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All Chapters of PSYCHO-w: Chapter 121 - Chapter 130

140 Chapters

31.裏目

「続きまして ! 今春のベストヒット!!」 司会の男女が意気込む。 他者ゃとはかけ離れた華やかな衣装。花のように可憐で美しく、未発達ながら香しい女性たち 。 そのド真ん中にポジション取りする、一際顔立ちの整った少女。 彼女は来月からソロデビューが決まっている。このグループを卒業とするアイドルとしての最後の大舞台だった。 その後、新しいマネージャーに呼び出された彼女は純真無垢な瞳で挨拶を交わし、打ち合わせ用の会議室へ通された。「お、来月からフリーか」「はい ! よろしくお願いいたします ! 」 室内には顔見知りのスタッフが数人、少女の前に群がってきた。「フリーっ ! free bust 〜」「おい、こっち回せ。マネージャー ! 順番決めや ! でないと全員で喰うでよ  ? 」 少女の足が凍りつく。 既に逃げ場は無いのだ。「せめて場所変えましょうよ」「あれやん。デビューシングル、ニューヨークで撮るんよな ? そん時でいいんじゃないかいね。全員集合で。海外のホテルなら時間もせかないくていいよなぁ ? 」 そのニューヨークのステージの後、少女が失踪する事をこの時は誰も想像していなかった。 □□□□「迎えに来てやったぞ、涼川  蛍 ! 」「しなモン……」「しなモンはやめたまえ。さぁ、これを飲め」 青い楕円形状の薬。「トリアゾラム……」「すまんな。俺も場所しか聞かされていない」 西湊駅。 ゲーム当日、蛍の指定された場所に来たのは椎名だった。 車の後部座席で、蛍はボンヤリとまだ暗い駅のホームを眺める。「……ボーっとしてきた」「寝るまで出発はしないからな」「……てっきりスミスさんが来るのかと……」
last updateLast Updated : 2025-09-04
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32.ゲーム参加者 集合

 日曜、時刻9:00。 場所は湊市総合医科大学敷地内の広場。 顔を合わせた面子はなんとも見慣れた数人だけ。 涼川  蛍、十六歳。日々野高校在学中。 佐藤  真理。年齢非公開。元アイドル。 久岡  塁。五十九歳。湊心身クリニック、カウンセラー。 そして──椎名、改めRという捜査官。 居合わせたルキは拘束されたまま。しかし激しい動揺の色を見せていた。 参加者には全員、足枷があった。「以上、四名での第四ゲームとなります。 Mの到着までお待ち下さい」 流暢な日本語でジェームスが進行する。「ケイくん。大丈夫 ? 」 まだぼんやりしている蛍に真理が話しかけてきた。「大丈夫です……さっきより抜けて来た感じがする……」「なんだかさ。ゲームってより、ルキに対する見せしめよねぇ。今回、観覧者は見てて楽しいのかしら ? 」 確かに蛍は常連だが、他は身内の繋がり。椎名は二回目となる。だがもう一人の……久岡  塁。彼は紛れもなく一般人である。彼だけがキョロキョロと辺りを見渡し、手枷もつけられていた。「あの人知ってる ? 」「さぁ…… ? 知り合いにはいないです」 湊市心身クリニック……まずそこに蛍は縁がない。「あれ ? そうなの ? じゃあ、あのカウンセラーさんだけが一般人 ? どういう基準なのかしらね」「カウンセラー…… ? あ……」 蛍がふと思い出す。 蛍の異常性を父親の重明が相談したカウンセラーだ。「お前…… ! 山王寺に俺の情報を売った奴 !! 」 思わず恨みが顔に出る。 重明が相談したことはさておいて、このカウンセラーはコンテナゲームの時自
last updateLast Updated : 2025-09-05
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33.第4ゲーム開始

