All Chapters of 研究に身を捧げた私に、婚約者は狂ったように後悔した: Chapter 21 - Chapter 26

26 Chapters

第21話

両親も、困った顔をして横に座っていた。二年前、私は結婚式をキャンセルする決断をしたけれど、その本当の理由は伝えていなかった。研究を続けたいと言っただけだった。そのため、両親には、結婚式をキャンセルした責任は自分たちにあると思われていた。彼らはずっと、冬翔が私に対してあまり深い気持ちを持っていないと思っていたけれど、それでもやっぱり、冬翔には申し訳なく感じていた。この二年間、私が家に帰ってこなかったにもかかわらず、冬翔は定期的に家の下を通っていた。上の階に来て私の家に寄ることはなかったけれど、両親は彼が私を探しに来ていることをなんとなく感じ取っていた。特に半年くらい前から、ほぼ二日に一度は通っていた。両親は、何度も彼に来ないようにと説得していた。結局、私が結婚式をキャンセルしたとき、私は非常に決意を固めていたからだ。そして、今は私が研究室にいるので、家に帰ってくることはない。彼が家の下で待っていても、意味がない。それでも、この二年間、冬翔の執着を見守ってきた父と母は、彼に対する冷たい印象が少しだけ改善された。実際、両親は、もし私が帰ったらもう一度説得しようと思っていたこともあった。結局、私と冬翔は五年間も一緒にいたから、結婚式の日も近いはずだと思っていた。だけど、私が帰ってきたと聞いたとき、私にはもう婚約者がいることを知り、今回結婚式を挙げる予定だとも分かった。ふたりは心の中で複雑な思いを抱え、冬翔に対して申し訳ない気持ちを感じていた。午後、冬翔が家を訪れたとき、両親は、彼が私が帰ってきたことをもう知っていることを理解していた。両親は、今こそすべてをはっきりさせてもらおうと考えていた。これで冬翔も諦めるだろうと。冬翔は私が帰ってきたのを見て、目を輝かせて、すぐに立ち上がった。しかし、私は頭が痛くなった。まさか、冬翔が家まで追いかけてくるなんて思ってもみなかった。前に、彼は年長者と関わるのが嫌いだと言っていたのに、今になって家まで来て、何をしたいんだろう?両親は私を脇に引き寄せ、この二年間のことを簡単に話してくれた。二年間、冬翔がずっと私を探していたということを聞いて、私は信じられなかった。もし両親が話していなかったら、私はきっと信じなかっただろう。私の中では、冬翔はもう私のことが好
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第22話

私が答える前に、冬翔の表情がすぐに強く変わった。「説明できるんだ、あの時は夏蓮が俺の命を救ってくれたと思ってたんだ。俺には何の気持ちもなかったし、俺と夏蓮の間には何もなかった」「君が去った後、君が去った後、気づいたんだ。実は」冬翔は涙がこぼれそうになりながら、しばらく言葉を詰まらせていた。やっと心を落ち着けた彼は、続けて言った。「六年前のお正月の夜、助けてくれたのは君だったんだ、ずっと間違えてた」冬翔は涙で赤くなった目で私を見つめ、その目には後悔、罪悪感、焦り、そして隠れた期待が込められていた。彼は、私が真実を知ったら、彼を許して、二人が再び仲良くなることを期待していた。残念ながら、彼の思惑は外れた。冬翔が言っていた命の恩人が、六年前のお正月の夜のことだと知った時、私は確かに驚いた。あの時、冬翔が初めて夏蓮を私に紹介した時、いつ彼を助けたのかなんて言っていなかった。そしてその年、私は病院から目を覚ました後、その夜のことを冬翔の前で話したくなかった。これが誤解の始まりだったのだ。今でも、過去をすっかり忘れていた私は、運命のいたずらに驚かされる。冬翔は私が何も言わないのを見て、慎重に言葉を続けた。「柚希、あの時の子供、夏蓮に生ませなかったんだ、もう堕ろしたんだ。今、俺は間違えてたって気づいた。俺たちは戻れるのか?」冬翔の言葉が私の思考を現実に引き戻した。私は迷わず首を振った。「無理だよ」冬翔の顔は一瞬で青ざめ、目を伏せた。その決然とした言葉が、彼の中にわずかに残っていた希望を完全に砕いてしまった。彼は二年間私を待ち続けていたが、この結末が待っていたとは思っていなかった。彼は、私が永遠に彼を愛し続けると信じていたのだ。冬翔は震える声で私を見つめ、聞いた。「どうして?俺は君が好きだよ」冬翔の執拗な態度を見て、私は昔、彼と付き合っていた時の自分を思い出した。確かに、彼は私にプレゼントをくれることはなかった。他の男の子たちのように、私との関係を大切にしてくれることはなかった。「愛してる」とも言ったことはなかった。それでも、当時の私は固く信じていた。冬翔の心には私がいるはずだと。そうでなければ、どうして私と付き合うなんて言ってくれたのか。それは、ただ彼の性格が冷たかった
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第23話

