日曜日の夜だった。真夏の夜。満月が夜空に高くかかり、涼しい風が吹いていた。雲水舎の中庭は、月を眺めながらお茶を楽しむのに最適な場所だった。夕食後は皆で中庭にあるガゼボでお茶を飲みながら、くつろいでいた。蒼空は揺りかごに横になり、自分の指をしゃぶっていた。綾と星羅は並んで座り、星羅の手には実家から今日見つけてきたばかりのデジタルカメラが握られていた。「綾、これ見て。図書館であなたが本を読んでいた時の写真。ちょうど窓から日差しがあなたの顔に当たって、あの時私は最高のライティングになって思わず何枚も撮っちゃった!」「......ええ、本当に?この写真、明らかに焦点が私じゃなくて、私の後ろにいる男の子に合ってるじゃない。星羅、本当は彼を撮ってたんでしょ?」「......違う!私はあなたを撮ってたのよ!」綾は笑いをこらえながら、星羅に合わせて頷いた。「そうね、私が勘違いしていた。あなたが撮ってたのは私ね」二人がそう言っていると、丈がふと横から星羅が持っているデジタルカメラに視線を向け、明らかに挙動不審な星羅の顔を見ながら、笑って言った。「星羅、ちょっと見せてくれないか?」「いやよ!これは私の宝物で、綾しか見せないんだから!」星羅は鼻で笑った。「あなたは大人しくお茶を飲んでて!」丈は唇を噛み、小さくため息をついた。輝は丈を見て言った。「佐藤先生、相変わらず家庭での地位は低いようだね」丈は黙り込んだ。そうこうしているうちに、黒いマイバッハが外からゆっくりと入り、庭先に停車した。ほどなくして、運転席のドアが開き、誠也が降りてきた。それを見た輝はすぐに立ち上がり、優希の出迎えに向かった。綾もまた視線を車へと向けた――薄暗い闇の中からでも、男の顔は明らかに痩せているのがわかった。彼は車の横に立ち、細長い目は深く沈んでいて、視線は綾の顔に注がれていた。「優希に絵本を何冊か買ってきた。気に入ってくれたみたいだから」誠也の声は低く、そしてどこか懇願しているようにも聞こえた。これは、娘に対する父親の愛だった。綾は軽く返事をし、立ち上がり、マイバッハの反対側へ歩いて行った。輝はすでに先回りして後部座席のドアを開け、優希を抱き上げていた。「私に会いたかったか?」「会いたかった!」優希の幼い声は甘
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