「おはようございます」「揃ってるな ? 」「はい。全て予定通りです」 ジェームスが頷き、革張りのファイルを差し出す。「諸君、我がゲームへようこそ」 全員に緊張が走る。 Mを見上げ、その中で唯一、真理だけがリラックスしていた。「今回、観覧者のモニターはこの病院内部に仕込んだ。そして日本の全国ニュースと県内のローカルニュースが観れるよう用意されている」「ニュース ? まだワイドショーも始まる前じゃないの ?  って言うか、わたしたちが観察されるんじゃなくて、なんでニュースなのよ」「真理。最後まで聞くんだ」「……」 Mが真理に向ける視線は優しげだ。 しかし、今回は真理かルキ、どちらかが死ぬというサブルールが付随している。「君たち『参加者』はゲームに参加し、順位が付けられる。 まず、カウンセラー 久岡  塁さん、貴方は今回ニューフェイスだ。さぞかし驚いたことでしょう ? 」「こ、これは撮影とかですよね !? こんな病院の中庭で……モニター ? ドッキリですか ? 」「本当にそう思うのか疑問だ。 君は山王寺グループという半グレの……」「あ、あれは内密に…… ! 」「大丈夫ですよ。その情報の行き着く場所が我々だったということだ。しかも貴方が取引した、山王寺  梅乃は既に死んでいます。 そこにいる男子高校生の恨みを買ったのさ。山王寺も貴方もね」 久岡は蛍の顔を見る。 重明には似ていない。しかし相談を受けた時、涼川と名乗った父親は息子の年齢を告げた。その子供が今、何歳だったか……山王寺グループに売った涼川  重明のカウンセリングの記録を繋いですぐに気付いた。「き、君が…… ! 涼川  蛍本人 !!?
last updateLast Updated : 2025-09-06
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34.準備開始

「くそ ! 」 椎名は公衆電話を見つけると、すぐに受話器を手に取る。かける場所は当然本部、やがて協力者、他の捜査官。 全てが全滅だった。 逃れられない。 ゲームはやるしかない。 ICPOでのキャリアは無くなったが、一般人として生きる道も少なくとも失われてはいない。本当に訴訟にならないなら、誰も知らない海外で更に田舎にでも行けば。金は多少ある。自分としては不本意だが、椎名として生きていくなら十分だろう。殺されるにしても、Rと違い喜んで身を捧げるだろう。「一位……一位になるには何人だ ? 涼川  蛍は何人殺す ?  いや、効率だ。一度に何人も怪我人を出すのがいい」 顔を上げると、ゴーゴーと行き交う国道の車を眺める。「くっ、やるしかねぇのかよっ ! 」 ジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイを外すと、靴底に隠したナイフを取り出した。「停れーっ !! 」「う、うわっ !! 」 飛び出してきた椎名に、トラックのドライバーは思わず急ブレーキを踏んだ。後続車が次々と突っ込み大破する。「アンタ、一体…… ! 」 戦々恐々とするドライバーの方にナイフが埋まる。「病院行け。トラックは諦めな」 椎名はトラックに乗り込むと、他の車を押しのけるように市街地へ向かった。 □□□□ 真理は一度愛車に乗り込むと、止まらない涙を拭いながらハンドルを握った。「う……うぅ……はぁ、ふ……」 あんなに愛しあった男だ、と。 危険な男だとも、分かっていた。もしかしたら自分は人とは違った死が待っている、とも覚悟もしていた。 しかし、ゲームでいたずら半分に余生を奪われるとは考えてもいなかった。 ガオォゥン !!  病院の立体駐車場の中、アウディの輪がギラりと光り、唸りを上げな
last updateLast Updated : 2025-09-07
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35.協力要請

 観覧者達のモニターにはまだ何の異変も映ってはいなかった。 ただひたすらに病院内部とニュース番組、そして病院に残ったMを写す小型カメラ。「さぁ皆様、お待たせ致しました。 今回もベットしたい方、いつものサーバーへどうぞ。電子通貨も可能ですので」 Mがカメラに向かい話す背後。 美果とスミスが院内へ姿を消す。「ちょっと、結々花さんはどこなのよ !? 取引したんでしょ !? 」「ええ。しましたよ。貴女と同じくここへ来る手筈でしたが、実際来ていません」 逃げた……とは考えられないだろう。しかし組織に戻れるとは思えない。二重スパイになるとしても、Rがしくじったせいで果たして信用は残っているのだろうか ? 「……ICPO側に消される…… ? 」「可能性は高いです。こちらに捜査情報を与えたくないのでしょう。来れば絶対に吐かせますので。一度家に戻る事を了承したのは間違いでしたかね」「それ、始末させる機会を与えたも同意よ」「俺達にはどちらでもいいことです。咲良  結々花についてはルキ様も調査されていましたから、特に彼女の命に価値は無いんです」「……Rはどうなのよ。ICPOの話なんか聞かずに殺す勢いじゃないの」「Mにはルキ様の倍の敵がいますからね……。そもそも警察組織など、元から対処出来ていなくては我々は存続出来ませんよ」「……まぁ、そうよね……」 □□□□ Pirrrrr.pirrrrrr「もしもーし。 は ? 図書館で事件 ? なんの ?」 休日。梅乃の姿で部屋にいた椿希は、部下からの着信に眉を顰めた。「首吊り自殺 ? それどんな人 ? エスニックファッションでガーリーな女の子 ? 」 部下から上がる報告。『白いスーツの
last updateLast Updated : 2025-09-08
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36.鬼火

