Semua Bab この度、元カレが義兄になりました: Bab 11 - Bab 20

41 Bab

第11話

遠慮がちに開けた教室の扉の先に見えたのは、女友達と楽しそうに笑っている陽菜の姿。『あははっ。何それ〜!』普段は控えめでおとなしいイメージだった彼女が、歯を見せて笑うところを見たのは初めてだった。へぇ。菊池さん、あんなふうに笑ったりするんだ。無邪気な笑顔……いいな。このとき初めて見た陽菜の笑顔に惹かれた俺は、それ以来彼女のことを目で追うようになった。陽菜は当番でもないのに、毎朝教室の花瓶の水を交換していたり。みんなが面倒くさそうにする掃除も、誰よりも一生懸命頑張っていて。見返りを求めたり、変に媚びたりすることもなく、真面目でいい子だなと思った。そんな彼女を見ていると、胸の鼓動が速くなって。気づいたときにはもう、好きになっていた。あの子の笑顔をそばで見たいと思うようになっていた俺は、ある日勇気を出して陽菜に告白した。『俺、菊池さんのことが好きなんだ』寒い冬の放課後の教室で。人生初の告白は、これまでにないくらいに緊張して。今にも心臓が破裂してしまいそうだった。俺は多分、振られるのだろうと思っていたから。告白はダメ元だったのだけど……『……っ、はい。よろしくお願いします』陽菜の返事は、まさかのOKで。嘘だろ!?って思うのと同時に、すごく嬉しくて。天にものぼるような気持ちだった。陽菜と両想いになってからは、教室で話したり。俺の部活がない日は、陽菜と一緒に帰るようになった。だけど、俺といるときの彼女はいつもうつむいてて。話しかけるのは俺からばっかり。陽菜は、自分からはほとんど喋らない。だからいつしか、陽菜は俺といても楽しくないのかな?もしかして、好きなのは俺だけなのか?と、思うようになっていった。そんなある日の帰り道。陽菜の気持ちを確かめたいこともあり、俺は勇気を出して彼女の手を繋いでみたけれど。バッ!すぐに、振りほどかれてしまった。やっぱり、嫌なのか……。もし俺のことが好きなら、手を繋がれてもこんなふうに拒否しないよな?『……っ』そう思うとショックで、このとき俺は深く傷ついた。思い返してみれば、俺の好きな陽菜の笑顔も、付き合いだしてからは一度も見たことがなくて。笑うどころか、彼女は困ったような顔ばかりする。俺は、陽菜にそんな顔をさせたくて付き合ったんじゃない。ただ、そばで陽菜の笑顔が見たかっただけなのに……。手を振りほどか
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-18
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第12話

春休みが終わって、高校2年生の1学期初日。朝、窓の外には清々しいほどの青空が広がっている。「陽菜」支度を終えて家を出ようとしていた私は、玄関のところで伊月くんに呼び止められた。「どうしたの?」「あのさ、確認なんだけど。学校では、俺らが同居してることや、兄妹になることは秘密にしておいたほうが良いかと思って」「うん、そうだね」女の子から人気者の伊月くんと、同居してることがバレたら大変そうだし。「陽菜、学校で変に注目を浴びたり、冷やかされたりするのは嫌だろ?」伊月くん、私の性格を分かってくれてるんだ。「う、うん。できれば……学校では、今まで通りに過ごしたい」「分かった。学校では秘密ってことで。それじゃあ、お先に」一足先に家を出た伊月くんと少し時間をあけ、私も家を出た。先日満開を迎えた桜の花びらが、緩やかな風に乗って舞う。20分ほど歩いて、高校に到着。わあ、すごい人だ。校門をくぐり抜け、校舎の正面玄関へと向かうと、新しいクラス表が貼り出された掲示板の前は多くの生徒たちで賑わっていた。「やったー!今年もまた同じクラスだね」「うわ。うちのクラス、知らない人ばっかりだよ」そんな会話が、あちこちから聞こえてくる。私も自分のクラスを確認しようとするけれど。「うう……」身長150cmほどの私は、前に立つ人の頭で掲示板が全く見えない。それでもどうにかクラス表を見ようと、頑張って背伸びをしたり、ぴょんぴょんと飛び跳ねたりしてみる私。「ぷっ!」すると突然、隣から吹き出すような声が聞こえた。「え?」隣に立つ人のほうに目をやると、長身で髪をミルクティー色に染め、制服も軽く着崩したチャラい風貌の男の子がクスクスと笑っていた。わあ。この人、すごいイケメン!彼のかっこよさに一瞬ときめくも、私を見て笑い続ける男の子に、だんだんと腹がたってきた。「えっと……あの、私何かしましたか?」「いや……ぴょんぴょん飛び跳ねて。君、なんかうさぎみたいで可愛いなって思って」「え?う、うさぎ!?」しかも、可愛いって……!顔にぐんぐんと熱がのぼって、私は慌てて顔を伏せた。︎︎︎︎︎︎「ねえ、うさぎちゃん。君の名前は?」「え?」男の子にいきなり名前を聞かれ、私は目をパチパチさせる。「俺が、君の代わりに何組か見てあげるよ」あっ、なるほど!「私の名
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-19
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第13話

