All Chapters of クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した: Chapter 581 - Chapter 590

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第581話

松原商事の買収チームが、大挙して南商事へ乗り込んだ。静雄はオフィスで南商事の資料に目を通しながら、すべてが計算通りだと言わんばかりの笑みを浮かべていた。「松原社長、準備は万端です。買収チームはすでに南商事に入り、資産の精査と引き継ぎを進めています」デスクの前に立った大介が、淡々と進捗を報告する。静雄は資料を置き、ゆっくりと視線を上げた。「深雪に何か動きはあったか?」大介は小さく首を振った。「いいえ。非常に協力的です。特に妨害もなく、南商事のほうは、全体的に空気が沈んでいます。社員たちも、買収される現実を受け入れ始めているようです」静雄は鼻で笑った。「だろうな。南商事はもう詰んでる。深雪にできることなんて、何もない。買収チームに伝えろ。もっとスピードを上げろ。資産精査も引き継ぎも、さっさと終わらせたい」声には、わずかな焦りと、支配欲がにじんでいた。「承知しました、松原社長」大介は即座に応じた。南商事の社長室は、異様なほど静かだった。深雪はデスクに座り、目の前の書類に淡々と目を走らせている。その表情からは、動揺の色は一切読み取れない。そこへ光凛が足早に入ってきた。「南社長......松原商事の人たちが、もう入って資産の精査を始めています」「ええ、知ってるわ。清査はそのまま続けさせて」深雪は顔を上げ、光凛に視線を向けて、淡々と告げた。光凛は思わず言葉を失った。「このまま......本当に、何もしないんですか?」深雪はようやく視線を上げ、唇の端をわずかに吊り上げた。「何をするの?」一拍置いて、静かに言った。「もちろん、徹底的に協力するのよ」「勝ったつもりでいさせてあげる。そうすれば、必ず油断するわ」その声は、ひどく冷たかった。買収チームが南商事に入って二日目。芽衣は「未来の社長夫人」を自称するかのように、堂々と南商事に姿を現した。シャネルのスーツにサングラス。背後には松原商事の社員を従え、歩き方一つにも見下すような余裕がある。「ここが南商事?ふぅん......思ったよりショボいわね」ロビーに足を踏み入れるなり、芽衣は容赦なく言い放った。受付嬢は困惑したまま立ち尽くし、どう対応すべきか判断できずにいた。芽衣はサングラスを外し、受付を値踏みする
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第582話

芽衣は深雪のデスクの前まで歩み寄ると、腕を組み、見下ろすように立って挑発した。「どうしたの、深雪?私が自分の新しい縄張りを見に来ちゃいけないわけ?」深雪はふっと笑い、席を立って横に回る。手際よくコーヒーを淹れ、芽衣の前に差し出した。「芽衣さんが見たいなら、もちろんどうぞ。南商事のすべてはもうすぐ松原社長のものになるんですから。好きなだけご覧ください」芽衣はカップを受け取り、満足げに口元を歪めた。「わかってるじゃない。言っておくけど、静雄が南商事を正式に手に入れたら......あなたなんて、何者でもなくなるのよ」そして、芽衣は声を低く落とした。「その時は、私を怒らせた代償をきっちり払ってもらうから」それでも深雪の表情は崩れない。静かに見返し、淡々と言った。「そう。じゃあ、楽しみにしています」芽衣はそのまま南商事を「視察」と称して歩き回り、人事にも業務にも好き勝手に口を出した。社員たちは怒りを飲み込み、黙って耐えるしかなかった。深雪は芽衣の横暴を黙認し、あえて協力する姿勢を取った。南商事が近々主を変えるかのような空気を、意図的に社内へ広げていくためだった。深雪は役員を招集し、松原商事の買収作業に全面協力するよう通達した。各部署には、資産精査と引き継ぎを最優先で進めるよう命じた。その徹底ぶりが、かえって静雄と芽衣の警戒心を溶かした。「深雪はもう諦めた」二人はそう信じ切っていた。南商事の買収は、もはや時間の問題だと。夜が更けた頃。深雪は延浩と、人目につかないカフェで密会していた。「準備は整った?」深雪が低く聞いた。延浩は迷いなく頷いた。「心配いらない、深雪 。全部、計画通りだ。静雄は完全に油断してる。罠は仕掛け終わった。あとは、落ちるのを待つだけだ」深雪の唇が、わずかに弧を描く。氷みたいな笑みだった。「いいわ、静雄。今回は、きちんと代償を払ってもらう」深雪はスマホを取り出し、静雄へ電話をかけた。「今夜お時間ありますか?買収意向書の締結をお祝いしたくて、食事でもいかがでしょうか」声は柔らかく、ほのかに艶を帯びていた。電話の向こうで、静雄の声が弾んだ。「もちろん空いているよ。どこで?」深雪は受話器を耳に当てたまま、静かに微笑んだ。「いつもの場所にしまし
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第583話

