時子は汐見グループの株の41%を握っており、息子の明輝でさえ10%しか持っていない。時子が誰を支持するかが、次期社長を決めると言っても過言ではなかった。そして、先ほどの時子の「株は汐見家の者にしか残さない」という言葉は、その株の中に、いずれ結衣の分があることを明確に示していた。結衣が壇上から下りると、先ほどまで満の周りに集まっていた人々が、蜘蛛の子を散らすように彼女の元へ押し寄せた。「汐見さん、今夜は本当に綺麗だ。よろしければ、開場のダンスを俺と踊っていただけませんか?」「おい、お前、確か運動音痴だったよな?汐見さんの足を踏むなよ。そうだ、汐見さん、俺はダンスを習っていたことがあるんです。一曲、いかがです?」「どいつもこいつも邪魔だ。鏡でも見てこいよ。汐見さんがお前らみたいなのを相手にするわけないだろ。ダンスだなんて、汐見さんが悪夢を見るぞ!」……結衣が男たちに囲まれているのを見て、涼介の顔が険しくなり、早足で近づいてきた。「全員、彼女から離れろ!」皆が振り返り、それが涼介だと分かると、彼を怒らせるのを恐れる者はすごすごと立ち去り、フロンティア・テックを意に介さない者はその場に留まった。「長谷川社長、私の記憶違いでなければ、汐見さんとはもう別れたはずですよね?どの立場で我々に彼女から離れろなんて言えるんですか?」涼介は相手にせず、結衣を睨みつけた。「こっちへ来い」彼が最も嫌うのは、結衣が他の男と親しくすることだった。だから以前は、彼が不機嫌な顔をすれば、結衣はいつもすぐに彼のそばへ戻ってきて機嫌を取ったものだ。今回も同じだと思っていた。少なくとも、結衣が大勢の前で彼に恥をかかせるはずがない、と。しかし、彼は間違っていた。結衣は彼を完全に無視し、少し離れた場所に立つほむらの方へ歩いて行った。「ほむら先生、開場のダンス、私と踊っていただけませんか?」ほむらの口元に笑みが浮かんだ。「光栄です」結衣が彼の手を取ると、音楽が鳴り響くと同時に、二人は息を合わせて踊り始めた。ダンスフロアの中央で優雅に舞う二人を見て、涼介は世界を破壊したい衝動に駆られた。いいだろう!以前はほむらのことなど眼中になかったので、何もしなかった。だが今は、彼を清澄市にいられなくしてやる!一曲が終わり、二人は手
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