「えっと、さっきはありがとうございました。同じクラスだったんですね?」「うん。君のクラスを見たあとに、掲示板で自分の名前を探したら……俺もまさかの3組!これってもしかして、運命!?」おどけたように言う彼に、私は苦笑い。「ていうか、あなた誰?」まるで不審者でも見るような目で、尋ねる羽衣。「おっと、自己紹介がまだだったね。俺の名前は、長谷川亜嵐(はせがわあらん)。よろしく〜、うさぎちゃん。隣のお友達も!」ニコニコ顔の長谷川くんに対し、私はムッとする。「えっと。さっきからその、『うさぎちゃん』っていう呼び方やめてくれません?私の名前は……」「知ってる。さっき会ったときに聞いたから。菊池陽菜ちゃん……でしょ?」こちらに向かって、パチンと片目を閉じる長谷川くん。「あっ、うん」「それじゃあ……改めてよろしくね?陽菜ちゃん」えっ。さっき知り合ったばかりなのに、いきなり名前呼び!?「よ、よろしく」戸惑いながらも私は、手を差し出してきた長谷川くんに自分の手を重ねた。長谷川くんみたいな子が同じクラスだと思うと、これからの学校生活がとても賑やかになりそうな予感……。**数日後の放課後。私は今、学校の体育館裏にいる。先日のホームルームでの委員会決めの際に、私はくじ引きで美化委員になった。美化委員会は週に1回校内の清掃活動があり、今日がその日なんだ。私はホウキを手に、地面に落ちている桜の花びらや葉っぱを掃いていく。「ねえねえ。陽菜ちゃ〜ん」黙々と掃除する私に、クラスメイトの長谷川くんがだるそうに声をかけてきた。長谷川くんも、私と同じくくじ引きで美化委員になったんだよね。人気ワーストの美化委員会は、男女ともに立候補する人が誰もいなかったから。「あのさ、陽菜ちゃんも美化委員になりたくて、なったわけじゃないんでしょ?」「それはまあ、そうだけど……」「だったら、ここは適当にやってさっさと帰ろうぜ?まあ、俺はこのあと部活だけど」長谷川くんの言葉に、ホウキを持つ私の手に力がこもる。「……適当にだなんて、そんなことはできないよ」「え?」「私は、自分が美化委員になったからには最後までちゃんとやりたい」長谷川くんに構わず、私はせっせと掃除を続ける。「最後までちゃんとやりたい……か。ほんと真面目だねぇ、陽菜ちゃんは」長谷川くんがポツリと呟く。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-20
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第14話

