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All Chapters of PSYCHO-w: Chapter 111 - Chapter 120

140 Chapters

21.登校日

 真理の家に来たミハイルは、湊市には留まらず都内のHOTELに宿をとっていた。  プライベートプールのそば、タオルを手にしたジェームスが立っていた。 ザバ……トプン……………。 ブロンドが静かに水面から出、再び沈む。  息が長く、やや潜水に近い這うような泳法。たまに水面へ浮き上がって来るが、大きな飛沫を上げることなく再び水底へ沈んでいくの繰り返しだ。 ミハイルはジェームスが待っている事に気付いてはいるが、勿論そんな事を露ほども気にしていない。  数十分し、ようやくプールから上がる。 ジェームスはタオルを差し出し、バスローブを手に取り渡す。「例の書類をお持ちしました。  お飲み物は如何ですか ? 」「いや、すぐ聞こう」「では……」 ジェームスは書類を手にすると、数枚ずつ手渡していく。「こちらが許可証と承諾書。それと各所根回し、用意は済んでいます。会場の見取り図をご覧になりますか ? 」「いや、有事の際はお前が俺を誘導してくれ」「勿論です。  ……ルキ様を御同席されるのですか ? 」 参加者名簿を見たジェームスが、なにか気まずそうにミハイルを見つめる。しかし、この優雅な化け烏はクスリと笑い飛ばすだけだった。「あいつには仕事を教える必要がある。あのままでは任せられないからな。  一つはゲームの残虐性。客が病みつきになるような狂気の宴。連中は今のルキ程度のイベントなら、自分でも主催ができる経済力を持っているんだぞ。問題は表に出ないことなのさ。自分が楽しめる立場で居たいお客だからな。  もう一つは一切の情を捨てる事だ。あの少年。……涼川  蛍……。確かに『異常者か』と聞かれれば、ふむ……異質なのだろうな。この日本と言う国に置いては余計に。  だが、ゲームではどれ程のものか……今までのものを見ていると、甚だ疑問だな。最もルキのイベントの難易度のせいもあるかもしれん俺が直に確かめる」「今のままでは、涼川  蛍に賭けるお客様の出資に難が出てくる、と ? 」
last updateLast Updated : 2025-08-19
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22.梅乃モドキ

 放課後。 蛍は一階図書室の窓から帰宅しようとしたが、身を乗り出したところで椿希に捕まった。「何よ。帰るつもりだったの ? 」 梅乃の演技を続ける椿希に蛍は諦めてカバンを押し付けると、窓から靴を落として汚れた靴下をパンパンと叩く。「はぁ〜〜〜…… お前、指導室に呼び出しされてたろ」「なんも詳細を話さない事に痺れを切らせて、教頭と医務室のおばちゃんに聞き取りされた」「なんて答えたの ? 」「気が向いて電車で帰ろうとしたら、誘拐された挙句に強姦されたってね」「無理すぎ。警察に言ったか裁判になるとか、執拗に聞かれそうだけど ? 」「面識のある大人で示談で済ませた。そういうシナリオで十分だったわ」「なんかお前、口が上手いのかなって思ってたけど……。 本当に詐欺グループのボスなんかやっていけんの ? そんな子供でも考えつく様な説明で事が済むなんて」「やめろよ〜。お、俺だってどうよって思うけど。現場では「ボスが出る幕無い」って言われて、実力無ければ「所詮梅乃様のお気に入りで担がれた」って言われる。禿げたらど〜しよ」「また素が出てる……。 で ? どこに行くんだ ? 」 駅に向かって歩き始めた二人だが、すぐに椿希の部下が車を横付けしてきた。「一応、梅乃様の生活だからね。車送迎だよ」「じゃあ、ちゃんと車に乗るまで演技しろよ……誰が見てるか分かんないのに」「うふふ」 椿希は後部座席に蛍を押し込むと、運転手に行き先を告げる。「ん〜。今日はどこだっけ。 新マリン公園の児童広場。そこまで行く」「かしこまりました」 □□□ 新マリン公園は北湊市の海岸に出来た公園で、小さな灯台がある。元は断崖絶壁の地形で、公園には不向きな危険な場所であったが、簡易的なゴルフ場と宿泊施設で海側を囲い、市街地へ続く傾斜を利用
last updateLast Updated : 2025-08-20
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23.咲良 結々花の災難

