僕が意識を再び取り戻したとき、病院のベッドで寝ていた。僕があずさの身体を万力の力で抱いていたからか、僕とあずさは同じベッドに寝かされていた。 処置は終わっているのか、あずさはじっとこちらを見ていた。「……あずさ、大丈夫?」 僕は開口一番にそう尋ねた。あずさは呆れ顔だ。「また呼び捨てにして……ちゃんとお姉ちゃんと……ってもういいか」「?」「ずいぶんあたしのために頑張ったみたいだからね。……暴漢相手に大立ち回りをしたらしいじゃないか。……あたしのために?」 そこであずさはそっぽを向いてしまった。その顔はどこか赤くなっていたような気がした。「これからはあずさって呼んで良いの?」「ま、ご褒美だからしかたないな」「ありがとう、あずさ! 大好き!」「ええい抱き着くな! この犬っころ!」 それからしばらくは平和な時間が流れた。でも僕が高校生くらいのときかな、あずさの御両親が亡くなったのは、事故に見せかけた暗殺だったよ。お2人は人から恨まれるような役回りをしていたからね。まあ、相談役も同じだけど。僕がはじめてけいくんと会ったのは、彼らの葬式でのことだった。ご両親の方針でけいくんはお見舞いに来ていなかったし、僕も如月家の敷居を上がらせてもらえなかった。まあ仕方ないんだけどね。四方院家に連なる者なのに病気で役に立てない“出来損ない”と、水希という四方院家の分家の姓をもらったとはいえもとはどこから来たかもわからない野良犬。後継者たる長男とは関わらせたくなかったのだろう。 だから葬式にも行く気はなかったんだけど、あずさが代わりに行ってほしいというから雨の中わざわざ出かけて行った。見様見真似で葬式を終えると、けいくんが僕に話しかけてきた。「あの、お兄ちゃんですか?」「いや違うよ」「え? でもお姉ちゃんがお兄ちゃんになるかもしれない人だって」 そういってけいくんはスマホを取り出すと1つのメールを見せる。差出人はあずさ。そこには「しつこい奴だからいつかあんたのお兄ちゃんになるかもね。だから何かあっ
Last Updated : 2025-08-12 Read more