Semua Bab 【完結】婚活アプリで始まる危険な恋 ~シンデレラは謎深き王に溺愛される~: Bab 61 - Bab 70

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第8話・謎深き王の秘密 その5

 それから部屋を出て、この前連れて来てくれた同じホテルにやって来た。玄さんに案内されたのは蓮見リゾートホテルで、例のTakaさんと食事に行ったホテルだ。「あの…ここって高いホテルなんじゃ……」「気にしないでくれ。ここのオーナーと知り合いだから、格安で部屋を借りれることになったんだ。前回の時もそうだから、宿泊費用とか、そういうのは気にしなくていいよ」 でもこのホテルは一般のホテルとは違う。リゾートホテルだから、一泊十万円はくだらない。そんなホテルに幾ら空き部屋があるからと言って、格安でも相当な金額になると思う。「玄さん、そこまで頼れないよ。私、カプセルホテルで十分だし、せめてビジネスホテルで…自分のことだし、お金もちゃんと返したいから」「眞子」 私を諭すように玄さんが言った。「君は被害者なんだ。今は迷惑とか考えず、お金のことなんか気にしなくていい。けれど遠慮がちな君のことだ。滞在期間は引っ越し先が見つかるまでにしよう。なるべく早く見つける。これならいいだろう?」「うん…」 すぐに見つかるのかな。「それにここは俺の店に近いから、なにかと便利なんだ。だから店が終わったら会えるし、俺も助かる」「玄さんのお店ってこのホテルから近いの?」「ああ」 彼が近くにいる――不鮮明だった実態に少し近づいた気がした。「じゃあ玄さんの経営しているお店って、この辺りの飲食店なの?」「そうだ」「――!」 玄さんは嘘は言わないと言っていた。当てたらきちんと教えるって。  もっと近づきたい。一体どんなお店を経営しているの?「じゃあ、どんなお店か言ったら答えてくれる?」「いいよ。でも今日はタイムアップ。夜から店があるから。だからもう帰る。あと、今日は夜に予定があるから、また明日会いに来る。それでもいい?」「ええ。ありがとう」「今日は多分電話できないと思う。予約がいっぱい入っているんだ。店も遅くなるし」「そうなの。ごめんなさい、時間を取らせてしまって。もう行って」「…俺に居て欲しい?」「なにを言ってるの。お仕事行かなきゃダメだよ。玄さんのお店、折角お客様来てくれるようになったんだから、玄さんがいなくてどうするの。ちゃんと行って」「…眞子のそういうトコ、好き」 ちゅっ、と私の頬に口づけして、玄さんはまた明日来るから、と言い残して行ってしまった。  天然
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-13
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第8話・謎深き王の秘密 その6

 下着を買いに行くって本気だったんだ。 私が黙ってしまったので玄さんが呼びかけてきた。『眞子?』「えーっと…混乱してる」『そんなことで混乱するなんて、眞子は可愛いな』 そんなことじゃないよ!「玄さん。私にとっては一大事なんだけど」『それは大変だ。ますます手伝わなければ。さあ、待ち合わせはホテルを出た所にしよう。夕方なら時間取れるから、四時くらいはどう?』 時計を見ると昼前だった。夜中眠れなくて朝方に就寝したからまだぼんやりする。でも、デートするなら準備は必要だ。でも――「後日じゃダメ?」「下着が無いと困るだろう。それとも俺とのデートは嫌?」「そういうわけじゃないけど…」「じゃあ、いいよね。デートしよう」 こちらに断わる選択肢は無いらしい。王様は時に強引だ。「わかったわ。待ち合わせ時間は、玄さんが言う四時にしてもいい?」 しょうがないのでこちらが折れた。『了解。迎えに行くよ、お姫様』 こうして今日も玄さんとデートすることになった。  のんびり準備をしているとあっという間に四時近くになり、私は遅れないように十分前に玄関前に立った。すると玄さんはもう既に到着していて、私の姿を見つけるなり、手を振ってくれた。「いつ来たの?」「さっき着いたところ。眞子に一目でも早く会いたかったから」 この人は、本当にどういうつもりで私に甘い台詞をくれるのだろう。三か月後にちゃんと聞こうと思った。「どこに買い物へ行く?」「えっと…」 最近仕事が忙しくて下着を買いに行く暇なんてなかったから、全部通販で済ませていた。突然下着を買いに行こうと言われても、なにも思いつかない。「デパートなら売っているだろうから、デパートでいい?」「デパートは値段が高いよ」「大丈夫。俺の好みを買うんだから、スポンサーは俺」「そんな…ホテルもお金出してもらっているのに、下着まで買ってもらうなんて悪いよ」「悪いなんて思わなくていいから。遠慮しなくてもいいだろ、恋人だし」 遠慮するよぉー! というわけで、近くのデパートの下着売り場コーナーへやって来た。女性用のブラジャーやショーツの売り場に、私が一緒とはいえ平然と居られる玄さんの神経を疑う。「俺、セクシーな方が好き」 しかも好みまでちゃっかり言ってくる始末!「紫色って結構いいと思わないか?」 棚から派手な紫色の
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第8話・謎深き王の秘密 その7

