松原商事の買収チームが、大挙して南商事へ乗り込んだ。静雄はオフィスで南商事の資料に目を通しながら、すべてが計算通りだと言わんばかりの笑みを浮かべていた。「松原社長、準備は万端です。買収チームはすでに南商事に入り、資産の精査と引き継ぎを進めています」デスクの前に立った大介が、淡々と進捗を報告する。静雄は資料を置き、ゆっくりと視線を上げた。「深雪に何か動きはあったか?」大介は小さく首を振った。「いいえ。非常に協力的です。特に妨害もなく、南商事のほうは、全体的に空気が沈んでいます。社員たちも、買収される現実を受け入れ始めているようです」静雄は鼻で笑った。「だろうな。南商事はもう詰んでる。深雪にできることなんて、何もない。買収チームに伝えろ。もっとスピードを上げろ。資産精査も引き継ぎも、さっさと終わらせたい」声には、わずかな焦りと、支配欲がにじんでいた。「承知しました、松原社長」大介は即座に応じた。南商事の社長室は、異様なほど静かだった。深雪はデスクに座り、目の前の書類に淡々と目を走らせている。その表情からは、動揺の色は一切読み取れない。そこへ光凛が足早に入ってきた。「南社長......松原商事の人たちが、もう入って資産の精査を始めています」「ええ、知ってるわ。清査はそのまま続けさせて」深雪は顔を上げ、光凛に視線を向けて、淡々と告げた。光凛は思わず言葉を失った。「このまま......本当に、何もしないんですか?」深雪はようやく視線を上げ、唇の端をわずかに吊り上げた。「何をするの?」一拍置いて、静かに言った。「もちろん、徹底的に協力するのよ」「勝ったつもりでいさせてあげる。そうすれば、必ず油断するわ」その声は、ひどく冷たかった。買収チームが南商事に入って二日目。芽衣は「未来の社長夫人」を自称するかのように、堂々と南商事に姿を現した。シャネルのスーツにサングラス。背後には松原商事の社員を従え、歩き方一つにも見下すような余裕がある。「ここが南商事?ふぅん......思ったよりショボいわね」ロビーに足を踏み入れるなり、芽衣は容赦なく言い放った。受付嬢は困惑したまま立ち尽くし、どう対応すべきか判断できずにいた。芽衣はサングラスを外し、受付を値踏みする
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