風歌は、ダンスフロアから流れる優雅な音楽を耳にしながら、フランスから招いた七つ星シェフによるチョコレートムースを味わっていた。突然、男の大きな手が彼女の視界に入ってきた。「お嬢さん、あなたをダンスに誘う栄誉をいただけるでしょうか?」彼女はゆっくりと顔を上げ、その手をたどるように視線を上へ移すと――そこには、冷たいまま一切変わらない俊永の顔があった。その瞬間、風歌の食欲は一気に失せた。二人の目が合った。俊永の心臓は、ひときわ強く跳ねた。彼はこのとき初めて、真正面から風歌の顔をまじまじと見た。完璧に整ったその顔――白く透き通るような肌が、彼女をより一層まばゆく引き立てていた。彼の元妻は本当に美しかったのだ。特にその瞳は、満天の星を宿しているかのように清らかで力強く、どこか頑固さも感じさせた。俊永は、思わず見とれてしまった。その目は、彼にどこかで見たような錯覚を与えた。彼が一瞬我を忘れていると――風歌はふっと冷笑を浮かべ、目の奥には冷ややかさと軽蔑の色をたたえて言い放った。「すみません、御門さん。私と踊るには……あなたはまだ資格がありません」たまたま通りかかって聞いた周りの人々は驚きのあまり呆然とした!――この女……なんて傲慢なんだ?!まさか、志賀市で誰もが一目置く御門社長に向かって、「資格がない」だなんて……!?俊永の顔色は一瞬にして冷え切り、先ほど感じたかすかな親近感など、「資格がない」という一言で跡形もなく吹き飛んでしまった。それでも彼はなお、手を差し出す紳士的な姿勢を保ちながら、作り笑いを浮かべて返した。「ただのダンスですよ、風歌さん……もしかして、怖いのですか?」風歌の瞳にも、瞬時に冷たい光が宿った。――まだしつこくつきまとう気?この男、なんて図々しいんだ!いい言葉も悪い言葉も理解できないのか?二人の目が再び合い、そこにはかすかに戦いの気配が漂っていた。雰囲気が次第に険悪になっていく中――駿が笑みを浮かべて立ち上がった。「風歌は、私のパートナーです。御門社長、人のものを横取りしようとするのは感心しませんよ」そう言って、彼は俊永の手を静かに戻しながら、さりげなく視線を横へ流した。「御門社長は、ご自分が連れてきたパートナーをお誘いになったらどうです?……ほら、パートナーさんが嫉妬して
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