Semua Bab 黒の騎士と三原色の少女たち: Bab 61 - Bab 70

72 Bab

エピローグ 生み出してくれて、ありがとう

「やあ、逢いたかったよ。水希桜夜。ボクの愛しい模造品」「模造品?」 静かな世界の中、桜夜との合体を解いた三姉妹の内、サイカが仮面の男に問うた。「ああ、水希桜夜は……」 そこで男は仮面を外す。仮面の下の素顔は桜夜と双子のように瓜二つだった。「このボク、アルファをモデルにルシフェル……今はサタンと名乗っていたか。あいつが造ったものだ」 桜夜は特に表情を変えなかったが、少女たちは驚きの表情を浮かべた。対して桜夜はどうでもよさそうにしていた。次はリオが質問をした「それは、サタンが桜夜様の生みの親ということですか?」「生みの親というよりは造物主だな。そして失敗作だから人間界に捨てた」「……失敗作だ?」 ホムラの顔に苛立ちが浮かぶ。「そうだ。水希桜夜は身体が極端に弱く、デミウルゴスとの戦いには使えない。だから捨てた、と本人は言うだろうな」 殴りかかりそうになるホムラを手で制すると、桜夜はアルファに尋ねる。「あなたは何者なんですか?」「ボクは世界最初の神殺しだ。ただ昔はまだ力が不安定でね。デミウルゴスを倒しきれず、二度とデミウルゴスの世界に入れないよう封印されてしまったわけだ。だが今回お前たちの活躍により、ようやく止めを刺せた。大義である」 アルファは笑みを浮かべる。桜夜とそっくりな笑みを。否、桜夜がオリジナルであるアルファとよく似ているのだ。桜夜は、なんとも言えない表情を浮かべながら気になっていたことを尋ねる「……サタンはどうなったんですか?」「なんだい? 自分の手で殺したくなったかい? まああいつは魂だけの存在だ。そのうち蘇るだろう」「そうですか……なら」 ――そのときはお礼をしないといけませんね。 「お礼? それはお礼参りって意味かい?」「違いますよ。この世界に生み出してくれてありがとう、と。生み出してくれたから僕は、先生に、あずさに、この子たちに出逢え
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-18
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第9章 仕組まれた転生 プロローグ

東京 赤坂にある料亭 黒スーツに水色のワイシャツ姿の水希桜夜は黒い車から降り、その料亭を見上げてため息を吐いた。彼はこういった場での会合や食事はあまり好きではなかった。一通りのマナーの嗜みはあるものの、気を使い、騙しあいながら食う飯はまずいからだ。  しかし行かないわけにもいかない。今回桜夜を呼び出したのは四方院家宗主である四方院玄武と、前相談役の鷹司公なのだ。(また無理難題を押し付けられなきゃいいけど……) 女将の案内で部屋に向かいながらそう思う。わざわざ場を改めてとなると、相当な厄介事に違いない。「こちらです」 開けられたふすまをから室内に入ると、陽気な声で作務衣姿の玄武が声をかけてきた。「おお、桜夜。遅かったな。ほれ、飲め!」とっくりを向ける玄武に従い、下座に座った桜夜はおちょこを手に取る。「遅くなってしまい申し訳ございません。宗主様、鷹司公」「よいよい、今日は祝いの席じゃ!」 玄武がおちょこに酒を注ぐ。桜夜は「頂戴いたします」と断ってからそれを飲み干した。口の中に広がる華やかな風味、喉越しの良い辛口の酒は、間違いなく高級品だと桜夜は確信した。桜夜はおちょこをテーブルに置くと、玄武に尋ねた。「それで、今日は何のお祝いなのでしょうか?」「青龍の嫡男の嫁さんが妊娠したのは知っておるの?」「それはもちろん。先日お祝いにも行きましたし」 そういえばあのとき一さんの様子がおかしかったような、なんて桜夜が思い出していると、玄武はにやりと笑う「あやつらの“娘”は、お主の想い人じゃぞ」「は?」 何か食べようと桜夜が取った箸が、テーブルへと転がり落ちた。そして地獄の底から響いてくるような、怒りを込めた声でしゃべった。「……それはどういうことですか?」「そうじゃ。お主たちは彼女が死んだあと転生できるよう術式をかけてほしいとワシに願ったな? 桜夜、お前は世界のどこに転生しても見つけるつもりだったようじゃが、ワシは無理だと思った。ゆえに……」「たわごとはやめてください」 桜夜は玄武の表面上は優しい言葉を遮った。そんな様子を先代相談役は酒を飲みながら、玄武は笑みすら浮かべながら見ていた。「僕があなたたちの企みに気付かないと思いましたか? あなたたちは僕が四方院を裏切ることを恐れている。僕を道具として利用したいと思っている。だ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-19
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第1話 四方院家を滅ぼす者