「松原社長、これから南商事は、あなたに託されることになります。どうか、大切に扱ってください」深雪の声には、まるで本当に南商事を手放すことを惜しんでいるかのような、かすかな哀しみが滲んでいた。そのか弱い姿に、静雄の胸には支配したという錯覚が広がった。深雪は、完全に自分に屈した。彼は、そう信じ込んで疑わなかった。「安心しろ。南商事は俺が責任を持って経営する。それに深雪のことも、きちんと大切にするよ」含みのある声でそう言い、熱を帯びた視線を深雪に向ける。深雪は恥じらうように視線を落とした。その目尻に、ごくわずかな嘲りが浮かんだことに、静雄が気づくはずもない。静雄は深雪の柔らかな態度に完全に惑わされていた。彼女はもう心を開きつつある。南商事を手に入れた後は、再びやり直せる。そんな都合のいい未来まで、勝手に思い描いていた。食事が終わると、静雄は当然のように深雪を送ると申し出た。夜の街を、車は静かに走る。車内には穏やかな音楽が流れ、夕食の余韻がまだ残っていた。静雄は横目で深雪を見た。街灯の光が彼女の横顔を照らし、その美しさを際立たせている。「深雪」低く、どこか焦りを含んだ声。深雪はゆっくりと顔を向け、頼るような眼差しで静雄を見つめた。「松原社長、今日はとても楽しかったです」柔らかく、甘さを帯びた声だった。静雄の胸が大きく揺れる。深雪は、本当に心を許し始めている。静雄には、そう思えた。先ほどまでの冷静さや強さは影を潜め、そこにいるのは、思わず守ってやりたくなるような女性だった。静雄は思わず手を伸ばし、深雪の手に触れる。彼女は、拒まなかった。指先に伝わる温もりに、心臓が早鐘のように打ち始めた。静雄はゆっくりと身を寄せ、視線を彼女の唇へ落とした。呼吸が乱れた。「深雪。君は、本当に美しい」かすれた声に、欲望が滲んだ。抑えきれず、さらに顔を近づけたその瞬間、深雪はふいに、わずかに顔を逸らした。唇は、空を切った。「松原社長、少し気が早いです」恥じらうような声音。だが、その瞳の奥には別の光が宿っていた。静雄は一瞬だけ固まり、すぐに納得した。これは拒絶ではない。照れと駆け引きだ。「俺が焦りすぎた」笑ってごまかしながら、欲望を
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第584話

