Semua Bab 【完結】婚活アプリで始まる危険な恋 ~シンデレラは謎深き王に溺愛される~: Bab 51 - Bab 60

84 Bab

第7話・シンデレラの危機 その2

 この情景が目の前で行われている事が現実に思えなくて息を呑んだ。  なぜ、どうして、と頭が真っ白になる。  開けられた扉はきちんとかけておいたドアチェーンに阻まれ、全開になる事は無かった。そのため、ひとまず安堵できた。ほっとしたら涙が滲んでくるが問題が解決したわけではない。「あーあー、ドアチェーンなんか掛けちゃって」 Takaさんはやれやれ、という顔をほんの少し開いた扉の向こうで見せた。「あ…Takaさん、なんで……どうしてっ、わ、わたし、の家の鍵っ……!」「なああーんだ、そんなこと? 簡単だよ、合鍵を作ったんだ」 ニタぁ、と歪んだ笑みが扉の向こうに見える。気持ち悪い笑みは更に恐怖を煽った。「最近は便利だよね。カギの救急車とかサービス満点な会社がいっぱいあるからさ」「か、勝手に…そんなことしてっ、は、犯罪だからっ!」  更に声がうわずる。もう怖い。 どうしよう、どうしよう、誰か助けて――! 「犯罪じゃないよ。僕たちもう付き合っているじゃないか。それなのに複数の男と浮気したりして、眞子は酷い女だよ。僕の運命の彼女がビッチだなんてマジで赦せないな。――でもね、僕は心が広いから、赦してあげるよ。魔が差すこともあるよね。だから話し合おう。ここを開けて?」 あまりの恐怖に声が出ない。ただ激しく首を振った。スマートフォンを操作したくても、指が氷漬けになったみたいにぴくりとも動かせない。「あ、そ。知ってた? ドアチェーンなんてクソの役にも立たないんだよ、眞子」 Takaさんは大型のチェーンカッターを持参していたようで、数センチ開いたドアの隙間からカッターを器用に入れ、いとも容易くチェーンを切ってしまった。 「っ…!!」  目の前で無残に切られたチェーンが、途中からだらしなく垂れ下がった。私を守ってくれる小さなチェーンはいとも簡単に壊され、惨めな姿を晒している。「念のために持ってきておいて良かったよ。優しく言っ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-08
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第7話・シンデレラの危機 その3

  「もうこれで安心だよ。眞子を誘惑する悪い男たちは断ち切ったから。僕たちの仲を引き裂く悪い奴は、ぜーんぶ排除してあげるからね」「いやっ…! こ、来ないでっ……」 恐怖で引きつる。抵抗さえできず、Takaさんから逃げるように後ずさりするのが精いっぱいだ。「来ないでなんて酷いこと言うなよ! 僕以外の男とは関係を持てるくせに!」「ち、ちがっ、っ……!」 言葉にならなくて必死に左右に首を振った。「じゃあこれはなに?」 Takaさんが自分のスマートフォンを操作し、写真を見せつけてきた。  先程のキャンピングカーで交わした、玄さんとのキスシーンがそこに収められている。「な、ん、で…っ……!」 盗撮されていたんだと気づいた。Takaさんは一体、なにが目的なの?「綺麗に撮れているでしょ? もうすぐ眞子が帰って来ると思って外で待っていたんだよ。今日はやっと眞子の家に入ることに成功したから、ずっとここで過ごしていたんだけど、サプライズで外で待っていたらこんなシーンに遭遇してさ。いやぁ、怒りを抑えるのに苦労したよぉ」「ひっ…!」 嗚咽が漏れる。留守中自宅にずっと侵入されていたなんて……!  考えただけで恐怖が全身を貫く。毛穴中が開き、ぞわっと鳥肌が立っている。  あまりの気持ち悪さに眩暈がして吐きそうになった。 「眞子はどうして僕を裏切ったりするの? こんなことをしても僕の君への愛は変わらないよ? もうこんなことをするのは止めようね」 ニタニタしながら言うTakaさんが怖くて後ずさりしていると、いつの間にかリビングまで後退していて、そこに置いてある小さなソファーにぶつかってバランスを崩した。はずみでその上に置いていたハンドバックが倒れ、バラバラと中身がこぼれ出た。証拠用に持ち歩くため、中に入れっぱなしにしていた封の切った状態の白い封筒も一緒に落ちた。「あ、これ、読んでくれたんだね。良かった」猟奇的と言えるような笑みを浮かべながら、Takaさんが落ちた封筒を拾い上げた。 えっ…?
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第7話・シンデレラの危機 その4