 玄さんの胸に顔を埋めると深くて穏やかな鼓動が耳元に響いた。大きな手が私の背中を優しく撫でて、安心するような温もりがじわじわと体の芯に染みてくる。「……落ち着く」 ぽつりとこぼした言葉に彼は「よかった」とだけ言って、私をさらにぎゅっと強く抱きしめてくれた。 それだけで、涙が出そうになった。 誰かにこんな風になにも言わなくても包み込まれる感覚なんて、もう忘れていた。 玄さんの手が、そっと髪を撫でて頬をなぞる。「眞子……本当に、可愛い。壊れものみたいに繊細だから、ほんとうは今、触れちゃいけないってわかっているのに…」 まっすぐ彼が私を射抜く。 「眞子…」 彼の声は低くて、柔らかくて、心を溶かす蜜みたいだった。 唇が近づく。 自然と目を閉じた。触れたのはほんの一瞬のくちづけ――と思ったのに、玄さんの唇はすぐには離れなかった。静かに、けれど確かに私の唇を愛おしむように吸ってくる。深く、優しく、心まで吸い取られるようなキスだった。 ――ああ、もうだめだ。 唇が離れると、私の肩に落ちていた玄さんの手が、そっと腕を伝いながら指先で撫でるように滑っていく。「ごめん、止められない…嫌だったら俺を突き飛ばして止めてくれ……」 息を飲んだ。そんなことできないよ、と思わずつぶやいた。 それが答えだった。 彼はもう一度、私の唇に深く口づけてきた。さっきよりも熱を帯びていて、私は自然と彼の首に腕を回していた。 シャツの隙間から滑り込んだ手が、私の背中を包み込む。 玄さんの手は丁寧に、でもためらいなく私のワンピースのジッパーをゆっくりと引き下ろしていく。。まるで宝物を扱うように。「怖くない? 嫌だったら言って。すぐやめるから」 囁かれた声に私はそっと目を開けた。玄さんが私を見つめている。その瞳に、偽りのない優しさと熱が宿っていた。 この人になら、身を委ねてもいい。たとえ騙されていたとしても、後悔しない。 そう思った。 彼の手が私の腰に回る。ゆっくりと自然に、ふたりの距離はもう測る必要もなくなった。  下着の上から肌に触れた指先は、優しく、けれど確実に私の輪郭をなぞっていた。「……眞子」 玄さんが名前を呼ぶその声は、いつもよりずっと低くて、熱を帯びている。  喉の奥でくぐもるように発されたその響きに、身体がきゅっと反応する。 私はそ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-14
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第8話・謎深き王の秘密 その8

