したまま、長い沈黙が流れた。やがて章真が、不意に口を開く。「結安……俺を愛してるか?まだ、俺にときめくことはあるのか?俺がお前にキスするときも、触れるときも、抱くときも……まだ胸は高鳴るのか?それとも、もう身体が反応するだけなのか?」結安の胸が大きく上下する。幼い頃、章真と向き合うときは――ただ相手に合わせ、やり過ごすしかなかった。抗う力など、少しも持っていなかったからだ。けれど今は違う。もう子どもの頃のように、何もかも彼の思いどおりにはならない。時には嘘をつきたくないこともある。一度くらい、本当の自分でいたかった。だから結安は、静かに本音を口にした。「若い頃のときめきなんて、時間と一緒に薄れていくものよ。章真……愛よりも、憎しみのほうが長く残ることもある。人を愛するには理由が必要。その大前提は、人として尊重されること。私は一人の人間であって、あなたが囲っている小鳥じゃない。あなたが私に興味を持ったのだって、ただ面白かったからでしょう?本当に好きだったわけじゃない。ただ自分の欲を満たしたかっただけ。贅沢なものを見飽きた頃に、素朴な女の子を見つけて『珍しい』って思っただけなのよ。でも、その一時の気まぐれで、あなたは私の初めてを奪って……人生そのものを壊した。それでもあなたは謝らない。だって、あなたは葉山章真だから。章真は、自分が間違っているなんて思ったこと、一度もないもの」これだけ言葉を重ねても――結局、伝えたいことは一つだった。もう、愛していない。そうだ。彼女はもう、大人になった。誰かの籠に閉じ込められる少女ではない。結安が立ち上がろうとした瞬間、章真はその手首をつかんだ。「どこへ行く」結安は視線を伏せる。「薬を買いに」章真はじっと彼女を見つめた。怒りをぶつけそうになる気配が一瞬だけよぎる。だが結局、その感情を飲み込み、彼女をソファへ座らせると、自分は上着を手に取った。「俺が行ってくる」結局、折れたのは彼だった。結安には、どうしても甘くなってしまう。どうすればいい。彼女は、野宿でもすると言う。そんなことを、どうして許せる。結安は幼い頃から、大切に育てられてきたのだから。……章真は30分も経たないうちに戻ってきた。
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第1440話

翌朝。会社で片づけなければならない仕事が残っていたため、章真は一足先にホテルを後にした。部屋を出る前、ベッドの縁へ腰掛けると、今にも眠りに溶けてしまいそうな結安を見つめる。甲でそのきめ細かな頬をそっとなぞり、心の中で苦笑した。本当に弱い。昨夜、何度も身体を重ねただけで、すっかり力を使い果たしてしまっている。喧嘩をして、ぶつかり合って、そして仲直りをしたあとの甘さは、これまでとは比べものにならないほど深かった。章真は身をかがめ、低く囁く。「昼に迎えに来る。一緒に昼飯を食おう」……結安は目を閉じたまま、小さく首を横に振った。「もう少し寝たら帰るわ。運転手を九時半に迎えに来させて。想乃をあまり長く大人なしにしておけないから」章真は露骨に不満そうな顔をした。それでも、これ以上空気を悪くするつもりはなかった。結局は何も言わず、そのまま部屋を出ていく。章真が去ると、結安はしばらく眠り直し、時間を見計らって起き上がった。シャワーを浴びて身支度を整え、着替えを済ませるとホテルを出る。楓ヶ丘邸へ戻るためだった。エレベーターへ向かう途中、脚に鈍い痛みが走る。昨夜だけで、章真は5度以上も彼女を求めた。女性の身体には、明らかに負担が大きすぎる。何度も眉をひそめ、彼の肩を押し返して「もう嫌」と訴えた。それでも彼の渇きは癒えず、ただひたすら彼女を求め続けた。ホテルのエントランスには、黒いロールス・ロイス・ファントムが静かに停まっていた。運転手は結安を見るなり後部座席のドアを開け、深々と頭を下げる。「立花様、どうぞ」結安は軽く頷き、車へ乗り込んだ。身体は重く、疲労が抜けない。誰かと話す気分にもなれなかった。後部座席にもたれ、窓の外を流れていく街並みをぼんやり眺める。景色だけが次々と移り変わっていく。昨夜の疲れで思考する力さえ残っておらず、何も考えたくなかった。その時だった。道路脇に、一組の中年夫婦が座り込んでいるのが目に入る。着ているものは擦り切れ、薄汚れていた。女性は顔色が悪く、長く病を患っていることが一目で分かる。夫の膝へ頭を預け、その瞳にはほとんど生気が残っていなかった。その女性を、結安は見覚えがあった。哲乃の母親だった。以前、章真は哲
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