静雄が去った後、深雪はひとりオフィスに座っていた。机の上に置かれた松原商事に関する資料を見つめ、その眼差しは複雑だった。このところ彼女は慎重に進み、大介が提供した情報と、遥太の陰での助けを利用して、松原商事をかつてない危機に追い込んでいた。だが、心の中には復讐の快感などひとかけらもなく、むしろ疲れと迷いでいっぱいだった。電話の着信音が深雪の思考を破った。表示された名前を見ると、それは遥太だった。「もしもし?」深雪の声は少しかすれていた。「俺だ」電話の向こうから遥太の声がした。「今夜、時間あるか?一緒に食事でも」「何か用?」深雪は尋ねた。今はただひとりで静かにしていたかった。「静雄について、新しい情報がある。直接会って話した方がいいと思ってな」遥太の声は厳しかった。深雪は少し迷ったが、結局応じた。「分かった。場所を送って」夜、深雪は遥太が指定したレストランへ向かった。そこはプライバシーの守られた店で、静かな雰囲気が漂っていた。遥太はすでに到着しており、窓際の席に座り、目の前には一本の赤ワインが置かれていた。「来たな」遥太は深雪を見ると立ち上がった。「うん」深雪は腰を下ろし、早速切り出した。「新しい情報って、何のこと?」遥太はすぐには答えず、まず深雪にワインを注いでから、ゆっくり口を開いた。「俺の両親を破産に追い込んだ静雄の仕業を裏付ける証拠を見つけたんだ」深雪の瞳が一気に収縮した。彼女は遥太を凝視し、震える声で尋ねた。「どんな証拠?」「財務や送金記録だ」遥太は持参したカバンから書類を取り出し、深雪に差し出した。「これで証明できる。当時、静雄は不正な手段を使って俺の会社を悪意で買収し、そのせいで両親は破産し、最後には行き場を失った」深雪は書類を受け取り、素早く目を通した。手がかすかに震えていた。そこに示された事実は動かぬ証拠であり、静雄の過去の罪を裏付けるには十分だった。「これ......どうやって見つけたの?」深雪は震える声で問うた。遥太が本当に掘り当ててきたことに驚きを隠せなかった。「俺なりのやり方がある」遥太は淡々と答えた。「この何年も、ずっと真相を探り続けてきた。そしてようやく掴んだんだ」「それで......どうするつもり?」深雪は言った。「警察に渡すの?」「警察
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