  「なんで? どうして眞子は僕の言うことが聞けないの! 僕が提案しているんだからさぁ、素敵って言えよッ!!」 今まで温和だったTakaさんの態度が一変し、激昂した。「君は僕の運命の彼女なんだ! 僕と食事もして楽しい時間を共有しただろう! だからもう僕たちは結ばれる運命なんだっ! それなのに他に男を沢山作って遊び歩いて、僕がどんなに傷ついたと思う? ねえ、解るかなあっ!?」 大声で怒鳴られて身体がすくんだ。  怒鳴り散らす男の人は初めてだから、どう対応していいのか全然わからない。  逆らったらさっきのスマートフォンみたいに壁に叩きつけられちゃうの? 怖いよ、誰か助けて…。 玄さん――  涙が止まらなくなってしくしく泣いた。「おっと、ちょっとキツく言い過ぎたね。でも泣いてもダメだよ。ちゃんと僕との愛を誓うまで、赦さないから」 Takaさんに詰め寄られていると、ピンポーン、ピンポーン、と再びインターフォンが鳴った。  もしかして、お兄ちゃんが呼んでくれた警察――? 『警察です! すごい声が聞こえていますけど、大丈夫ですか!?』  どんどんどん、と外から連続で扉を叩く音がした。  お兄ちゃん! ちゃんと警察呼んでくれたんだ…。  危うく腰からくだけそうになったけれどここで倒れるわけにはいかない。なんとかしないと!「チッ。面倒だな」 大丈夫ですか、開けて下さい、と、どんどんどん、という扉を叩く音が交差する。お願い、帰らないで――!  心から必死に祈った。「このままだと帰りそうにないな、仕方ない、一旦対応するか」 苛立ちを隠し切れず、Takaさんは頭をガリガリと掻きながらぶつぶつ呟いた。やがて心を決めたように、私の方を向いた。「眞子、絶対声を上げちゃだめだよ。大人しくしていないと、これで切るからね」 まだ手に持っていた玄関を突破する時に利用したチェーンカッターを、目の前に突き付けられた。カ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-09
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第7話・シンデレラの危機 その5

 お兄ちゃんが呼んでくれた警察の到着にしては早いと思っていた。恐らくスマートフォンを壊されてしまったから、電話が繋がらなくなったことを心配して警察を呼んでくれたには違いないけれど。  玄さん…ここまで戻って来てくれたんだ!!  真っ暗な地獄に一筋の光が差した気がした。  玄さんにこのピンチを伝える方法は無い?  ここで彼に帰られたら、私どうなっちゃうんだろう…。 今後を考えるとぞっと背筋が寒くなった。  なんとかしなきゃ! 周りを見渡した。せめて音を立てるなにかがあれば…。すると、先程ハンドバックが散らばった中身の中に玄さんがくれた防犯ブザーが見えた。黄色いブザーを見ただけで安堵の涙が溢れてくる。  玄さんはいつでも、私を助けてくれるんだね――  彼に勇気をもらった私は自身に喝を入れ、ガムテープで巻かれた不自由な身体をくねくね動かし、近くに転がっていた防犯ブザーを手にした。プラスチックの感触、それにボタンの場所を確認し、そっとリビングへ続く廊下から続いている玄関を見た。顔だけを覗かせ、聞き耳を立てて待つ。今はまだ押す時じゃない。  こちらには目もくれず、Takaさんはドアスコープを必死になってのぞき込み、来客を確認中だ。良かった。私の動きには気づかれていない。 「チッ、手帳持ってやがる。本物の警察みたいだな」  ドアスコープごしに警察手帳を確認したらしく、ぶつぶつ言いながらTakaさんが扉を開けた途端、ガンっと玄関の鉄扉を蹴るような鈍い音がした。よく見ると外から長い脚が伸びており、玄関をすぐに閉められないように彼は仁王立ちしていたのだ。――玄さんが来てくれた!!「お前っ…さっきの男!」 Takaさんは先程盗撮していた相手の玄さんだということに気付いたらしく、怒った声を出した。慌てて玄関を閉めようとノブに手を伸ばしたが、それを見越して玄さんが玄関の扉を塞いでいるので、扉を閉めることは叶わなかった。「クソっ、なんで!」「眞子はどうした? それに、アンタは誰だ。こ
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第7話・シンデレラの危機 その6

