「……青藍」 佐加江は、何度か瞬きを繰り返す。 外便所へ行った事を思い出したが、そのあとのことは青藍の仕業かと彼を軽く睨みつけた。 「そうやって人のことからかって、面白い?!」 「いや、あの」 「僕のことなんか、放っておいて。あんな風に脅かされて、怖かったんだからね。すごく怒ってるんだから」 「ーー申し訳ありません」 「そう!悪いことしたら、謝るの。良くできました!」 腹の虫が収まらない佐加江は、つい幼い頃の癖で青藍の角を片手で掴んでガシガシと撫でた。すると、彼はうっとりと表情を弛める。なんとも甘やかな表情に佐加江は赤面し、肌に吸い付く濡れたパジャマに怒りの矛先を向けた。 部屋へ着替えに行こうとしたが、立ち上がると同時に佐加江の下腹部辺りでドクンと何かが脈打つ。 「……に、これ」 臍の下あたりに、経験した事のない痛みが走った。呼吸が止まるほどの激痛だ。 男の子宮が目覚めるとき、腹痛があると越乃から教えられた。男性器を受け入れやすくするために内蔵の位置が大きく変わるのだ、と。そして、落胆する佐加江に夢を見させようとしたのか、越乃はこんなことも言っていた。 ーーアルファとオメガには、運命の相手がいる。 その相手の側で発情を迎えると、より妊娠しやすくなるよう身体が準備をするため、下腹部の痛みは酷いものになるらしい。が、これがそうなのか佐加江には分からなかった。 「痛……ッ」 腹を押さえ、うずくまった佐加江に駆け寄ろ
Last Updated : 2025-05-09 Read more