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百鬼夜行③

Penulis: 佐藤紗良
last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-21 21:56:43

越乃は幼い佐加江を連れ、頻繁に村へ帰ってきていた。

最後に鬼治を訪れた前の年だったと記憶しているから、十八年くらい前だろうか。その出来事は、いまでも鮮明に覚えている。

『今日は、外へ出てはいけないよ』

越乃にそう言われた。

誰もいない、じぃじの家。

昼間なのに雨戸は閉めきられ、いつも開いている玄関に鍵をかけて越乃は出かけて行った。

電気がつけっぱなしの居間で、佐加江は遊んだ。一人でも平気だったのは、この家に我がもの顔で住む、かすりの着物を着たおかっぱ頭の座敷童子がいたからだ。

大好きなアニメが映し出されるテレビの前で三角座りをしながら、二人でオープ二ングの曲を元気に歌っていると雷鳴が聞こえた。

このころの佐加江は、鬼を連想させる雷が嫌いではなかった。

佐加江はピカッと光る稲妻を見ようと雨戸に走り、隙間から外を覗き見た。

が、外はキンとは冷えた冬晴れ。

雨すら降っていない外に見えたのは、白装束を着た醜い鬼の大行列だった。雷鳴かと思ったのは、太鼓の音。神輿を先頭に鬼の行列は鬼治稲荷へと続き、雄叫びをあげ、神輿を壊しにかかろうとする恐ろしい鬼達の様子に、佐加江はおもらしをしてしまった。

それから一年近くして鬼治を訪れたのが、青藍と最後に会った時だ。

『佐加江?』

『はい』

『ああ……。会わない間に、こんなに大きくなって。すっかりお兄ちゃんだね。先生は良くしてくれてる?ご飯はきちんと食べているの?』

鬼治稲荷へ向かおうと、人目を盗んで外便所の裏に隠れていた佐加江に話しかけてきたのは、見知らぬ男性だった。やせ細っていて、腹だけが妙にぽっこりと突き出ている。隠れていたことを笑ってごまかそうとした佐加江は、その胸に抱きしめられた。

懐かしい匂いがして、なぜだか鼻の奥がツンとした。

やつれた男性は「ごめんね」と何度も繰り返し、佐加江のクルッと緩くカールしてしまうくせっ毛を梳いた。佐加江と同じような髪の男性は寂しげではあるが優しく微笑みながら、目に焼き付けるように佐加江を暖かい眼差しで見つめていた。

『これからも、先生の言う事をきちんと聞くのですよ』

先生とは、きっと越乃の事だ。白装束を着た男性は腹を摩りながら、たくさんの村人が出入りする蔵へとーー。

佐加江は浩太のジーンズの泥を払う手を止め、遠い日の鬼治での出来事を思い出していた。

「な、何?!」
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