  「ひぎい、ゆるじでっ、いだあああああっ」「本物の警察が来るまで、アンタはこのままだ!」 玄さんは怒っているので、本当にTakaさんの腕を折ってしまいそうな勢いだ。 「警察だ!」  通報を受け、自宅玄関に駆けつけた警官二人が現れた。現場は防犯ブザーは鳴り響き、巨漢の男を別の男が取り押さえているという図になっていたので、彼らは一瞬困惑していた。「この男が住人女性を監禁しようとしていました! 逮捕して下さい!!」 声をかけてくれた警察官のうちの一人に、玄さんがTakaさんを突き出した。「ひ、ひがっ…ちが、ぅっ! ぼ、ぼ、ぼ、僕は、彼女の恋人でえっ…! あぎゃぁっ」「彼女の恋人は俺だ! アンタじゃないだろ! 嘘をつくなっ、このストーカー野郎っ!」 ひねった腕に玄さんが更なる力を込めたようで、ぎゃあああ、とTakaさんが悲鳴を上げた。「大丈夫でしたか!」 もう一人の警官が私に駆け寄ってくれてガムテープをはがしてくれた。これでもう大丈夫なのだと思うと、ぼろぼろと涙が零れ、嗚咽が漏れた。  こうして玄さんのお陰で、Takaさんは玄さんが呼んでくれた警察――お兄ちゃんも約束通り、ちゃんと五分後に警察に連絡をしてくれた呼んでくれたと後から聞いた――に現行犯逮捕され、私は九死に一生を得たのだった。   ※   事情聴取を受け、諸々の手続きを終えて開放されたのが数時間後。私を助けてくれた玄さんと肩を並べていた。「今日は家に帰りたくないだろう。ホテルを取ったから一緒に行こう」 憔悴した私に彼は優しく語り掛けてくれた。そしてあっという間に色々手配してくれて、高級ホテルの一室で私たちは向き合っている。事件から随分時間が経ったので、なんとか会話ができるまでは回復した。「怖いのによく頑張ったな」「ううん。玄さんが来てくれたから…助けてくれてありがとう」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-10
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第7話・シンデレラの危機 その7

  「単なるメモ帳代わりの手帳だよ」「えっ」「流石に警察の制服なんて持っていないし、職業柄手帳を持ち歩いているから咄嗟に突き出しただけだ。ドアスコープで見る分には、それっぽいものを持っているだけでイケると思ったからさ。正直賭けだったけどな。玄関開けてくれて良かったよ」「そっか。とっさのことなのに、機転が利くんだね。すごい」 本当にこの人は何者なの。  優しい人だということは解る。でも素性がわからないと不安になってしまう。  私は悩んだ。こんな質問をしたら絶対に嫌がられるのにどうしても衝動を抑えられなくなってしまう。  人物像が見えないのは怖い。さっきのTakaさんがそうだ。こんなことが無かったら、問いただすような真似はしなかったのに、止められない。 「その手帳の中を見せて、って言ったら、見せてくれる?」  はっとしたように、私を見つめる玄さんの瞳が揺れた。ああこれは、きっと貴方の秘密につながっている。  玄さんが持っているのはただの黒い手帳。内容はわからない。でも、きっと玄さんの身元に繋がることや、ヒントになるものが記されているに違いない。だから困るのね――… わかりやすく困った顔をした玄さんは、視線を床に落としてしまった。彼が取ってくれたホテルの部屋は豪華な内装のデラックスルームで、品のよく厚く滑らかな絨毯がひかれていた。彼は一心にその先を見つめている。恩人にこんな顔をさせちゃ、ダメよね。「ごめんなさい、意地悪言って。三か月は詮索しない約束だもんね」「…すまない」「ううん。私のためにここまでしてくれてありがとう。それなのに、困らせてごめんなさい」「いや、構わない」 ようやく顔を上げてくれて、彷徨っていた視線がぶつかる。なにかに傷ついたような彼の顔。どうしてそんな顔をするの? 貴方は一体、何者なの? 聞かないと言ったのにもう貴方のことが聞きたくなる。問い詰めたくなる。  秘密にしないで私に全部教えてよ、って。すべてを知りたくなってしまう。 でも貴
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-10
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第8話・謎深き王の秘密 その1

