深雪はベッドの端に腰掛け、リンゴの皮をむいていた。病室の空気はどこか重苦しかった。その時、不意に病室のドアが開き、紗依が入ってきた。「松下さん、どうしてこちらへ?」深雪は少し驚き、すぐに立ち上がって出迎えた。「江口さんの様子を見に来たのよ」紗依の視線は延浩に向けられた。「具合はどう? ひどく傷ついたんじゃないの?」「お気遣いありがとうございます。大丈夫です」延浩は無理に笑みを浮かべて答えた。「どうして大丈夫だなんて言えるの。こんなに重傷を負って......」紗依はため息をつき、「一体どういうことなの? 何で突然事故なんて......」と続けた。「誰かに恨まれているんじゃないの?」紗依の声には探るような響きがあった。「松下さん、実は......」深雪は証拠がない以上、隠しておこうと思ったが、延浩が彼女の言葉を遮った。「静雄の仕業だと疑っています」延浩は静かに、だが強い眼差しで言った。「何ですって?」深雪は驚きに目を見開き、まさか彼がそこまで率直に言うとは思わなかった。「静雄?」紗依は眉をひそめ、意外そうな表情を浮かべたが、すぐに冷静さを取り戻した。「証拠はあるの?」「ありません」延浩は答えた。「でも、彼以外にこんなことを仕掛ける人物は考えられないです」「そう......」紗依はしばらく思案し、「この件は私も注意して見ておくわ。心配しないで」と告げた。「ありがとうございます」深雪は心の中に温かいものを感じながら言った。「しっかり養生して。何か必要があればいつも言ってね。深雪さん、あなたも体に気をつけてね」「はい、わかりました」深雪はうなずいた。「そうだ、深雪さん。少し二人で話せる?」紗依が急に切り出した。「はい」深雪は一瞬戸惑ったが、すぐに承諾した。二人は病室を出て、廊下の端まで歩いた。「あなたは賢い子だから」紗依は意味ありげに言った。「言わなくても理解していると思うけど」「はい」深雪はうなずいた。「松原さんを疑っているなら、浅野さんはどう?」紗依は問いかけた。「彼女が関与している可能性は?」「それは......わかりません」深雪は少し躊躇して答えた。「だから、こうすればどう?」紗依は提案した。「浅野さんを食事に誘ってみて。口ぶりを探るのよ」「試すということですね?」深雪はす
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