章真は事を穏便に処理したつもりだった。それでも、結安と別れたという噂は、いつの間にか世間へ広まっていた。芸能誌には連日のように彼のゴシップが載った。今日は人気女優から告白されたという記事。明日は有名モデルと食事をしたという記事。とにかく、1日たりとも静かな日はなかった。夕暮れ時。章真のもとへ、陽白から電話がかかってきた。電話の向こうで、陽白は笑いを含んだ声を響かせる。「章真、すっかり芸能人の仲間入りだな。毎日ゴシップ誌の一面を飾ってるじゃないか。そんなに相手をしていて、身体がいくつあっても足りないだろう?」「全部でたらめだ」章真は携帯電話を握り、低い声で答えた。結安と別れてからというもの、想乃は毎日のようにママを求めて泣いている。章真は連日まっすぐ帰宅し、娘を宥めるだけで精一杯だった。ほかの女を探す気力など、あるはずもない。結安から連絡がない日が1日増えるたびに、彼女への恨みも一つずつ積み重なっていった。本当に、娘まで捨てたつもりなのだろうか。電話の向こうで、陽白が静かに笑った。「章真、久しぶりに一杯どうだ?今夜は空いてるか?」……章真は少し考え、誘いを受けることにした。酒を1杯飲むだけだ。9時には切り上げれば、帰って想乃を寝かしつけるのにも間に合う。電話を切ったあとも、章真はしばらく大きな窓の前に立ち尽くしていた。風に雲が激しく流れ、夕焼けに染まった雲が空の彼方で揺れている。頭に浮かぶのは、あの女のことばかりだった。もう3日も、何の連絡もない。本気で、すべてを断ち切ったつもりなのだろう。自分を気にかけないのは構わない。だが、想乃のことまで気にならないのか。……午後7時半。立都市でも名の知れたバー、「縁」その名に違わず、客の八割ほどは独り身だった。もちろん、陽白は例外だ。彼が章真を酒に誘ったのには、きちんとした目的があった。あの二人は別れてしまった。だが、互いに想い合っていることは、誰の目にも明らかだった。章真のやり方が、普段からいささか強引なのは事実だ。結安が受け入れられなかったのも無理はない。ここまで拗れてしまった以上、先に頭を下げるべきなのは章真だろう。そもそも、悪いのは彼なのだから。やがて
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