数日後の放課後。「羽衣、一緒に帰ろう〜」帰りのホームルームが終わり、私は羽衣に声をかける。「ごめん。わたし、今日もバスケ部の練習を見てから帰るよ」自分の顔の前で、手を合わせて謝る羽衣。「そっか……」友達の羽衣は最近、放課後は毎日のように体育館へバスケ部の練習を見に行っている。バスケ部にはどうやら、羽衣が最近一目惚れしたという男の子がいるらしい。「あっ、そうだ。良かったら陽菜も一緒に、バスケ部の練習見に行かない?」「え!?」羽衣からの思わぬ誘いに、私は口ごもってしまう。中学時代、伊月くんに一目惚れしてからは、毎日のようにバスケ部の練習を見に行っていたけれど。伊月くんと別れて以降は、気まずさからバスケ部の練習は一切見に行かなくなってしまったから。「ええっと……」私が黙り込んでしまったからか、羽衣がハッとする。「……やだ、わたしったらつい。バスケ部には佐野くんがいるのに……ごめん。余計なこと言っちゃったよね」「ううん。私も……バスケ部の練習見にいきたいな」「え?」羽衣が目を丸くする。伊月くんと別れてからは、なんとなく気まずくて。体育館へは、足を運んでいなかったけど。本当は、バスケする伊月くんを見たい気持ちはずっと心の奥にあったから。「大丈夫?もし、わたしに付き合ってくれるとかなら、無理して来てくれなくても良いんだよ?」「ううん、平気。私も伊月くんがバスケするところ、久しぶりに見たいから」「陽菜……」今みたいに、羽衣に伊月くんとのことで、いつまでも気を遣わせるのも申し訳ないし。あの頃と違って、最近は伊月くんとも前より話せるようになったから。“元カノ”じゃなく、“妹”として応援に行くのなら……別に問題ないよね?「ていうか陽菜、いつの間に佐野くんのこと『伊月くん』って名前で呼ぶようになったの?」「え!?」羽衣からの指摘に、心臓が飛び跳ねる。し、しまった。今まで羽衣の前では『佐野くん』って呼んでたのに。私ったらつい……!「ええっと。実は佐野くんと付き合っていた頃、二人でいるときはいつも名前で呼んでたから……」って。こんな言い訳は、さすがにちょっと無理があるかな? 私は、内心冷や汗ダラダラ。「へー、そうだったんだ。初耳」「そ、それより、早く体育館行こう?」私は慌てて羽衣の手を取ると、彼女を引っ張って教室の出口
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-21
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第15話

あの子は、確か……麻生晴香(あそうはるか)ちゃんだっけ。あまり話したことはないけど、私と同じクラスで、バスケ部に美人マネージャーがいるって、1年の頃に男子たちが騒いでいた気がする。「お疲れ様。はい、タオル」「サンキュー、マネージャー」麻生さんが差し出したタオルを、笑顔で受け取る伊月くん。伊月くん、声をかけてきた女の子たちにはいつも塩対応なのに。マネージャーの麻生さんには、あんなふうに笑うんだ。二人が親しげに話しているのを見て、胸の奥に痛みを覚える。麻生さん、目鼻立ちが整っていてすごくキレイ。イケメンの伊月くんと並んでても全然劣っていなくて、お似合いだなあ。それに比べて私は……。美人でスタイル抜群の麻生さんと自分を見比べ、肩を落とす。もし麻生さんみたいな人が、伊月くんの彼女だったら……。私が付き合っていた時みたいに、ファンの女の子たちから嫌なことを言われたりもしないんだろうなあ。「佐野くん、さっきのシュートすごく良かった」「そうか?」まだ話し続けている伊月くんと麻生さんを、複雑な気持ちで見つめる。家にいるときと違って、何だか伊月くんが遠い……。胸の辺りに黒いモヤのようなものがどんどん広がって、苦しいよ。「……っ」これ以上、仲睦まじい様子の二人を見ていられなくて。私が踵を返して歩き出したとき。「危ない!」「え?」誰かの大きな声が聞こえて、振り返ると。バスケ部の隣のコートで練習をしていたバレーボール部のボールが、こちらに向かって飛んできていた。「っ……」危ないのは頭で分かっているものの、その場に根付いたように足が動かない。どうしよう、ぶつかる……!反射的に目を閉じたそのとき。「陽菜っ!!」私を呼ぶ声が聞こえ、強い力で腕を引っ張られた。その直後。──ガンッ!!壁にボールが当たり、大きな音が響いた。なっ、なに?何が起きてるの?衝撃を覚悟して咄嗟に目をつむったものの、痛みはない。何か温かいものに包まれている感覚がある中、閉じていた目を恐る恐る開くと。「っ……!い、伊月くん!?」伊月くんの顔が、アップであってびっくり。そして私は、ようやく状況を把握。伊月くんが私を抱きしめたまま床に転がり、私がその上に乗っかっていたんだ。ど、どうしてこんなことに!?訳が分からず、私はパニックになる。「きゃーーっ!」体育館
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-22
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第16話