 お盆休みが明けるまで玄さんが取ってくれた高級ホテルでお世話になった。夢のような生活はあっという間に過ぎ、幼稚園への出勤となった。  Takaさんが逮捕されてからストーカー被害は無くなった。勿論被害届はきちんと提出した。名誉棄損に器物破損、住居侵入、様々な罪に問われて欲しい。  なので園に嫌がらせの手紙が投函されることもなくなり、平和な日常が戻って来た。折角防犯カメラを付けてくれたのに申しわけなく思う。 Takaさんはいなくなったけれど、それでも現場となってしまった自宅へ帰るのは怖い。Takaさんもそのうち釈放されるだろうし、このまま住み続けるのは怖い。  これも転機だと思い近々引っ越しを考えている。玄さんに言うと費用を出すとか言いかねないし、ずぶずぶ頼ってもしも彼の素性を知った時、どうしようもない状況になってしまっても困ると思ったので、引っ越しなんかは一人で頑張ろうと思っていた。 とりあえず少しずつでいい。色々と変えていこう。 玄さんは毎日幼稚園まで迎えに来てくれて、ご飯を食べて帰る日を重ねている。会えば嬉しいし、心が騒ぐ。  お互い好みの店を教え合ってご飯の時間を共にする。家まで送ってくれて、何度も大丈夫か、って確認してくれて、別れ際に優しいキスをくれる。それ以上の関係にはなっていない。多分、私のことを想ってくれているからだろう。いい大人が恋人同士になったのに、キス止まり。 一人になると、Takaさんを思い出して怖くなる事を見越して、家に入ったら玄さんは必ず電話をくれる。私が安心できるまで、付き合ってくれるのだ。丁度今もその電話中。「玄さん、いつもありがとう」『いいよ。眞子が安心できるまで、幾らでも付き合ってやるから」「でもお店忙しいでしょ? 大丈夫なの?」『今日は水曜だろ。毎週水曜は眞子デーだから大丈夫。今日は休み取ってるから』「そっか。年中無休なのに、玄さんがお休みしていていいの?」『問題無い。でも、心配してくれてありがとう』「じゃあ、デートの申し込みをしても大丈夫?」『大歓迎。いつがいい?』「土日の昼間は忙
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-11
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第8話・謎深き王の秘密 その2

「うん。そうだよ。じゃあ、下野動物園に出発」「眞子先生と遠足か。弁当付きで最高だな」「ふふ。今日は一日、眞子先生の引率に従ってもらいまーす」「げ。余計なこと言った」「いっぱい楽しもうね」 道中はお喋りをして昼時に到着。園内はそこそこ混雑しているけれど、土曜日なので比較的席は空いている。  お弁当を食べられる無料の休憩所へ行って、早速お弁当を広げた。「これ、全部手作り!?」「そうだよ。いっぱい食べてね」「作るの大変だっただろ。ありがとう」 そう言って微笑む貴方の笑顔を見れただけで、私はもうお腹いっぱいです。  玄さんの笑顔は罪だよ。「うん、うまい」 玉子のふりかけおにぎりと、ふつうのおにぎりと、両方を紙皿に入れ、ハンバーグと一緒に交互に口に運んでいる。  こういうシチュエーションって、大抵ドジっ子のヒロインが口元にソース付けて、それをイケメンが親指で拭ってぺろっと舐めちゃうパターンだよね、と思いながら彼を見つめていた。「なにか付いてる?」 じっと玄さんを見つめていたらしく、慌てて視線をそらした。「もしかして、俺に見惚れてた?」「――!」 意地悪気に聞いてくる玄さんに反応してしまい、思わず赤面した。俯きながら小さく頷くと、玄さんは「俺も眞子に見惚れてたから、おあいこだ」って、私が考えるベタな漫画的シチュエーション以上の雰囲気になっちゃって、耳まで真っ赤になってしまった。 玄さんにドキドキしながらお弁当を食べた後、動物たちを見て回った。思った通りで玄さんは一度も動物園に来たことがなかったらしく、始終楽しそうにしていた。  楽しいという事は表情で解るし、時には興奮して訴えてくれたことがあった。「パンダは人気があっていいな。思いの外白い部分って黒いんだ?」「野ざらしだからね。仕方ないと思うよ」 玄さんはどうやらパンダが気に入った模様。ペンギンの時も『泳ぐところを初めて見た』と興奮していたし。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-11
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第8話・謎深き王の秘密 その3