遥太は深く頷いた。「はい。芽衣をを追いかける男を見つけました。そして、彼からいくつか重要な証言を得ています。その証言によれば、陽翔の失踪は、芽衣本人と直接関係している可能性が高いです」遥太の声は確信に満ちていた。深雪の指先がきゅっと強張る。手にしていた書類には、はっきりとした皺が刻まれていた。遥太は続けた。「その人物が提供した情報によると、陽翔の失踪は苦肉の計である可能性が高いそうです。芽衣は、静雄からの嫌悪を避けるため、わざと陽翔を失踪させ、その同情を引こうとしたと見られます」深雪は冷ややかに笑った。「苦肉の計?面白いわ。目的のためなら、本当に手段を選ばない女だ」一拍置いて、彼女は静かに息を整えた。「でも......ちょうどいいわ」深雪の瞳が、鋭く光る。「芽衣の嘘は、そろそろ暴かれるべきよ。静雄のほうは?何か反応はあった?」遥太は首を横に振った。「静雄は今、買収案件に全力を注いでいます。芽衣の動きには、まだ気づいていません。それに、今静雄は南社長の動向に気を取られていて、芽衣のことなど気にかける余裕はないでしょう」深雪の唇に、嘲るような笑みが浮かんだ。「それでいいわ。しばらくは、夢を見続けてもらいましょう。夢が覚めたとき、自分がどれほど惨めに負けたのか、思い知ることになる」数日後、松原商事は、正式な公告を発表した。南商事を買収し、三日後に正式な契約調印式を行うということだった。ニュースが流れるや否や、市場は騒然となった。南商事が本当に買収される。その現実に、誰もが衝撃を受けた。かつて栄華を誇った南商事も、ついに併吞の運命から逃れられなかったのだ。社内の空気は、さらに沈み込んでいった。社員たちは不安と動揺に包まれ、将来への見通しを失っていた。一部の幹部は、密かに松原商事へと媚びを売り始めていた。一方、松原商事はお祝いムードだった。南商事の買収は、松原商事の成長史において象徴的な出来事であり、静雄の評価も頂点に達していた。調印式当日。会場は厳かに整えられ、各界のメディアが詰めかけていた。フラッシュが絶え間なく瞬き、熱気が満ちていく。静雄は完璧に仕立てられたスーツを身にまとい、意気揚々と壇上に立っていた。その顔には勝者の笑み
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第585話

「今後、松原商事は南商事の持つ強みを活かしながら、事業体制を見直し、経営の効率を高めていきます。そのうえで、さらなる成長を目指していく所存です。私は確信しています。松原商事と南商事が手を組むことで、これまでにない未来を切り開くことができると。本日はお忙しい中、多くのメディアの皆さまにお越しいただき、誠にありがとうございます」静雄は壇上に立ち、意気揚々と語った。その声はマイクを通して、会場の隅々まで響き渡った。「本日、松原商事と南商事は、正式に買収契約を締結しました。これは松原商事にとって、大きな節目であり、同時に、南商事にとっても、新たな出発点となるものです」会場は大きな拍手に包まれ、フラッシュが昼間のように瞬いた。深雪は静雄の隣に立ち、礼儀正しい微笑みを浮かべている。その笑みは淡い。ただ、形式に従って口元を持ち上げているだけのようにも見えた。その奥に何が渦巻いているのかを、知る者はいない。「南商事は、これまで南社長のもとで、数々の実績を築いてきました」静雄は、余裕を滲ませた口調で続けた。「しかし、ビジネスの世界は甘くありません。環境が変われば、立場もまた変わるですから。松原商事には、南商事を再び前進させる力があります。そして、その責任を果たす覚悟もあります」未来を語るたびに、会場からは再び拍手が湧き起こった。記者たちはシャッターを切り続け、この瞬間を逃すまいとしている。深雪は静かに立ち、静雄の描く未来像に耳を傾けながら、心の中で冷ややかに笑った。どれほど立派な言葉を並べようと、それが必ず現実になるとは限らない。罠はすでに用意されている。あとは、彼が自ら踏み込むのを待つだけだ。拍手が徐々に収まると、静雄は深雪のほうへ向き直った。自分では穏やかなつもりの笑みを浮かべている。「深雪。今回の決断に、感謝している」声は柔らかく、どこか親しげだった。「信じてほしい。この買収は、君にとっても、俺にとっても、そして南商事の社員にとっても、最善の選択だ」深雪は、静かに微笑んだ。相変わらず淡い笑み。だが、その奥には、ほんのわずかな皮肉が滲んでいる。「松原社長のおっしゃる通りです。すべてが良い方向に進むことを願っております」その声は落ち着いていて、必要以上の感情を含んでは
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第586話