『至急  応援求む。湊市内にてWhite  crowの滞在を確認。一度は空港に向かったが、到着先の香港では確認出来ず。北湊市の内縁の妻の自宅に訪れた後、都内に潜伏。 一週間後の催しはWhite  crowが取り仕切る。 ルキの介入は無い。 咲良  結々花』『本部より通達。 ヒューミントの情報より、ルキが拘束された。ヒューミントと接触し、情報を共有せよ』「拘束 !? 」 パソコンを見た結々花は車の中で思わず声を上げる。「拘束…… ? け、警察じゃないわよね…… ?  プリペイド……プリ……あ〜もう間に合わない ! 」 車を出ると、目の前の男性に声をかけた。「すみません……仕事中どうしてもスマホの調子が悪くって……電話を貸して頂けませんか ? 」 相手はごく普通の農家の夫婦だった。蛍の監視をしているのだから商店街周辺にいるのだが、その場で借りずにノーマークである一般人に借りる。「あらら、そら災難だな。おーい、綾ちゃん、この人電話借りたいんだって〜」 土にまみれた長靴を履いた恰幅のいい女性がビニールハウスから出てくる。「うち、固定電話ないんだけど……良かったらわたしの使います ? 」「え !? いいんですか ?  すみません……営業で来てたんですが、こんな事になるなんてぇ〜」「あはは。大丈夫大丈夫。作業小屋用に持ってるやつだから何も入ってないし」 四十代程の夫婦だが商店街の裏通りは田畑が多い。加えて周辺住人の顔や人柄など調査は済んでいた。「わたしよ。どこかで会えない ?  ……コンテナ船 ? いいけど……分かったわ」
last updateLast Updated : 2025-08-21
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24.拉致

 朦朧とする蛍の細い身体を柔らかいベッドが包み込む。  まるで水の中に身を任せたように、どこまでもどこまでも沈む。 寝息を立てている蛍の側、スミスが曇る表情で小さな身体を見下ろしていた。「スミス。準備は出来たか ? 」 Mだ。「は、はい。ただいま終わりますので !」 スミスは蛍を覗き混むと、クタリと力無く広がっていた手を握り、身体の上に乗せる。(蛍さん……俺は信じてますよ) 緊張の中で、誘拐してきた蛍をスミスは最後の希望と言うように見つめた。 都内のホテルのMの部屋で、蛍は無防備に眠りこける。  そこへ今度は騒がしい集団が廊下を歩いてくるのが聞こえた。「ジェームズ。廊下を静かにさせなさい」「はい」 静かに、と言われても。  廊下の向こうからはギャーギャーと喚く真理の姿とそれを押さえ込もうとするMの部下、観念した様に歩くルキの姿があった。  真理はデニムにタンクトップ。自分の意思でMの元に来た訳ではないことは明白である。ルキに関しては話は出来るものの、胴体に固定された大幅のベルトが、後ろ手に拘束され痛々しいほど肩が張っていた。  ジェームズは廊下に出ると部屋に入るように促す。「Mの部屋です。落ち着いて……」「彼、ここにもホテルを持ってたの !? 」「いえ。今週だけ一部貸切に。本館は営業中ですよ」 ジェームズがルキと真理だけを部屋に通し、部下を捌けさせる。「スミスはエレベーターホールで待機してください。部外者が入らぬよう」「……了解」 真理はソファに沈んでいるMを睨みつける。「何よ……普通に呼んでくれれば自分で来るわよ ! どうして拉致なんか…… ! 」「真理、落ち着きなさい」 Mは鋭い瞳で真理に声をかける。その声色は一段と深く冷たい。「まず、ルキ。涼川  蛍に何を期待している ? 」「何を…… ? 」「今まで見つけてきた狂人達
last updateLast Updated : 2025-08-22
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25.仮面

