Semua Bab この度、元カレが義兄になりました: Bab 31 - Bab 40

41 Bab

第31話

買い物を終え、私たちは家に帰ってきた。伊月くんと協力してリビングを飾りつけ、料理を作って……急いでパーティーの準備をした。「ただいまー」ちょうど準備をし終えたとき、玄関からお母さんたちの声が。「陽菜、伊月くん……」「せーのっ」パンパンッ!パーンッ!!お母さんたちがリビングに入ってきたのと同時に、私と伊月くんは一斉にクラッカーを鳴らした。リビングには、ひらひらと紙吹雪が舞う。「父さん」「お母さん」「「入籍、おめでとう!!」」笑顔の私たちを見たお母さんは、口元を手で覆い、光佑さんは「まさか、二人がこんなことをしてくれるなんて……」と、目を潤ませている。お母さんと光佑さんにソファに座ってもらうと、私と伊月くんで花束とケーキを出す。「父さん、翔子さんを幸せにしろよ」「ああ、もちろんだ」伊月くんがケーキを切りながら言うと、光佑さんが力強く頷く。「このお花も料理も、二人で頑張って用意してくれたのね……ありがとう。こんなふうに二人に祝ってもらえて、すごく幸せだわ」オレンジのバラの花束を手に、お母さんが涙をこぼす。「もう、お母さんったら大袈裟だよ」そう言いながらも、私も胸がじんわりと熱くなる。今日、伊月くんと一緒に準備した時間も楽しかったし。お母さんたちに喜んでもらえて、本当に良かった。そして、涙するお母さんと光佑さんを見ていたら、二人の幸せを……家族の幸せを絶対に守らなくちゃいけないのだと、私は改めて思った。**パーティーの翌朝。学校に着いた私が教室に入ると、クラスメイトの視線が一斉にこちらへと集まるのが分かった。えっ、何?それに、教室がいつもより騒がしいような……。「あっ、陽菜!大変だよ!」私を見つけた羽衣が、慌ててこちらに駆け寄ってくる。「羽衣、大変って一体どうしたの?」「実は……陽菜と佐野くんが付き合ってるんじゃないかって、学校中の噂になってるんだよ」心臓がドクンと音を立てる。「つ、付き合ってるって、どうしてそんな……」「昨日、陽菜と佐野くんが街で一緒にいるところを誰かが見ていたみたいで……」うそ。昨日、お花屋さんやケーキ屋さんで買い物をするところを学校の人に見られていたの?「ちょっと、菊池さん!」戸惑っていると、クラスメイトの女子数人が私の机を取り囲んだ。伊月くんファンとして有名な、リーダー格の森本さ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-07
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第32話

【伊月side】入籍した両親への、サプライズパーティーの翌日。登校すると、なぜか教室内がザワザワしていた。「あっ、佐野くん!」そして俺は、森本をはじめとするクラスの女子たちに囲まれてしまった。朝から何なんだよ、いったい……。「ねえ、佐野くん。昨日、菊池さんと一緒に街にいたんでしょう?」「えっ?」どうしてそのことを、森本が知って……。「佐野くんと菊池さんが、二人で一緒にお花屋さんやケーキ屋さんで買い物してたらしいじゃない!」まさか昨日の……学校の誰かに見られていたのか?「二人は中学の頃に、付き合ってたって聞いたんだけど……まさか佐野くん、今も菊池さんのことが好きとかじゃないよね?」森本に尋ねられ、心臓がドキンと音を立てる。「俺は……」改めて陽菜を好きかどうか聞かれたら、もちろん俺は、今でも陽菜のことが好きだ。だけど……本当の気持ちなんて、言えるわけがない。昨日のサプライズパーティーで涙ながらに喜んでくれた、父さんや翔子さんの顔が頭に浮かぶ。父さんのあんなに嬉しそうな顔は、久しぶりに見たな。ふと、昨日の父さんの顔を思い出し、俺の頬が微かに持ち上がった。陽菜は、妹だから。俺が陽菜を好きだなんて言って、実の母親みたいに、家族を壊すわけにはいかないんだ。父さんの笑顔を……家族みんなの幸せを、守らないと。俺は拳をギュッと握りしめ、森本たちのほうを真っ直ぐ見据える。「俺は……菊池さんのことは、好きじゃない」俺はキッパリと言い切った。「俺と菊池さんの親が、仲良くて。それで、昨日は彼女と一緒に買い物をしていただけだから」再婚したんだから、互いの親同士仲が良いっていうのは本当のことだし。嘘じゃないよな。チラッと視線を横にやったとき、離れたところに立っている陽菜と目が合って……。「!」陽菜はほんの一瞬、顔を歪めると、走って教室を出ていった。「陽菜!」俺も咄嗟に廊下へ出て、陽菜のあとを追いかけようとしたが……。「っ!」後ろから誰かに、腕を掴まれてしまった。「追いかけてどうするんだよ」「長谷川……」俺の後ろに立っていたのは、同じバスケ部の長谷川亜嵐だった。「離せよ」俺は、長谷川を軽く睨む。「陽菜ちゃんは佐野にとって、元カノである前に……今は妹なんだろ?」「ああ、そうだ。陽菜は、俺の妹で……大切な家族だ」「だった
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-08
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第33話