 ナイフのようにぴりぴりとした空気をまとう桜夜と、にかにかと笑う玄武はただただ見つめあう。腹の探り合いでは老練な玄武に桜夜が勝てるはずも無かった。「娘が生まれれば、お主と娘……あずさを許嫁とする。これは四方院家としての決定じゃ」 それは桜夜が四方院家の犬であれば、褒美に愛した女をくれてやるというものだった。しかもあずさは今度は次期宗主として名高く、桜夜が兄のように慕う男の娘になる。その婚姻は四方院にとっても、桜夜にとっても立場を盤石にするものだろう。しかし気に入らなかった。あずさを道具として扱う玄武のやり方が。別に自分はどうなってもいいが、四方院を嫌っていたあずさを四方院に転生させたことだけは許せなかった。 桜夜の怒りは憎しみとなり、殺意へと変化していく。それは師から禁じられた感情だった。そんな桜夜をさらに刺激するように、鷹司が口を開く「良かったじゃないか。四方院家と敵対して娘を奪う必要がなくなって」 桜夜は真顔のまま、鷹司に顔を向ける。そして皮肉な笑みを浮かべる。「お言葉ですが鷹司公。四方院家と敵対する内外の組織の攻撃を水際で防いでいるのは私です。イギリスのリチャード陛下、神原家、宵宮家を後ろ盾に四方院家と戦い勝つことなぞ造作もないことですよ」 その言葉に、今度は鷹司の顔が怒りにゆがんだ。「四方院家相談役は四方院家を護る者だ。それが四方院家を滅ぼす方法を考えているなど許されることではないぞ」「いいえ、鷹司公。相談役は四方院家を監視し滅ぼす者です。四方院家が誤った道を行かないよう破壊することも務めなのです。あなたが知らないはずありませんよね? 先代相談役殿」 桜夜の皮肉たっぷりの言葉に鷹司は思い切り立ち上がり、拳を握った。かつて自分を相談役から追い落とした桜夜を、決して鷹司は許していなかった。「表に出ろ。長年の因縁に今こそ終止符を打ってやる」「いいでしょう。いずれは決着をつけねばと……」「まてまてまて!」 桜夜が殺意をむき出して立ち上がろうとするのを玄武が慌てて止めに入った。「まず先代鷹司よ、桜夜の言っていることは正しい。相談役は戦ってでも四方院家を正さなければならないときがある。だがの桜夜、具体的なプランを話されるのはこの老骨の心臓に悪い。控えてくれい。最後に今日は祝いの席だ。2人とも座って、飲もうではないか」 玄武の執り
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-20
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第2話 生まれるいのち

 一触即発の祝いの席からしばらくの間、桜夜は姿を消していた。相談役としての仕事は放り投げたものの、三姉妹に害悪が被らないよう、彼女たちだけは連れて旅に出ていた。 行先はイギリス。リチャードの庇護の下、四方院家から隠れ、かつて不死身の魔女が暮らしたという屋敷を占領していた。四方院家内部では一匹狼を気取っている桜夜だが、その実「水希派」という自分の派閥を持っている。彼ら半ばスパイとして、桜夜に四方院家の情報を流していた。 桜夜と四方院家が一触即発の状態なのを受けて、イギリスの重鎮たちの意見は二分されていた。つまりこれまでどおり四方院家との友好関係を保ち、他国との外交に役立てようとする勢力。これは主に政治家たちに多かった。対してリチャードは、桜夜が四方院家とことを構えるなら、国を挙げての支援を考えていた。これは何も彼だけの意思ではなく、彼の騎士たち、そして軍部にも思いを同じくする者たちがいた。 しかしこの頃の桜夜は、精神的に不安定で、とても四方院家と争う気力はなかった。食事も睡眠も乱れた中、ただぼんやりとしていた。あずさとまた会えるかもしれないことを喜べばいいのか、それとも流産し、四方院家に生まれてこない方が幸せなのか。どちらに思考が傾いても自己嫌悪に陥る桜夜。そんな彼を三姉妹はどうにか支えようと必死だった。 それから十月十日たち、幸か不幸か四方院あずさがこの世に産声を上げた。その知らせを受けた桜夜は、次期宗主候補である四方院一とその妻、四方院香織の下を電撃訪問した。ずいぶんとやつれた桜夜を見た一は、なんと声をかけていいのかわからなかった。桜夜は主家に対する礼儀を守った挨拶をした。「一様、この度は誠におめでとう存じます。香織様もお疲れ様でした」「ありがとう、桜夜相談役。しかし私としては昔のように一兄さんと呼んでほしいかな」 桜夜はたださみしそうに笑った。純粋に一を兄と呼べる時間は過ぎ去ってしまったのだ。桜夜は一を公的には次期宗主と、私的には父と呼ばねばならないかもしれないからだ。「相変わらず変わりませんね。次期宗主候補筆頭となられましたのに」「人間とはそんなものだよ。さあ、それよりも、君の妻になる子だ。抱いてあげてくれ」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-21
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第3話 息苦しい再会

