「もう1回告白して来いってことだよな。」俺、三池勝利は思いっきり思わせぶりなことを言って去っていった松井えれなのことを考えていた。彼女は俺が思っていた人とは全く違う女だった。俺は彼女のことを孤高で正義感が強くまじめな人間だと思っていた。俺は自分と全く逆なそんなところに強く惹かれていた。命をかける程、彼女が好きだった。俺がこちらの世界に戻ってきて、暫くは身動きできなかった。やっと手紙が書けるくらいに回復した時に、あちらの世界に行った時のことについて、彼女に向けて手紙を書いて母に託した。もし、彼女も同じ経験をしていたとしたら俺のところを訪ねて来ると思ったからだ。俺よりも先に動けるようになった彼女は俺を訪ねてきた。「申し訳ないけど、三池の気持ちにはこたえられない。そんな風に見たことないから。」彼女はまず懸念事項を片付けるかのように俺の告白を断って来た。凍りつくブリザードのような声だった。最初に怪我の状態を聞くとか、あの世界の話をして来るかと思ったのに。それだけ俺の感情は彼女にとって迷惑だということだろう。身体だけでなく心に大きなダメージを負った瞬間だった。そんな彼女の態度が変わったのは、俺の怪我への責任を感じただろう、彼女が勉強を教えようと俺の病室を訪れた時だった。彼女は俺を相手にする価値のない馬鹿だと思っていただろう。俺が彼女の持って来た問題集の問題を全て解くと、一気に彼女の態度が変わった。おそらく、彼女にとって価値のある人間の枠に入れたのかもしれない。それから、毎日のように彼女は俺の病室に来た。看護師さんが松井えれなは俺の彼女だと思っているほど、俺たちの仲は親密に見えるようだった。俺の家族が俺の病室に来た時も、彼女は俺の側にいた。俺が彼女を助けようとして怪我をしたことも知っている家族は、えれなを見て当然俺の彼女だと思って大騒ぎした。「俺の家族騒がしくてごめんね。」家族が去った後、彼女に謝った。
Last Updated : 2025-06-19 Read more