Semua Bab あやかし百鬼夜行: Bab 51 - Bab 53

53 Bab

百鬼夜行㉑

部屋で軽く膝を折って腹を触診され、佐加江は鈍い痛みに顔を歪ませていた。 「鬼に喰われてしまいたい」 両腕で顔を隠し、佐加江は越乃に背中を向けた。オメガ特有の儚さをまとい、くびれた細い腰にはもう幼さはない。 「貫通はしなかっただろう。発情期じゃないと無理だと分かっていたが、浩太君は若いし可能性もあるかと思ってな。しかし、驚いたね。これには」 さすがに若いと柔軟性があるな、と越乃は浩太に感心しながら部屋の隅にあった段ボール箱を覗き込み、プジーを手にして苦笑いを浮かべていた。 「『佐加江さん』のことも、こうやって観察してたの?」 越乃の動きが止まった。自身の手を見つめ、ニタリと笑っている。 「ただ、見つめる事しか許されなかった。あの人に触れたのは、家の鴨居で首を吊った身体を下ろしたのが初めてだった」 「首を吊ったーー」 「艶かしかった」 産まれたばかりのまだ名もない赤子が、その足元で泣いていた。それが佐加江だ。赤子の父は不在だった。 『佐加江さん、このまま逃げないか。私と』 『何をおっしゃるの、先生。私は、ここでしか生きていけませんの』 数時間前に会話を交わしたばかりだった。 オメガ同士の結婚は、ごく普通の夫婦関係。発情期に入ってしまった夫を家族から隔離し、浩彰と番にさせようとしている事への抗議だった。 妻を亡くし子供を取り上げられた男に発情が起こらなくなり、神事の神子にたてたのは、その四年後――。 その日の事を久しぶりに思い出した越乃は、佐加江を虚ろに見つめていた。 「佐加江……」 「誰を見てるの」 佐加江の裸体を抱きしめ、越乃はその名を何度も呼んだ。佐加江の髪質は父親譲りだが、それ以外のクリッとした愛嬌のある目も肌の質感も母親そっくりだった。 初めての発情を迎えてからというもの、日毎夜毎、次の発情に備えているかのように妖艶になっていく佐加江。越乃が佐加江を初恋の人と見紛うのも仕方がなかった。 「もう、研究なんかやめよう」 佐加江の白いうなじに、越乃はコクリと唾を飲み込む。 「……何を馬鹿な事を言っているんだ」 「第二の性に囚われ過ぎだよ。僕が死ねば、もう終わりじゃないか」 「終わらせない」 襖を開け放ったまま、越乃は部屋から出て行ってしまった。 ♢♢♢
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-01
Baca selengkapnya

百鬼夜行㉒

朝から診療所へ訪れる患者の車の音を聞いていた。 起き上がる気力もなく、障子の締め切られた部屋で佐加江は横になっていた。 今までの人生で後悔したことと言えば、青藍の側から離れた事だろう。気持ちはすでに決まっていたはずだ。魂が磨り減ったとしても側に置いてもらえば良かった。そうすれば、いろいろな事を知ることも無かった。 首から下げた鬼笛を両手で握りしめ、佐加江は口へ咥えた。そっと空気を吹き込んでも音は鳴らず、もう一度胸いっぱいに空気を吸い込んで吹こうとするが、小さく咳き込んでしまった。 「佐加江」 気のせいだろうか。確かに青藍の声が聞こえた気がした。 「鬼様……」 佐加江は窓辺へにじり寄り、そっと障子紙へ触れた。 「鬼様、ごめんなさい。僕、番になれない」 青藍は、何も言わなかった。ただ気配に抱きしめられている、そんな感覚だった。 「私は幸せでした」 長い沈黙の後、青藍がポツリと言った。 「僕も……、たくさん夢が見られた」 「今日は鬼宿日ですから。私もそろそろ、ここを出ねばなりません」 着ていたパジャマのボタンを外し、肩を抜いて姿見に背中を映してみるが、そこには何もない。うなじにメキメキと根が張るような痛みがあるが、横になっていることが多いせいかも知れない。 「鬼様。今日、僕の『命の灯火』は燃えていましたか」 「もちろんです。今朝の台帳に佐加江の名はありませんでしたよ。それがどうかしましたか」 青藍は嘘をついた。夜半過ぎに届いた閻魔台帳に佐加江の名があった。明朝、丑の刻に灯火が消えたことを青藍は確認しなければならない。 「死ぬか生きるか、知ってるんだ」 乾いた笑いを浮かべ、佐加江は天井を見上げた。 久しぶりに聞いた青藍の声。会えなかった時間を、また同じだけ過ごしたようだった。 「佐加江、何を考えているのです」 「なんにも」 ふっと気配がなくなって、下腹部にドクンと血液が流れ込む感覚に襲われた。 (発情だ……) 尻からじんわりと分泌液が漏れ出る感覚が不快だった。 発情し、越乃にうなじを噛まれたら自分もいっそのこと一緒にーー。 それが研究を終わらせるには最善だ、と佐加江の出した結論だった。 「やはり、この臭いはすごいな」 午前の診療を終えた越乃は、診察室にも香って来たフェロモンに気
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-02
Baca selengkapnya