 そもそも彼らの主催するイベントは刺激的な気晴らしではあるが、自宅で簡単に死人と逢える蛍にとって、何がなんでも必要という存在ではないのだ。その趣向は自宅外にも向き、ここ数年の犯行にも足がつくことは無い完全な連続犯。 故にMになど媚びる必要は無いのだ。「素っ気ない返事だが、期待は出来そうだな。次のゲームでは参加者内で順位付けをする。 どうかな。先に知ったんだ。優勢だろう ? 」「聞かなくてもよかったんですが……」「最後まで聞くんだ。 蛍、君が一位じゃなかったらルキを殺す」「……っ」「君はルキを殺したいんだろ ? その楽しみを、俺が奪うと言っているんだ」「……それは確かに困りますね」 蛍の中で、ルキを解体する意思は変わっていないのだ。この先もずっと。ルキを知れば知る程、その欲は強くなる一方だ。ルキもそれを知りながら、弄ぶように蛍とはギリギリの関係を築いている。「困りはしますけど……でも、そのルールで一番困るのはルキなんじゃないですか ? 」「ふふ。そうかもな。あと一人いるぞ」 蛍が負けたらルキが死ぬ。 このルールで他に誰が困るのか。「真理も参加させる。そして真理は一位以外認めん。賭けるのは真理自身の命だ」「ケイが一位になれば真理さんが死んで、真理さんが一位になればルキが死ぬ……」「ああ。そうだ。ここで今、作戦を立てても構わんぞ。存分に話し合ってくれ」 蛍は考える。これはパフォーマンスか ? Mはルキを跡継ぎとして育てて来たはずだ。それを簡単に殺してしまうとは ? 真理に関しては、そういう別れ方もあるかもしれないが、跡継ぎ問題。これだけがどうしてもはまらない。「ルキが死んで、なにか得があるんですか ?」「わたしにかい ? 君次第だが……どうだ ? 俺の元で殺しを商売にする気はないか ?  多少
last updateLast Updated : 2025-08-23
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26.戯れ

「ケイを見送りします。いいでしょ ? M」「ああ。勿論、先程言った通りだ。存分に話してくれ」 Mが快諾したことで、ルキと蛍が並んでエレベーターに乗る。「はぁ〜」「ふぅー。参るよねぇ。イタタ」 ルキは後ろ手で拘束されたまま、固まった肩を回す。「あんた大丈夫なのかよ」「大丈夫でしょ。殺す気があればもう死んでるし、Mは自らの手は汚さないよ」「……だから……。その演技必要ないだろ ? 」 ルキは小さく笑うと、尚首を振る。「心配してくれてるなら嬉しいかな。実は本当にガッチリ固定されてるよ」「なんだよ。いつもの腰の仕込み、飾りかよ」「こんな姿でいる俺を見せて、ケイの反応を伺いたかったんだろうね」「へぇ、悪趣味。でも、なんの意味もないな。あんたが死にかけだろうが俺は気にしないから」「普通の人間はそう考えないらしいよ。 俺がピンピンしててケイも平然としていたら、この暴力は真理さんや美果ちゃんに向くかもしれない。俺は今のところ、そんな事を望んでないからね」「それは……。美果に手を出したら許さないよ」「知ってるよ。ケイの秘密保持者だもんね俺はさ、美果ちゃんを優遇してるんだよ」「どうだか」 ルキは少し壁に持たれると、器用に車椅子用ボタンから中二階ホールへとボタンを押す。「一階じゃないの ? 」「ケイちょっと寄って行かない ? 」「え……車、待たせてるんだろ ? 」「どうせ運転手はスミスと椎名だよ。待たせればいい。ほら」 ルキに急かされ、すぐ近くの喫煙所へケイを押し込む。「臭っ !! 俺煙草とか吸わないんだけど ? 」 往々にして喫煙所とはガラスなどで外から見える様式が多い。この喫煙所も半分はガラス張りだ。「分かってるだろ ? 口にして欲しいのは煙草じゃ
last updateLast Updated : 2025-08-24
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27.エスケープ