私は今、伊月くんと並んで、オレンジ色に染まる通学路を歩いている。まさか、伊月くんと一緒に帰ることになるなんて……。放課後、羽衣と一緒に体育館へバスケ部の練習を見に行き、私を目がけて飛んできたボールから伊月くんが助けてくれて。そういうことがあったあとで心配だから、今日は一緒に帰ろうって、伊月くんに言われたんだ。伊月くんが助けてくれたお陰で、何事もなかったのに心配だなんて……もしかして、伊月くんって意外と過保護?高校生になってからは、伊月くんとこうして一緒に帰るのは初めてだからか、緊張する。「あら、あなたたち。今帰り?」家の近くの交差点で信号待ちをしていると、買い物帰りのお母さんとバッタリ会った。「ふふ。二人で一緒に帰ってくるなんて。兄妹仲良くできてるようで、安心だわ」私たちを見て、嬉しそうに笑うお母さん。兄妹……そうだよね。さっき伊月くんが体育館でボールから私を助けてくれたのも、私が妹だから。伊月くんは私の“お義兄ちゃん”だから、気にかけてくれているだけ。勘違いしちゃダメだ。私は、ブンブンと首を横に振る。「そうそう。これ、見てよ〜」お母さんが嬉々として見せてきたのは、高級温泉旅館の宿泊券。「さっき、商店街の福引で当たったのよ。これペア券だから伊月くん、良かったらお父さんと一緒に行く?」「いや、せっかくだけど俺は部活があるし。バスケの大会も近いから……あっ、そうだ。その旅行、父さんと母さんで行ってきたら?」「えっ。私と光佑さんで?」「ああ。籍を入れても、挙式は無しで新婚旅行も行かないって言ってただろ?」「伊月くん、それ良い考えだね。お母さん、光佑さんと行ってきなよ」「それじゃあ、お言葉に甘えてそうさせてもらおうかしら」……あれ。でも、待って。光佑さんとお母さんが旅行に行くってことは……その間は、伊月くんと家にふたりきり!?**翌週の週末。この日から1泊2日で両親は温泉旅行に出かけているため、家には私と伊月くんの二人きり。私たちは今、リビングのテーブルに向かい合って座り、学校の数学の宿題に取り組んでいる。「うーん……」「陽菜、どこが分からないの?」私の手が止まっていることに気づいたのか、伊月くんが声をかけてくれる。「えっと、この問題が分からないんだけど」「ああ、これはこの公式を使って……」テーブルから身を乗り
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-23
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第17話

「……だったら、餃子が食べたい」「!」うそ。答えてくれた!?「餃子ね。うん、分かった!」表情がパッと明るくなるのが、自分でも分かった。冷蔵庫に餃子の皮がなかったため、二人で家の近所のスーパーに買いに行くことに。10分ほど歩いてスーパーに到着し、買い物カゴを手に私は伊月くんと店内を見てまわる。「うーんと。餃子にするなら、夕飯は中華で揃えようかな。久しぶりに、チンジャオロースが食べたいなぁ」私は野菜コーナーでタケノコとピーマンを手に取り、買い物カゴに入れる。すると横から伸びてきた手がピーマンの袋をつかみ、そっと棚に戻した。そのことに私は気づかず、そのまま買い物を続ける。そして20分後。「よし。買うものは、これで全部かな……あれ?」買い物を終えてレジに向かおうとしたところ、ふとピーマンがないことに気づいた。ピーマン、最初に入れたはずなのに。おかしいな……もしかして、入れ忘れたのかな?ピーマンがないことに気づいた私は、再び野菜コーナーに戻って、買い物カゴにピーマンを入れたのだけれど。「……」たった今カゴに入れたばかりのピーマンを、伊月くんが無言で棚に戻した。それを目の当たりにした私は、呆気にとられる。あの伊月くんが、こんなことをするなんて……もしや、最初にカゴに入れたピーマンが消えたのも伊月くんのしわざ?「あの、伊月くん……もしかしてピーマンが苦手なの?」遠慮がちに尋ねると、伊月くんの肩がピクリと跳ねた。そして伊月くんは耳まで赤く染めながら、コクリと頷く。「実は……子どもの頃から、ピーマンだけはどうも苦手で。さっきから、大人げないことをして悪い」「なんだ、そうだったんだ。それなら、先に言ってくれれば良かったのに」いつも冷静で、完璧だと思っていた伊月くんにもちゃんと、好き嫌いとかあるんだ。「……小学生とかならまだしも、高校生にもなって好き嫌いとかかっこ悪いかなと思って」「かっこ悪いだなんて思わないよ。私だって、未だに椎茸は苦手だもん。それに、私は伊月くんのことがまたひとつ知れて嬉しい」「陽菜……ありがとう」伊月くんは棚に戻したピーマンの袋を自ら手に取り、私が持つカゴに入れた。「……チンジャオロース、陽菜が作ってくれるのなら食べてみようかな」「えっ、ほんとに?それじゃあ、頑張って作るね!」それからレジでお会計を済ま
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-24
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第18話

