そうなれば、彼女が汐見グループに入社するのは、もはや簡単なことだ。ちょうど、海外留学中に知り合った友人の家族が、その大口顧客の妻と少し繋がりがあった。その妻は、様々なジュエリーを収集するのが趣味だという。あのジュエリー一式を彼女に贈れば、きっとその大口顧客との取引を成立させられるはずだ。そう考えると、満は例の友人とのチャット画面を開き、メッセージを送った。……翌朝早く、結衣は起床して身支度を整えると、直接車で事務所へ向かった。ビルの前に着くとすぐ、見慣れた人影が入口に立っているのが目に入った。結衣の目に意外な色が浮かんだが、そのまま地下駐車場へ車を走らせ、内部エレベーターで上へと向かった。オフィスに入り、仕事を始めようとした、まさにその時。拓海が不機嫌そうな顔でノックして入ってきた。結衣は眉を上げた。「誰に怒ってるの?朝っぱらから、そんなに不機嫌な顔して」「今日、事務所に来る時、鈴木さんとその娘さん、見かけませんでしたか?」「ええ、ビルの入口にいたわ。どうしたの?」彩香の姿を見た時、結衣もかなり驚いた。まさか彼女がここに現れるとは、思ってもみなかったのだ。拓海は冷たく鼻を鳴らした。「先生に、また弁護士になってほしいそうですよ」結衣の目に驚きが走り、思わず眉をひそめた。「どうしてここが分かったのかしら?」「先生が個人で事務所を開いたことは、業界ではもう秘密じゃありませんから。たぶん、天宏法律事務所の方が、彼女という厄介者を手放したくて、先生の今の事務所の住所を教えたんでしょう」彩香のことを口にすると、拓海の顔は、今にも水が滴り落ちそうなほど暗く沈んだ。以前、結衣があれほど彼女を助けたというのに、結衣が最も苦しい時に、彼女は助けるどころか、後ろから刺すような真似をしたのだ。一体どの面下げて結衣に会いに来られるのか?!「どういうこと?以前、長谷川さんが天宏で一番腕の立つ弁護士を手配したんじゃなかったの?」「さあ、どうだか。どっちにしろ、俺たちには関係ありません。先生も、一時的な情に流されて彼女の案件を引き受けたりしないでください。彼女も、彼女の夫も、ろくな人間じゃありませんから」拓海の不満そうな顔を見て、結衣は微笑んで言った。「安心して。どうすべきか分かっているわ」
Baca selengkapnya