All Chapters of 碓氷先生、奥様はもう戻らないと: Chapter 961 - Chapter 962

962 Chapters

第961話

「大輝、私が襲われたあの夜、小林は路地裏の外で数人のチンピラに絡まれていたわよね。あなたは彼女を助けた。でも、あなたは知らなかった。その路地裏には、私がいたことを!私はあなたに助けを求めたのに、でも、小林は、私がチンピラたちとグルになって、あなたを騙そうとしていたと言った。あなた気持ちを試すためだって。小林のあんな見え透いた嘘、あなたは信じないと思っていたのに、あなたは信じてしまったのね」そこまで聞いて、大輝の大きな体が大きく揺れた。真奈美は彼の腕を振り払った。最も辛く、最も苦しい過去を語ったことで、彼女のプライドは粉々に砕け散った。真奈美は大輝の目を見つめた。その瞳の中には悲しみも喜びもなく、ただどんよりとしていた。「あの時、兄があなたに私と距離を置くよう話していたことを知って、ずっと理解できずにいた。いくら兄が私に厳しくしていても、ただ性格が合わないからってあなたと距離を置くようにいうなんて、彼らしくないと思った。私たちは家柄も互角で、ビジネス上の付き合いがあったから、そんな事をして、得することはなにもないはずだから、普通なら考えられなかった。だけど、今になってやっと分かった。彼がそうしたのはあなたが私を見放したからよ。大輝、いい?あなたは一度だって私を信じてくれなかった。あなたの目には、私はわがままで、他人をいじめる意地悪な女でしかなかった!ただ小林が可哀想だと思っていた。彼女がこうなったのは、陣内たちと遊んでやりすぎたから自業自得なのにも関わらず、あなたはただの思い込みで私のせいにしたのね?それに、私が彼女を叩いていたっていっても、数回ひっぱたいただけよ。なのに、次の日、彼女はギプスをつけて、あの怪我は私がやったとあなたに泣きついただけで、あなたはまたまんまと彼女を信じた!」それを聞いて、大輝は信じられない気持ちになった。本当にこんなことがあったなんて。彼は胸を押さえた。呼吸が乱れるほど、激しい痛みが走った。真奈美の顔色は悪く、表情は麻痺していた。彼女は一歩後ろに下がって、大輝との距離を広げるようにした。「大輝、私はあの忌まわしい出来事を、そして、あなたを憎んでいたことさえも忘れようとしていた。そもそも18年間、あなたを愛していたことは間違いだった。でも、今、全てを思い出した。だから、間違いを正すべき時が来たのよ。
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第962話

真奈美は、新井家に戻る途中で高熱を出した。霞は何かあってはいけないと気が気でなく、すぐに病院へ向かった。病院に着いた頃には、真奈美は意識を失っていた。そのまま救急室に運ばれた。霞が大輝に電話しようか迷っていると、白衣を着た裕也の姿が目に入った。救急病棟で容態が複雑な患者がいると聞いて、様子を見に来たのだ。「黒崎先生!」霞は彼に声をかけた。裕也は霞を見ると、少し驚いた様子で歩み寄ってきた。「上杉さん、どうしたんだ......」「新井社長が救急室にいます」霞は声を詰まらせながら言った。「高熱が出て、ここに運ばれてきた時にはもう意識がなかったんです」それを聞いて、裕也の顔色は変わった。「一体どうして?また具合が悪くなったんだ?」「分かりません。今朝、石川社長から電話がありました。新井社長が一人で家を出て行ってしまったそうです。それで、彼女を探してほしいと言っていました。その後、新井社長から電話がかかってきて、場所を教えられたんです......」霞は、別荘で何が起こったのか詳しくは知らなかった。大輝に中に入ることを止められ、車の中で待っていたのだ。「落ち着いて。状況を確認してみるよ」そう言って、裕也は救急室へ向かった。その時、霞のスマホが振動した。真奈美のスマホだった。登録名は【二宮社長】だった。霞は一瞬ためらった後、通話ボタンを押した。「二宮社長、新井社長の秘書の上杉です」電話口の綾は少し間を置いてから言った。「どうしてあなたが電話に出ているの?新井社長はどこ?」「社長は今、救急室に......」霞は声を詰まらせた。それを聞いて、綾はすぐに尋ねた。「どの病院にいるの?」「K病院です」「すぐにそちらへ向かうよ」電話を切ると、綾はすぐに階下へ降りた。今日は大雪のため、幼稚園から休園の連絡があり、綾と誠也は家で仕事をすることにしていた。しかし、朝早くにかかってきた大輝からの電話で、綾は落ち着かない気持ちになっていた。音々は星城市へ出張に行っていたため、綾は音々に電話をかけ、真奈美が既に連絡を取っていたことを知った。音々を通して、綾は真奈美が過去に辛い経験をしていたことを知った......心配になり、真奈美に電話をかけた。まさか、彼女が救急搬送されたという知らせを受
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