芽衣の登場は、一瞬で会場の視線を集めた。記者たちは一斉にカメラを向け、フラッシュが途切れることなく瞬く。華やかな芽衣は、数日前、静雄のオフィスで怯えながら様子を伺っていた自分の姿など、まるで忘れてしまったのようだった。彼女はスポットライトを浴びる快感に酔いしれ、まるで本物の「南商事副社長」になったかのように振る舞っていた。だが、その華やかさの裏に潜む不安と恐怖は、彼女自身しか知らなかった。深雪の反撃が怖いし、静雄に捨てられるのが怖い。そして何より、この栄光が一瞬で消えるのが怖い。静雄は舞台上で堂々と話す芽衣を満足げに見つめ、称賛の笑みを浮かべた。そして隣に立つ深雪へと顔を向け、誇示するような、施しを与えるような声で囁いた。「深雪、芽衣はこんなに優秀になった」その声は小さくて、深雪にだけ届いた。「君が戻ってさえすれば、芽衣と同じものを、いや......もっと多くを与えるよ」誘惑の響きを含んだ声だった。深雪はゆっくりと静雄を見つめた。その瞳は静かで、波ひとつ立たなかった。「お気持ち、ありがたく受け取ります」声は相変わらず穏やかだった。「ですが、私はすでに決めました。南商事の社長を辞任します。これからの南商事は、松原社長と......芽衣さんにお任せします」その言葉に、静雄は一瞬目を見開いた。深雪がこんなにも簡単に南商事を手放すとは思っていなかった。「辞任?どこへ行くつもりなんだ?」深雪は微笑んだ。その笑みには、解放と決意が入り混じっていた。「どこへ行くかは、松原社長が気にすることではありません。南商事は役目を終えました。私も、新しい人生を始める時です」そう言い残し、深雪は静かに舞台を降りた。振り返ることない姿は一見、敗者の退場のように見えた。孤独で、すべてを失ったかのように。静雄はその背中を見つめながら、小さな違和感を覚えた。何かがおかしい。だが、その感覚はすぐに打ち消された。深雪は辞任したんだ。南商事は松原商事のものになった。もう覆ることはないと思い込んだ。発表会が終わると、松原商事は正式に南商事を子会社にした。買収チームは乗り込み、大規模な統合作業が始まった。リストラ、事業の再編、管理層の入れ替え、容赦のない改革が次々と実行された。
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第587話

南商事・人事部長室。「部長、これが今日三回目の退職届の束です」 人事部スタッフの鈴木佳織が、分厚い退職届の束を抱えてデスクに置いた。部長は、机の上に積み上がっていく退職届を見て、顔色を青ざめさせた。「どういうこと?もう社員の不安は十分に宥めたはずでしょう。なんでまだこんなに辞めるの?」 佳織は深いため息をつく。「部長、宥めても無駄ですよ。松原商事の連中が来てから、社内はもうめちゃくちゃです。誰が耐えられますか?聞いたんですけど、技術部はチームごと辞めたらしいです」部長は頭を抱えた。 「技術部まで?あそこは会社の中枢よ!これじゃまずいわ。買収チームにどう説明するのよ......」松原商事・買収チームオフィス。「大変です!南商事の離職者がどんどん増えています!」 社員の一人が慌てて駆け込んできた。買収チームの組長山本明宏(やまもと あきひろ)は眉をひそめ、手にしていた資料を置いた。「どういうことだ?南商事の社員は、買収に協力的だと聞いていたが」社員の田中は焦りながら説明した。 「協力はしてますが。もう考えがバラバラなんですよ。松原商事の方針が全然受け入れられていません。特に浅野副社長は、来てすぐに口出しばかりして制度を勝手に変えるから、社員の不満が爆発しています」明宏の表情は暗く沈んだ。 「浅野芽衣......本当に役立たずどころか、害ばかりだ!早く手を打たないと、買収が空っぽになるぞ」同じ頃、別のカフェでは、南商事の元幹部たちが密かに集まっていた。彼らは長年会社を支えてきた古参で、南商事への愛着は深い。「はぁ......まさか南商事がこんな姿になるとはな」 元副社長が頭を横に振った。「松原商事が買収してから、もう滅茶苦茶だ。あの芽衣って女、管理なんて全然わかってない。ただの思いつきで指示を出すだけ」元財務部長もため息をついた。 「財務もぐちゃぐちゃよ。帳簿は合わないし、報告書も作れない。このままじゃ南商事は終わりだ。南さんは今どうしてるんだろう」 元マーケティング部長が心配そうに言った。「辞任してから消息不明だし、どこへ行ったのか......南さんがまだいたら、絶対こんなことにはならなかったのに」「本当だ。あの人の能力は誰もが認めて
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第588話

