遠慮がちに開けた教室の扉の先に見えたのは、女友達と楽しそうに笑っている陽菜の姿。『あははっ。何それ〜!』普段は控えめでおとなしいイメージだった彼女が、歯を見せて笑うところを見たのは初めてだった。へぇ。菊池さん、あんなふうに笑ったりするんだ。無邪気な笑顔……いいな。このとき初めて見た陽菜の笑顔に惹かれた俺は、それ以来彼女のことを目で追うようになった。陽菜は当番でもないのに、毎朝教室の花瓶の水を交換していたり。みんなが面倒くさそうにする掃除も、誰よりも一生懸命頑張っていて。見返りを求めたり、変に媚びたりすることもなく、真面目でいい子だなと思った。そんな彼女を見ていると、胸の鼓動が速くなって。気づいたときにはもう、好きになっていた。あの子の笑顔をそばで見たいと思うようになっていた俺は、ある日勇気を出して陽菜に告白した。『俺、菊池さんのことが好きなんだ』寒い冬の放課後の教室で。人生初の告白は、これまでにないくらいに緊張して。今にも心臓が破裂してしまいそうだった。俺は多分、振られるのだろうと思っていたから。告白はダメ元だったのだけど……『……っ、はい。よろしくお願いします』陽菜の返事は、まさかのOKで。嘘だろ!?って思うのと同時に、すごく嬉しくて。天にものぼるような気持ちだった。陽菜と両想いになってからは、教室で話したり。俺の部活がない日は、陽菜と一緒に帰るようになった。だけど、俺といるときの彼女はいつもうつむいてて。話しかけるのは俺からばっかり。陽菜は、自分からはほとんど喋らない。だからいつしか、陽菜は俺といても楽しくないのかな?もしかして、好きなのは俺だけなのか?と、思うようになっていった。そんなある日の帰り道。陽菜の気持ちを確かめたいこともあり、俺は勇気を出して彼女の手を繋いでみたけれど。バッ!すぐに、振りほどかれてしまった。やっぱり、嫌なのか……。もし俺のことが好きなら、手を繋がれてもこんなふうに拒否しないよな?『……っ』そう思うとショックで、このとき俺は深く傷ついた。思い返してみれば、俺の好きな陽菜の笑顔も、付き合いだしてからは一度も見たことがなくて。笑うどころか、彼女は困ったような顔ばかりする。俺は、陽菜にそんな顔をさせたくて付き合ったんじゃない。ただ、そばで陽菜の笑顔が見たかっただけなのに……。手を振りほどか
Terakhir Diperbarui : 2025-05-18 Baca selengkapnya