 久岡は自宅まで辿り着くと、大きな窓から町を見渡す。 高級マンションの高層階。 しかし、見える風景は実に長閑な田舎町だ。 山や森が連なり、その麓に密集した人のコロニーがある。「あの病院は海沿いの幹線道路に近い。周辺にも個人病院を合わせれば……。一つ山を越えるとまた沢山の病院が…… ! 病床数より、とにかく一気に手早くすませるべきだ」 ガシャッ……。「ふ……ふふ……」 久岡は和室へ行くと、日本刀を手に取った。「音を立てず、こっそり確実に被害を出す ! 傷は致命傷でなくともいい」 キッチンからも包丁セットを抜き、身体に巻き付ける。黒い衣服を取り出すと、何枚も重ね着をし、頭にタオルを巻く。棚から何らかの薬物も持ち出しポケットにねじ込んだ。「行くぞ ! 」 バンッ ! 「あら、久岡さん。こんにち……え………… ? 」 どさりと音を立てて隣人の妻は共用廊下に倒れる。「うぉぉぉっ !! 」 日本刀を振りかざしながら久岡はマンションを後にした。 その頃──── 運転席でガムテープを見つけた椎名はすぐに手に取り、持ち出してきたプラスチック爆弾を身体に巻き付ける。 ベリッ !! ベリリッ !!  ハンドルを握ったままの椎名は幹線道路から湊駅へ向かう。 何度もコールするが、結々花が電話に出ない。「ったく。肝心な時に ! 」 同じく、直属の上司も。 一切の連絡が通じなかった。「俺は警察 ! それが犯罪者で人生終わりかよ !! 」 パリンッ !! 「なんだっ !!? 」 突然フロントガラスに入るヒビ。「まさか&he
last updateLast Updated : 2025-09-09
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37.合流

 蛍は椿希との通話を終えると葬儀屋から持ってきたトラックを使い、緑星市まで南下し以前入院した闇医者を訪れた。「先生呼んでくれる ?」「え……と、診察ですか ? 」 受け付けにいた女性は困惑した表情で蛍をデスクから見上げた。「違うよ。知り合いなんだ。蛍って言ってくれれば分かるから」「お待ちください」 診察室に入って行った事務員は、すぐに医者を連れてきた。「……蛍くん ? 怪我かい ? 」「ううん。今回のイベントでね。準備して欲しい物があるんだ」「……。場所を変えようか」 医者は中の看護師に一言かけると、二階へと上がる。「イベントって……ゲームかい ? 何も聞いていない。ゲームの時はルキ様と会場へ同行するように言われてたんだけどねぇ」「今回主催 M なんだ。それでさ、俺が負けるとルキが死ぬ。今回のルール」「本当に !? 〜〜〜……参るなぁ……」「だよね。先生の飼い主はルキだ。ルキが居なくなったら今みたいな生活は出来なくなるもんね」 そう言って真新しい腕時計をチラりと見る。「……それで ? 何をすればいい ? 」「話早くていいや。ありったけのキシラジン用意して」「キシラジン ? 一体何に……──いや、ダメだ」「なんで ? あれは規制されてない。あるでしょ ? 」「うちは町場の獣医だ。出せるのは犬猫分だけで、それだって一度の量は……」「先生、西湊の先の牧場にも行ってるじゃん。牛も診てるでしょ ? 」「……」「このままじゃルキが死ぬ。協力してよね。  ありったけ欲しいんだ。お金なんてルキにつけといてよ。知り合い、同業とにかく量が欲しい」「……分かった。  ひとつ言っておくが、うちには液体しかないぞ」「ん〜。……出来れば粉が良かった」「面倒な……」「機械無いの ? 」「あるが、固めたところで、どうせまた砕いて精製
last updateLast Updated : 2025-09-10
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38.マリンパークの地獄

 蛍は椿希との通話を終えると葬儀屋から持ってきたトラックを使い、緑星市まで南下し以前入院した闇医者を訪れた。「先生呼んでくれる ?」「え……と、診察ですか ? 」 受け付けにいた女性は困惑した表情で蛍をデスクから見上げた。「違うよ。知り合いなんだ。蛍って言ってくれれば分かるから」「お待ちください」 診察室に入って行った事務員は、すぐに医者を連れてきた。「……蛍くん ? 怪我かい ? 」「ううん。今回のイベントでね。準備して欲しい物があるんだ」「……。場所を変えようか」 医者は中の看護師に一言かけると、二階へと上がる。「イベントって……ゲームかい ? 何も聞いていない。ゲームの時はルキ様と会場へ同行するように言われてたんだけどねぇ」「今回主催 M なんだ。それでさ、俺が負けるとルキが死ぬ。今回のルール」「本当に !? 〜〜〜……参るなぁ……」「だよね。先生の飼い主はルキだ。ルキが居なくなったら今みたいな生活は出来なくなるもんね」 そう言って真新しい腕時計をチラりと見る。「……それで ? 何をすればいい ? 」「話早くていいや。ありったけのキシラジン用意して」「キシラジン ? 一体何に……──いや、ダメだ」「なんで ? あれは規制されてない。あるでしょ ? 」「うちは町場の獣医だ。出せるのは犬猫分だけで、それだって一度の量は……」「先生、西湊の先の牧場にも行ってるじゃん。牛も診てるでしょ ? 」「……」「このままじゃルキが死ぬ。協力してよね。 ありったけ欲しいんだ。お金なんてルキにつけといてよ。知り合い、同業とにかく
last updateLast Updated : 2025-09-11
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39.情報

