All Chapters of この度、元カレが義兄になりました: Chapter 51 - Chapter 53

53 Chapters

第51話

この沈黙が、私には永遠のように感じられて。やっぱり……伊月くんとのことは、許してもらえないのかな?と、不安でいっぱいになる。「陽菜、あなたがそんなに強い気持ちでいるなんて……お母さん、知らなかった。あの小さかった陽菜が……」ハッとして俯いていた顔を上げると、お母さんの目には涙が浮かんでいた。「父さん、俺も陽菜と同じ気持ちだ。いくら反対されても、俺たちの気持ちは絶対に変わらない。俺は、これからもずっと陽菜と一緒にいたいんだ」伊月くんの言葉に、光佑さんは静かにメガネをかけ直す。「そうか……伊月、お前がそんなふうに本気で話す姿は、初めて見たよ。伊月の気持ちは分かった。だけど、陽菜ちゃんを幸せにできるのか?世間からの目もあるし、そんなに簡単なことじゃないぞ」伊月くんの瞳が光った。「父さん……俺、陽菜を絶対に幸せにしてみせる。たとえ世間にどんな目で見られたとしても、陽菜の笑顔を守るために、俺はどんなことでもする」伊月くんの声には、かつての女性不信を乗り越えた強さが宿っていた。「あなたたちが、こんなにも真剣に、私たちに話してくれたこと。その勇気と、お互いを思いやる気持ちが、どれほど本物か……私にはちゃんと伝わったわ」お母さんの言葉に、光佑さんが微笑む。「伊月、陽菜ちゃん。君たちの気持ちが本物なら、父さんはもう反対はしない。だけど、ちゃんと責任を持って、二人で乗り越えてほしい。世間体よりも何よりも、君たちの幸せが一番大切だ」込み上げた涙の粒が、頬を滑り落ちた。「お母さん、光佑さん……ありがとう」伊月くんの手が、私の肩をそっと抱き寄せる。「父さん、翔子さん、ありがとう。俺、陽菜を絶対に幸せにするから」伊月くんの決意にお母さんが微笑み、ケーキを切り分ける。「それじゃあ、このケーキ、みんなで食べましょうか?家族みんなで、こうやって笑い合えるのが一番よね」「そうだな、翔子さんの言うとおりだ。陽菜ちゃん、伊月、これからも家族として、恋人として、ちゃんと支え合ってくれよ」「はいっ」私は伊月くんの手を握りしめ、笑顔で頷いた。リビングの窓から見える夜空には、星がキラキラと瞬いている。伊月くんと恋人になれたこと、家族に認めてもらえたこと……全部、夢みたい。でも、これからもっと彼と幸せになるために、私……頑張るよ。テーブルを囲む四人の笑い声が、リビ
last updateLast Updated : 2025-07-16
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第52話

両親に交際を認めてもらった、次の週末。私は、伊月くんと初めて“恋人としてのデート”に出かけることになった。行き先は、地元の遊園地。昔、お父さんが生きていた頃、お母さんとお父さんと三人で来た場所だ。遊園地の入り口は、色とりどりの風船や子どもたちの笑い声で賑わっている。「今日の陽菜、すげー可愛いんだけど」「えっ、ほんと!?」伊月くんに唐突に褒められ、思わず顔が赤面してしまうのを感じながら答える。︎︎︎︎︎︎今日の私は白のワンピースに、ナチュラルメイク。髪は、いとこで美容師の明里ちゃんにアドバイスをもらって、ハーフアップにしてみた。ちなみに伊月くんは、カジュアルなシャツにデニムというシンプルな格好だ。「い、伊月くんも……すごくかっこいいよ」「陽菜、もしかして緊張してる?」伊月くんが、私に手を差し出しながら笑う。「う、うん、ちょっとだけ。今日は、伊月くんとの初めてのデートだし……それに、世間の目とか少し気になるかなって……」正直に言うと、伊月くんがクスクス笑った。「陽菜は真面目だな。世間の目とか気にする必要ないよ。ここには俺らが義理の兄妹だってことを、知ってる人なんていないんだから。今日はめいっぱい楽しもう」ニコッと笑いかけてくれる伊月くんの顔は、まるで太陽みたいに眩しくて、私の不安を溶かしてくれる。「うん、そうだね!」私は彼の手をぎゅっと握り、遊園地の中へと駆け出した。◇最初に向かったのは、園内でも人気のジェットコースター。──プルルルル。発車のベルが鳴って、ジェットコースターが動き始めた。お父さんたちと来たときは、まだ幼稚園生で乗れなかったから。ここのジェットコースターに乗るのは、今日が初めての私。下から見ていたときは、そんなに高いと思わなかったけど。実際に乗って頂上に向かってみると、結構高いんだ……。私は、今になって少し怖気づいてしまう。「陽菜……もし怖いのなら、こうし
last updateLast Updated : 2025-07-19
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第53話

「ねえ、伊月くん。今日のデートの記念に……良いでしょ?」私は、小首を傾げてみせる。「っ、そんなふうに可愛くされたら、嫌だなんて言えないだろ……」「えっ?」「いや……写真、良いよ。撮ろう」「ありがとう!」やっぱり、伊月くんは優しい!それから伊月くんとツーショット写真を何枚か撮って、私たちは再び園内をまわった。お化け屋敷に行ったり、メリーゴーランドでメルヘンの世界に浸ったりと、遊園地を思う存分に楽しんだ。そして、夜。帰る前に、観覧車に乗ろうということになった。観覧車の高度が上がっていくにつれ、眩しい夜景が広がっていく。「うわあ、キレイ!」有名な巨大観覧車というだけあって、見える景色も迫力がある。「……っ!」うっかり真下を見下ろしてしまい、その高さに足がすくんだ。「大丈夫だよ」伊月くんが、優しく肩を抱き寄せてくれる。狭い空間の中、隙間なくぴったり寄り添うと、伊月くんの爽やかな香りがふわっと漂って、距離の近さにドキッとした。「ねえ、伊月くん。今日は楽しかった。家族にも認めてもらって、こうやってデートができて……夢みたい」私は、伊月くんの肩に頭を預ける。「陽菜、俺もだよ。今日、陽菜と一緒にここに来られて本当に良かった」伊月くんが私の手を握り、目を細める。「陽菜……俺、あの頃、母さんが家を出て、家族が壊れたことをずっと引きずってた。父さんの笑顔が消えたのも、俺のせいなんじゃないかって思っていたときもあった」伊月くんの声が、少し震える。「でも、陽菜と暮らして、お前の笑顔や頑張る姿を見て、俺も変われた。父さんや翔子さんの幸せも、陽菜のおかげで守ることができたんだ」私は、伊月くんの頬に手を当てて微笑む。「伊月くん、私もだよ。中学の頃は自信がなくて、いつもビクビクしてた。でも、伊月くんと家族になって、あなたをもっと好きになって……メイクや勉強を頑張って。最近は、自分のことも好きになれた。伊月くんのおかげだよ」伊月くんが、私の額にそっとキスを落とす。「陽菜、好きだよ」「私も、伊月くんが大好き。これからもずっと、一緒にいようね」私たちのゴンドラがちょうど天辺に差し掛かり、自然と二人の唇が重なった。観覧車の窓の外には、キレイな星空が広がっている。遊園地のネオンも星空もきっと、私たちのことを祝福してくれている。そんなふうに思えた
last updateLast Updated : 2025-07-22
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