この情景が目の前で行われている事が現実に思えなくて息を呑んだ。 なぜ、どうして、と頭が真っ白になる。 開けられた扉はきちんとかけておいたドアチェーンに阻まれ、全開になる事は無かった。そのため、ひとまず安堵できた。ほっとしたら涙が滲んでくるが問題が解決したわけではない。「あーあー、ドアチェーンなんか掛けちゃって」 Takaさんはやれやれ、という顔をほんの少し開いた扉の向こうで見せた。「あ…Takaさん、なんで……どうしてっ、わ、わたし、の家の鍵っ……!」「なああーんだ、そんなこと? 簡単だよ、合鍵を作ったんだ」 ニタぁ、と歪んだ笑みが扉の向こうに見える。気持ち悪い笑みは更に恐怖を煽った。「最近は便利だよね。カギの救急車とかサービス満点な会社がいっぱいあるからさ」「か、勝手に…そんなことしてっ、は、犯罪だからっ!」 更に声がうわずる。もう怖い。 どうしよう、どうしよう、誰か助けて――! 「犯罪じゃないよ。僕たちもう付き合っているじゃないか。それなのに複数の男と浮気したりして、眞子は酷い女だよ。僕の運命の彼女がビッチだなんてマジで赦せないな。――でもね、僕は心が広いから、赦してあげるよ。魔が差すこともあるよね。だから話し合おう。ここを開けて?」 あまりの恐怖に声が出ない。ただ激しく首を振った。スマートフォンを操作したくても、指が氷漬けになったみたいにぴくりとも動かせない。「あ、そ。知ってた? ドアチェーンなんてクソの役にも立たないんだよ、眞子」 Takaさんは大型のチェーンカッターを持参していたようで、数センチ開いたドアの隙間からカッターを器用に入れ、いとも容易くチェーンを切ってしまった。 「っ…!!」 目の前で無残に切られたチェーンが、途中からだらしなく垂れ下がった。私を守ってくれる小さなチェーンはいとも簡単に壊され、惨めな姿を晒している。「念のために持ってきておいて良かったよ。優しく言っ
Terakhir Diperbarui : 2025-05-08 Baca selengkapnya