百鬼夜行㉓

松明が焚かれた洞窟の中へ、佐加江はドサっと降ろされる。 「んあ……」 初めての発情よりも、酷かった。右手の爪を噛みながら、めくれ上がった着物の合わせ目へ自ら手を滑り込ませる。疼いて仕方のない孔へと指を突っ込み、アルファを誘い込むように佐加江は腰をくねらせていた。 神主と呼ばれる真新しい面を被った鬼が、いびつに着物の前を尖らせ、洞窟の入り口にある祠へナタを振り下ろす。 その甲高い音は、神事の始まりを村中に告げた。 それは、紅や黄の紅葉が目にも鮮やかな山々に響き渡り、山鳥が一斉に飛び立つ。そして、ナタを握りしめたまま神主が息を荒げ、佐加江へ向かって来た。 「はぁ……、はぁ……」 「お前は最後だ、我慢しなさい。長老衆に毒味をしてもらわなくてはいけないからな」 獣のように唸り声を上げる神主の腕を掴んだ越乃も、洞窟内の熱気に目眩がした。 佐加江を取り囲む鬼たちは、目元に皺のある老眼で発情の様子を品定めしていた。アルファは老いとともにフェロモンの感受性が鈍くなって行く。十八年前に行われた神事でオメガのフェロモンに敏感に反応し、狂喜乱舞していたアルファも今となっては、ただの性欲の少し強い老人だった。 「これは、これは……。久しぶりの神事とあって期待通りだな」 大きく開かれた着物の胸元で揺れる鬼笛。松明の下、艶めかしく湿り気を帯びる佐加江の柔肌に彼らは一様に生唾を飲み、老体の萎びた性器に久し振りに力がみなぎっていた。 「若返るようだ」 「ははは」 一人の鬼が、佐加江の内腿を撫でる。 「あぁ」 腰に力が入らず、それにすら喉を震わせる佐加江は後孔に突っ込んだ自らの指を激しく抜き差ししていた。 「今回の神子は今までで一番、幼い顔をしているのに下品極まりないな。神主が苦労しそうだ。ウヒヒヒ」 「神主で足らん時は、我々が神子を戒めてやらねばならんの」 「長老衆からお毒見を」 オメガの発情に影響さないよう薬を服用していると嘘を吐く越乃の号令で比較的、理性を保っている長老衆が佐加江に群がった。 洞窟の外では、獣の雄叫びのような奇声が上がる。若い、とは言ってもほとんどが初老のアルファがオメガのフェロモンに当てられ狂ったように陰茎を露出させていた。中には我慢できず、自ら扱き始める者もいる。 「ああ……ッ、ダメ。もっとしたい
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-02
Baca selengkapnya
Sebelumnya
123456
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status