「ニューヨークのライブスタジオで歌ったことがあってね。その日、舞台裏でマネージャーが殺されたの。強盗が入って……わたしがステージで身に付けてた宝石が目当てだったそうよ。 事情聴取も英語がままならないし、四苦八苦でさぁ〜。やっと日本語の分かるお巡りさんが来たけど、強盗が来たって全然信じてくれなくて。マネージャーと仲が悪かったから余計に。わたしがギャングに殺しを依頼したんじゃないか〜とか、馬鹿な事を疑われてさ。 やっとこ宿泊してるホテルに戻れたんだけど、もうフラフラで……」「そこでMに ? 」「そう。エレベーターホールで『お嬢さん、大丈夫ですか ? 』って。わたしもスタッフと離れてて、食べてないし寝てないし一人だし、憔悴してたのね。話の流れで、顔も知らないその男に、めちゃくちゃ愚痴ったのよ〜ふふふ。 食事を奢って貰ったの。それがさ、とにかく凄くゴージャスだったの。でも、わたしもまだ子供だったのね。品なくガッツいちゃったのよねぇ ! あははっ ! 思い出すだけで恥ずかしいわ ! スタッフも警察から開放されて……その直後、わたしたちを取り調べてた分署に、盗まれた宝石と、強盗の生首が送られてきた……」「首…… ? 余計に疑われそうですけど…… ? 」「だよねー。 でも仲間を殺られたギャングも同じ。わたし達が強盗を探して殺した、と思ったんでしょうね。ギャングのリーダーの逆鱗に触れて、わたしは誘拐されたの」「……」「全て失ったと思った。女性としての何もかもが奪われると覚悟してね。 死体が出れば幸運。バラバラにされて捨てられるんだろうなって思った頃、鉄のドアを思い切り蹴り開ける足が、光と共に入ってきた……。白いスラックスに、長い足と革靴……今でも忘れない」「Mがギャングのとこに助けに来たの ? 自分で ? 」
Last Updated : 2025-07-25 Read more