冬翔は、なぜそんな質問をしたのか理解できなかった。私は話を続けた。「好きだったって言うけど、どうして誕生日にプレゼント一つくれたことがないの?どうして一緒に旅行に行こうって言ってくれなかったの?どうして他の女を妊娠させたのに、私とウエディングフォトまで撮ったの?」「私だって心がある。痛みだって感じる」「もしそれがあなたの好きなら、ごめん、そんなものいらない」私が一言言うたびに、冬翔の顔色はどんどん青ざめていった。過去の記憶が、彼の脳裏に次々とよみがえる。言い返そうとしても、どこを探しても反論できる記憶は見つからない。どれもこれも、まさに私の言った通りだった。最後に冬翔は、夏蓮の話題にすがるようにして呟いた。「俺が夏蓮に優しくしたのは、助けてくれた人だと思い込んでたからで……もし最初から君だってわかってたら、そんなこと」「もういい」私は彼の言葉を遮った。彼は、問題の核心が夏蓮の存在だけにあると思っているのだろうか?二年経っても、彼はまだ私たちの問題の本質に気づいていなかった。「夏蓮じゃなくても、他に夏蓮がいたでしょ。ユカでもマイでも、誰でもよかったのよ」「仮に本当に命の恩人だったとしても、感謝を伝える方法なんていくらでもあるのに、なんで全部一人で背負おうとするの?」「今のあなたが引きずっているのは、二十年も私に追いかけられてきて、私が去ったことが悔しいだけ」「もう探さないで。きれいに終わろう」そう言い終えて、私は彼を家から追い出した。冬翔は、ぼんやりとしたまま自分の部屋へ戻った。ーーただの悔しさなのか?彼にはもうわからなかった。だけど、ふと脳裏に浮かぶのは、あの日の記憶。「付き合ってほしい」と彼が言ったとき、私の顔は真っ赤になって、どもりながら「罰ゲームでもしてるの?」と聞いてきた。本気だと伝えると、顔が一気に輝き、彼に気づかれないように小さく勝利のサインをしていた。あれが、彼らの五年間にわたる日々の始まりだった。その五年の間、私が彼に注いでくれた想いは、確かに届いていた。彼は、別れを考えたことなど一度もなかった。プロポーズを受けたときも、本気で一生を共にしたいと思っていた。だが今日、初めて気づかされた。五年間、彼は一度も自分から愛を表現してこな
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第24話

予想していた痛みは、思ったよりも早く現れなかった。私は慌てて振り返ると、冬翔がその背後に立っているのが見えた。彼はお腹を押さえていて、見る見るうちに顔色が悪くなっていった。手で押さえているところからは、どんどん血が流れ出していた。冬翔が今にも倒れそうになるのを見て、私は急いで彼を支えながら、もう一方の手でとっさに119番へ電話をかけた。冬翔の意識はぼんやりしていて、激しい痛みが全身を支配していた。まさか、こんなにも痛いなんて。あの時、私もきっと同じような痛みを感じたんだろう。なんとか目を開けた冬翔は、私の焦った顔を見て、ふっと微笑んだ。でもすぐに、お腹の傷がまた痛みだして、彼は苦しそうに顔をゆがめた。私はとにかく血を止めることしか考えられなかった。傷口に手を当てながら、必死に叫んだ。「頑張って、冬翔、眠っちゃだめ」「すぐお医者さん来るから、絶対に耐えて」冬翔が意識を失いかけたそのとき、遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた。救急隊はすぐに彼を運び出し、血を止めながら病院に連絡し、緊急手術の準備を始めた。冬翔は私の方を見ながら、私が動揺しているのを感じたのか、そのまま意識を失ってしまった。三時間にも及ぶ手術のあと、冬翔の容体は安定した。医師は言った。「あの一撃は命に関わるほどではなかったけれど、かなり深く刺さっていたから、出血がひどかった」と。私はほっとして、どっと力が抜けてその場に座り込んだ。病室に目をやると、まだ意識を取り戻していない冬翔の顔が見えた。胸の中は複雑で、どうしていいかわからなかった。まさか、冬翔が私を守ろうとして命をかけるなんて思わなかった。もしかして、ずっと私のことを追いかけてたの?昨日、あんなにはっきり言ったのに、どうして彼は……心の中にはたくさんの疑問が渦巻いていたけど、冬翔がまだ目を覚まさないので、その思いをそっとしまい込んだ。冬翔の両親も病院に駆けつけてきた。彼らは、元気だった冬翔が今こうしてベッドに横たわっている姿を見て、涙をこらえきれなかった。あのとき私が結婚式の日に突然姿を消したことが、冬翔がずっと立ち直れなかった理由のひとつになっていた。そして、たった数日しか経っていない今、またこんなことが起きれば、私に対して怒りが湧くのも無理は
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第25話