  「絶対解らないと思うから降参」 あと五分と言ったが、それを待たずにお手上げのポーズをとった。「ああ…悔しいな。もう」「ふふ。正解は、レッサーパンダ科でした」「あ! 本当だ。パンダが入ってる」「難しく考えちゃダメだよ。シンプルに考えたらすぐ答えが出るよ」「そうか…クイズって結構難しいな」「他にもやってみる?」「そうだな。ゆっくり動物を見ながらクイズを楽しもう。あー、それにしても悔しい。次は絶対に正解するぞ」 次は園児が喜びそうな簡単なクイズを出してあげた。見事に正解したので、玄さんは破顔して喜んだ。私はそっちの方にドキドキしてしまう。「当たったぞ! どうだ、眞子。俺もやれば出来るんだ。見直しただろう?」「そうだね。すごいよ」「…む。バカにしているだろ」「してないよ。玄さんはいつでも全力投球でエライと思う! じゃ、次に行こうか」 自然な感じを装って彼の手を取った。  調子に乗るな、とか、そんなことは思われないかな。大丈夫かな。心配になる。「ああ、行こう」 今度は優しい笑顔。  玄さん――貴方を知りたいと思う気持ちと、知りたくない気持ちがせめぎ合っている。  私は今、どんな顔をしてる?  自分に向けたクイズだったが、ここには鏡が無いので解らなかった。  正解かどうかは解らないけれど、せめて彼に可愛く見て欲しいと思って絶えず笑顔を心がけた。  たっぷり園内を楽しんでいると、あっという間に夕方だ。もう、玄さんとお別れの時間。「今日は誘ってくれてありがとう。とても楽しかった」「私もすごく楽しかったよ。ありがとう」「帰るの名残惜しいな」「うん」「今度、どこか泊まる? 眞子と行きたいな」「…」 私は答えられなかった。  でも、本当は泊まりたい。玄さんと一緒に夜を過ごして、
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-12
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第8話・謎深き王の秘密 その4

  「今日も送ってくれてありがとう」「いいよ。自宅に入るまではここで見ているから」「何から何まで、迷惑をかけてごめんなさい」「恋人なんだから頼りにして欲しい。眞子が困っている時は力を貸してやりたいんだ」 現在自宅前。この前のようなことにならないよう、玄さんは私が部屋に入るまでちゃん車内から見送ってくれる。先ずはマンション前に駐車して、そこから私が部屋に入るまでを見届けてくれる毎日。  マンションに入り、入り口すぐの所にある郵便受けを確認する。今日は普通の郵便物は届かないけれど、チラシやDM等は別に届くし、放っておくとすぐにいっぱいになってしまうので、できるだけ忘れずに回収している。  郵便受けを開けた途端、それは見つかった。  あの、悪夢の白い封筒が―― 「ひっ」  思わず口元を押さえた。震えが止まらなくなる。ここに白い封筒が投函されているということは、Takaさんが出所したんだ!  もうそんなに経つの? あれだけのことをしておきながら、たった十日や二十日程度で出所できるなんて、日本の法律はおかしいよ! もう二度と私の前に現れないで欲しいのに、どうしてそれを赦してくれないの?  手が震える。部屋に逃げ込んでも、もしまた玄関を勝手に開けられたらどうしようと、恐怖が脳裏に蘇る。また怯えて暮らす生活が始まるのか。  どうして被害者の方がこんなにも精神的苦痛を味わわされて、何重にも苦しめられなきゃならないの。 ああ、怖い。Takaさんが、Takaさんがすぐそこにいる――「どうした、眞子」 立ったまま動かなくなってしまった私の様子を心配して、玄さんが車から降りて来てくれた。青ざめて震え、涙ぐむ私の視界を覆うように自分の胸の方へ手繰り寄せ、抱きしめてくれた。「見なくていい。もう、ここは引っ越そう、眞子。落ち着く先が決まるまで、ホテル住まいは嫌か?」 私は首を振った。どこでもいい。もう、Takaさんが居ない場所ならどこでも。「これは俺が
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