そう言われた後、光陽は表情ひとつ変えなかったが、手にしたワイングラスは強く握りしめられ、その指は白くなっていた。彰は気づけば額に冷や汗を浮かべていた。「周藤さん......元松さんはただ、怒っておられるだけかと......」「怒ってるだけ?」光陽は嘲るように口元を歪めた。彰はすぐに頭を垂れて、息を殺すように黙り込んだ。次の瞬間、光陽は突然目の前のテーブルを蹴り倒した。ワイングラスが割れて床に飛び散り、部屋の空気が一変した。周囲の人々も驚いて一斉にこちらを見た。静まり返った部屋に、彼の冷笑が響いた。「まったく、なかなかの度胸だ。俺にこんな駆け引きをするとはな。いいさ、見せてもらおうじゃないか、どこまで突っぱねられるか」そのまま鋭い目つきで彰を見据えた。「で、その箱は?」彰はさらに頭を下げ、声を小さくした。「......ちょうどあの日、小嶋さんがその箱を見つけて、勝手に持ち出して捨ててしまいました。小嶋さんと周藤さんがもうすぐ婚約されると思い、特に止めませんでした......」光陽は彼をじっと見据えて、声を押し殺したように言った。「......杉本、お前もなかなかだな」彰は膝を折りそうになりながら慌てて言い訳を口にした。「周藤さん、本当に申し訳ありません!二度と勝手な真似はいたしません!」その場にいた誰かがすかさず場を和ませようとした。「まあまあ、アシスタントにそこまで怒らなくても。むしろ小嶋さんが紗江さんの荷物を処分してくれたおかげで、面倒が減ったじゃないか」「そうそう、あれを受け取ってたら、あの女、絶対それを口実にまた縋ってきたに決まってる」「受け取っても受け取らなくても、どうせ縋ってくるさ。周藤さんにここまで執着してる女だぜ。あいつ、あんたがいなきゃ生きていけないんだ」「今だって、きっと欲擒姑縦のつもりで、注意を引こうとしてるだけだろ」その場にいた誰もが、これらの言葉に違和感を覚えることはなかった。この五年間、紗江のそんな行動は散々見てきたからだ。光陽は無表情のまま彰を見た。「出ていけ」彼は昔から、周りの人の勝手な判断を最も嫌っていた。彰はこれ以上何も言えず、すぐに頭を下げて部屋を出た。周囲の者たちも、彼の機嫌の悪さを察して次々に散っていった
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