「はぁ、はぁ……っ」私は教室を飛びだし、無我夢中で廊下を走る。『俺は……菊池さんのこと、好きじゃない』さっきの伊月くんの言葉が、まるで鋭利なナイフのように心臓に深く突き刺さって苦しい。伊月くん、私のこと好きじゃないって……。雨の日の相合傘も、ケーキ屋さんで頭をポンポンと優しく撫でてくれたのも……全部、義兄として?私たちは中学の頃に別れたから、伊月くんが私のことを好きじゃないのは、当たり前のことなのに。それ以前に今、私と伊月くんは兄妹なんだから。自分が彼の恋愛対象じゃないことは、もうとっくに分かっていたはずなのに……。いざ『好きじゃない』って伊月くんの口からハッキリ言われると、こんなにも辛いなんて……。私の目には、じわりと涙が滲む。それからもひたすら走り続け、気づいたら私は学校の屋上まで来てしまっていた。真っ青な空がどこまでも広がり、少しひんやりとした風が私の頬をくすぐる。「……っうう」涙が次から次へと溢れてきて止まらず、私はその場にしゃがみこむ。お母さんが光佑さんと再婚することになって、伊月くんと同居するようになって。中学の頃に別れてからギクシャクしていた伊月くんとの距離も、少しずつ縮まっていって。女の子にはそっけない伊月くんが、私には優しくしてくれるから。もしかしたら……って、期待してしまっていたのかもしれない。「……ははっ。ほんとバカだなあ、私」ひとり、自嘲したそのとき。「陽菜ちゃん!」聞き覚えのある声がし、慌てて目元の涙を拭って振り返ると……。そこには、肩で息をした亜嵐くんが立っていた。「ねえ、陽菜ちゃん。大丈夫?」「だっ、大丈夫だよ」ニコッと笑ってみせるけど、また涙がこぼれそうになる。「嘘だ。陽菜ちゃん、泣いてたんでしょう?」亜嵐くんの親指が私の目尻にそっと触れて、鼓動が小さく跳ねた。「俺、陽菜ちゃんの笑顔は好きだけど……自分が悲しいときは、無理して笑わなくて良いんだよ」親指を離すと、亜嵐くんが私にハンカチを渡してくれる。「これ、使ってないから。泣きたいときは、思う存分に泣けば良い」「っ、亜嵐……くん……」弱っていた私の心に、彼の言葉が優しく響く。「俺、屋上の扉の外に立って、誰も来ないように見張ってるから」私にふわりと微笑むと、亜嵐くんは屋上から出ていった。亜嵐くんの姿が完全に見えなくな
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-09
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第34話