 「あっ…!」  内ももを撫で上げられ、左胸に食らいつかれた。柔らかな舌でたっぷりと愛される。ぞくぞくと快楽が背中を駆け上がってくる感覚に、はしたない声が勝手に漏れ出る。「あっ、は…ぁ、玄さんっ…」 背筋がぞくぞくとして、思わず身をよじる。でも彼はそれを許してくれない。やや強引に脚を割り開かせ、その間に滑り込む。全身を攻められ、卑猥な歌声と共に蜜が体中から溢れ出す。こんなに愛撫で感じたのは初めて。男性経験は今までに少しはあるけれど、こんなに啼かされたことはない。すべて、初めての経験。  意地悪なのか優しいのか、どちらとも取れる彼の指の動きにただ翻弄されている。 「あ、玄さ…っ、ぁ、あ、それっ…だ…め……」  愛芽をいたぶられ、さらにはしたない声が漏れる。快楽の階段を駆け上ろうとする体を、私は止める術を知らない。もっと、もっと、と、溺れてしまう。 「眞子、かわいい」「やっ、言わないで…玄さんっ…」  迫りくる絶頂の波には抗えず、私は派手な嬌声を上げて達した。どく、どく、とお腹の中に溜まった熱が放出され、蜜となって腿から溢れ出る。茂みの奥の小さな泉は、愛液でいっぱいだ。これ以上となればすべて溢れてしまう。それだけ、彼の愛撫に感じた。 生理的に浮かんだ涙をそっと拭ってくれて、玄さんは私に深く口づけてくれた。ぬるりとした舌が口腔内を蹂躙するごとに、唾液が唇の端から漏れる。 彼はいつの間にか薄膜を装着し、滾る欲望を私に当て込んだ。中にゆっくりと沈んでくる。  異物感とともに体がぎゅっと収縮して、反射的に眉をひそめた。私が男性経験があったのも、ずいぶん前の話だから、セカンドバージンと言っても過言ではない。 みっちりと隙間なく差し込まれた欲に圧迫され、苦渋とも取れる声を上げた。 お腹の中に入った、その奥にある熱がすごい。「……ごめん、痛いか?」 彼の
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-14
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第8話・謎深き王の秘密 その9

 ※ 「えー。という事は、先輩っ。カード王と、とうとう一線を越えられたのですね!」「理世ちゃんっ。ちょっと、声大きい」「す、すみません」 玄さんと夢のような時間を過ごした翌日。ここはさくら幼稚園。勤務開始前に理世ちゃんにつかまり、昨日の報告をさせられた所だ。以前、仮ホテル住まいがあったことや、ストーカー被害で悩まされていることも彼女は知っているので、話が早い。「身も心も彼のものなんて、わあー、ロマンティック!」 声は抑えてくれたものの、彼女の興奮は醒めない。「でもね、玄さんってまだ素性がわからないんだよ。不安になる」「三か月後に正体解るなら、あまり気にしない方がいいんじゃないでしょうか」「でも…」「じゃあ、どうしてエッチしちゃったんですか」「エッ…!」 身もふたもない言い方で私の方が焦る。「眞子先輩がいいって思ったから心だけじゃなく、体も繋がりたいって思ったんじゃないですか? だったら怖がらずに時が来るのを待ちましょうよ」 理世ちゃんの正論はごもっともだった。「そうだね。信じるしかないよね」「まあでも、ロマンス詐欺とかもありますからねー。気を付けないといけない面もありますよね」 信じろと言ったり、疑えと言ったり、実の所どっちなのよ。  「まあ、なにせよ進展があって良かったです。とりあえずカード王はお金持ちっぽいので、ロマンス詐欺のセンは少ないと思いますけど」「お金持ち…なのかな。やっぱり」「だって私たちにリゾートホテルの経営者が知り合いにいます?」「うん。いないね」「じゃあ、やっぱりカード王はそっちの部類の人種ですよ」 そっちの部類――つまり、お金持ちだということ。なら猶更わからない。私みたいな庶民の幼稚園教員なんか、彼の付き合う対象にならないと思うんだけど。  だからロマンス詐欺の部類はない…かな? そう思ってもいいよね?「あとは、お金持ち同士で、ド素人をオトす鬼畜ゲームをしているとか」「鬼畜ゲーム…」 私みたいな庶民を相手にするのであれば、一番ありえそうな話に思えた。「その気にさせて、好きにさせて、マックスの所でポイ」 自分のからだ中から血の気が引くのを感じた。「わ。先輩。冗談ですから! 冗談!」 とてつもなく青い顔をして今にも倒れそうな私を理世ちゃんが必死に慰めてくれた。  もうすぐ秋の音楽会
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-15
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第8話・謎深き王の秘密 その10

