「続きまして ! 今春のベストヒット!!」 司会の男女が意気込む。 他者ゃとはかけ離れた華やかな衣装。花のように可憐で美しく、未発達ながら香しい女性たち 。 そのド真ん中にポジション取りする、一際顔立ちの整った少女。 彼女は来月からソロデビューが決まっている。このグループを卒業とするアイドルとしての最後の大舞台だった。 その後、新しいマネージャーに呼び出された彼女は純真無垢な瞳で挨拶を交わし、打ち合わせ用の会議室へ通された。「お、来月からフリーか」「はい ! よろしくお願いいたします ! 」 室内には顔見知りのスタッフが数人、少女の前に群がってきた。「フリーっ ! free bust 〜」「おい、こっち回せ。マネージャー ! 順番決めや ! でないと全員で喰うでよ ? 」 少女の足が凍りつく。 既に逃げ場は無いのだ。「せめて場所変えましょうよ」「あれやん。デビューシングル、ニューヨークで撮るんよな ? そん時でいいんじゃないかいね。全員集合で。海外のホテルなら時間もせかないくていいよなぁ ? 」 そのニューヨークのステージの後、少女が失踪する事をこの時は誰も想像していなかった。 □□□□「迎えに来てやったぞ、涼川 蛍 ! 」「しなモン……」「しなモンはやめたまえ。さぁ、これを飲め」 青い楕円形状の薬。「トリアゾラム……」「すまんな。俺も場所しか聞かされていない」 西湊駅。 ゲーム当日、蛍の指定された場所に来たのは椎名だった。 車の後部座席で、蛍はボンヤリとまだ暗い駅のホームを眺める。「……ボーっとしてきた」「寝るまで出発はしないからな」「……てっきりスミスさんが来るのかと……」
Last Updated : 2025-09-04 Read more