 あずさの療育は母である香織の仕事であり、あずさは四方院本家で育てられることになった。普通に考えれば、仮にあずさの魂をもっていたとしても、記憶はないはずだ。だから桜夜は、彼女がどう育つかはわからず、ただ見守ることしかできないはずだった。しかし玄武は、あずさに記憶を持ったまま転生できるよう術をかけたと四方院家に戻った桜夜に告げた。それが本当かはわからないが、桜夜はストライキを続けたまま、あずさの成長を見守ることにした。 あずさと名付けられた赤ん坊は桜夜によくなついていた。しかし桜夜は接触を控え、自分の屋敷にこもって後進を育てるばかりだった。まるで死ぬ準備をするかのように身辺整理を始めた桜夜を、サイカとリオは心配することしかできなかった。ホムラだけはがむしゃらに訓練し、今後に備えているようだった。 それから数年後、物心ついたあずさが桜夜を訪ねてきた。桜夜は会うことを恐れたが、立場上会う必要があった。出迎えた桜夜にあずさは抱き着いてきた。「ばか! せっかく転生してやったんだから毎日会いに来なさいよ!」「……ごめん」 小さな子どもではあったが、その口調とぬくもりは、確かに桜夜の知るあずさだった。二人が抱き合う姿は歳の離れた兄妹を連想させ、かつての関係とは真逆のものになっていた。そのいびつな関係に桜夜が苦笑していると、リオが屋敷の奥から出てきてあずさに挨拶をした。「はじめまして、あずささま。わたくしはリオと申します。以後お見知りおきを」 リオの態度は重苦しく、あずさは緊張していた。前世からお嬢様であるあずさだが、病院暮らしが長く、コミュニケーションには難ありだった。「お茶とお菓子を用意しております。どうぞこちらへ」「行こうか、……あずさ」 また名前を呼べることにむずむずしながらも、桜夜はあずさをエスコートする。その前を歩くリオも、子どもであるあずさにペースを合わせているようだった。 ◆◆◆ 桜夜の屋敷――リビング 桜夜があずさにソファを勧めたあと、しばらく彼は立っていた。まだ子どもにある意味で戻ってしまったあずさと
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-22
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第4話 それぞれの想い

 結局三姉妹もあずさも桜夜の屋敷で暮らすことになった。あずさを預かる以上ストライキを続けるわけにもいかなくなった桜夜は、執務室で仕事を再開するのことにした。しぶしぶ働く桜夜とイキイキと仕事を回すリオの姿は仕事上のパートナー以上の関係にあずさには見え、耐えられずに「トイレ」とだけ言い残して屋敷の探検に向かわざるをえなかった。 それほど広い屋敷ではなかったが、幼い身体に戻ってしまったあずさには広く感じ、気付けばキッチンに迷い込んでいた。そこには夕飯を作るサイカの姿があった。鼻歌を歌いながら味見をしていたサイカは闖入者に気付いて振り返った。「あれ……あなたが、あずさちゃん? 今日はあずさちゃんを歓迎する特製カレーだからね! もう少し待ってて」 笑顔で悪意などどこにもないというサイカの態度に、あずさは難しい顔をした。「歓迎? どうして歓迎するの? あなたにとってあたしは恋敵なんじゃないの?」「んー……」 サイカは少しだけ困ったような笑みを浮かべてからしゃがみ、あずさと目線を合わせた。「わたしはね。桜夜さんと契約をしたの」「契約?」「そう、わたしたち姉妹を救ってほしいって。そして桜夜さんはわたしたち姉妹だけじゃなくて、お母さんやお父さんまで救ってくれた。だからわたしが桜夜さんといるのは恩返しなんだよ」「恩返し……」「もちろん桜夜さんのことは好きだよ? でもだからこそあの人の幸せを一番に願っている。あなたは桜夜さんが喪いたくなかった存在なんだよね? きっと桜夜さんはまた逢えてうれしいんだと思う。だから、わたしはあなたを歓迎するよ。あの人が幸せになれるように」 サイカは澄んだ笑顔を見せる。それを見てあずさは苦々しい顔を浮かべて、その場から逃げ出した。 ◆◆◆  縁側に向かったあずさは、怒りに任せてホノカグツチを振るホムラと出くわした。炎こそ出ていないが、その怒気はすさまじいもので、あずさは腰が抜けてへたり込んでしまった。ホムラはあずさの存在に気付くとギロリとそちらをにらみ、ホノカグツチをあずさに突き付け
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-22
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エピローグ

