真理の家に来たミハイルは、湊市には留まらず都内のHOTELに宿をとっていた。 プライベートプールのそば、タオルを手にしたジェームスが立っていた。 ザバ……トプン……………。 ブロンドが静かに水面から出、再び沈む。 息が長く、やや潜水に近い這うような泳法。たまに水面へ浮き上がって来るが、大きな飛沫を上げることなく再び水底へ沈んでいくの繰り返しだ。 ミハイルはジェームスが待っている事に気付いてはいるが、勿論そんな事を露ほども気にしていない。 数十分し、ようやくプールから上がる。 ジェームスはタオルを差し出し、バスローブを手に取り渡す。「例の書類をお持ちしました。 お飲み物は如何ですか ? 」「いや、すぐ聞こう」「では……」 ジェームスは書類を手にすると、数枚ずつ手渡していく。「こちらが許可証と承諾書。それと各所根回し、用意は済んでいます。会場の見取り図をご覧になりますか ? 」「いや、有事の際はお前が俺を誘導してくれ」「勿論です。 ……ルキ様を御同席されるのですか ? 」 参加者名簿を見たジェームスが、なにか気まずそうにミハイルを見つめる。しかし、この優雅な化け烏はクスリと笑い飛ばすだけだった。「あいつには仕事を教える必要がある。あのままでは任せられないからな。 一つはゲームの残虐性。客が病みつきになるような狂気の宴。連中は今のルキ程度のイベントなら、自分でも主催ができる経済力を持っているんだぞ。問題は表に出ないことなのさ。自分が楽しめる立場で居たいお客だからな。 もう一つは一切の情を捨てる事だ。あの少年。……涼川 蛍……。確かに『異常者か』と聞かれれば、ふむ……異質なのだろうな。この日本と言う国に置いては余計に。 だが、ゲームではどれ程のものか……今までのものを見ていると、甚だ疑問だな。最もルキのイベントの難易度のせいもあるかもしれん俺が直に確かめる」「今のままでは、涼川 蛍に賭けるお客様の出資に難が出てくる、と ? 」
Last Updated : 2025-08-19 Read more