冬翔は弱々しく口元を引きつらせた。「……あるさ、十分に」「君が俺を助けた時も、きっとこんなふうに痛かったんだろうな」私は、話すのもつらそうな冬翔の様子を見て、思わず言葉を止めようとした。でも、冬翔は首を横に振って、ゆっくりと、でもしっかりした声で話し始めた。「つきまとってたわけじゃないんだ。ただ……昨日の君の言葉を聞いて、ずっと考えてた。やっと気づいたんだよ」「俺、これまでずっと、君の気持ちに甘えてただけだったんだ」「今日は、それをちゃんと伝えたくて来たんだ。……後悔してるって」「どう言えばいいかわからなくて、ずっと迷ってた。でも、まさかあんなふうに君が襲われるなんて……その時、頭に浮かんだのは一つだけ。君だけは、絶対に傷つけたくなかった」私は驚いていた。数年前なら、きっとこの言葉に胸が締めつけられただろう。でも今は、もう違う。私の中にあるのは、冬翔への「愛情」ではなく、ただの「感謝」だけだった。冬翔は、私の沈黙を見て、すべてを悟った。でも、ほんのわずかな望みを捨てきれずに、もう一度口を開いた。「もし、夏蓮がいなかったら……俺たち、うまくいってたと思う?」私はそっと首を横に振った。「……無理だったよ」夏蓮はきっかけに過ぎなかった。五年のあいだ、冬翔の冷たい態度が少しずつ、でも確実に私の心を削っていった。たとえ結婚していたとしても、冬翔は自分の態度がどれだけ私を傷つけていたか、気づけなかったはずだ。そのままなら、いずれ壊れていた。だからこそ、夏蓮の存在はむしろ、ふたりにとって救いだったのかもしれない。早く別れたことで、お互いに深い傷を負わずに済んだから。冬翔は、もう元には戻れないことを理解した。しばらく黙ったあと、彼は口を開いた。「君の婚約者に……会わせてもらえないかな?」思いがけない申し出に私は一瞬戸惑ったが、すぐに答えた。「……君がいいって言うなら、構わないよ」悠斗にそのことを話すと、彼もすぐに快くうなずいてくれた。後日、悠斗が病室に入ってくると、そっとドアを閉めて、ふたりきりの空間を作った。冬翔は、目の前の男を見て、不思議と妬みではなく、憧れのような気持ちを覚えた。この男が、これから私と一緒に人生を歩いていくんだ。悠斗は、冬翔の腹に巻か
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第26話

私は承諾し、その夜、招待状と引き出物のお菓子を人を通じて彼に送った。冬翔はキャンディをひとつ取り出し、ゆっくりと口に入れた。ーー甘いって、こんな感じだったっけ。結婚式当日、浜城市の会場にはたくさんのゲストが集まっていた。休暇中の教授や研究室の仲間たちまで駆けつけてくれた。教授は悠斗の肩を軽く叩きながら、にこやかに言った。「まさか君が篠原とゴールインするとはね、やるじゃないか」同僚たちも冗談まじりに冷やかしていた。私は隣に立つ黒いスーツ姿の彼を見つめながら、胸いっぱいに広がる幸せと満たされた気持ちを噛みしめていた。悠斗と出会って、ようやく隠さずに愛せるってことを知ったんだ。式が始まり、私は父に手を引かれながら、バージンロードを一歩一歩進んでいった。父は私の手を、そっと悠斗の手に託した。「娘を、よろしく頼むよ」悠斗はまっすぐに父を見て、しっかりとうなずいた。「大丈夫です。命を懸けて、彼女を守ります」そして、誓いの言葉、指輪の交換、キス。会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。誰もがこの新しいふたりの門出を心から祝ってくれていた。会場の片隅で、冬翔もまた拍手を送っていた。まばたきもせず、私をじっと見つめながらーーふと、二年前の、あの消えてしまった結婚式の記憶がよみがえる。あのときの私も、きっと全力で式の準備を進めてたんだろう。ウェディングプラン、ドレス、披露宴ーー何度も比べて、やっとひとつずつ決めていったに違いない。それなのに、すべてをキャンセルする決断をした瞬間、私はどれだけ苦しかったんだろう。そう思うと、胸が詰まって、ただただ申し訳ない気持ちでいっぱいになる。今、私はちゃんと幸せを見つけた。ーーだから、心から祝福しなくちゃいけないんだ。冬翔はそっと目を閉じた。目尻を一筋の涙が伝った。式が終わったあと、私は来賓へのあいさつで忙しく動き回っていた。ようやく夜になって、席について一息つこうとしたところで、日和がちょっと困ったような顔で封筒を差し出してきた。「……これ、冬翔が渡してくれって。あと、結婚おめでとうだってさ」そう言って、日和は私の肩をぽんと叩いてその場を離れた。そのとき、ようやく思い出した。ーーそういえば昨日、冬翔は結婚式に来るって言ってたのに、今日は
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