伊月くんの口から『好きじゃない』という言葉を聞いて、これからはちゃんと彼の“妹”になろうと決意した私。だけど……。「……ごちそうさまでした」「あら。陽菜、もういいの?」失恋した日の夜。夕飯が喉を通らず残してしまった私に、お母さんが心配そうに声をかけてくる。「残しちゃってごめんね。ちょっと、食欲がなくて……」「陽菜ちゃん、もしかしてこの前みたいに風邪とか?大丈夫かい?」「えっと、実は……夕飯の前に、新発売のお菓子を待ちきれずに食べちゃって……」光佑さんに聞かれて、ついそんな嘘をついてしまった。伊月くんに振られたからだなんて、本当のことは口が裂けても言えないから。「もう、陽菜ったら。ご飯の前にお菓子は食べたらダメだって、小さい頃からお母さんいつもあなたに言ってたでしょう?」「ごめんなさい!次からは、気をつけるから」謝ると、私は急いで自分の部屋へと向かう。そして、部屋のベッドに思いきりダイブした。「はぁ……っ」口から無意識に、ため息がこぼれる。失恋したからといって、その相手が同じ家に住む『家族』だと、嫌でも顔を合わせないといけないのが辛い。──コンコン。「はい?」「……」部屋のドアをノックする音がして返事をするも、応答がない。もしかして、空耳だったのかな?「そうだ。亜嵐くんに貸してもらったハンカチ、洗濯しないと」思い出した私がハンカチを手に、部屋のドアを開けると。──ガチャッ。「え?」「陽菜。話があるんだけど……」すぐ目の前には、伊月くんが立っていた。「あのさ、陽菜が夕飯のときから元気がないのって……もしかして、俺のせいか?」「……っ」俺のせい?って。伊月くんは、どうしてそんなことを聞くの?そりゃあ食欲がなかったのは、伊月くんに『好きじゃない』って言われたのが原因だけど……本当のことなんて、言えるわけないじゃない。「伊月くんのせいじゃないよ。ちょっと学校で、嫌なことがあっただけで……」ハンカチを洗濯するため、伊月くんの横を通り過ぎようとしたら。「!」伊月くんに、腕を掴まれてしまった。「今朝のことだけど……俺は、実の母親みたいに、今の家族を壊したくなかったんだよ」え?実のお母さんみたいにって、一体どういうこと?「だから俺は、陽菜を……家族を、傷つけたくなくて」傷つけたくなかったって言うけど、私はもう
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-11
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第35話

『今は……伊月くんと話したくないの』彼にそう言ってから私は、家でも学校でも何となく伊月くんを避けるようになってしまっていた。伊月くんの顔を見ると、『好きじゃない』と言われて傷ついたあの日のことが、頭を過ぎってしまって……胸が苦しくなるんだ。「ねえ、陽菜。最近、伊月くんと話していないみたいだけど……もしかして、ケンカでもしたの?」お母さんが眉尻を下げながら、聞いてきた。「大丈夫。ただの兄妹喧嘩だよ」余計な心配はかけさせたくなくて、私はお母さんに微笑んでみせる。入籍した両親へのサプライズパーティーの日に、涙するお母さんと光佑さんを見て、二人の幸せを、家族の幸せを……絶対に守らなくちゃと思ったはずなのに。これからはちゃんと、伊月くんの“妹”になると、決意したはずなのに。お母さんを心配させて、どうするの。伊月くんを避けたりして、これじゃあギクシャクしていた昔のあの頃に逆戻りだ。やってることと言動がチグハグなことは、自分でも分かっているけれど。今の私には、こうすることしかできないんだ……。**伊月くんを避けるようになって1週間ほどが経った、ある日の放課後。「陽菜ちゃん!」耳慣れた明るい声がして振り向くと、亜嵐くんが。「あれから、どう?元気?」「まあ、ぼちぼちかな。あっ、この前はハンカチありがとうね」「ううん。今度はハンカチじゃなく、俺の胸を貸そうか?」おどけたように言いながら、両手を大きく広げてみせる亜嵐くん。「ふふっ、ありがとう。気持ちだけもらっておくね」「そう?まあ、陽菜ちゃんに胸を貸さずにすむほうが、俺としても良いんだけどね」「え?」「ううん。あっ、そうだ。今日、バスケ部の練習が休みなんだけど。良かったら、気分転換に一緒にカフェでも行かない?」「カフェかあ」バスケ部の練習が休みってことは、伊月くんも今日はいつもよりも早く家に帰ってくるってことだよね?何となく気まずいし……。それに、亜嵐くんからのお誘いは、美化委員になったばかりの頃に、一度断ってしまったことがあったから。せっかくのお誘いを、こう何度も断ったら申し訳ないよね。「うん、いいね。行こう」「やった!それじゃあさっそく、レッツゴー!」こうして私は、亜嵐くんとカフェに行くことになった。**学校からしばらく歩いて、私たちは古民家カフェへとやって来た。平
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-13
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第36話