「えっ。伊月くん、手伝ってくれるの?」「ああ。元々は、俺が餃子を食べたいって言ったから」伊月くんが、私の隣に立つ。「それに、料理が苦手だからって逃げてばかりなのも良くないだろう?一緒に暮らしてるんだから、陽菜に任せっぱなしなのも悪いし」「伊月くん……」「だから、俺にもやらせて?何をすれば良い?」「えっと、餃子のタネができたから。これから餃子を包むところなんだけど……」「うん。どうすんの?」「一度私がやってみるから、見ててね?餃子のタネを、皮の真ん中に置いて……」私は伊月くんに、餃子の包み方を1から教える。そして彼も餃子の皮を手にし、見よう見まねで包んでいく。「こんな感じ?」伊月くんが包んだ餃子を手のひらにのせ、私に見せてくる。「そう!伊月くん、すごく上手だね」料理が苦手だと言いながらも、伊月くんは手先が器用で、私よりも上手くできてしまった。さすがだ。「今までは避けてたけど、料理もやってみると案外楽しいもんだな」伊月くんがニコニコしながら、餃子を次から次へと作っていく。まさか、伊月くんとこんなふうにキッチンに並んで立って。一緒に餃子を作る日が来るなんて……少し前までは思ってもみなかったな。それから包み終わった餃子を、フライパンで焼いていく。ジュワーッと餃子の焼ける音といい匂いがしてきて、食欲がそそられる。「美味そう。早く食いてえな」私の隣でフライパンを覗き込む伊月くんの目が、キラキラと輝く。伊月くん、餃子楽しみにしてくれてるのかな?そうだったら嬉しいな。「……あつっ!」目を細めながら伊月くんの横顔を眺めていると、突如フライパンの油が指に跳ねた。「どうした?」「あっ、油が指に跳ねて……」「ちょっと見せて」伊月くんがフライパンの火を止め、私の右手を掴んだ。「指、早く冷やさないと」私は伊月くんに右手を掴まれたまま、シンクの前へと連れて行かれた。伊月くんに背後から抱き込まれるような体勢で手を支えられながら、流水で指が冷やされる。「あ、あの……伊月くん。水で指を冷やすくらい、自分でできるよ?」流水で冷やして5分以上が経っても、伊月くんは私から手を離す気配がない。「いいから、こうさせて。心配だから」「っ……」心配してくれるのは嬉しいけど。これはさすがに、距離が近すぎるよ……!私の背中と伊月くんの逞しい胸板がぴ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-25
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第19話