 足立区の幼稚園合同で行われる音楽会の季節がやってきた。通常冬の一月に行うのが毎年恒例だけれども、来年は区の行事で使われることになった影響で、今年だけ九月に発表会を行うことになった。  本当なら九月の末に運動会、十月に秋の遠足、十一月に演劇発表会、十二月にクリスマス会と、夏休みを明けると途端に行事が目白押しで忙しくなる。  音楽会が九月末に行われることになったため、それ以降を繰り下げて十月が運動会、十一月が演劇発表会、という行事変更を行った。 今年度はイレギュラーなので、練習や準備不足もあって土日も幼稚園で自主練習。来れる人だけ来て欲しい、というスタンスで私も指導の協力に幼稚園に向かった。  連勤になるのは仕方ないし、別にそれは構わないんだけれど。 今回、羽鳥誠也君の配置が気に入らないと、なんどもお母さんから苦情が来ている。つっぱねているけれど、毎日毎日電話がかかってくるのでうんざりだ。  誠也君は結構背が高いから、バランスもあって後ろの段に並んでもらっている。一番前のセンターに聖也君を持ってこい、とお母さんからの要求が尽きない。  何度できないと言っても、しつこく訴えてくるそのパワー。ある意味スゴイと思う。  そんな状態の時だった。不意に玄さんの秘密に触れることになったのは。 日曜日。練習後の幼稚園からホテルへと戻っている最中、人ごみを縫うように走っている子供が見えた。美しい栗色のツインテールには見覚えがある。ちらりと見えた横顔で、やっぱりと確信した。  前を走っているのは、私が助けたマリエちゃんだ。以前迷子になっていたところで会ったかわいい女の子。Mのアルファベットのストラップをくれたあの子だ。 今日はずいぶんおめかしをしている。ご両親とお出かけなのかな?  あの迷子の時は、パパやママと言いながらずっと泣いていたけれど、今日はお母さんも一緒なのかな。 声をかけようかと思ったけれど止めておいた。急に私が声をかけたりすると驚かせるだろうし、マリエちゃんは私のことを覚えていないかもしれない。見知らぬ人からの好意は時に恐怖を誘発してしまう。Takaさんからストーカー被害を受けた私だから、わかる恐怖だった。 嬉しそうに駆けていくマリエちゃんを後ろから眺めていた。  泣いていないから、今日は迷子ではなさそうだ。良かった。元気でいてくれて。 と
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-15
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第9話・謎深き王の正体 その1

 あれからどこをどうしたのか覚えていない。なんとなくホテルには帰れなくて、気が付くと私の事情を知っている理世ちゃんの下を訪ねていた。「あっ、先輩。今日は練習お疲れ様でした。子供たち、歌がだんだん上手になっていますね!」 屈託のない理世ちゃんの笑顔を見て、私の涙腺は崩壊してしまった。とめどなく溢れる涙をぬぐうことも出来ず、玄関先で立ち尽くした。理世ちゃんに、入って下さい、と優しく肩を抱かれて部屋の中に案内して貰った。  冷たい麦茶を出してくれたので、それを飲んでゆっくりと喉を潤した。持ってきたハンドタオルは、すでに自分の涙でしっとり濡れていた。沢山泣いたのだとタオルの湿り具合が物語っていた。「どうされました? カード王と何かありましたか?」 カード王と聞いて玄さんを思い出し、また涙が溢れた。「お、押しかけてごめんね」「構いません。今日は予定もなかったので、ゆっくりして行ってください」「ありがとう。ちょっと落ち着いたから、話を聞いてくれる?」「はい。なんでも聞きますよ」「実は…カード王がね、理世ちゃんの言うとおりだった。私、鬼畜ゲームのカモだったのよ」「――!」 息をのみ、そんなまさかと焦りの色を滲ませる彼女。「玄さんね、既婚者……だったの」 それが玄さんの秘密だった。だから言えなかったんだと、また熱い涙が溢れてくる。「あ、あのね…玄さんには、こ、子供がいて。その子、パパって言いながら彼に向って、それで――」 先ほど見た景色の一部始終を話した。理世ちゃんは重いため息をついて、辛かったですね、と肩を抱いてくれた。二人掛けのソファーに並んで座り、理世ちゃんはぽろぽろと涙を零す私に寄り添ってくれた。「一旦、カード王のことを整理しましょう」 理世ちゃんは怒ったように言った。「先輩に確認ですが、カード王は先輩に独身だと言っていましたか? そこ、重要だと思います」「ええと…付き合おうって言われた時、私にはフリーかどうか聞いてきたけれど…」そういえば彼が一言でも『独身』だと言ったかどうか、記憶になかった。「…ごめん。彼が独身って言っていたかどうかはわからない。本名も住んでいる所も知らないし…。なんか、こうして言葉にすると、騙されて当たり前だよね…ほんと、バカだったよ。婚活アプリに登録する人は、みんな無条件で独身だと思っていたし」「そうですっ。こ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-16
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第9話・謎深き王の正体 その2