『速報です。本日正午、湊駅前マンションで女性が倒れていると通報があり、その後路上でも女子高生二人が切り付けられ、現在意識不明の重体となっています。いずれも通り魔による犯行と見られており、犯人は今も逃走中……── !   こ、ここで新しい情報が入ってきました…… ! えー、本日……同じく正午に湊展望台で銃撃を受けたと通報があり…… ! 』『続報です。本日、湊展望台付近での銃撃事件の後、北湊マリンパークの憩いの芝生にいた数名が銃撃を受けたと通報があり──』 ようやくテレビ報道が始まった頃、Mはベンチに座ったままサリサリと顎を撫で怪訝な顔をしていた。「解せんな。蛍は何をしている ? ルキ」 背後に立たされたままのルキはしょうもなさげに肩を竦めて見せる。「逃げ出すタイプじゃないですよ。  それより、真理さんは車を変えた方がいい」「自動車のロック解除など何でもないだろう」「……貴方は真理さんをナニにしたかったんですか ? 一流のスナイパー ? 車泥棒 ? それとも本当に妻でしたか ? 俺にはそう見えない。  彼女はいつも不満だった」「誤解だ。俺に何かあった時……一人でも逃げて行けるように仕込んだ。逃亡の為の技術だ」「馬鹿な……。それなら今、逃げられても文句は言えないでしょうね ? 」「今のあいつにそんなツテは無いさ」「……」 ルキのそばにはスミスと美果がニュース映像を遠目で観ながら立っていた。「M、警察無線で幹線道路でトラックの強奪があったとか……。他の参加者と見られます」「Rとか言う捜査官かカウンセラーの久岡か……どちらにせよ安直な選択だな。  さて、蛍はどう出るか……楽しみになってきたな」 □□□ 真っ赤に光る赤色灯の群れ。  久岡のマンションには既に警察車両がわんさかと押し寄せていた。  規制線のテープを潜り、鑑識が出入りしている。「何よ……。使えないわね」 真理は一度通り過ぎると、コンビニの駐車場に停車するとラ
last updateLast Updated : 2025-09-12
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40.奇襲

 蛍は暫くメッセージを送っていた手を休め、最初の総合病院近くまで戻っていた。「ここで行けルヨ」 椿希の紹介できた大学生程に見える痩せた男。 名を林と名乗った。「中庭に白い男がいる。そこに落として」「了解〜」 幌を開け、一台のドローンが空高く舞い上がる。「高っけぇ〜。全然見えねぇや」 椿希が空を見上げて目を細める。「普通に行ったら撃ち落とされマスからね。急降下させるんデスよ」 □□「…… ?? 」 スミスが無言でルキを小脇に抱える。 Mの背後にいる為気付かれないが、ジェームスは違った。「おい、どこへ行くっ !! 」 すぐに建物の中に入った三人を追おうとしたが、妙な音が耳に入り頭上を見上げる。「……なんだ ? この音……。  !! ドローン !! M !! 中へ !! 」「くそっ ! 」 間に合う距離ではなかった。 Mは大きく腕を広げると、純白のスーツで頭を覆う。防刃素材だ。多少のダメージは軽減されると踏んだ。 ジェームスは銃を構え、躊躇わず撃ち落とす。 その瞬間、その判断が間違いだった事に気付く。 ドローンは爆発などせず、白い煙と何か不審な粉を撒き散らしながら地面に墜落。着弾からすぐ、もう一度バフッと音を立てて停止した。「ペッ ! ゴホッ ! なんて奴だ…… ! 」「……やられたな。中に入るぞ。医者にナオキソンを用意させろ」「まさか…… ! フェンタニル !?  ……っ !! スミス !! くそ ! 奴ら知ってやがった !! 」「……ガフッ…… !! 」 Mが突然
last updateLast Updated : 2025-09-13
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