 朝6時、あずさは遠くから聞こえる桜夜の声で目を覚ました。起き上がって寝ぼけまなこをこすり、あたりを見回すが桜夜の姿はなかった。ふわあとあくびを嚙み殺しながら、あずさは桜夜の声のする方へ向かった。 ◆◆◆  声は縁側から見える庭から聞こえていた。どうやら桜夜がホムラに剣の修行をつけているようだ。(そういえば桜夜の育ての親って剣術やっていたもんね) 2人が気づかないのをいいことに、あずさは2人の様子を覗き見る。「ほらほら、脇が甘い。そんなんじゃ自分の身も守れないぞ。親衛隊長」「うっせえ! って親衛隊長!?」「ほらっ油断しない」 ぽこっと竹刀でホムラの頭を叩く。「ってえ。それより親衛隊長ってなんだよ」「親衛隊なんだから隊長がいないと恰好がつかないでしょ。親衛隊の中で一番戦闘に向いているから、ホムラちゃんを隊長に指名したんだ」 桜夜がいたずらっぽく笑うと、ホムラもうれしそうに笑う。「うおお、ついに隊長か! よし桜夜! もう1本!」「ホムラちゃん、もう朝ごはんできてるからだめだよ」 そこにサイカが顔を出した。そしてあずさの存在にも気づくのだった。「あっ、あずさちゃんおはよう。朝ごはんできてるよ」 桜夜とホムラもあずさの方を向く。「おはよう、あずさ。ほら、ホムラちゃん朝の挨拶は?」「ふん」 ホムラが不貞腐れたようにそっぽを向くのを見て、桜夜はわざとらしく言った。「あーあ、あいさつもできないんじゃ隊長の件はなしかな」「あーもー! うるっさいな。お、は、よ、う! これでいいんだろ!」「はい、よくできました」 長年一緒にいたことがわかる桜夜たちのやりとりにぼんやりしていたあずさは、声をかけられて慌てて「おは、ようございます」とだけ述べた。そのまま全員でリビングに移動すると、青いスーツ姿で待機していたリオが桜夜に近づいてくる。「桜夜様、おはようござい
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-22
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第10章 イグドラシルとの闘い プロローグ

 ある夜、桜夜は夢を見ていた。真っ暗な道を1人歩く夢を。道を歩いているとやがて1人の男に出会った。自分とよく似た顔立ちをした男。岩に座っている男は顔をこちらに向けて手を上げた。桜夜はその名前をつぶやく。「……アルファ卿」 男、一番最初の神殺しと呼ばれたアルファはにやりと笑った。彼の服装は騎士というよりは旅人とといった風情で、フード付きのマントを着用していた。「まあ座れ、水希桜夜。我が弟よ」 アルファが彼の前を示すと、そこに座るのに丁度いい岩が現れた。だが桜夜は、岩の出現よりも、アルファの言葉に驚いた。これまではサタン同様、模造品と呼んでいたのが急に弟に変われば当然だ。「突然どうしました、弟だなんて」 桜夜は勧められるままに岩に腰かける。アルファがパチリと指を鳴らすと、桜夜の格好もアルファと同じものになった。「お前は僕の魂をモデルに造られた。それは弟も同然だ。まあ弟子筋でいけばお前はボクの孫弟子になるわけだが」「孫弟子、ですか?」 よく驚かされる夢だ。だが先生は確かに懐かしむように言っていた。神隠しにあい、そこで偉大な師と出会ったと。それがこのアルファなのだろうか。「それは明人先生が神隠しにあった話ですか」 「うむ、あいつは伸びしろがあったからな、少しだけ手ほどきをした。さて……」 アルファは仕切り直しとばかりに言葉を切った。「このままお前の大好きな師匠の話を続けてもいいが、今日は別件だ。お前、イグドラシルを敵に回すことになりそうだって話をしに来た。イグドラシルは旧約の時代から続くデミウルゴスの使徒。歴史の裏で暗躍し続けた組織だ。その目的は……」「人類の選別。新たなるノアの大洪水を起こし、イグドラシルに、デミウルゴスに従う人間だけを残すこと」 そこでアルファがにやっと笑う。桜夜も裏世界にかかわるものとして、秘密結社イグドラシルの存在は知っていた。イグドラシルは世界の三分の一を支配し、カトリック教会と長年対立してきた組織だ。その目的達成の手段は、ウイルス兵器だ。抗ウイルス薬を“選
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-23
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第1話 情報戦開幕