ちょ、ちょっと待って。亜嵐くんが、私のことを好き?!突然の告白に、すぐには頭が追いつかない。「いきなりこんなことを言われても、困るよね?」「いや……」「最初は陽菜ちゃんのこと、ウサギみたいにちっちゃくて可愛い子だなぁくらいにしか思ってなかったんだけど」ウサギ……。「陽菜ちゃんは、美化委員の掃除も嫌な顔ひとつせずに頑張って。どんなことにも、真面目で一生懸命で。そんな君を見ているうちに、気づいたら好きになってた」……っ。まさか亜嵐くんが、私のことをそんなふうに思ってくれていたなんて。でも……こんなときでさえ、私の頭に浮かぶのは伊月くんの顔。「あの、亜嵐くん。私……」「いいよ、分かってるから」私が言おうとしたことを、亜嵐くんが優しく止めた。「陽菜ちゃんは……佐野のことが好きなんだよね?」亜嵐くんに、私はこくりと頷く。「私……伊月くんが、好き。今はお兄ちゃんだけど、私のことは好きじゃないって言われたけど……やっぱりすぐには、諦めきれなくて」声が震えて、目には涙が浮かぶ。「だから、亜嵐くんの気持ちには応えられないです」「いいよ。俺は全部分かったうえで、陽菜ちゃんに気持ちを伝えたんだから」「っ、ごめんなさい……」「謝らないでよ、陽菜ちゃん」亜嵐くんの顔は笑っているのに、何だか少し泣きそうに見えて。胸が締めつけられる。「俺の告白、聞いてくれてありがとうね」お礼を言いたいのは、こっちのほうだよ。私のことを好きになってくれたってだけで、嬉しいのに。「これからも、友達として変わらずよろしくね」「うん。こちらこそだよ」亜嵐くんが差し出してくれた手に、私も自分の手を重ねる。亜嵐くんは私にとって、これからもずっとずっと大切な友達だよ──。**中間テストが終わり、5月末。いよいよ、修学旅行当日がやって来た。集合場所の東京駅から新幹線に乗って、京都へと向かう私たち。2人掛けの席に羽衣と隣同士で座り、お菓子を交換したりおしゃべりをしているうちに、あっという間に京都駅に着いた。「着いたー!京都〜!」普段からテンションの高い亜嵐くんが、今日はいつも以上にハイテンションだ。「お腹空いたなあ。まずは、お昼ご飯食べに行く?」「せっかく京都に来たんだし、わたし湯豆腐が食べたいな」「湯豆腐か、いいねえー。俺は八つ橋食いたい!」亜嵐くんと
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-15
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第37話

