倉庫の片隅で行われたBL布教会だったが、この倉庫、何とも古びたものでいっぱいになっている。 布が掛けられていて中身が見えないものも多いが、なかなか年季が入っているようだ。倉庫そのものもだいぶ古い。「ここは古いものがたくさんあるのね?」 手近な侍女に聞いてみた。「そうですね。ここらへんは普段使われていない場所だから、秘密の会にちょうどいいと思って」 なるほど。ここはお城の奥まった場所で、普段は人の出入りもないらしい。 おかげでちょっと埃っぽい。 先ほどまで物語の朗読で声を上げ続けていたので、ちょっと喉がイガイガしている。 私が咳払いをしていると、侍女が続けた。「確かこのへんは、九百年とか千年くらい前のものを保管している場所のはずです」「かなり古いのね」 九百年といえば人間の国ことユピテル帝国の黎明期だ。 最初の王と建国の聖女の時代。 私は何気なく倉庫を見渡した。 今はたくさんの女性たちがすし詰めになっていて、楽しそうに物語の感想を言い合っている。 今後、彼女たちと萌え語りができると思うと、心が温まるのを感じた。 ……ふと。 並べられた棚の一つに目が止まった。 理由は分からない。 ただなんとなく気になったのだ。 その棚の前まで行ってみた。 上の段から大きな布が掛けられていて、中身は分からない。「どうしました?」「この棚がなんだか気になって。何が置いてあるのかしら」「じゃあ見てみましょう」 女性たちが何人かやって来て布をめくり上げた。 棚に置いてあったのは、一つが手のひらほどの破片だった。 陶器とも石材ともつかない不思議な材質で、薄暗い倉庫の中で淡く光っている。「…………」 半ば無意識に破片を一つ手に取った。 白い下地に七色の文字が複雑に描かれている。 私はこれ
Huling Na-update : 2025-06-20 Magbasa pa