All Chapters of 黒の騎士と三原色の少女たち: Chapter 71 - Chapter 73

73 Chapters

第3話 ローマの平日 後編

 鷹司が誘拐した(正確には家出を幇助し匿った)少女の名はリン・イグドラシル。現イグドラシル家の当主の1人娘で、ウイルスによる大粛清に反対していた人物だった。また作戦実行において重要となる鍵を持っているという。さらに鷹司が計画的に誘拐した訳でもない故、こうして連携に齟齬が出ているようだった。そんな中、目をつむって椅子に腰かけているだけに見える桜夜が目を開いた。「見つけた」 ついに鷹司とリンの存在を見つけた桜夜は立ち上がる。「リオ! 認識疎外の魔法を。鳳凰で突っ込む!」「はい!」 ◆◆◆  ローマ市街の路地裏で鷹司は肩を押さえて蹲る。それをかばうのはまだ幼い少女だった。「退いてください。お嬢様」 男は平たんな声でそう言うが、少女は決意を宿した目で動かなかった。「仕方ありませんね」 男は肉弾戦で鷹司を黙らせようと動く。鷹司もまた残る腕で対抗する。かつて桜夜と引き分けた実力は老いとケガで衰えることもなく。やすやすと迫って来た男の顔面を殴り飛ばす。「!?」 だがその腕は男の顔面を貫通しただけだった。殴った感触はまるで泥のようだ。その驚きに鷹司は一瞬だけ隙を生んでしまった。その隙を逃さず、男は銃弾を鷹司にありったけ打ち込んだ。「ぐはっ」「おじさま!」 口から、体中から血を流しながら、鷹司は片膝をつく。それでも意識を保っていたのはさすがの一言だった。だが男の仲間も追いつき、絶体絶命の危機に瀕しているのは変わらなかった。血がつくのもかまわず、リンは鷹司に抱き着いた。鷹司は少女の背中に手を回し、つぶやく。「大丈夫だ。あとはあいつが……」 薄れゆく意識の中、鷹司は男たちの前に立ちふさがる誰かを夢想した。 to be continued
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第4話 ローマの災日 前編

「神聖なる炎」 天空から凛とした声が響く。すると虚空から神々しい炎が現れ、泥人形たる男たちを焼き尽くしていく。その光景に茫然とするリンに対して、鷹司は口元をゆがめて言った。「遅いぞ、小僧」 その言葉にこたえるように鳳凰を自分の中に戻した桜夜は、リオに認識疎外を解かせて彼女とホムラを伴って地に降り立った。鷹司たちを守るようにその前に立った桜夜はからかうように言う。「先代こそ、勝手にローマの休日ごっこしないでくださいよ」 桜夜とホムラが周囲の警戒を行っている間に、リオは両ひざをついて鷹司の傷を見る。「助かる?」 リンがリオにすがるように尋ねる。「大丈夫ですよ。鷹司様は強い方ですから」 リオは傷口を確かめ、銃弾が貫通していることを確認する。(これなら傷口をふさいでしまえば輸血するだけで大丈夫でしょう) リオは水の魔力を持つ者が得意とする治癒魔法で鷹司の傷を塞いでいく。その間も泥人形の男たちの増援はあったが、桜夜とホムラがせき止め、切り捨てていった。神殺しと炎の剣は、どちらも泥人形の弱点を突くことに成功していた。しかしキリがないことにホムラは若干いら立つ。「たくっ、どんだけいるんだよ!」「あはは、これは逃げた方が良さそうだ。ホムラ、デカいのを頼むよ」「おっしゃ!」 ホムラは丹田から炎の魔力を引き出し、ホノカグツチに吸収させていく。そして一線。炎の津波が泥人形たちを飲み込んでいった。津波が収まったあと、路地裏には誰もいなくなっていた。◆◆◆ローマ市内 病院 そこで鷹司が輸血を受けている間に、桜夜はリンからmicroSDカードを受け取っていた。その中身をスマホで確認した途端、桜夜は勢いよくスマホを操作し、そのデータを四方院家やイグドラシルと対立する勢力に送った。それは抗ウイルス薬のデータだったからだ。「リンちゃん。このデータの原本は?」 リンは首を左右に振る。「もう存在しない。それが原本」「そうか……」 桜夜は考え込む。(抗ウイルス薬のデータが広まった以上、イグドラシルはすぐに作戦を実行できない可能性が高い。いや、それも希望的観測だ。確実にイグドラシルの勢力を削いでいくには……)「リン……いえ、イグドラシルの姫。イグドラシルの主になる覚悟がおありですか」to be continued
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第5話 ローマの災日 後編

 それから1日も経たずに、桜夜主導による電撃作戦が実行された。四方院家を中心にしたメンバーがイグドラシル本家の家に正面から攻撃を仕掛けたのである。その隙に裏から桜夜、鷹司、リオ、ホムラ、リンが侵入し、現イグドラシル当主に全権を娘に譲るよう迫るという作戦であった。問題は当主が在宅しているかだったが、リンの証言により、儀式がある8月の間は必ず在宅していることが判明した。だからこその電撃作戦だった。また電撃作戦と陽動作戦は桜夜の十八番なので、口うるさい鷹司も今回は反対しなかったのである。 そして作戦決行の夜。侵入作戦は気味が悪いほどに上手くいった。リンに案内されるまま当主がいる部屋にたどり着く。その観音開きの扉を1,2、3でリオとホムラが開き、鷹司と桜夜が突入した。鷹司が声を張る。「イグドラシルの当主とお見受けする! 我ら四方院家の前に降伏せよ!」「くくくく」「……パパ?」 桜夜たちに背中を向け、窓の外の争いを眺めているイグドラシルの当主は、一振りの諸刃の剣を握っていた。刀身は淀んだ黒で、桜夜にデミウルゴスを思い出させた。当主は、鷹司の降伏勧告を無視したまま、くるりと桜夜たちの方を振り返った。その目は赤く血走り、明らかに異常だった。「待っていたよ。水希桜夜。デミウルゴス様の命により、君を殺す」 嬉々としてそう口にした当主は、桜夜に向かって尋常じゃない速さで近づき剣を振り下ろした。しかし桜夜も騎士として素早く反応し、腰の桜吹雪を抜きつば競り合う。そのとき彼の心臓がドクンとはねた。(なんだこの剣は? 穢土のように穢れにまみれている。桜吹雪が穢されて……折られる……!) 桜夜は得意の受け流しでつば競り合うのを止め、バランスの崩した当主自身を切ろうとした。しかし当主は人間には到底不可能な動きでその桜吹雪を剣で受け止めた。再び刀を折られるビジョンにかられた桜夜は飛びのく。そんな桜夜を追撃しようと当主は動こうとする。それを阻止するため鷹司が長巻で切りかかる。「せんだ……!」 桜夜が鷹司を呼ぶより早く鷹司は長巻ごと身体を薄皮一枚切られた。「まだまだ……ぐっ」 鷹司は膝をつく。見れば傷口から穢土の穢れが流れ込み、彼の身体を蝕んでいた。桜夜は叫ぶ。「リオは先代の穢れの浄化を! ホムラは姫の護衛! こいつは〝俺〟が倒す」 鷹司にとどめを刺そうとしていた当主はゆ
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