みんなでお昼ご飯を食べたあと、観光地を巡ることに。「陽菜、湯豆腐美味しかったね」笑みを浮かべる羽衣に、私は頷く。京都は初めて来たけれど、日本人だけでなく外国人の観光客も多くて賑やかだなあ。「おーい、みんな。はぐれるなよ」先を歩く亜嵐くんが振り向き、私たちに声をかけてくれる。近くにお寺があることもあってか、通りは人でごった返していた。「長谷川くん、待って!陽菜、長谷川くんを見失わないうちに急ごう」「うん」羽衣に続いて、私も駆け出そうとしたそのとき。──ドンッ。突然、肩に衝撃を受けた。「わっ」「危ない」行き交う通行人に押されてしまった私を、後ろにいた伊月くんが受け止めてくれる。ふわりと包まれた温もりに、思わず心臓が跳ねた。「……気をつけろよ」それだけ言うと、伊月くんは歩いていく。……また、助けられちゃったな。しばらく口をきいていないというのに、やっぱり伊月くんは優しいよ。**それから私たちは、清水寺や金閣寺など定番の観光スポットをまわった。清水の舞台から眺める景色は圧巻だったし、黄金に輝く金閣寺はすごくキレイだった。いくつかの寺社でお参りをしたあと、みんなで鴨川までやって来た。亜嵐くんが鴨川の飛び石の上を、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら対岸へと向かって進んでいる。ふふ、亜嵐くん楽しそうだなあ。薄い雲の広がる青空の下、川のせせらぎを聞きながら、羽衣と川沿いのベンチに座って休憩していると。「佐野くん!」私と羽衣の隣のベンチにひとり腰掛けていた伊月くんに、バスケ部マネージャーの麻生さんが声をかけてきた。「佐野くん、修学旅行楽しんでる?」「ん?ああ、まあな……」「佐野くん、あの噂以来、ここ最近バスケでミスが多かったから」私のほうを、チラッと遠慮がちに見る麻生さん。“あの噂”って、両親へのサプライズパーティーの日に、私と伊月くんが二人で買い物するところを学校の誰かに見られて。それで、私たちが付き合ってるんじゃないかって、学校の女の子たちに騒がれたときのことだよね?それ以来、伊月くん……バスケの調子が悪いの?「だから、佐野くん。この修学旅行で、しっかりリフレッシュしてよね!佐野くんなら、きっと大丈夫だからさ」伊月くんの隣に座った麻生さんが、彼の背中をポンと軽く叩く。最近は伊月くんを何となく避けてしまって、バス
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-17
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第38話

修学旅行1日目の夜。宿泊するホテルが突如停電し、伊月くんとエレベーターの中に閉じ込められてしまった私は呆然とする。 どうしよう。伊月くんとは今もまだ気まずいのに……。 密室に二人きりになったことに焦り、心臓がバクバクと音を立てだす。 「陽菜、ここに座れよ」 伊月くんが床にハンカチを敷いてくれたらしく、私はそこに座らせてもらった。 「あっ、ありがとう」 「いや」 伊月くんも私から少し離れたところに腰を下ろす。 非常事態のこんなときでさえ、伊月くんの優しさは健在で。 家族の幸せを守るため、伊月くんのことは早く諦めなきゃいけないのに……。 こういうことをされたら、諦めるどころかもっと好きになってしまいそうになる。 「……」 暗闇に包まれたエレベーターの中には、沈黙が流れる。 伊月くんの息遣いが微かに聞こえるけど、辺りは真っ暗で何も見えない。 こんなに暗いと、またあの日の記憶が蘇ってくる。 小学生の頃、雷で家が停電して、真っ暗な部屋に一人きりになって。すごく怖かったあの日のことが……。 「〜っ」 私は身を縮こませ、腕を震わせる。 「陽菜……」 伊月くんの手が、私の腕にそっと触れ……私は、彼に抱きしめられてしまった。 「伊月、くん……」 ねえ、どうしてこんなことをするの?あなたは私のことを、好きじゃないんじゃ……? 『俺は……菊池さんのことは、好きじゃない』 「っ、嫌ッ!」 教室で彼に言われたときのことが頭のなかを過ぎり、私は咄嗟に伊月くんの身体を突き飛ばしてしまった。 「陽菜?」 流れゆく雲の隙間から見えた月の光に照らされ、伊月くんが目を大きく見開くのが分かった。 「伊月くん、私のことが好きじゃないのなら、今みたいに抱きしめたりしないでよ」 「陽菜、俺は……」 「私が、伊月くんの妹だから。伊月くんは、私に良くしてくれるのだろうけど。お願いだからもう、優しくしないで……っ」 優しくされたら、いつまでも伊月くんのことを諦められないから。また、好きになってしまうから。 「っ、うう」 もう感情がめちゃくちゃになって、堪えきれなくなった涙が次から次へと頬を伝っていく。 お母さんと光佑さんの幸せを、壊したくないから。 伊月くんに突き放すようなことを言ったりしないで、これからも伊月くんと兄妹として仲良くしなくちゃいけな
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-19
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第39話

