あの後、せっかく良くなった顔色を悪くした青藍は、たくさん謝っていた。そして 、見計らったようにやって来た天狐夫夫と酒盛りになってしまい、青藍はベロンベロンに酔ってしまっていた。 天狐のおかげで、こちらに戻って来れば一時間程度しか時間は経っていなかった。が、疲労感がひどかった佐加江は数日、寝込んでしまった。桐生は番になった今でさえ、子供達同様、たまにこちらに出てこないと体調を崩すことがあるらしい。 本紋がない自分があやかしの世に長居する事が、どんなに難しいか、佐加江は痛感した。 次の発情まで一緒に過ごせない時間を埋めるように佐加江は深夜にコソッと家を抜け出し、鬼治稲荷へ行っている。 ある日の夜、月明りを受け、境内で静かに佇む青藍の姿に見惚れてしまった。おとぎばなしとは違い、鬼とは美しいあやかしだ。 「青藍。僕がここへ来たら祠の扉をコンコンってするから、そうしたら出て来て」 「なぜです。待っていては、駄目ですか」 「誰かに見つかりでもしたら……」 美しい青藍を誰にも見せたくない、それが佐加江の本音だった。改めて家へ来てはダメと言ったのも、青藍が誰かに見つかりでもしたらと思うと気が気ではなく、鬼治稲荷だったら天狐の結界があり安心だからだ。 毎日のように、佐加江は風呂上がりの背中を鏡に映している。 まるで天使の羽根でも生えてくるのではないかと思うほど、本紋がそこへ刻まれる日を心待ちにしている 。その一方で越乃に言い渡された謹慎は、今まで育ててくれた恩返しをしたい佐加江にとって大切な、意味のある時間となっていた。 「佐加江」 「なに?」 「こっちへ来なさい」 深夜に起きているから昼間、眠たくなってしまうのは仕方がなく、昼寝でもしようかと布団に入ったところだった。 「どうしたの?」 つい先ほど、軽トラの音が
Terakhir Diperbarui : 2025-05-19 Baca selengkapnya