 私は玄さんにメッセージを打ち込んだ。 ――幼稚園で歌の練習が連日続いて、忙しくなるからしばらく会えなくなっちゃう。ごめんね。  玄さん、今までありがとう。  向こうはカモだったかもしれない。庶民が珍しくて、遊び相手にするにはちょうどいいと、そんな気持ちだったのかもしれない。  でも、玄さんは私が大変だった時、何度も手を差し伸べてくれた。  助けてもらったのは事実だもの。 知らなかったから仕方ないという言い訳は通用しないかもしれないけれど、罵って終わりにはしたくなかった。さよならって言うのも変かと思って、敢えて『ありがとう』でメッセージは終わらせた。そしてそのまま、彼の連絡先を削除した。「押しかけてごめんね、理世ちゃん」「先輩…本当に大丈夫ですか?」「うん。彼とはもう別れるし、今から携帯、変えに行ってくる」「え! 今からですか!」「決意が揺らいじゃう前に、やらなきゃ。既婚者とは付き合えないよ。だからもう終わりにする。もうこれ以上、あの人を諦められなくなっちゃう前に、スパッと!」「…先輩」 涙を零す私を見て、理世ちゃんも一緒に泣いてくれた。彼女のおかげで救われた。 二人で沢山泣いて、少し気持ちが落ち着いた。理世ちゃんに手厚くお礼を言って、私は彼女の部屋を後にした。  そのまま近くの携帯ショップへ行った。Takaさんに携帯を壊されてしまったから、電話番号はそのままで、新しい機種に変えたばかりだったけれど――しかも玄さんが払ってくれたし――格安スマートフォンに乗り換えた。  電話番号やメールアドレスは一新し、家族と親しい仲の人たちにだけ、連絡を入れた。 SNSはもう絶対にやらない。だから機種変更する前、アカウントもついでに削除した。店員に頼めば、難なくやってもらえるので助かる。これで私と玄さんを繋ぐものはなにもなくなった。  唯一繋がっていたアプリも既に退会しているし、後は最後に玄さんが部屋を取ってくれたホテルへ行って、荷物を回収しよう。  玄さんが仕事と思われる時間に戻る方がいいよね。  はち合わせはしたくない。 スマートフォンの新規登録に思いのほか時間がかかったので、そのままホテルへ戻った。受付で玄さんが来ていないか尋ね、彼が訪れていないと聞いて安心する。  チェックアウトはしておいた方がいいのかな。でもそうすると、すぐにホ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-16
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第9話・謎深き王の正体 その3