「俺は、陽菜のこと……妹だなんて思ったことない」 ……え? 「あのときは、教室だったし。父さんたちの幸せを守らなきゃと思って、自分の気持ちを押し殺して、つい嘘をついてしまったけど。本当は……俺は今でも陽菜のことが好きなんだよ」 うそ……。信じられなくて、私は口元を手で覆う。 「伊月くんが……私のことを好き?」 「ああ。中学の頃に別れてからもずっと、陽菜のことが忘れられなかった」 視界が、滲んでいく。 伊月くんのことが忘れられなかったのは、私だけじゃなかったの? 伊月くんも、ずっと私と同じ気持ちでいてくれただなんて……。 「わ、たし……も。伊月くんのこと、が……」 “好き” たった二文字を、口にすれば良いだけなのに。なかなか言葉にできなくて。涙が再び溢れてくる。 「うっ、ずっと、伊月くんのことが……っ」 嗚咽が混じって、かっこ悪い告白なのに。伊月くんは、じっと黙って聞いてくれている。 「好き……です」 やっと言えた、と思ったら。 私は腕を掴まれ、そのままグイッと引き寄せられた。 そして、あっという間に伊月くんの胸の中へ。 「信じられない。まさか、陽菜も俺のことを好きでいてくれたなんて……」 そう言って、力強く私の身体を抱きしめる。 心地よい温もりに包まれ、伊月くんの制服が私の涙で濡れる。 「ごめん、伊月くん。制服が……」 「いいよ、これくらい」 伊月くんの指先が、優しく私の目元に触れる。涙を拭われると、彼は濁りのない瞳で私を見つめた。 「これからは、妹としても彼女としても大事にするから。陽菜……俺と、もう一度付き合って欲しい」 「……っ、はいっ」 私が返事をしたそのとき。 ──ガタン! 大きな音がして、エレベーター内に明かりがついた。 「もしかして……」 伊月くんが試しに1階のボタンを押してみる。すると正常にランプがつき、エレベーターが下降を始めた。 良かった。復旧したんだ……! 「なあ、陽菜。俺たちは今、兄妹だから。普通のカップルみたいに堂々とは付き合えないだろうし、出かけるときだって周りを気にしないといけないかもしれない。それでも、本当に俺で良いか?」 「もちろんだよ。私には、伊月くんしかいないから。もう、離さないで」 「ああ。これからは陽菜のこと、もう絶対に離したりなんかしない」 約束すると
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-21
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第40話

自分のことのように喜んでくれる羽衣を見ていたら、何だか私まで目頭が熱くなってきた。 「ありがとう、羽衣」 羽衣はいつも私のことを応援してくれて、たくさん相談にものってくれて。どんなときも、私の味方でいてくれた。 だから、こうして羽衣に嬉しい報告ができて本当に良かった。 ** ホテルを出てクラスごとに博物館を見学した後、班ごとに分かれての自由時間。 「佐野〜、陽菜ちゃんと二人だからって、一線は越えたらダメだからな?」 亜嵐くんがニヤニヤ顔で、伊月くんの腕を小突く。 「長谷川に言われなくても、分かってるよ」 「そうか〜?まあ、俺と羽衣ちゃんのことは気にせず、二人でごゆっくりー!」 ありがとう、亜嵐くん。 羽衣と亜嵐くんに手を振ると、私と伊月くんは並んで歩きだす。 「陽菜」 ごく自然に、伊月くんが私の手を掴んだ。 「その……街中ではぐれたりしたら、ダメだろ?」 そっか。手を握られて最初ドキッとしたけど、そういうことか。 「って、今のはうそ。本当は、俺が陽菜と手を繋ぎたかったから」 伊月くん……。 「うん。私も手を繋げて嬉しいよ」 伊月くんから伝わってくる温もりに、胸がくすぐったくなる。 手を繋いだまま、歴史ある街並みを伊月くんと歩く。 「へえ。ここ、恋愛成就の神様が祀られている神社なんだって」 たまたま通りかかった大きな鳥居がある神社の前で、伊月くんがスマホを手に呟く。 見たところ、カップルや女性の参拝客もかなり多い。気になるなあ。 「せっかくだし、行くか?」 「うん!」 伊月くんと一緒に、神社に足を踏み入れる。 「このハート型の絵馬に名前を書いて愛を誓うと、ご利益があるらしい」 「ふふ。ハート型の絵馬、可愛い」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-23
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