「どうしてこんなことに......」静雄は眉間に深い皺を刻み、頭を抱えた。南商事の買収は、確実に利益を生む勝ち戦だと思っていた。だが、蓋を開けてみれば、巨大な負債の塊があったんだ。「大介、南商事の運営状況はどうしてこんなに悪いんだ?」静雄は苛立ちを隠さず問い詰めた。大介は慎重に言葉を選びながら答えた。「松原社長......南商事の問題は、想定以上に深刻です。以前の調査報告は......少し、実態と違っていた可能性があります」静雄の怒りが爆発した。「違っていた?こんな重要な情報を、どうやって調査しなかったんだ!」大介はすぐに頭を下げた。「申し訳ありません。私たちの調査不足です。すぐに原因を突き止め、改善案を提検討しますので」静雄は苛立ちを抑えきれず、手を振って遮った。「もういい!今さら責任を追及しても意味がない。必要なのは、南商事を立て直すことだ。資金と人員をすぐに投入しろ。全力で支援するんだ」大介は頷き、部屋を出ていった。そして扉が閉まった瞬間、彼は抑えきれない笑みを漏らした。松原商事内部では、南商事への支援のために、他部署から大量の資源が引き抜かれ始めた。その結果、他部署の社員たちの不満が爆発し、社内には不穏な空気が漂い始めた。南商事・副社長室。芽衣は大きな椅子に座り、プロジェクト資料をめくっていたが、内容はまったく理解できていなかった。南商事の事業について、彼女は何一つ知らなかった。それでも、彼女は次々と指示を出していた。だが、その指示はどれも支離滅裂で、穴だらけだった。古参社員たちは陰でひそひそと噂していた。「浅野さんって、ほんとに飾り物だな。何もわかってない」「だよな。あれじゃ会社が潰れるのも時間の問題だ」「南さんのほうが百倍マシだった......もういないけど」芽衣の「賢い指示」は、瞬く間に混乱を引き起こした。プロジェクトは遅延し、クレームも増え、社員の不満は爆発寸前になった。南商事の経営は、さらに悪化していった。そのとき、静雄の電話が鳴った。表示された名前を見た瞬間、静雄の顔がぱっと明るくなった。深雪からの電話だった。「深雪、やっと俺のことを思い出してくれたのか?」静雄は嬉しさを隠せず、声が弾んでいた。電話の向こ
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第589話

