結婚三周年記念日。林悠々華(はやし ゆゆか)は引き出しを開けて、結婚前に買ったコンドームの箱がまだ使い切れずに残っていることに気づいた。避妊対策をしていなかったわけではない。そもそも、彼女と夫の冷泉博史(れいぜい はくし)の間には、最初から「夫婦生活」というものが存在しなかったのだ。それで、結婚記念日に、彼女は勇気を振り絞って、セクシーなランジェリーを買った。ワインを三杯を飲んで、シャワーを終えた博史が出てくるタイミングを見計らって、悠々華は思いきって彼の首に腕を回した。「ねえ、あなた......」甘く、震える声でささやいた。「今日は、私たち......」しかし、次の瞬間、博史は彼女を乱暴に突き飛ばした。「林悠々華、お前、どこまで下劣なんだ?」男の瞳は冷たく研ぎ澄まされて、声は氷のようだった。「何度もしつこく迫りやがって。そんなに飢えてるなら、自分で棒でやれ」悠々華の顔から、さっと血の気が引いた。理解できなかった。夫に愛を求めただけなのに――どうしてこんな侮辱を受けなければならないのか。その夜、悠々華は眠れないまま朝を迎えてしまった。布団にもぐりこみ、スマホを滑らせる。画面にはある知恵袋サイトのページが映っていた。【無性生活の苦しみ。結婚してから一度も手を出してこない夫、どうすれば?】「旦那さん、もしかして男に興味あるんじゃ?」「それとも不能?」......そんなコメントが並んでいた。混乱したまま、水を飲もうとベッドを出た悠々華。だが、隣にいるはずの博史の姿がいない。トイレの明かりが漏れ、ドアの隙間から妙な音が聞こえてきた。恐る恐る近づいた彼女は、そこで凍りついた。彼女の夫、夜の営みに無関心だったはずの博史が、自分の妹の林清雪(はやし きよゆき)の写真を前に、ひとりエッチの悦びにふけっていたのだ。悠々華はもう寝たと思い込んでいるのか、博史は昂った声でうわごとのように呟いていた。「清雪ちゃん......清雪ちゃん......」悠々華はよろめいて、必死に寝室へ戻った。そのとき、枕元の博史のスマホが光っている。震える指で手に取った。彼のパスワードは知っていた。これまで一度も覗いたことはなかったが、今はもう、我慢できなかった。そこに
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