クラスメイトの亜嵐くんの突然の訪問に、私はその場に立ち尽くす。「ここって、佐野の家だよね?どうして、陽菜ちゃんがいるの?」亜嵐くんに問いかけられ、私は言葉につまる。どうしよう、ここはどうにかしてごまかすべき?「陽菜、誰ー?」そのとき、伊月くんが後ろから声をかけてきた。やばい。ここで伊月くんが出てきたら、余計にまずいんじゃ……。そう思ったけど、私が伝える間もなく、伊月くんが靴を履いて顔を出す。「えっ、長谷川!?」亜嵐くんを見て、伊月くんが目を丸くする。「お前、何しに来たんだよ」「俺は、佐野に借りていた漫画を返しに来たんだけど……」亜嵐くんが、紙袋を掲げる。へえ。同じバスケ部とはいえ、伊月くんと亜嵐くんが、漫画を貸し借りするような仲だったなんて意外……って。今はこんなことを思ってる場合じゃない!「陽菜ちゃんがここにいるってことは、もしかして二人は……付き合ってるの?」「いや。俺たちは、そんなんじゃないよ」即答する伊月くん。『俺たちはそんなんじゃない』って、本当のことなのに。胸がチクッと痛んだ。「付き合ってないのなら、何なんだよ。友達……ってわけでもなさそうだし」「陽菜……いいか?」伊月くんが、私に尋ねる。これはもう、隠しきれないよね。私は伊月くんに向かって頷く。こうしてやむを得ず、私が佐野家にいる理由を、亜嵐くんに話すことになった。「へー。親同士の再婚で、佐野と陽菜ちゃんが兄妹に。しかも、同居まで……くぅ、羨ましい」う、羨ましい!?そんなふうに思うなんて、亜嵐くんってそんなに伊月くんと仲が良かったの?いや、それよりも……。「お願い、亜嵐くん。このことは、学校のみんなには黙ってて欲しいの」私は、亜嵐くんに向かって勢いよく頭を下げる。学校で人気者の伊月くんと一緒に住んでることがもしファンの子たちにバレたら、私の平和な学校生活が終了することになるかもしれないから。それだけは、何としてでも避けたい。「まあ、良いけど……」「ほんと!?ありがとう、亜嵐くん」私はもう一度、亜嵐くんに深々と頭を下げた。「ただし。同居のことを黙ってる代わりに、陽菜ちゃんに頼みがあるんだけど」頼み?何だろう。「わ、私にできることなら。パシリでも何でも」「そう。だったら……」亜嵐くんの口の端が、くいっと上がった。「陽菜ちゃん、俺とデート
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-26
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第20話

夕食の時間。テーブルの上にはご飯に卵スープ、伊月くんと一緒に包んだ餃子、チンジャオロースが並ぶ。「伊月くんのお口に合うといいけど……」私はつい、伊月くんの顔をじっと見てしまう。餃子は伊月くんと一緒に包んだとはいえ、彼に手料理を振る舞うのは今日が初めてだから。緊張する……。「陽菜、そんなに見られたら食いにくいんだけど」「ご、ごめん」私は、いただきますと言ってお箸を持つ。伊月くんは、苦手なピーマンの入ったチンジャオロースを口に放り込んだ。「どうかな?」「……美味いよ」「ほんとに?良かったあ」美味いと言ってもらって、一安心。「作る人が違うと、こんなにも美味しいんだな」「え?」「陽菜の母さんの手料理も、陽菜が今日作ってくれたものも美味い。俺の実の母親は浮気相手の男に夢中で、ふだん料理なんてほとんどしない人だったから」そう言って伊月くんが、チンジャオロースを続けて口に運ぶ。「昔、母親が一度だけピーマンの肉詰めを作ってくれたことがあったけど。失敗して焦げていたからか、物凄く苦くて。お世辞にも美味しいだなんて言えなくて……それからずっと、ピーマンが苦手だったんだよな」そうだったんだ。伊月くんの前の家庭の話は、いま初めて聞いたけど……もしかして、辛い思いをしたのかな?そう思うと、胸がしめつけられた。「今日の夕飯、陽菜が一生懸命作ってくれたんだって思うと、余計に美味しく感じる」伊月くんは微笑み、今度は餃子を口にする。「沢山あるから、どんどん食べてね」伊月くんが笑ってくれるなら、またいくらでもご飯を作るよ。それから30分ほどが経ち、夕食を終える頃、雨が激しく降り出した。「すごい雨だね」カーテンを閉めようとして近づいた窓の外は、大嵐。時々、空がピカッと光ったりもしている。「雷、大丈夫かな……」私は、子どもの頃から雷が苦手だった。小学生のとき、お母さんが仕事で家におらず、一人で留守番をしていたときに、家の近所に大きな雷が落ちて、家が停電したことがあったから。そのときに怖い思いをして以来、今も雷は苦手。「陽菜、もしかして雷が怖いの?」「いや……」高校生にもなって雷が怖いだなんて、いくら相手が伊月くんでも言えないよ。──ゴロゴロゴロッ!遠くから雷鳴が響いてくる。そのとき、強い稲光が部屋を照らし、大きな音と強い振動に身体を縮
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-27
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