 夢から覚めた桜夜は早速動き始めた。刀を握って殴り込みに行く争いの仕方はもう古い、そう桜夜は考えている。力づくでイグドラシルを全滅させようとしても水面下に潜られる危険があるし、暗殺合戦にもなりかねない。当面必要なのは、イグドラシルが持つ抗ウイルス薬のデータの奪取か、その開発の妨害だった。そのためにイグドラシルにスパイを紛れ込ませているし、そして……。「頼むよ。鷹司君」「任せてください」 鷹司の名で呼ばれたのはもちろん先代相談役である鷹司公のことではない。彼の孫にあたる青年、鷹司勝(すぐる)のことだった。身体が弱く相談役候補からは外されていたが、その天才的頭脳に目をつけた桜夜がハッカーとして起用しているのだ。そのハッキング技術で抗ウイルス薬やウイルスのデータや情報の入手を、桜夜から指示されていた。「さって、僕は僕の仕事に向かいますかね」 ◆◆◆ 「ヴェネツィア!?」 桜夜の私邸で、あずさの声が響いた。「ああ、次のミッションではヴェネツィアを拠点にイグドラシル本部がある拠点ローマを探る」 イグドラシルは挑発的にも、対立するカトリック教会の総本山があるローマに本部をかまえているとされる。もちろん正確な場所はわからない。近づきすぎては危険だと判断し、同じイタリアで彼の別荘があるヴェネツィアを選んだが、それでもリスクのある作戦だ。それを知らないあずさは無邪気に手を挙げる。「あたしも行きたい!」 桜夜は困ったように笑うと、おどけて言った。しかしその目は真剣そのものだった。「リトルプリンセス。遊びではないんだよ」「む。わんこのくせに変なこと言ってごまかす気だな」 桜夜はますます困った顔になる。「今回は観光や式典への出席じゃないんだ。いのちに関わる仕事なんだよ」「なんでわんこがそんな危険な仕事を」「そりゃあ、先代と宗主に文句を言ってもらわないと。彼らが任命したんだから」 あとはリチャードか、なんて友人の顔を桜夜は思い出す。そこできひひと笑った
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-23
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第2話 ローマの平日 前編

「いやあ、やっぱりヴェネツィアはいいねえ」「そうか? オレは水がいっぱいで苦手だ」 嫌そうな顔をするホムラに対して、リオは笑顔だった。「ホムラちゃんはそうかもしれませんね。わたくしは水の精霊が元気で過ごしやすいです」 桜夜もリオも、作戦行動中とは思えないほどリラックスしていた。「さて、あずさにはああ言ったが、僕は顔が売れすぎているからしばらくは待機なんだよねえ。みんなからの連絡待ち。どっか遊びにいく?」 桜夜はこんなときでも桜夜だった。そんな桜夜のやる気のない態度を見たホムラとリオは顔を見合わせたあと、ホムラは彼ににやりとした笑顔を、リオは上品に微笑みながら、桜夜をベッドに追い込み始めた。「どうしたのかな? 2人とも」「せっかくガキどもがいないんだ。大人の遊びをしようぜ」「ふふ、そういうことです」 ヴェネツィアまで来てすることかねと思いながらも、桜夜は2人の誘いを断らないのだった。 ◆◆◆ 「ん……」 上半身裸で寝ていた桜夜はスマホの着信音で目を覚ました。自分の左右で寝ているホムラとリオを起こさないようにベッドから立ち上がり、寝室を出ながら電話に出た。「はい、水希……」『た、たいへんです! 水希卿!』「どうした。落ち着いて状況を報告しろ」『せ、先代相談役が……』「先代がどうした?」『イグドラシル家の娘を誘拐しました!』「はあ!? こんなときにあのじいさん何を……。まあいい先代はこちらでも探す。追加の情報が判明したら伝えろ」『は、はいっ』 はあ、と桜夜はため息を吐く。誘拐したと言っても、まだローマは出ていないだろうと、鳳凰をいくつもの小鳥の姿に変えて窓から放った。小鳥たちは一直線にローマを目指して飛んでいく。 ◆◆◆ 「おじさま、本当に大丈夫なんですか」「任せておけっ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-24
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