宮森家の墓地にて、桜夜は弟分の司と対峙していた。司と着物姿の女性が場所を譲ると、桜夜は「宮森明人之命」と書かれた墓石の前にしゃがみこんだ。墓石を拝むでもなく、ただぼんやり見つめる「えっと……」 そんな桜夜の姿に、サイカたちはただただ困惑するだけだった。そんな彼女たちに、着物姿の女性が声をかけた。「少し、彼を1人にさせてあげてくださいませんか?」「……うん」 サイカたちは曖昧に頷くと、司に連れられて屋敷の縁側に案内された。勧められるままに縁側に座ったサイカは、困り顔でリオを見た。そこでリオが代表して少年に尋ねた。「あの……わたくしたちは桜夜様に、その、お世話になっておりますサイカと、ホムラと、リオと申します。桜夜さんからは、育ての親の墓参りにいくとしか聞いていないのですが……」「あー、ごめんね。兄さん、あれでじいちゃんに似て口下手だから。えっと、まずは自己紹介から。僕は宮森司。この家で兄さんを育てた宮森明人の孫です」「ここが、桜夜さんの育った場所……」 そう聞くととても感慨深く、サイカたちは庭や屋敷を見渡した。自分たちの知らない桜夜の過去を少しでも知ろうとするように。「それでこちらが桜さん」 続いて、司は桜色の髪に、桜柄の着物を着た女性を見た。「桜と申します。司様の前世からの妻です」「ぜ、前世?」「ふふふ」 思わず聞き返すホムラだったが、桜は口許に手を当ていたずらっぽく笑うだけだった。その仕草は見た目より幼い。「では私はお茶を煎れてきますね。司様は桜夜様の昔話でもしてさしあげたらいかがですか?」「そうだねえ。どうせ兄さんは話さないだろうし」 よいしょっと少年は縁側に座り、下駄を脱いだ桜はしずしずと台所に向かっていった。「あの、勝手に聴いてもよろしいのでしょうか? 桜夜様に申し訳ないような……」
Last Updated : 2025-08-07 Read more