「よかった......深雪、本当にありがとう!やっぱり君は、俺のことも、南商事のことも気にかけてくれているんだな!だったら今夜、一緒に食事でもどうだ?南商事のことをゆっくり話したい」静雄は今すぐにでも深雪に会いたくて仕方がなかった。深雪はふわりと微笑み、どこか含みのある声で答えた。「ええ、お会いしましょう」花束、プレゼント、ロマンチックなディナー。静雄は、女性を口説くための手段を総動員していた。その様子を見ていた芽衣は、嫉妬で胸が焼けるようだった。静雄がまた深雪を迎えに行こうとしたとき、芽衣が彼の前に立ちはだかった。「静雄、どこへ行くの?」その声には責める色が混じっていた。静雄は眉をひそめ、不機嫌そうに答えた。「会社の用事だよ」芽衣は声を荒げた。「また深雪に会いに行くの?」静雄の表情が一気に冷たくなった。「芽衣......その口調はなんだ?」芽衣の目に涙が浮かんでいた。「ただ聞いただけよ......南商事を買収してから、あなたは毎日あっちばかり。私のことなんて、もうどうでもいいんでしょ?」静雄は鼻で笑った。「また始まったのか?俺の仕事のことまで、いちいち報告しろって言うのか?」芽衣の涙がぽろりと落ちた。「私は......あなたが心配なの。深雪に騙されないかって......」静雄はさらに苛立ちを募らせた。「もういい!深雪は社長を辞めたんだ。俺を騙す余地なんてない。それより、お前はどうなんだ?南商事の副社長として、何をやってる?」芽衣の顔が一瞬で青ざめた。静雄は容赦なく続けた。「南商事は今、混乱の極みだ。これが副社長としての、君の能力か?」芽衣は堪えきれず、泣き崩れた。「そんな......静雄、どうしてそんなこと言うの?私だって頑張ってるのよ。でも南商事は、もともと穴だらけで......」静雄は冷たく言い放った。「問題?違うだろう。君に能力がないだけだ」芽衣はさらに泣きじゃくった。「私は深雪ほど優秀じゃない......でも、あなたのために、松原商事のために頑張ってるの!」静雄は一切同情しなかった。「俺のため?違うだろ。自分のためだ。忘れるなよ。誰が副社長の椅子に座らせてやったのか」そう言い捨てて、静雄は芽衣を置き去り
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第590話

静雄は深く感動し、胸を熱くした。「深雪......君は本当に優しい。やっぱり君は、利益だけを求める女たちとは違う」深雪は静かに微笑み、南商事が抱える問題の分析を始めた。「松原社長、今の南商事で最も深刻なのは離職率が高すぎるところです。このままでは、どれほど良いプロジェクトでも前に進みません」静雄は大きく頷いた。「うん、俺も感じている。でも、どうすればいいのかわからない」深雪は落ち着いた声で続けた。「まずは社員たちを落ち着かせることです。松原商事の方針のいくつかは、南商事の実情に合っていません。調整が必要です」静雄は身を乗り出した。「具体的にはどう調整すればいい?」深雪は柔らかく微笑み、静かに助言を始めた。その助言は一見合理的で、静雄のためを思っているように聞こえた。だが実際には、静雄を誤った方向へ導くための、巧妙な罠だった。静雄は深雪の言葉を聞き入り、完全に信じ込んでいた。下瀬産業・社長室。延浩に付き添われ、深雪は再び下瀬社長を訪ねた。「こちらが最新の協力案です。ご確認ください」深雪は丁寧に資料を差し出した。下瀬社長はページをめくりながら、満足げに頷いた。「......素晴らしい内容ですね。下瀬産業としても、南商事との深い協力を望んでいます」延浩は穏やかに微笑んだ。「下瀬社長、私たちも、南商事のポテンシャルを高く評価しています。必ずや双方にとって大きな利益を生む協力になるでしょう」下瀬社長は延浩を一瞥し、力強く頷いた。「安心してください。下瀬産業は全力で協力します。松原商事には、相応の代償を払ってもらいましょう」深雪と延浩は、静かに視線を交わし合った。復讐の計画は、着実に進んでいた。松原商事・役員会議室静雄は南商事の経営悪化について、緊急の役員会議を開いた。芽衣も隅の席に座っていたが、どこか居心地悪そうだった。「最近の南商事の状況は、皆も見ている通りだ。非常に厳しい」静雄は冒頭から厳しい口調だった。「今日は、この悪化した状況をどう立て直すか、意見を出してほしい」各部門の責任者が次々と発言し、様々な案を出していく。芽衣も発言しようとしたが、静雄はわざと彼女を遮った。「浅野副社長の意見は?」その声には、深雪を思い出し
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