「ふふー。イタ……肩痛かった〜」 ルキは満足げに蛍に抱きつくと、キツく抱きしめる。「ねぇケイ。Mのモノになるなんて許さないよ」「俺もMにお前を殺させる気は無いね。 ただ……」「真理さん ? へぇ。気にしてないのかと思った」 確かに蛍は真理に執着などない。だがまた、殺す意味も無いのだ。それも自分の手で無いのであれば余計無関心である。 一つ思うところがあるのは──「親父があの人の曲、好きなんだよな。 ……顔、母さんに似てるから……」「そう」 ルキから見る蛍は、恐らく負ける気は無い。しかしMの言う通り、真理も何かと教え込まれているのだ。ゲーム当日、真理に有利過ぎるルールでないといいのだが。「じゃあ、尚更今楽しまないとね。本当に最後になるかもだし」「そん時は諦めて死ねよ」「いや、殺させる気無いって言ったじゃん」「……うるさい。早くしろよ。このままじゃ帰れるか。ってか、時間経ちすぎ ! 本当、誰か探してるんじゃないの ? 」「あーまぁ。探してるかも……」 バボッ !!  その時、大きな音を立ててガラスドアが開く。「「うわっ !? 」」「ル、ルキ様 ! あ……」 間の悪い事を察したスミスはそのまま喫煙テーブルに肘を付くと頭を抱えた。「ち、違います違います !!  すみません……途中で足取りが途絶えるし、待っても待っても蛍さんが来ないのでパニックになって……」 蛍とルキの視線が合う。 こればかりは仕方がない。スミスは仕事をしているだけだ。「ごめんごめん。ちょっとケイに悪戯しちゃった」「こいつに襲われた。
last updateLast Updated : 2025-08-25
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28.Rからのリスト

 ルキと蛍が車に乗り込んだ頃。 美果と結々花はタクシーでコンテナ船へ到着していた。「大きいわね。どこに行けばいいのやら」 足取りの重い結々花より一度入った事のある美果の方が勘が働いた。「ルキのプライベートルームは ? あの場所よ」 そう言い、コンテナ船の上方を指す。「あそこが ? いいわ。行ってみましょう」 足を向けようとした瞬間、背後から聞き馴染んだ金属音が響く。 チキッ…… !  結々花は美果の腕を掴むと、足を止め、ゆっくりと手を上げる。「咲良  結々花…… !? 何故ここにいる !? 」 銃を構えて立っていたのは椎名だった。 片腕を未だ治療中で、片手でリボルバーを結々花に向けていた。「椎名さん……」 しくじった。 Rのミスである。 人格がRから椎名に戻ってしまっていた。「次のゲームの用意、山王寺グループには頼まないらしいわね」 それとなく躱さなければならないが、これがルキなら結々花がスパイである事に一度は目を瞑ったかもしれない。だが、この忠誠心の強い椎名という男は……。「今回はMの主催だからだ」「Mの !? ルキさんではなく !? 」「ええい、なんなんだ ! 何故ここに来たかを聞いている」「それがね……山王寺  椿希って子 ? あの子が「俺じゃ準備役ダメなんですか〜」って執拗いのよ。もしかしたらまたこのコンテナ船でやるかもしれないし、わたしがまず話をと思って来たのよ。 いきなり椿希くんを準備中の場所に連れて行くわけに行かないでしょう ? 」「そういう事か。山王寺は相変わらずがめつい奴だな」 椎名はようやく銃をおろす。 結々花と美果がホッと胸を撫で下ろす。「だが残念だな。今回は場所はここで
last updateLast Updated : 2025-09-01
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29.男子高校生の放課後

