「先ほど、軍団長の傷を治しましたよね。私自身の上達と、それ以上に魔道具の効果なのです。魔族の土地にはびこる瘴気の浄化にも成功しました。必ず事態は好転します」「そうか……。帝都からもたらされる情報は混乱していて正確性に欠けたため、私は独自に調査をした。どうやら帝都に瘴気が発生しているようだ。魔物がほとんど無尽蔵に出現し、その中心部は瘴気溜まりのようになっていると報告を受けた」 事態は思ったより切迫している。 私はそっとベネディクトたちと目配せをした。「中心部とは、帝都のどこですか?」 私の問いの答えは、意外な場所。「大神殿のある場所だ」 それはつまり、聖女の祭壇がある場所だった。 まさか瘴気の発生地点が聖女の祭壇付近とは。 もしかしたら九百年前は、あの辺りに瘴気の沼があったのかもしれない。 それで当時の建国の聖女が祭壇を設置して浄化した。 けれどあの頃の祭壇――魔力増幅の魔道具は今よりもずっと性能が低くて。 建国の聖女は瘴気を完全に浄化しきれないまま死んでしまった。 以降、数世代おきに現れる光の魔力の持ち主は聖女として国に仕えて、あの場所を守ってきた。 王政である頃は王妃として、共和制になってからは最高位の巫女として。そして帝政に移行してからは皇妃となった。 光の魔力を持つ聖女は、もともと数世代に一度しか現れない。 浄化は常に行われるわけではなく、不安定な状態だった可能性が高い。 それでもある程度は瘴気が抑えられていたが、ここへ来て問題が表面化してしまった。 それは私がテキトーな祈りしかしなかったせい……いや、違うな。 月に一度の祈りの際は、BL妄想で時間を潰していた。妄想が私の魔力の原動力なのだから、役目は果たせていたはずだ。 原因は元から不安定だった帝都の瘴気。 瘴気がそこにあると忘れ去られ、聖女の持つ真の力の
Terakhir Diperbarui : 2025-06-30 Baca selengkapnya