魔族の城ではゴードンと他の人たちが出迎えてくれた。 ドラゴンのグランが城の前に着地すると、ゴードンが手を伸ばして私を降ろしてくれる。 それからグランが身震いして人の姿に戻った。この変身はいつ見ても不思議である。「お疲れ様です。浄化は問題なく済みましたか?」「ええ。それは簡単に終わったわ」「それは、ですか。他に何か問題が?」「ちょっと込み入った話だよ。中で話そうか」 グランの言葉で私たちは城の中に入った。 応接室として使われている部屋に腰を下ろすと、猫耳侍女さんがお茶を入れてくれた。「我が国の今後について、軽く話していてね。僕らは今まで、汚染されていない狭い土地にしがみつくように暮らしてきた。それが突然、見渡す限りの土地が全て我が物になったんだ。何をどうして暮らしていくか、まだ見当もつかない。農業か、狩猟か、はたまたユピテル帝国との交易か。自由にできるからこそ、何を選ぶべきか分からなくなってしまっている」 グランの言葉に皆がうなずいた。 ゴードンが言う。「フェリシア殿はどうお考えですか? あなたはユピテル人で、あの国で高度な教育を受けたと聞いています」 聖女教育に皇太子妃教育は、当時は死ぬほど面倒くさかったが。 こんな時に役に立つとは。「ユピテルとの交易は、慎重にやった方がいいでしょう」 言えば、魔族たちは意外そうな顔をした。「何故? ユピテルは豊かな国で、僕たちは彼らにない魔道具の技術を持っている。今後農業の開墾が進めば、農作物の輸出だってできるだろう。良き隣人として付き合っていけばいいのでは?」「ユピテルはああ見えて欲深い国なのです。最近こそ拡大路線はやめて国境画定に力を入れていますが、ほんの数十年前までは対外戦争をよく行っていました。魔族の土地に旨味があるとなれば、大挙して押し寄せて踏み荒らしかねない。これは軍隊が出てくる戦争という意味だけではなく、商業上の意味でもそうです」 ユピテル商人たちは百戦錬磨の手強い人々だらけだ。そして儲けにひたすら貪欲でもある。 無知
Huling Na-update : 2025-07-09 Magbasa pa