「けい〜。先生に怒られてたって ? 」 蛍がゆっくり振り返ると、ヘラヘラと野次馬に来た椿希が廊下に立っていた。 徹夜に遅刻。  その上、授業中の居眠りで教員からしっかり説教された蛍はヘトヘトになって鞄を取りに戻ってきた。「お前、今日は……女装は休みなの ? 」「俺と梅乃様同時には出れないじゃん。どっちか退学になっちゃう」「そうだけど……。てっきりずっとあの格好で通うのかと思ってた」 蛍が椿希のプリン頭を見上げる。  椿希は背後に回ると、蛍の両肩に手をかけ、そのまま教室に押し込んだ。「けい〜、あの姿に惚れちゃった ? すげぇ良さそうだったじゃん〜」「……」「怒るなよ。ちょっとジャれただけ」「完全な黒歴史。  だいたいお前の女装は性別を誤魔化してるだけだ。よく見ると梅乃とは髪質も違うし、身長も少しデカい。いつかバレるだろ」 椿希を睨みつけ自分の席に行くが、いつも机に下げておく鞄が無かった。「あれ…… ? 」「ねぇけい。今日、ちょっと予定あるんだよねぇ〜」 そう言うと、椿希は蛍の鞄を差し出した。「はい鞄。不用心だよ。中にヤバいの入ってんでしょ〜 ? 」「見たのか」「いや、見なくてもね。俺らみたいなのは、触ればぁ〜だいたい感触で分かるぅ」「流石犯罪者。でも俺は帰る。眠くて眠くて」「お互い様じゃん〜。なんでそんなに寝てないの ? 仕事 ? 」「……深夜、Mに呼び出された」「……。へぇ。  ……ん〜。それ俺に言っちゃ不味くねぇ ? 」「かもな。忘れろ」「ま。なにかあったら言ってよ。  さぁさぁ行こうぜ〜」「行かないって言ったろ。どこに行くんだよ ? 」「ほら。ペット葬の話しようぜ〜」「疲れてんだよ……」 そう言いながら、椿希におされて蛍は車に乗り込んだのだった。  到着したのは、前にも来た
last updateLast Updated : 2025-09-02
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30.お使いの子

「ま、ペット葬儀の方は無難に始めるか。 それでさぁ、けい。お願いがあるんだけど」「梅乃の遺骨か ?  悪いけどルキは今、Mに監視されてる状況。今朝まで一緒にいたけど、すぐにジェームスってのが迎えに来てた」「あのMの側にいる男かぁ。 って、何 ? けい、ルキさんとイチャイチャしてて寝てないの ? バカで〜それで居眠り ? 」「……。 梅乃のことは、ルキよりもスミスさんとかの方が知ってるんじゃないの ? 」「なんで ? 」 始末をしたのがルキの部下たちだからなのだが……何故かこの時、蛍は椎名を引き合いに出さなかった。「Mのゲームでやるんだろ ? けい、大丈夫 ? 」「俺よりルキがやばいかもね」「えっ !? マジ !!? 」「……」 蛍から返答はない。 椿希は蛍がどこか疲弊しているように見えるのは寝不足などではなく、次のゲームやルキに対しての不安なのではと理解した。「……ん〜。けいが勝てば全てOK ? 」 そうなれば真理が死ぬ。しかし、蛍にとって今気がかりなのは何なのか、自分でも分からない。 真理が死ぬと言うルールも気に入らないのだ。「けい、まさか自分が犠牲に……あ、ごめんそりゃ無いか ! 」「それ、わざと言ったろ」「うん☆」 そこへ芝生を歩くサカサカと言う音が近付いてきた。 蛍と椿希が振り返ると以前もここに来た女児が立っていた。「どうしたの ? 」 椿希が声をかけた。 子供は下を向いたまま答えない。蛍も椿希も気付いている。この子供は虐待を受けている。臭う服、見え隠れする痣。「アイスクリームを……」「預かってるものはある ? 」 椿希が金を要求する。しかし、前回巨額を
last updateLast Updated : 2025-09-03
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