 私は適当なビジネスホテルに一旦非難して身を落ち着けた。音楽会が終わったら家族に手伝ってもらって引っ越しの手続きを取ろう。できるだけ早急に。  でも…まだ引っ越す場所が決まっていないんだ。面倒な作業をしなくちゃいけないことを思い出して、また憂鬱になる。 あと、自分の部屋に荷物を取りに戻る時は、誰かと一緒に行くようにしよう。今日もニュースで見た。ストーカー被害に遭った女性が、交際していた男性に刺されて死亡したという悲惨なニュース。  つきまとわれる私たち被害者の方に、一切の落ち度はない。それなのに、身勝手な理由から殺されてしまう。私も玄さんが来てくれなかったらTakaさんに殺されていたかもしれない。 ――どんな、事情があったのかな。  玄さんのことを思い出すと、胸が苦しくなった。  そうだ。私は臆病者。  色んなことがありすぎて、騙されて、傷つけられて、結局玄さんを信じきれなくて、彼の秘密を聞く前に逃げてしまった。 ――信じきれなくてごめんなさい。  でも、私に気を掛けてくれたのは、きっとマリエちゃんを助けた恩人だからという思惑があったというのは間違いないだろう。  だからホルモン代金を支払った時、玄さんはやたらとストラップを気にしたんだ。Mの文字が付いた、かわいらしい子供の手造りストラップを。娘が作ったものだと、その時気づいたんだろう。 彼が私に優しくしてくれたのは、娘の恩人だから。  こちらの事は全て承知の上で、自分の事は黙っていた。「疲れちゃった…」 狭いホテルのベッドに身を投げ出して目を閉じた。今日自分でお金を払って借りた部屋のベッドは固く、昨日まで眠っていたふかふかのベットとは違う。私は庶民に戻ったのだと実感した。 ※ 今週はビジネスホテル暮らしでしのぎ、土曜日の朝早くにスーツを自宅へ取りに戻った。久々に入る自宅はやはり怖く、郵便受けは見ていない。DMや請求書系が入っているかもしれないけれど、とても取り出す気にはなれず、明日、家族に頼んで同席してもらいながら引っ越しの準備を進めていこうと思う。「お兄ちゃん、絶対電話切らないでね!!」『大丈夫だって。万が一の時は大家さんと警察にちゃんと連絡するから』「ありがとう」 新しいスマートフォンで、新しい番号で、ストーカー被害に遭ったという事情を承知している兄に電話をかけながら自宅
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-16
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第9話・謎深き王の正体 その4

 会場に何とか到着した。すぐ兄に電話して、今日は音楽会が終わったら迎えに来てもらう約束を取り付けた。とにかく今はTakaさんが現れないか、それだけが気がかり。怖くて怖くて仕方ない。  以前、どうやって乗り越えたのかと考えたら、玄さんが私を支えてくれていたのだと思い出した。彼がずっと私の傍にいてくれた。 素性はわからなかったけれど、私に対しては誠実な人だった。  嘘をつくような人じゃなかった。  今ならきっとなにか事情があったのかと――もしかするとシングルパパだったのかもしれないし――心からそう思えるのに。 でも、アプリで出会ったI.Nさんは既婚者だったし、ゆうた君の元彼女からはSNSの付きまとい被害にあって怖い思いをしたし、羽鳥さんの事やTakaさんの事――思考回路はぐちゃぐちゃにもつれたままで、信じきれなくて、繋いでくれた手を自分から離してしまったのだ。 なんて馬鹿なことをしてしまったのだろうと、後悔しても、もう遅い。「先輩、どうしたんですか!」 ひどく青ざめ、倒れそうな私を見つけた理世ちゃんが駆け寄ってくれた。「大丈夫ですか? 顔色悪いですよ」「あ…実は、この前被害にあった…ス、ストーカーがまた、家の近くに…現れて……っ」 話しているだけでも辛くなってくる。涙がこぼれそうだ。「こっちへ行きましょう」 人気のない方へ理世ちゃんが連れて行ってくれた。ホール独特の待合椅子に腰を下ろすと、堪えきれなかった涙が一滴零れた。「怖かったですね。ここは大勢いますから、大丈夫ですよ」「うん、ありがとう…ごめんね、今日は大変な日なのに、私の事で手を取らせちゃって……」「いえ、大丈夫です! 先輩、私もついているので、不安に思う事はありませんよ。子供たちが先輩を待っています。頑張って乗り切りましょう!」 理世ちゃんの優しい励ましが心に沁みる。気持ちを奮い立たせようとしたその時だった。清川先生っ、という鋭い金切り声がした。――羽鳥さんだ。 「清川先生っ」 彼女は周りの注目などお構いなしに私に詰め寄って来た。  理世ちゃんが私を庇うように、羽鳥さんの前に立ちふさがる。「お話なら私が聞きますが、急ぎの用件ですか?」「あったりまえでしょおおおお―――! 鮫島先生には用事ないのっ! 清川先生、あれだけ聖也の順番変えてってお願いしたのにいいいい! どーして
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-17
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